ホーム旅の見聞録薬師池公園>薬師池公園で見かけた野草(秋T)


薬師池公園で見かけた野草(秋T)



薬師池公園は、いろいろと手入れされている公園ですが、周辺部は自然が良く残っています。
また、いろいろな野草などを集めた萬葉草花苑があります。
そこで見かけた野草や植栽された主な花々です。

< トピック >

今回、新たに見かけた野草などを追加しました。
ノリアサ、カンガレイ、アメリカタカサブロウ、オケラ、ベニバナボロギク、ドイツスズラン
サラシナショウマ、ゴンズイ、ナンバンギセル、ハッカ、キバナアキギリ、アシタバ、ツユクサ
テンニンソウ、ミカエリソウ、ヤツデ、ヤクシソウ、イチョウ、ブタナ

また、下記に関しては新しい花の写真などを追加しています。
チヂミザサ、ヒヨドリバナ、センニンソウの痩果、キツネノマゴ、シモバシラ、ダンギク、ムサシアブミ



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
アウストロバイレヤ目
マツブサ科(サネカズラ)
アオイ目
アオイ科(ノリアサ)
イチョウ目
イチョウ科(イチョウ)
イネ目
イネ科(コブナグサ、チヂミザサ)
カヤツリグサ科(ナキリスゲ、カンガレイ)
オモダカ目
サトイモ科(ムサシアブミ)
キク目
キク科(ノハラアザミ、サジガンクビソウ、オケラ、シラヤマギク、センボンヤリ、
    アメリカタカサブロウ、ヒヨドリバナ、ベニバナボロギク、ヤクシソウ、ブタナ)
キジカクシ目
キジカクシ科(ヤブラン、ツルボ、ドイツスズラン)
キントラノオ目
トウダイグサ科(ショウジョウソウ)
キンポウゲ目
キンポウゲ科(シュウメイギク、センニンソウ、サラシナショウマ)
クロッソソマ目
ミツバウツギ科(ゴンズイ)
ゴマノハグサ目
ハマウツボ科(ナンバンギセル)
シソ目
キツネノマゴ科(キツネノマゴ)
シソ科(シモバシラ、アキノタムラソウ、キバナアキギリ、ハッカ、テンニンソウ、
    ミカエリソウ、ダンギク)
モクセイ科(キンモクセイ)
セリ目
ウコギ科(ヤツデ)
セリ科(アシタバ)
ツユクサ目
ツユクサ科(ツユクサ、ウスイロツユクサ)
薬師池公園で見かけた野草(秋T)
和名インデックス


サネカズラ(Kadsura japonica (L.) Dunal)
<アウストロバイレヤ目・マツブサ科・サネカズラ属>
   
マツブサ科サネカズラ属のつる性常緑木本で、在来種。
日本では、本州の関東以西、四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島、台湾に分布する。
古いつるの樹皮は、コルク層が発達するので太くなる。
新枝は赤褐色味を帯び、樹皮をはぐと粘液が出て粘る。
それを昔は整髪料に使ったので、ビナンカズラの別名がある。
葉は互生で、長さ10p前後の長楕円形。まばらな鋸歯があり、表面はなめらか。
花期は8月〜9月で、雌雄異株または同株。
葉腋に直径10o強の白花を付ける。花被片は10枚前後。
雌花のメシベも、雄花のオシベも球状に付き、オシベは赤褐色、メシベは淡緑色。
果実は集合果で、直径は数p。ここの果実は10o前後で、真っ赤に熟す。

2016/10/7
ハス田の方に向かう途中、通路脇に真っ赤な果実が目に止まりました。
横にキヅタもあり、同じ木に絡み付いていて、3種類の葉が混じり合っていました。
そのため、パッと見、果実がどの葉(樹)と関連しているのか戸惑いました。
キヅタの果実ではないので、大小どちらかと果実の柄からたどって大きい葉と分かりました。
写真は、分かり易い場所を選んで撮影したものです。葉の奥の太い幹は、本種の古い幹です。

   
<ツボミ>            <雄花>             <雌花>

   <雄花>              <雌花>            <果実>
2017/9/5
昨年、見つけたサネカズラの赤い果実ですが、その花を確認できました。
厚ぼったい淡緑白色の花弁の内側に、球状のものがありますが、赤褐色が雄花で、淡緑色が雌花です。
雄花が赤褐色なのは、オシベの葯隔が赤褐色であるためで、葯隔の左右にある白っぽいものが葯です。
雌花は、淡緑色の子房が球状に集まっており、その隙間から白い柱頭が顔を出しています。
受粉後、花弁が落ちて子房が膨らんできます。下段右端がその成長の様子です。
この後、晩秋から初冬にかけて真っ赤に熟しますが、その様子はこちらをご覧ください。

ノリアサ(Abelmoschus x glutinotextilis)
<アオイ目・アオイ科・フヨウ連・トロロアオイ属>

アオイ科トロロアオイ属の1年草で、トロロアオイとオクラの人工種間雑種。
1944年に京都大学の香川冬夫博士によって作出された。
両者の性質を持ち合わせており、根からは糊料(ねり)が取れ、果実はオクラ同様に食用になる。
草丈は1〜2mで、葉は互生し、掌状に5〜9深裂する。小葉の幅がトロロアオイより細い。
花期は8月〜9月で、直径10〜20cmの淡黄色の5弁花。夕方にはしぼむ1日花。
花の中央が暗紫色の斑(ふ)が入る。オシベは多数あり、根元が筒状に合着し、花柱を覆う。
メシベは、花柱の先が上向きに曲がり、先が5裂して、柱頭は平らに開く。
果実は刮ハ(さくか)で、稜のある角状。黒く熟すと裂開し、直径5mmほどの種子が散布される。

2018/9/12
萬葉草花園の前にある茶屋の側で、オクラのような花を付ける変わった草本を見かけました。
葉は、オクラの葉のように掌状に裂けていますが、その裂片が極端に細いのです。
後でいろいろ調べた結果、トロロアオイが見つかったのですが、葉の細さが合いません。
さらに調べてみると、トロロアオイとオクラの雑種であるノリアサに行き当たりました。
その葉は、水草の上を歩くアフリカレンカクの細くて長い足指を連想させます。

 
2018/10/17
1ヶ月ほど前に見かけたノリアサの花ですが、花は見当たらなくなっていました。
近づいてみると、上部が折れて倒れており、上部には若い果実が付いていました。
オクラと比べると、かなり毛深くて太短いです。萼片もしっかりと残っていました。

   
2018/11/29
11月末になって、様子を見てみると1つだけ若い果実が残っていましたが、後は枯れていました。
枯れたものを見てみると、表面の粗い毛も萼片も枯れてはいますが、しっかり残っていました。

イチョウ(Geranium carolinianum)
<イチョウ目・イチョウ科・イチョウ属>


 
イチョウ科イチョウ属の裸子植物で、裸子植物門イチョウ綱の中で唯一の現存種。
そのため生きた化石と呼ばれている。
中国原産の落葉高木で、雌雄異株であるため、雄株と雌株があり、実は雌株にのみになる。
葉は扇形で葉脈が付け根から先端まで伸びており、葉の中央部が浅く割れている。
種子は、11月頃に熟すると軟化し、カルボン酸類特有の臭気を発し、素手で触るとかぶれる。
人為的な移植により、現在は世界中に分布しており、
年平均気温が0〜20℃、降水量500〜2000mmの地域に分布している。

2018/10/17
薬師池の近くに数本のイチョウの木があり、傷みもなく黄葉が進んでいました。
今年は、台風の影響で海岸から離れた場所でも塩害によって葉が枯れている所が多々あります。
ここはその塩害もなかったようで、葉の周囲半分ほどが黄色く色づいていました。
この木は、春に雄花の開花は確認した雄株です。近くに雌株もあり、果実もちらほら見られました。

 
2018/11/29
紅葉したイチョウを見たいと思っていたのですが、なかなか時間が取れませんでした。
やっと見に来れたのですが、時すでに遅しで、ほぼ落葉してしまっていました。
上の紅葉した写真の木は雄株でしたが、近くにある雌株には小さな果実がぶら下がっていました。
イチョウの果実の成長する様子は、こちらに詳しく掲載しましたので、ご参照ください。

コブナグサ(Arthraxon hispidus)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・コブナグサ属>
 
イネ科コブナグサ属の1年草で、在来種。水田の畔などに生育していることが多い。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布している。
海外では、ロシア、朝鮮半島から中国、台湾、フィリピン、中央アジア、オーストラリアなどに分布する。
草丈は数十p程になり、下部は匍匐して地を這い、節々から発根して、先は斜上する。
葉は長さ5p前後で、卵状披針形(ササの葉に似ている)。基部は茎を抱く。
花序は掌状に数本の花軸に分かれ、紫褐色。花軸の節に小穂が1つ付き、普通芒がある。
しかし、芒の有無など、変異が多い植物である。

2012/10/8
菖蒲苑の縁でコブナグサを見た時、非常に懐かしくなりました。
子供の頃、田んぼの畔や道端などで、よく見かけた気がしますが、最近は見たことがなかったためです。


