薬師池公園で見かけた野草(春T)
和名インデックス |
イチョウ(Geranium carolinianum)
<イチョウ目・イチョウ科・イチョウ属> イチョウ科イチョウ属の裸子植物で、裸子植物門イチョウ綱の中で唯一の現存種。 そのため生きた化石と呼ばれている。 中国原産の落葉高木で、雌雄異株であるため、雄株と雌株があり、実は雌株にのみになる。 葉は扇形で葉脈が付け根から先端まで伸びており、葉の中央部が浅く割れている。 種子は、11月頃に熟すると軟化し、カルボン酸類特有の臭気を発し、素手で触るとかぶれる。 人為的な移植により、現在は世界中に分布しており、 年平均気温が0〜20℃、降水量500〜2000mmの地域に分布している。
2017/4/28
イチョウの雄花と雌花を見たいと思っていたのですが、この日、雄花を確認できました。 近くに、雌株もあったのを思い出し、雌花はと探したのですが、見つけることはできませんでした。 1週間ほど後に、もう一度見に行ったのですが、雄花もほとんどが落ちてしまっていました。 2016/7/12 薬師池の側にあるイチョウの雌株です。薬師池公園にもイチョウの樹は何本かありますが、その内の1本です。 果実は多く付くようでしたので、雌花を見られると思ったのですが、前述の通り、確認できませんでした。 イチョウの果実は、その匂いとカブレのために敬遠され、雌株はなかなか見られません。 | |||||||||||||||||||||||||||
スズメノヤリ(Luzula capitata)
<イネ目・イグサ科・スズメノヤリ属> イグサ科スズメノヤリ属の多年草で、自生種。 日本では、北海道から、本州、四国、九州と全国に分布する。 イグサ科ではあるが、見た目はイグサというより、イネ科の植物に似ている。 短い茎は地上のは出ず、根生葉のみが地表に出て、伸びる。 3月頃に20cm前後の花茎を伸ばし、その先端に花が集まった頭花を多くは1個付ける。 花被片は赤褐色で、それより短い花糸のオシベが6個あり、大きめの葯が目立つ。 頭花は、最初にメシベが成熟し、その後、オシベの葯が伸びてくる。果実はさく果で、黒褐色。
2022/4/12
ハス田近くの通路脇で、スズメノヤリが花を付けていました。 花と言っても、黄色いメシベの柱頭が目立つのみで、極、地味な花です。 根際から叢生した若い葉には、葉縁にかなり長い白毛が密生しています。古い葉には見られません。 | |||||||||||||||||||||||||||
エナシヒゴクサ(Carex aphanolepis Franch. et Sav.)
<イネ目・カヤツリグサ科・スゲ属・真正スゲ亜属・ヒゴクサ節> カヤツリグサ科スゲ属の多年草で、在来種。 日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。 海外では、朝鮮半島から中国に分布する。 和名は、ヒゴクサに似ていて、雌小穂に絵がないことに由来する。 草丈は20〜40cmほどで、細長い根茎を横に伸ばして、まばらに叢生する。 基部の鞘は淡色で、葉幅は4mm前後、淡緑色。白粉を帯びない。 花期は4月〜6月で、花茎には小穂が数個付き、頂小穂は長さ2〜3pの線形で雄性。 それ以外の小穂は雌性で、長さ10mm前後の円柱状で、柄はほとんどない。 小穂は直立して、果期にも垂れ下がることはない。
2017/5/3
薬師池からハス田に向かう途中にある庭園で、置かれている岩の隙間に生えていました。 岩のくぼみに少し土がある程度の場所ですが、その場所に何年か根付いているようです。 その株に1本、花茎を出しているのがあり、小穂に柄が見られないので、本種としています。 | |||||||||||||||||||||||||||
カンスゲ(Carex morrowii)