2016/10/7
薬師池公園の裏門、その入り口の手前に大きな群落がありました。
葉の縁が波打ち、長毛が開出していること、葉鞘にも長毛が開出しているのが分かると思います。

チヂミザサ(Oplismenus undulatifolius)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・コブナグサ属>
 
イネ科チヂミザサ属の1年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、温帯から熱帯にかけて広く分布する。
和名は、葉がササに似て、縮れたような皺があることに由来する。
茎は、枝分かれしながら地上を這い、多数の葉を付ける。
秋に、茎の一部が立ち上がり、先に穂状の花序を付ける。
花茎の上部に短い柄が出、その枝に数個の小穂が付く。
小穂には3本の長い毛があり、表面が粘つく。また、第一苞穎に長さ12〜20mmの芒がある。
花期は8月〜9月で、メシベの柱頭は羽毛状で目立ち、オシベの葯は淡黄色で目立たない。
花軸、葉、および葉鞘に長い毛の多いタイプをケチヂミザサ。
全体に毛が少なく、花軸に毛がないタイプをコチヂミザサと分けることがある。
しかし、この2つを変種レベルでさえ分けないことが多い。

2018/10/2
薬師池公園の裏門の近くや花菖蒲田近くの法面などで、チヂミザサが花を咲かせていました。
花と言っても、イネ科の花なので、目立つのはブラシ状のメシベの柱頭です。
オシベの葯は淡黄色のため、左の写真でもよく見ないと分からないと思います。
ブラシ状の柱頭の先辺りに殻付きピーナッツのような形をしたものが見えますが、それが葯です。

※ 夏に見かけた葉の様子などは、こちらを参照ください。

ナキリスゲ(Carex lenta)
<イネ目・カヤツリグサ科・スゲ属>
 
カヤツリグサ科スゲ属の常緑性の多年草で、在来種。
日本では、本州の関東以西、四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島、インドから東南アジア、オーストラリアなどに分布する。
草丈は50cm以上になり、短い根茎から多数の根出葉を出し、大きな株立ちとなる。
その葉が菜っ葉が切れるほど硬いというのが、「菜切り菅」の名の由来とのこと。
花期は8〜10月で、春に開花するスゲ属の中では数少ない秋型。
長い花茎の先は少し垂れ、先の方の各節から数個の小穂を出す。
小穂は雌雄性で、基部から雌花が密生し、その先端に極短い雄花部がある。

2012/10/8
トイレ脇で、ナキリスゲが大きな株を作っていました。
左の写真で、小穂の先に茶色いものが飛び出しているように見えますが、それが雄花部です。

カンガレイ(Scirpus triangulatus)
<イネ目・カヤツリグサ科・ホタルイ属>
 
カヤツリグサ科ホタルイ属の多年草で、在来種。
なお、ホタルイ属を細分する考え方もあり、その場合もホタルイ属とされる。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国で見られる。
海外では、朝鮮半島から中国、インド、インドネシアにも分布する。
草丈は70〜100cmで、大きな株となって群生し、茎は鋭い三稜形。
花期は8月〜10月で、茎の先に長さ3〜10cmほどの苞が付く。
苞の基部に数個〜10個程度の小穂が固まって付き、小穂は無柄で長楕円形。
なお、茎と苞は見た目は同じなので、茎の途中に小穂が付いているように見える。

2018/9/12
萬葉草花園の端の方にサンカクイの名板が付けられ、鉢(水瓶?)に植えられていました。
しかし、八ヶ岳自然文化園で見かけるカンガレイにそっくりなので、調べてみました。
すると、サンカクイとカンガレイはよく似ているが、下記の点で異なるとのこと。
●カンガレイは叢生して株立ちになるのに対して、サンカクイは叢生しない。
●カンガレイの小穂は柄がないが、サンカクイの小穂には柄を持つものとないものがある。
写真に写っている範囲で確認したのですが、小穂に柄のあるものは見当たりません。
従って、この草本はカンガレイであろうと思われます。

※ 八ヶ岳自然文化園で見かけたカンガレイに関しては、こちらを参照ください。

ムサシアブミ(Arisaema ringens)
<オモダカ目・サトイモ科・サトイモ亜科・テンナンショウ属>
 
サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、在来種。
日本では、本州の関東以西、四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
地面から立ち上がる第一の葉柄の途中から二番目の葉柄が分岐し、その途中から花柄が伸びる。
葉柄上端には先が細くなった三枚の葉をつける。花柄は葉柄よりも短い。草丈は50cmになる。
花期は3月〜5月で、仏炎苞は暗紫色に白い筋があり、舷部が曲がって袋状になって、先が尖る。
筒口部の耳も大きく、鐙(あぶみ:足を乗せる馬具)を逆さまにしたような形をしている。
武蔵の国で作られた鐙が有名だったので、それが和名の由来となっている。
この仏炎苞に隠れるように、仏炎苞に沿って白くて長い付属体が入っているが、外部からは見えない。
その付属体の下部に雄花と雌花があり、花後、仏炎苞が枯れると果実が見えてくる。
晩秋から初冬にかけて、その果実が真っ赤に熟して、目を引くようになる。

2018/10/17
今年も、ムサシアブミが大きな果実を付けていました。まだ、きれいな緑色です。
これから徐々に色付き、真っ赤に熟していくものと思います。
昨年は、真っ赤に熟してが立ち上がっている所を見損ね、枯れた下草に埋もれて横たわっていました。
今年は、その姿を見たいと思っています。

 

   
2018/11/29
今年こそはと思っていたのですが、なかなか時間が取れず、行きそびれていました。
やっと、見に行けたときは、少し遅すぎたようで、大半が倒れてしまっていました。
その中、1本だけ、熟すのが遅かったようで、緑色のものから赤いものまでが混ざったものがありました。
枯れかけた葉にも、うっすらですが緑色の部分が残っていました。
その近くで、半分倒れかけていたのが、右側の2個体です。1つはきれいに赤く熟していました。
このように大半の果実が揃っているのは半分程度で、残りは中央の個体のように大きさがバラバラです。

ノハラアザミ(Cirsium oligophyllum)
<キク目・キク科・アザミ亜科・アザミ連・アザミ属>
   
キク科・アザミ属の多年草で、日本固有種種。
日本では、本州中部以北の山地の草原や林縁に分布する。
草丈は60〜100pで、茎は真っ直ぐに伸び、上部で分枝する。
根際の葉は花期にも残り、羽状に深く裂ける。茎葉は上部ほど小さく、中裂して鋭い棘がある。
花期は8月〜10月で、枝先に数個の花を上向きに付ける。
頭花は、紫色の筒状花からのみなり、最初、メシベはオシベに包まれている。
花が刺激を受けると、オシベが下にさがり、白い花粉とメシベが出てくる。
オシベは数日で枯れ、長く飛び出したメシベ(先が3裂)が授粉できるようになる雄性先熟。
総苞には、クモ毛があり粘らない。比較的短い総苞片は、反り返らず、規則正しく並んでいる。

2016/10/7
薬師池公園の奥、菖蒲苑の上の方の林内で花を付けていました。
あの雑草にまぎれて、所どころで見られましたが、あまり多くはありません。

   
左側の写真で、長く伸びて先が小さく3裂しているのがメシベです。
その下の方で濃紫色のものがオシベで、先が筒状に合着し、メシベと花粉を包んでいます。
中央の写真で、5本の披針状のものは筒状花の花被片で、そこから飛び出しているのがオシベです。
総苞は、張り付くように直立するノアザミとは異なり、クモ毛があって、斜上します(反り返ることはない)。

サジガンクビソウ(Carpesium glossophyllum Maxim. )
<キク目・キク科・キク亜科・オグルマ連・ガンクビソウ属>
   
キク科ガンクビソウ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州と琉球列島に分布する。国外では済州島に分布する。
草丈は30〜50cm前後になり、茎は直立して分枝が少なく、上部は曲がり、開出毛が密に付く。
根出葉がロゼット状に残り、長さ15p程の楕円形で鋸歯はほとんどない。
茎葉は小さく、まばらで、上部では線状披針形になる。
花期は8月〜10月で、枝先に緑白色の頭花を下向きに付け、頭花の基部には大きな苞葉が付く。
頭花は、直径15mm前後で、筒状花のみからなり、周囲に雌性、中央に両性花が付く。

2016/10/7
夏に見かけて以来、なかなか見に行けなかったので、花は終わっているかもと半ばあきらめていました。
最初に目に入ったのは、右端の写真のように、既に花茎が枯れた大きな株でした。
その根元で、小さな株が花を付けていました。が、既に咲き終わった後のようです。
中央寄りの両性花のメシベが茶色くなって、その面影を残していました。
また、右端写真の左下にも写っていますが、来年に向けて根生葉がロゼット状になっていました。

 
2016/7/12
菖蒲苑の上の方の斜面で、未成熟な頭花をたくさん付けたガンクビソウのような花を見つけました。
まだ、開花には時間がかかりそうですが、葉や頭花の特徴から本種としました。

オケラ(Atractylodes japonica)
<キク目・キク科・キク亜科・オケラ属>
 


キク科オケラ属の多年草で、在来種。昔はウケラと呼ばれていた。雌雄異株である。
日本では、本州から四国、九州に、海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
草丈は30〜80cmで、茎は細く、木のように堅くなる。
根茎はやや長くて節があり、古い部分は順次枯死していく。
葉は互生し、下部の葉は長さ8〜11cmで奇数羽状複葉。3〜5裂し、縁には刺状の鋸歯がある。
上部の葉では、分裂しないこともある。なお、根生葉は花時にも残る。
花期は9月〜10月で、上部で分枝した茎に頂生し、頭花の直径は20o前後。
筒状花のみからなり、花色は白〜淡紅紫色で、花冠の先は5裂する。
雄株にはオシベのみが機能する雄花が、雌株にはオシベとメシベがある両性花が咲く。
総苞は長さ10〜12mmの鐘形で、総苞片は7〜8列に並び多数ある。
それを囲むように魚の骨のような針状に羽裂した苞葉(総苞外片とのされる)が2列に包む。
痩果は長さ5〜6mmの円柱形で、白毛が密生し、羽毛状に細かく枝分かれした淡褐色の冠毛がある。
近縁種の中国原産のオオバナオケラやホソバオケラとともに根茎は、朮(じゅつ)という生薬として利用される。
本種のものを和白朮、オオバナオケラのものを唐白朮、ホソバオケラのものを蒼朮という。

2018/9/12
今年の早春、萬葉草花園でドライフラワーになっていたオケラを見て、花を見たいと思っていました。
この日、様子を見に行くと、ちょうど最盛期だったようで、きれいに開花した花を見ることができました。


2018/10/2
しばらくして再訪した時には、花はほぼ終わっていて、一部に淡紅紫色の花弁が残っているのみでした。
多くの花では、花弁が黒紫色に変わり、そのまま頭花に残っていました。
熟すと頭花が開き、綿毛を飛ばすのでしょう。その後の姿が、早春に見たこちらです。

シラヤマギク(Aster scaber)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・シオン属>
   
キク科シオン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国に分布している。
草丈は1〜1.5mほどで、茎や葉には短毛があって、ざらつく。
下部の葉には狭い翼のある長い柄があり、葉身の長さは10〜20p程度で心形で先が尖る。
縁には粗い鋸歯がある。上部の葉ほど小さくなり、先の尖った卵形で葉柄も短い。
花期は8月〜11月で、茎の上部に散房状花序をなし、ややまばらに頭花を付ける。
頭花は直径2cm前後で、中心部の筒状花と周辺の舌状花からなる。
舌状花の数は一定せず、10個に満たないため、舌状花の隙間が大きい。
総苞は直径5o前後の筒型で、総苞片は3列、外片は内片より短い。

2016/10/7
薬師池公園の奥、菖蒲苑の上の方の林内で花を付けていました。
舌状花が少なく、華やかさにも欠けるため、あまり目立ちません。

   
  2017/9/1           2017/9/1        2018/10/2
2017/9/1 開花前のシラヤマギクです。特徴は、右の写真で下部に見えている大きな葉です。
上部の葉と比較すると、一桁大きいサイズで、葉だけ見るとキク科の植物に見えません。
2018/10/2 昨年とは1ヶ月程ずれていたので、開花している所を見ることができました。
舌状花が少なく、歯が抜けたような不規則な形の花が特徴です。

センボンヤリ(Leibnitzia anandria)
<キク目・キク科・キク亜科・センボンヤリ属>
   

   
キク科センボンヤリ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から九州と全国の山地や丘陵の日当たりのよい草地などに自生している。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
本種は、春と秋の2回の花期があり、その形態が大きく異なる。
葉は、基部に集まってロゼット状になる。葉の欠刻は春は少なく、秋の葉は欠刻が多くなる。
その形も春は倒卵形であるが、秋は長楕円形で頂葉が非常に大きい羽状に中裂する。
春、秋とも葉裏には、白いクモ毛が密生する。
頭花も春と秋で異なり、春の頭花は高さ10〜15cmほどで、花茎の先に1個付く。
頭花は、周りに裏が淡紫色を帯びた白い舌状花状の筒状花が1列並び、その内側に筒状花がある。
舌状花状の筒状花は、舌片の反対側にも小さな舌片がある二唇形で、オシベが退化した雌性花である。
筒状花は、メシベとオシベを持つ両性花である。
秋には30〜50cmの花茎が多数伸び出し、その先に槍の穂先状の閉鎖花が1個付く。
その様が和名のセンボンヤリの由来である。花茎には、線形の小葉が多数つく。
閉鎖花は、細い筒状花のみからなり、長さ15oほどの総苞に包まれたまま結実する。
痩果は淡褐色で、春型は長さ5o、冠毛は7mmほどであるが、秋型は長さ7o、冠毛は10o程になる。

2016/10/7
薬師池のほとりにある萬葉草花苑、その一角にセンボンヤリが花茎を伸ばしているのに気が付きました。
秋のセンボンヤリの花は閉鎖花なので、開花することなく、結実します。
ツボミから、結実後、痩果が開いたものまでありました。

 
2016/8/27        2016/10/7
 
2017/9/1        2016/10/7
2017/9/1
今年もセンボンヤリが長い花茎を立ち上げ、ツボミを付けていました。
昨年は気が付いたのが開花後でしたが、今年は1ヶ月ほど早い事もあり、まだ若いツボミでした。
※ 若いツボミの拡大写真は撮らなかったので、胎内で撮影したもの(右上の写真)を使用しました。


2018/11/29
萬葉草花園のひっそりと奥まった所で、センボンヤリが枯れた花茎に綿毛を開いていました。
タンポポのような白い綿毛ではなく、ベージュ色の控えめな綿毛で、秋に相応しい色合いです。


春のセンボンヤリ

     .
2009/04/12
高尾山のもみじ台近くで見かけたセンボンヤリの春の花です。
舌状花のように見えるのは、特殊な二唇形の筒状花です。


アメリカタカサブロウ(Eclipta alba)
<キク目・キク科・キク亜科・ヒマワリ連・タカサブロウ属>
   
2018/9/12        2018/9/12             2018/9/12   .
   
2018/9/12        2018/10/2         2018/10/2

2018/10/2<種子>
キク科タカサブロウ属の1年草で、南米原産の帰化植物。
草丈は20〜70cmで、茎には伏した剛毛があり、よく分枝する。
下部の茎は横に這い、上部の茎は直立して、折ると傷口がすぐに黒くなる。
葉は節毎に対生し、長さ6〜10cmの長楕円形で、縁に浅く粗い鋸歯があり、粗い毛がある。
下部の葉は、基部に向かって幅が狭くなり、翼状となる。
上部の葉は、狭披針形になり、葉柄はないか、極短い。
花期は8月〜10月で、葉腋から花茎を伸ばし、白い頭花を1つ付ける。
なお、花茎の長さに関しては、タカサブロウより短くなる傾向がある。
頭花の直径は8〜10mmで、よく似たタカサブロウより一回り小さい。
舌状花は雌性花で2列に並び、中央の筒状花は両性花で、花冠の先は4裂する。
総苞片の先は三角状の尖り、幅が狭くて大きさにばらつきがあり、隙間が多い。
タカサブロウの総苞片は幅が広くて丸みを帯び、その分、隙間は狭くなる。
痩果を上から見たとき、4綾の菱形(舌状花は3綾)で、長さは2o前後ある。
タカサブロウの痩果には翼があり、上から見ると切れ長の眼のようで、長さは3mm前後ある。
かつては、どちらもタカサブロウとされていたが、別種と認識され、現在に至っている。

2018/9/12 花菖蒲田で、畔の際に大きな株がありました。
総苞片や花茎の長さはタカサブロウのようなのですが、痩果の形はアメリカタカサブロウのようです。
外観からはどちらともいえるような形質で、判断できませんでした。
2018/10/2 痩果が熟する頃を見計らって、確認に行ってきました。
痩果の形は上記の通りで、痩果には翼がないことが確認でき、アメリカタカサブロウと分かりました。

ヒヨドリバナ(Eupatorium makinoi)
<キク目・キク科・キク亜科・ヒヨドリバナ連・ヒヨドリバナ属>
 
キク科ヒヨドリバナ属の多年草で、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布する。
草丈は1mを超え、葉には短い葉柄があり対生する。葉は長楕円形で先が尖り、鋸歯がある。
良く似たサワヒヨドリより一回り大きく、葉幅があって、葉柄がある点で区別できる。
なお、葉の脈が黄色くなり、斑紋のように見えるものはジェミニウィルスに感染したものである。
花期は8月〜10月で、上部に散房状に多数の頭花を付ける。頭花は、両性の筒状花が5個のものが多い。
筒状花は、花冠の先が浅く5裂し、メシベの花柱は花冠から飛び出して、先端は2裂する。
花冠の花色は、白色のものが多いが、淡紅紫色を帯びるものもある。
和名は、ヒヨドリが鳴く頃に花を咲かせることに由来するとのこと。

2018/9/12
萬葉草花園の裏口近くで、葉の葉脈が黄色いヒヨドリバナに気が付きました。
ウィルスの感染で、このように黄色い斑入り葉のようになることは知っていましたが、見るのは初めてです。
このように感染した個体は、成長が鈍化し、やがて枯れてしまうことが多いそうです。

   
2018/9/28
萬葉草花園の側を流れる小川。その小川の近くにヒヨドリバナの群落がありました。
この時期、開花している花が少ないのか、いろいろな昆虫が訪花して、盛んに吸蜜していました。

ベニバナボロギク(Crassocephalum crepidioides)
<キク目・キク科・キク亜科・ベニバナボロギク属>
   
2018/9/12
 
2018/9/12
 
2018/9/28                2018/10/2
キク科ベニバナボロギク属の1年草で、アフリカが原産地。
第2次世界大戦後に侵入し、現在では本州の関東以西、四国、九州、沖縄で見られる。
草丈は30〜70cmで、茎は直立して、あまり分枝しない。根はあまり発達しない。
葉は互生し、長さ10〜20cmの倒卵状長楕円形で、下部の葉は不規則に羽状に裂ける。
葉質は薄くて柔らかく、両面には伏し毛がまばらに生えてざらつき、縁に細かな鋸歯がまばらにある。
花期は8月〜10月で、花序は先が垂れ、下向きに頭花を付ける。
頭花は、長さ10mmほどの先すぼまりの円筒形で、総苞片が1列に取り巻き、基部に細い苞が多数付く。
全て細い筒状花で、花冠の上部が朱赤色で、下部は白色。
花柱の先は長く突き出し、2裂した花柱の先は、しばらくするとくるりと丸まる。
果実は痩果で、長さは2o前後。先端に12mm前後の白い冠毛が付く。

2018/9/12 萬葉草花園を囲む生垣。その生け垣の外側でベニバナボロギクを見かけました。
雑草の中から伸ばした茎先に、エンジ色の頭花を横に向けて咲いていました。
写真等でこのような色のボロギクがある事は知っていましたが、実物を見たのは初めてです。
一部は枯れかかっていましたが、若い新芽も伸び出してきていました。
2018/9/28 ほとんどの茎が枯れて倒れていましたが、1本だけ倒れてはいましたが、まだ花を付けていました。
2018/10/2 下部の葉の様子を撮影したものですが、不規則に大きく裂けているのが分かると思います。

ブタナ(Hypochaeris radicata)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・エゾコウゾリナ属>

キク科エゾコウゾリナ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本では、北海道から本州の広い範囲に分布する。
海外でも、アメリカ大陸やオーストラリア、ニュージーランドなど多くの地域に帰化している。
葉はロゼット状で裏面には毛がびっしりと生えている。
花期は6月〜9月で、中心から30〜50cm程の花茎を出し、花茎は途中で枝分かれする。
花茎には、葉は付かないが、葉が退化した鱗片状のものは付いている。
花茎の頂部に、直径3cm程の黄色い舌状花のみからなる頭花を付ける。
ブタナの名前は、フランス語の「Salade de porc」(ブタのサラダ)に由来する。

2018/11/29
花期は過ぎているのに、今年は暖かかったためか、まだ、ブタナが枯葉の中で咲いていました。
咲いているのは3輪でしたが、まだ、ツボミが残っており、天候次第ではこれからも咲き続けそうです。

ヤクシソウ(Youngia denticulatum)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・オニタビラコ属>


キク科オニタビラコ属の二年草で在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州とゼ国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、ロシア、ベトナム〜インドなどに分布する。
草丈は30〜120cmで、茎はよく分枝し、初期には根生葉があるが、花時には無くなる。
根生葉は長い柄のあるさじ型で、茎葉は互生して長さ3〜12cmの倒卵形。
茎葉の基部は張り出して茎を抱き、縁には浅い鋸歯がある。裏面はやや白みを帯びる。
茎や葉を折ると苦みのある白い乳液が出てくる。
花期は9月〜11月で、枝先や上部の葉腋に数個の花を固まって付ける。
花は直径15mm前後の黄花で、舌状花の数は15個前後。
総苞は長さ8o前後の深緑色で、総苞外片は1mm前後と極小さい。
頭花は上を向いて開花するが、花後、下部が膨れて硬くなり、下向きになる。
黒褐色の痩果は長さ3o前後で、白い冠毛は長さ4o前後になる。

2018/10/17
薬師池公園の裏門から入って、少し下ったあたりの法面で見かけました。
春に見かけたヤブタビラコに似ていると思ったのですが、花期が異なります。
後で調べて、ヤクシソウと分かりました。
ヤブタビラコより舌状花の数が少し少なく、花の大きさが倍くらいあります。
下段左端と中央の写真は、筒状のオシベからメシベの花柱が伸び出しているところです。
花柱が伸び出すときに、オシベの内側から花粉を押し出してくる雄性期(左端)。
花柱伸びきって、花粉の大半は無くなっている雌性期(中央)。こうやって自家受粉を回避しています。
右端の写真は、総苞の部分で、長く伸びているのが総苞内片で、その基部にある小さいのが総苞外片です。

ドイツスズラン(Convallaria majalis var. majalis)
<キジカクシ目・キジカクシ科・スズラン亜科・スズラン属>
 
キジカクシ科スズラン属の多年草で、ヨーロッパが原産地。
在来種のスズランに比べて耐暑性が高く、観賞用に流通しているものの多くが本種である。
草丈は20〜30cmで、根際から数個の卵状楕円形の葉を出し、基部は茎を包む。
花期は5月〜6月で、葉の脇から花茎を出し、十数個の白い鐘形の花を総状に付ける。
なお、スズランの花茎は葉より短いのに対して、本種の花茎は葉と同長かそれ以上になる。
花の直径は10〜15mmで、短い花柄があり、花被片は基部で合着している。
オシベは6個で、メシベが1個ある。スズランより花の香りは強い。
果実は球形の液果で、秋には赤く熟する。なお、花と実には、有毒物質のコンバラトキシンが含まれる。

2018/9/12
萬葉草花園の入口近くで、スズランが身を付けていました。
花茎の長さからみて、ドイツスズランだと思われます。
果実はつややかで、黄色く色づきかけていますが、赤くなるのはもう少し先のようです。

ヤブラン(Liriope muscari)
<キジカクシ目・キジカクシ科・スズラン亜科・ジャノヒゲ連・ヤブラン属>

キジカクシ科ヤブラン属の多年草で、在来種。
日本では、本州の関東以西から四国、九州の温暖な地域に分布する。
海外では、中国など東アジアに分布する。
草丈は30〜60cmほどで、葉は幅1cm強、長さは50cm以上になる。
葉に斑入りのものがあり、観賞用に庭に植えらる。
花期は8〜10月で、長さ50cm以上の花茎を伸ばし、先に総状花序を出す。
花は数個が束生し、6個の花被片は淡紫色で、稀に白花もある。
花被片は長さ数oの長楕円形で、オシベは6本、中央の花柱は2oほどで、柱頭は小さい。
果実は早い段階で破れ、若い緑色の種子が露出して成長する。
種子の直径は6oほどの球形で、熟すと黒紫色になる。

2011/10/10
薬師池の側の桜の樹の洞に根付いたヤブランです。
あいにく、花の季節には気が付いていませんでしたので、緑の種子になっていました。
2016/7/12に様子を見たのですが、花茎は伸びていませんでした。


2017/9/1
樹の洞にあったヤブランは無くなってしまいましたが、植え込みで咲いていました。
花色の濃い薄いはありますが、ちょうど花が咲き始めた所でした。

ツルボ(Scilla scilloides)
<キジカクシ目・キジカクシ科・ツルボ亜科・ツルボ属>
 
キジカクシ科ツルボ属の多年草で、東アジアで唯一の種である。
日本では、北海道から、四国、九州と全国に分布し、朝鮮半島から中国、台湾にも分布している。
葉は、長さ20cm前後、葉幅5o前後で細長く、年に2回出る。
春に10枚ほどの春葉が出るが、夏には枯れる。8月〜9月には、数枚の葉と花穂が出る。
花茎は数十pになり、真っ直ぐに立ち上がる。花茎の先に総状花序を付け、ピンクの花が咲き上って行く。
花被片は6個で先の尖った長楕円形、オシベは6本で、長さ5o程の花柄がある。

2017/9/1
薬師池公園の裏門からの下り坂の途中で、法面でツルボが花を咲かせているのに気が付きました。
この時期、時々花を付けているのを見かけますが、ここで見たのは初めてです。

ショウジョウソウ(Euphorbia heterophylla var. cyathophora)
<キントラノオ目・トウダイグサ科・トウダイグサ属>
 
トウダイグサ科トウダイグサ属の一年草で、北アメリカ南部、ブラジル原産の帰化植物。
国内分布は不明ですが、耐寒性がないとはいえ、少なくとも関東平野では繁殖しているようです。
草丈は1mほどに成長し、葉は長卵形または中央のくびれたバイオリン型で互生する。
花期は7〜12月で、茎の上部に葉が集まって苞状となり、雌雄異花の小花が集まった花序を作る。
花期には、花の周囲の苞や葉が、全体か一部が赤色に変わる。

2012/10/8
薬師池公園脇の道路下の斜面で、ちょっとした群落を作っていました。
同じ仲間のポインセチア同様、上部の葉や苞の基部や全体が赤くなります。
この場所以外に、多摩川の河川敷近くの道路脇などでも見かけます。

シュウメイギク(Anemone hupehensis var. japonica)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・キンポウゲ亜科・イチリンソウ連・イチリンソウ属>
 
キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、中国原産とされている。
名前にキクと付いているが、キクの仲間ではなく、アネモネの仲間。
日本では、本州から四国、九州に分布し、園芸品種として植栽されている。
花色は、淡紅紫色と白色が主であるが、濃紅色の品種も作出されている。
花弁に見える物は、花被片(萼片)であり、花弁ではない。そして、花弁はない。
全草が有毒で、むやみに触れたり、摘んだりすると皮膚炎を起こすので要注意。

2012/10/8
萬葉草花苑に植えられていたものですが、紅紫色の八重咲きで、原種に近い品種と思われます。
シュウメイギクとアネモネ・ビティフォリアの交配種が普及し、白や紅紫色の品種が販売されています。

センニンソウ(Clematis terniflora)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・キンポウゲ亜科・イチリンソウ連・センニンソウ属>
 

キンポウゲ科センニンソウ属の常緑つる性半低木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の日当たりの良い山野に分布する。
葉は対生で、5枚の小葉を持つ羽状複葉。小葉は卵形で葉先は尖り、全縁。
葉柄は、他の植物の茎や葉などに絡み付き、自身を固定する。
花期は8月〜9月で、葉腋から円錐花序を出し、白い花を多数付ける。
花は直径数cmほどで、上向きに咲く。花弁はなく、白い花弁状のものは萼片で十字形に開く。
多数のオシベと数個のメシベがあり、長さは萼片の半分程度しかない。
痩果は扁平な卵形で、花後、数cmほどに伸びた花柱が残り、長い毛が開いて羽毛状になる。
なお、本種は有毒植物なので、取り扱いには注意が必要です。

2017/9/1
ハス田近くの生け垣に、センニンソウが絡みつき、たくさんの花を付けていました。
おそらく植えられたものではなく、生け垣の木に混じって来たか、後から侵入したものでしょう。
種子は風に乗って運ばれるので、条件が良ければ簡単に芽生えてきます。

 
2018/9/12
萬葉草花園の中にもセンニンソウが咲いていました。こちらは植栽されたもののようです。

 
2018/9/28
しばらくして見に行くと、花はすっかり終わり、痩果から残存した花柱が長く伸びていました。
まだ、未熟な痩果なので、毛が十分に開き切っていませんが、開くと下記のようになります。

 
2018/10/17
センニンソウの花後の花柱が羽毛状に開いているかと見に行ってみました。
見に来るのが遅かったのか、多くの種子が落果したようで、果柄のみのものがたくさんあります。
残っているもので、羽毛状に開いているものを探したのですが、見当たりませんでした。
比較的、きれいに開いているものでも上記のような状態でした。
きれいに開くと下記の囲みの中のようになるのですが、ちょっと残念。


ボタンヅルの花とセンニンソウの種子

       .
 <ボタンヅルの花>       <センニンソウの花>       <センニンソウの種子>

ボタンヅルとセンニンソウの花はよく似ていますが、十字形に開く萼片4個の長さが違います。
ボタンヅルは萼片とオシベがほぼ同長なのに対して、センニンソウではオシベの倍くらいの長さです。
センニンソウは、右端のように花後に花柱が伸びて羽毛状になり、風に乗りやすくなります。


ウマノアシガタ(Ranunculus japonicus)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・キンポウゲ亜科・キンポウゲ連・キンポウゲ属>
 
キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草で、在来種。日当たりの良い山野に自生する。
日本では北海道から本州、四国、九州、南西諸島全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
草丈は30〜60cmで、茎と葉裏には白い長毛があり、縦に筋が入って、上部でよく分枝する。
根出葉には長い葉柄があり、掌状の3〜5裂し、裂片はさらに数裂する。不揃いな鈍鋸歯がある。
上部の茎葉は、葉柄が短く、掌状に3深裂し、裂片は3中裂して鋸歯がある。
さらに上部の茎葉では、裂片は線形となり、縁も全縁となって鋸歯がなくなる。
花期は4月〜6月で、直径20oほどの黄色い光沢のある花を付ける。
花被片は5個で、多数のオシベがあり、花糸は長さ3mmほどで無毛。花後に、球状の集合果を付ける。
なお、花には八重咲のものがあり、これをキンポウゲと呼び分けている。

2018/9/12
萬葉草花苑の入口近くで、ウマノアシガタ(キンポウゲ)が、まだ、花を付けていました。
本来は春の花なので、秋の今頃に咲いているというのは、狂い咲きなのでしょうか。
春に見かけたときも1輪だけ咲いていたのですが、今回も1輪だけの開花でした。

サラシナショウマ(Cimicifuga simplex (DC.) Wormsk. ex Turcz.)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・キンポウゲ亜科・サラシナショウマ連・サラシナショウマ属>
 
キンポウゲ科サラシナショウマ属 の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、台湾、モンゴルに分布する。
草丈は40〜150cmで、黒味のある根茎はがっしりとし、茎は単一で直立する。
葉は互生し、下部の茎葉は2〜3出複葉で、長さ35〜55cmで、長い葉柄がある。
上部の茎葉は1〜2出複葉で、小さくなる。葉柄基部は、膜質となって広がり、茎を抱く。
側小葉は卵形、頂小葉は披針形から菱形で、側小葉より大きい。
小葉は3残裂しているものが多く、縁には不揃いな鋸歯がある。
花期は8月〜11月で、長い総状花序を出し、白い小花を多数付け、雄花と両性花が混生する。
花序軸や小花柄には灰白色の短毛が密生し、小花柄は長さ5〜10mmほど。
萼片は長さ4mm前後の広惰円形、花弁は惰円形で浅く2裂する。どちらも早落性である。
雄花はオシベのみで、花糸は長さ7mm前後で白く、葯は楕円形で長さ1mmほど。
両性花のメシベは、長さ2mmほどで2個のものが多く、花柱の先は曲がる。
袋果は長さ8mm前後の楕円形で、短毛があるか無毛。種子は4〜8個入っている。

2018/10/2
萬葉草花苑に植えられていたものですが、花期は終盤で、咲いていたのはこの2本だけでした。
和名のサラシナは、更科だとばかり思っていたのですが、晒菜だったことを知りました。
和名は、若い葉を茹でて水に晒し、食用としたことに由来するとのこと。
なお、左の写真に写っている葉は、おそらくオニドコロの葉で、花序軸に絡みついたようです。
根元付近に葉はあったのですが、ボロボロで原形を留めているものはありませんでした。

ゴンズイ(Euscaphis japonica)
<クロッソソマ目・ミツバウツギ科・ゴンズイ属>
   


ミツバウツギ科ゴンズイ属の落葉小高木で、在来種。
日本では、本州の関東以西から四国、九州、琉球列島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、ベトナムに分布する。
樹高は3〜8mで、幹は若木は灰褐色だが、成長と共に黒褐色になり、白い縦筋が入る。
葉は対生し、長さ10〜30cmの奇数羽状複葉で、葉柄は長さ3〜10cmある。
小葉は2〜5対あり、長さ5〜9cmの狭卵形で、頂小葉は若干小さい。先が尖り、縁には細い鋸歯がある。
花期は5月〜6月で、本年枝の先に長さ15〜20cmの円錐花序を出し、淡黄緑色の小さな花を多数付ける。
花弁と萼片は各々5個あり、ほぼ同じ形状で平開しない。オシベ5個とメシベ1個があり、柱頭は3裂する。
果実は袋果で、秋に赤く熟して割れる。中から直径5mm前後の黒い種子が、1〜2個現れる。

2018/10/2
萬葉草花園の外周部に植えられた樹に、真っ赤な果実がたわわに付いていました。
近づいてみると、ミッキーマウスの木のように黒い種子を付け、それを包む果皮が真っ赤なのでした。
幹に「ごんずい」の名板がありますが、ゴンズイで思い出すのは、毒棘を持つ白黒の横じまの魚の方です。
さて、ミッキーマウスの木は、果実を付けた萼片が真っ赤になり、果実が黒く熟します。
それに対して、ゴンズイは果実が真っ赤に熟し、それが割れて黒い種子が現れるのですが、見た目は似ています。
春には花が咲いていたはずですが、小さな淡黄緑色の花なので、気が付いていなかったようです。


ゴンズイとミッキーマウスの木の果実

     .
  <ゴンズイ>            <ミッキーマウスの木>

ミッキーマウスの木(オクナ・セルラタ)は、未熟なため萼片はレンガ色で、果実は灰緑色です。
しかし、完熟するとゴンズイと同じく、萼片は真っ赤に、果実は真っ黒になります。
逆さまにしたとき、黒い果実がミッキーマウスの耳にみえるのが名前の由来のようです。
和名は、英名(Mickey Mouse tree)をそのまま翻訳した結果のようですね。
この両者、果実の雰囲気が似ていると思いませんか。ゴンズイがミッキーマウスに見えることはないですが。


ナンバンギセル(Aeginetia indica)
<ゴマノハグサ目・ハマウツボ科・ナンバンギセル属>
   
ハマウツボ科ナンバンギセル属の1年草で、在来種。ススキの根など寄生する。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、中国、台湾、東南アジア、南アジアのベトナムからインド辺りまでに分布する。
草丈は10〜30cmで、茎は基部近くで分枝し、葉は長さ10mmほどの卵状披針形。
花期は7月〜10月で、長さ10〜30cmの花柄を立ち上げ、先に横向きに花を付ける。
花冠は淡紫色で、長さ20〜45mmの筒状で、先は浅く5裂する。縁は全縁。
花冠の先は、わずかに開く程度であり、開かないことも多い。
萼は黄褐色で淡紅紫色の筋が入り、上側の先が尖る。
果実は刮ハ(さくか)で、長さ10〜15mmの卵状球果。
萼に包まれたまま熟し、中には極小さな黄色の種子が多数入っている。

2018/9/12
萬葉草花園の奥で、倒れているススキの下で、ナンバンギセルが赤紫色の鮮やかな花を咲かせていました。
一度見てみたいと思っていた植物の1つなのですが、思わぬ所での対面となりました。
今年は、見たいと思っていたギンリュウソウも、ゴルフ場でたくさん咲いているのに会え、ラッキーでした。
ここのナンバンギセルで花冠の先が開いているものは見当たりませんでした。
そのためでしょうか、左端の花の根元に盗蜜されたような穴が開いています。
同じような穴は、北海道のエゾエンゴサクでもマルハナバチによって開けられるようです。

   
2018/10/2
しばらくして様子を見に行くと、すっかり花は終わって、刮ハがパンパンに膨らんでいました。
倒れた刮ハでは、裂けた所から芥子粒のような黄色い種子があふれ出していました。


ナンバンギセルとエゾエンゴサクの穴

     .
    <ナンバンギセル>        <ナンバンギセル>    <エゾエンゴサク>

エゾエンゴサクにセイヨウオオマルハナバチは入れませんので、横から穴をあけて盗蜜します。
右の写真は、盗蜜にあった花で、上部に穴があけられています。
ナンバンギセルにも花の基部辺りに、同じような穴が開いています。
中央の写真は相模原北公園で見かけたナンバンギセルで、入り口近くに饅頭のような柱頭が見えます。
花冠があまり開かなかったり、大きな柱頭が邪魔をして、大型のマルハナハチなどは奥に入れません。
この辺りにもマルハナバチの仲間はいますので、穴はこれらの盗蜜の後ではないかと思われます。


キツネノマゴ(Justicia procumbens var. procumbens)
<シソ目・キツネノマゴ科・ハアザミ亜科・キツネノマゴ連・キツネノマゴ属>
   
キツネノマゴ科キツネノマゴ属の1年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布している。
海外では中国、台湾から東南アジア、インド、ネパールなどに分布する。
草丈は10〜40pほどで、茎には6稜があり、下向きの曲った短毛が生える。
葉は対生し、長さ3p前後の卵形で先が尖り、縁は全縁。
花期は8月〜10月で、枝先の穂状花序に淡紅紫色の唇型の花を、同時に数個咲かせる。
長さ8o程で、上唇は先が2裂して小さく、下唇は先が3裂して丸く大きい。
下唇の中央に白い掌状の模様があり、その周囲が色が濃くなる。
オシベは2個で、上唇に沿うように付く。苞が1個と小苞2個が付き、萼は5深裂する。
ただし、萼片の1つは小さく糸状。また、萼と苞は縁が膜質で白い長毛がある。

2012/10/8
花菖蒲田横の法面で、キツネノマゴが花を咲かせ始めていました。
ピンクの可愛らしい花ですが、大人し目の色合いなのであまり目立ちません。


2018/9/12
花菖蒲田横の法面には、キツネノマゴが小さな花をたくさん付けていました。
ただ、小さな花なのと少しずつしか開かないので、あまり目を引くことはないようです。
今回、100oマクロで撮り直してみましたが、被写界深度が浅いので、ピントの合う範囲が狭いです。

シモバシラ(Keiskea japonica)
<シソ目・シソ科・イヌハッカ亜科・ナギナタコウジュ連・シモバシラ属>

シソ科シモバシラ属の多年草で、枯れた茎に霜柱が出来ることで知られる。
日本の固有種で、関東以南の本州、四国、九州に分布する。
宿根性の多年草である。茎は断面が四角形をしており、やや木質化する。
草丈は40〜70cmほど、先端に向けてやや水平向きに曲がる。
葉は茎の節毎に対生に出て、長さ8〜20cmの楕円形、薄くて柔らかくてつやがなく、縁に軽い鋸歯がある。
花期は9〜10月で、茎の先端側半分くらいの葉腋から総状花序を出す。
花序の軸は真上に伸び、花はその軸の茎先側に偏って付く。
従って、水平になった茎から花序だけが立ち上がったおもしろい姿となる。
花はほぼ真横を向いて咲く。花冠は白く、釣り鐘状で、オシベはそこから長く突き出す。
果実は4分果であるが、分果の数が少ないものが多い。分果は直径2o前後の球形で、網目模様がある。

2012/10/8
萬葉草花苑に植えられていたものですが、名前は知っていても、実物を見たのは初めてです。
写真のとおり、花序は横倒しの茎から真上に伸び、全ての花が茎先の方に向けて付いています。


2018/9/12

2018/10/2
2018/9/12 シモバシラが花を付けていたのですが、花序が1つしかなく、もう、終わりかと思っていました。
2018/10/2 しかし、しばらくして再訪すると、たくさんの花が咲いていました。まだ、咲き始めだったようです。
たくさんの花序が立ち上がって、ずいぶんと賑やかに花を付けていました。

 
2018/10/17
上記から2週間ほど経った後のシモバシラの様子です。花はほぼ咲き終わっていました。
よく見ると、残っている萼の中に淡黄緑色の丸い果実が見えています。

 
2018/11/29
シモバシラの花序も枯れかけており、果実も黒く熟していました。触れば、ポロリと落ちそう。
左の写真では、黒い果実に網目模様(細い黒い線)が見えています。

アキノタムラソウ(Salvia japonica)
<シソ目・シソ科・イヌハッカ亜科・ハッカ連・アキギリ属>

2016/7/12           2016/7/12           2016/10/7

シソ科アキギリ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島から中国に分布する。
草丈は20〜50cmほどで、茎は角張った四角形で、真っ直ぐに立ち上がる。
葉は対生し、単葉から奇数羽状複葉(小葉は3〜7個)。小葉は長さ3cm前後で広卵形。
花期は7〜11月と長く、茎の上部に10〜20cmの花穂を出す。
花は花穂に5〜10段ほど輪生し、長さ15o前後の淡紅色〜青紫色の唇型。
花冠の外側に白い毛が多数付き、2本のオシベは最初上唇に付くように伸び出す。
葯が開くと、花糸が下方外向きに湾曲する。

2016/7/12 菖蒲苑の上の方の斜面で、アキノタムラソウがあちらこちらで咲き始めていました。
2016/10/7 そのアキノタムラソウですが、10月に入るとほぼ咲き終わりのようです。

   
2017/9/1
次から次へと花を咲かせ続けている最盛期のアキノタムラソウです。
小さなツボミ、開花間近のツボミ、開花間もない花と時間がたってオシベが飛び出した花と多彩です。

キバナアキギリ(Salvia nipponica Miq.)
<シソ目・シソ科・イヌハッカ亜科・ハッカ連・アキギリ属>

シソ科アキギリ属の多年草で、日本固有種。
日本では、本州から四国、九州に分布す津る。
草丈は20〜40cmで、茎は断面が四角形で、基部はやや倒れ、先は直立する。
茎はあまり分枝せず、開出する軟毛が生えるが、シナノアキギリのような腺毛はない。
葉は対生し、葉身は長さ5〜10cmの三角状鉾型で、基部が耳状に張り出す。
縁には不揃いな鋸歯がある。葉柄は長さ3〜15cmになる。
花期は8月〜10月で、茎先に10〜20cmの穂状花序を出し、淡黄色の唇形花を数段付ける。
花冠の長さは25〜35mmで、花冠や萼にも開出毛がある。
花冠の上唇の中にメシベ1個とオシベ2個があり、もぐりこんだ昆虫の背に花粉を付ける構造がある。
オシベの基部に紫色の仮オシベが2個あり、この仮オシベの先端は合着している。
花後、萼片の基部に4分果ができ、果実が熟す頃、萼は黒褐色になる。

2012/10/8
萬葉草花苑の奥の方、他の草本の陰に隠れるようにして、黄色いサルビアのような花が咲いていました。
見たことがなかったので、後で調べていてキバナアキギリとシナノアキギリが見つかりました。
シナノアキギリは、自生地が限られる希少種であり、葉の基部がハート形です。
右端の写真を見ればわかる通り、葉の基部の耳状の部分は尖っていますので、キバナアキギリと判断します。

ハッカ(Mentha canadensis)
<シソ目・シソ科・イヌハッカ亜科・ハッカ連・ハッカ属>
 
シソ科ハッカ属の多年草で、全国に広く分布している。
日本以外では、朝鮮半島から中国、シベリア、サハリンなど東アジアに分布する。
ニホンハッカとされるものは多いが、純日本産のものは少なく、中国産やスペアミント系との交雑品種もある。
ニホンハッカは、自生種だけの呼び名ではなく、国外栽培のものも含めた呼び名である。
ニホンハッカは、メントール含有量が多く、強いハッカ臭があり、全体に軟毛が多い。
地下茎があり、茎は4稜形で高さ20〜60p程度になる。茎には曲がった毛がある。
葉は対生し、葉柄が仮輪より長い。葉身の長さ2〜10pの長楕円形で先が尖る。
葉縁に不規則な鋸歯がある。葉には小さな腺点があり、伏毛がある。
輪散花序を葉腋に付け、多数の花が密集して仮輪を作る。仮輪と仮輪の間は離れる。
花冠は、紅紫色から白色まで変化に富む。長さ4o程で軟毛があり、4裂する。
上側の裂片は大きくて2裂し、下側の裂片3個は楕円形で鈍頭。
雄しべは長さ5o程で、花冠より若干飛び出す程度である。
以前、ニホンハッカはヨウシュハッカ(Mentha arvensis)の変種として扱われていた。
しかし、最近は北アメリカのアメリカコーンハッカと東アジアのハッカをひとまとめとする見解がある。
つまり、両者を合わせて広義のMentha canadensisとして扱うものである。

2012/10/8
萬葉草花苑に植えられていたものですが、最初、ダンギクだと思っていました。
後で写真を見たとき、花の形やオシベの長さが異なります。
調べ直して、ハッカと分かりました。しかし、純粋なニホンハッカなのか雑種なのかは不明です。


ハッカとダンギク

     .
     .
<ハッカ>               <ダンギク>
最初、上段のように全体のイメージからダンギクであろうと判断しました。
しかし、下段のように花の詳細を見ると、花弁の形やオシベの長さに違いがあります。
ダンギクの場合、オシベもメシベもほぼ同じ長さで、花弁より大きく飛び出しています。
しかし、ハッカの場合は、メシベは大きく飛び出していますが、オシベは花弁とほぼ同長です。
花弁も、下唇の形がハッカでは楕円形で鈍頭なのに、ダンギクでは中央の裂片は更に細裂しています。


テンニンソウ(Leucosceptrum japonicum)
<シソ目・シソ科・オドリコソウ亜科・テンニンソウ属>



シソ科テンニンソウ属の多年草で、日本固有種。
国内の北海道から本州、四国、九州のに分布し、落葉樹林内などに大きな群落を造る。
草丈は50〜100cmで、地下に太い木化した根茎があり、四角形の茎を直立して出す。
若い茎や花穂軸には星状毛がある。ただし、星状毛がほとんどないものもある。
葉は対生し、長さ20〜25cmの長楕円形で、先は尖り、基部は楔型。縁には鋸歯がある。
花期は8月〜10月で、茎頂に長さ5〜15cmの穂状花序を出し、多数の花を付ける。
苞は広円形で先が尾状に尖り、早落性で開花時には脱落する。この苞毎に3個の花が対生して付く。
花は淡黄色の唇形花で、上唇は2裂、下唇は3裂する。萼は短い筒状で5裂する。
花冠から4個のオシベが突き出すが、下側の2個が特に長い。花糸は白色。
メシベも花冠から突き出すが、オシベよりは短く、柱頭は2裂する。

2018/10/17
萬葉草花園の奥の方で、ブラシの毛のようにオシベを突き出した花を見かけました。
名板がないか探したのですが見当たらず、後で調べてテンニンソウと分かりました。
咲いている花が地味な淡黄色で、その直ぐ下から茶色く枯れた花が続きます。
そのため、あまり見栄えは良くなく、花色も地味なため目立ちません。


2018/11/29
すっかり花は終わって、果実がたくさん付いていました。
まだ、色の残ったものやすっかり枯れてものが混じっています。
果実は4分果が基本のようですが、右のように3分果や5分果のものも見られるようです。

ミカエリソウ(Leucosceptrum stellipilum)
<シソ目・シソ科・オドリコソウ亜科・テンニンソウ属>


 
シソ科テンニンソウ属の落葉低木/亜低木で、日本固有種。
国内では、本州の長野県や愛知県から岡山県にかけて分布する。
樹高(草丈)は40〜100cmで、地下茎を横走し株立ちとなる。分枝は少ない。
茎はやや四角形ぎみで、下部は木質化して樹皮は淡灰褐色。上部は草質で淡緑色。密に星状毛がある。
葉は対生し、長さ10〜20cmの広卵形で、先は尖り、基部は楔型。縁には基部を除いて鋸歯がある。
葉表は無毛で、葉裏には細かい白色の星状毛を綿毛状に密生し、とくに脈状に多い。
花期は9月〜10月で、茎頂に長さ7〜15cmの円柱形の穂状花序を出し、多数の花を付ける。
扁円形の苞は覆瓦状に多数付き、早落性で開花時には脱落する。苞毎に3個の花が対生して付く。
花は下から順に咲き登り、苞が落ちると萼と花冠が見えるようになる。萼は緑色の筒状で5裂する。
花は淡紅紫色の唇形花で、上唇は浅く2裂、下唇はやや長くて先が3裂する。
花冠から4個のオシベと1個のメシベが長く突き出す。
オシベの花糸もメシベの花柱も紅紫色で、花柱は花糸よりも細く、柱頭は2裂する。

2018/10/17
萬葉草花園の奥の方で、テンニンソウから少し離れた所に咲いていました。
テンニンソウとよく似ていますが、オシベやメシベの花柱が紅紫色なので、けっこう目立ちます。
昆虫にとっても同じなのか、キンケハナラガツチバチが訪花していたのも、ミカエリソウだけでした。
こちらも名板が見当たらなかったので、花色が異なる同じ種類だろうと思っていました。
しかし、後で調べると同属の異なる種でした。花の形状も若干異なるようです。


2018/11/29
花が終わって、果実の状態になるとテンニンソウと見分けがつかなくなります。
ミカエリソウの果実も4分果が基本のようです。中央の花序では苞が落ちそびれて残ってますね。

ダンギク(Caryopteris incana)
<シソ目・シソ科・キランソウ亜科・カリガネソウ属>
   
2012/10/8           2016/10/7           2012/10/8

   2012/10/8              2012/10/8         2016/10/7
シソ属カリガネソウ属の半常緑の多年草で、在来種。耐寒性は低い。
日本では、日本では九州に分布し、対馬に特に多い。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
江戸時代から園芸種として植栽され、花壇や鉢植えなどで親しまれている。
草丈は、1m前後になり、茎の基部は木質化して褐色になる。
葉は対生し、キクの葉に似た卵形で、裏面には毛が密集する。縁には粗い鋸歯がある。
花期は7〜9月で、上部の葉腋に芳香のある花を、数段、密に輪生する。
花冠は5裂し、その内の下唇中央の大きな1個は、裂片の先がさらに細かく裂ける。
4個のオシベやメシベは花冠から長く飛び出る。メシベの柱頭は2裂する。
花冠の色は、淡青色、淡紅紫色、白色の品種がある。

2012/10/8,2016/10/8
萬葉草花苑に植えられていたものですが、淡青色と白色の2品種が植えられていました。
花の形は全く異なりますが、葉の形はキクに似ていて、名前の由来が分かります。

   
2018/10/2
今年もダンギクが咲いていましたが、白花の方が2本だけになり、減ってきているようです。
以前の写真では花の形が分かりにくかったので、100oマクロで撮り直しました。
どちらも下唇中央の大きな裂片は、さらに先が細裂しているのが分かると思います。

キンモクセイ(Osmanthus fragrans var. aurantiacus)
<シソ目・モクセイ科・オリーブ連・モクセイ属>
 
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木樹で、ギンモクセイの変種。
中国南部原産の帰化直物で、中国名は「丹桂」。
金桂(ウスギモクセイ)、銀桂(ギンモクセイ)も含め、「桂花」と呼ばれることもある。
雌雄異株であるが、日本には雄株しかなく、結実する事はないといわれている。
樹高は3〜5mで、幹は淡褐色、樹皮には細かい縦の割れ目が入る。
葉は対生し、長さ10p前後の楕円形で、先が尖る。縁は、前縁か葉先半分に細かい鋸歯がある。
花期は9月〜10月で、葉腋に集散花序をつけ、強い芳香のある花を多数つける。
苞は長さ3o前後の広卵形で、小花柄は長さ4〜10o。萼は長さ1o程。
花冠は、黄色〜橙色で、直径5o、長さ4o程で、筒部の長さは1mm前後。
オシベは2個は筒部の中程に付き、不完全雄しべも2個付く。

2011/10/10
このときは、既に花期は終わっていて、通路に大量の花が落ちて、黄色く染めていました。
花の形に関しては、下記をご参照ください。


キンモクセイ・ギンモクセイの花

 
 
2014/10/20

別の場所で撮影したキンモクセイとギンモクセイの花です。
花色以外は良く似ています。ただ、花付きには差があり、キンモクセイが断然多く付けます。
また、花の香りにも差があり、キンモクセイの方が断然強いです。


ヤツデ(Fatsia japonica)
<セリ目・ウコギ科・ヤツデ属>
 
ウコギ科ヤツデ属の常緑低木で、在来種。
日本では、本州茨木県以南の太平洋岸、四国、九州、沖縄に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
樹高は1〜3mで、海岸近くの林内や林縁に自生する。
葉は互生し、直径が20〜40cmの円形で、掌状に7〜9裂する。
裂片の縁には鋸歯があり、基部は心形で、葉柄は20〜30cmになる。
花期は11月〜12月で、円錐状に丸い散形花序を伸ばし、白い花を多数付ける。
花は、花序の上部に両性花が、株に雄性花が付き、白い花弁は5個で先の尖った卵形である。
オシベは5個、花柱も5個ある。なお、両性花は雄性先熟である。

2018/10/17
萬葉草花園の外周でヤツデが大きな花序を出していました。
植えられたものではなく、野鳥が運んできた種が成長したものではないかと思われます。
花序は小苞から顔を出したばかりで、花が咲くのは12月位と思われます。

アシタバ(Angelica keiskei)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・シシウド属>

セリ科シシウド属の一稔性草本で、開花結実すると枯死する多年草。
日本固有種で、別名はハチジョウソウ、明日草(あしたぐさ)など。
日本では、関東地方南部、伊豆諸島、東海地方、紀伊半島、小笠原の海岸に生える。
伊豆大島系と八丈島系の系統があり、伊豆大島産を「赤茎」、八丈島産を「青茎」と呼ぶ。
草丈は50〜120cmで、茎は太くて上部でよく分枝する。茎を切ると黄色い乳液が出る。
葉は大型の2回3出羽状腹葉で、葉柄の基部は袋状の鞘になる。
小葉は広卵形で、羽状に切れ込み、不揃いの粗い鋸歯がある。
茎の上部では、葉身が退化して鞘だけになり、花序や若枝を包んでいる。
花期は8月〜11月で、枝先に複散形花序を出し、淡黄緑色の小花を多数付ける。
小花柄の基部に、広線形の小総苞片が数個付くが、総苞片はない。
花は直径5mm前後で、花弁は5個あり、内側に曲がる。雄性先熟。
雄性期にはメシベはまだ伸びず、オシベ5個は花弁よりも長く突き出て、花盤から蜜が出る。
雌性期には、花弁もオシベも落ちて、2個の柱頭が角のように伸び出す。
果実はやや扁平な長楕円形で、分果の翼状の部分はそれほど広くない。

アシタバは、葉と茎を食用にするが、味に独特のクセがある。
そのため、天ぷらやバター炒めなど、多少クセを抑える調理法が用いられる。

2018/10/2
萬葉草花園の奥で、樹木の下でひっそりと淡黄緑色の花を付けていました。
シシウドなどの花は白いので、それなりに目立ちます。
しかし、アシタバの淡黄緑色の花は、近づかないと咲いているのかどうかもわかりません。

   
2018/11/29
上記からは2ヶ月位経っているのですが、まだ、若々しい花序に花を咲かせているものがありました。
その横には、若い果実を付けたものや、枯れかけている果実を付けたものなどが見られました。
右端の写真、中央左下の果実は2つに分離し始めています。

ツユクサ(Commelina communis)
<ツユクサ目・ツユクサ科・ツユクサ亜科・ツユクサ属>

2018/9/28           2018/9/28           2018/10/2
ツユクサ科ツユクサ属の一年草。畑や道端などでよく見かける普通種。
日本では北海道から四国、九州まで全国で見られる。
世界的には、アジア全域、北米の東北部など、各地に分布する。
草丈は30〜50cmで、茎の下部は地を這ってよく分枝し、基部近くの節から根を出して増える。
葉は互生し、長さ5〜12cmの狭披針形で、先は鋭く尖る。葉の基部には長さ10mm前後の鞘がある。
花期は6月〜10月で、花は葉に似た1個の苞に包まれたさそり形花序に付く。
苞は長さ15〜30mmで、円心形を2つ折りにしたような形をしている。
花は1個ずつ、苞の外に出て開き、半日でしぼむ。
花弁は3個あり、内2個は鮮やかな青色で長さ、幅とも10mmほどあり、残りの1個は白色で小さい。
萼片は3個で小さく、白色の膜質。側萼片2個は基部で合着し、上側の1個の萼片は披針形。
オシベ6個のうち、完全なのは花柱とともに長く突き出ている2個だけである。
花弁の側の短い3個は、葯が鮮黄色でよく目立つが、花粉をださない仮オシベで、
それよりやや長い1個は、葯がやじり形で少し花粉を出す仮オシベである。
基部の仮オシベの葯は黄色い十字形で、中央辺りに褐色の斑点が見られることがある。
中間の仮オシベの葯は黄色い逆V字型で、中央辺りに褐色の斑点が見られることがある。
花柱がオシベの間から突き出る両性花とオシベより短い雄性花がある。
花色の青は、濃い青から薄い青(空色)まで、変異が多い。
なお。この青はアントシアニン系の化合物で、容易に退色するため、染物の下絵書きに使われた。
普通、花色は青色であるが、色の薄いものをウスイロツユクサ、白いものをシロバナツユクサという。

2018/9/28 梅園の通路脇で、生け垣の中から顔を出していました。
ただ、夕方であったので、花は既にすぼみ、開いているものはありませんでした。
左端は、既に全てが咲き終わって、2つ折りの苞の中で子房が大きく膨らんでいます。
中央のものは、上に出ているものは前日以前に開花したもので、左下のものは今日開花して、しぼんだものです。
しぼんだ紫色の内花被片がオシベやメシベを包み込んでいて、新しいので紫色が残っています。
右下のものは、おそらく数日前に咲いたもので、子房がかなり大きくなってきています。
2018/10/2 お昼前に撮影したもので、秋の場合はお昼頃まで咲いています。
この花は、2個の長いオシベとメシベがある両性花で、短い仮オシベ3個と少し長い仮オシベ1個も見えます。
その後方には、子房が大きく膨らんだ古い花が見られます。

ウスイロツユクサ(Commelina communis f. caerulepurpurascens)
<ツユクサ目・ツユクサ科・ツユクサ亜科・ツユクサ属>
 
ツユクサ科ツユクサ属の1年草で、在来種。畑や道端などでよく見かける普通種。
日本では北海道から本州、四国、九州と全国に分布している。
海外では、アジア全域、北米の東北部など、各地に分布する。
草丈は20〜50cm程度で、茎は地面を這って良く分枝し、上部は斜上する。
葉は互生し、卵状披針形で長さ6cm前後。基部は膜質の鞘となって茎を抱く。
花期は6〜9月で、葉と対生して二つ折りの苞に包まれた花序を出す。
花は1個ずつ苞の外に伸び出して、早朝に開花し、午後にはしぼんでしまう。
3個の花弁の内、2つは大きく、左右に平開して目立つが、1個は白色で小さい。
3個ある萼片は小さく、白くて膜質。オシベは6本、メシベは1本ある。
オシベの内、完全なのは長く伸びた2本だけで、短い3本は仮オシベ、中間の1本は不完全。
普通、花色は青色であるが、色の薄いものをウスイロツユクサ、白いものをシロバナツユクサという。

2012/10/8
薬師池からハス田の方へ向かう途中で、色の淡いツユクサに気が付きました。
下記を見比べていただければ分かると思いますが、かなり淡い色をしています。


ツユクサの花色

   
  ウスイロツユクサ         ツユクサ           ツユクサ  .

ウスイロツユクサの花被片の色は淡青紫色で、ツユクサより明らかに淡い色をしています。
ツユクサの花被片の色には、紫色のものや青味の強い青紫色のものがあります。
より赤みの強い赤紫色のものやその淡色型(淡いピンク)のウスイロツユクサもあるようです。

属は異なりますが、同じように花被片の色には変異があるムラサキツユクサ。
下記のように色の薄いものもありますが、ウスイロムラサキツユクサという和名はありません。
ただ、白色のものは、シロバナムラサキツユクサと呼ばれています。

   .










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