<イネ目・カヤツリグサ科・スゲ属・真正スゲ亜属・シバスゲ節> <頂小穂/雄性> <側小穂/雌性> カヤツリグサ科スゲ属の多年草で、日本固有種。 日本の本州福島県以西の太平洋岸、四国、九州に分布する。 草丈は30〜50cmで、根茎は広がらず、叢生する。匐枝は出さない。 葉は硬く、幅は10mm前後で、断面は平たん。葉脈は明瞭で、葉縁に細かい刺がある。 花期は4月〜5月で、1つの株から多数の花穂が出る。 花穂は、葉より高くは伸びず、葉の間から穂をのぞかせる。 濃褐色で紡錘形の頂小穂は雄性で、長さ3〜4cm。淡黄色のオシベが多数つく。 その下部の側小穂は雌性で、長さは2〜4cm。下部の小穂には柄が付く。 鱗片、果胞共に淡い色なので、側小穂は淡黄緑色〜淡黄色に見える。 果胞は長さが3o前後で、熟すと膨れ、嘴が長く、反り返る。
2018/4/13
萬葉草花園の隅で大きな株を作って、長い葉が茂る中にたくさんの花穂が入り混じっていました。 最初、カサスゲかなと思ってのですが、葉の形がM字型ではありません。後で調べて本種と分かりました。 既に花期は過ぎているのでしょう、頂小穂にはオシベが見られず、側小穂の柱頭も見られません。 一部の側小穂に、柱頭の名残が糸くずの様に残っていました。 | |||||||||||||||||||||||||||
ナガバオモダカ(Sagittaria graminea)
<オモダカ目・オモダカ科・オモダカ属> オモダカ科オモダカ属の多年草で、ひたアメリカ原産の帰化植物。 日本では、ジャイアントサギタリアなどの名前で流通しており、一部野生化している。 在来の水生植物の生育地を奪い、水域生態系を破壊することが指摘され、要注意外来生物に指定されている。 草丈は1mを超える。葉には長柄があり、長楕円形の葉身は数十pで全縁。鋸歯はない。 花期は5〜9月で、雌雄異株。なお、日本には雄株のみが帰化している。
2016/7/20
ハス田の近くにある小さな池で、スイレンと混生していました。 最初、ヘラオモダカかと思ったのですが、花の形が違っていました。 さらに調べていくと、下記の点から本種と判断しました。 ・付いている花が全て雄花である点 . ・古い花茎には果実が1つも出来ていない点 2017/5/3 昨年、本種に気が付いた時には、花期はほぼ終盤で、花茎の先に少し花が咲いているものが大半でした。 今年はと見に行ったのですが、花期は中盤といったところでした。 この辺りでは、咲き始めるのはもっと早い時期になるようです。 2022/4/12 ハス田近くで、ナガバオモダカが見られた小さな池に行ってみました。 池の手入れのためか、ナガバオモダカは引き抜かれて畔に積み上げられていました。 そのような状況でも、ナガバオモダカはしぶとく花を咲かせていました。 | |||||||||||||||||||||||||||
マムシグサ(Arisaema serratum)
<オモダカ目・サトイモ科・サトイモ亜科・テンナンショウ属> 2017/5/3 2017/5/3 2017/5/31
サトイモ科テンナンショウ属の宿根性落葉多年草で、在来種。
有毒植物で、全草にシュウ酸カルシウムの針状結晶、サポニン、コニインを含み、特に球茎の毒性が強い。 日本では、北海道から本州、四国、九州と広範囲に分布する。 海外では、朝鮮半島から中国東北部に分布する。 草丈は50〜80pほどになり、春、地下の球茎から偽茎を伸ばし、2枚の葉を展開する。 偽茎は、葉柄下部の2つの葉鞘部分が重なったもので、紫褐色のまだらな模様がある。 葉は鳥足状の複葉で、7〜15枚の楕円形の小葉からなり、その形や鋸歯の有無など変異が大きい。 花期は4月〜5月で、中央から花茎を伸ばし、紫色の仏炎苞のなかに肉穂花序を付ける。 雌雄異株で、肉穂花序の下部に萼も花冠もないオシベ・メシベだけの花を固まって付ける。 仏炎苞は、長さ10pほどの筒状部があり、その先は細くなりながら水平に前方に伸びる。 肉穂花序の先端から伸びた付属体は、棍棒状で直径8mm前後。 花後、仏炎苞の下から緑色のトウモロコシ状の果実が現れ、秋には真っ赤に熟す。 仏炎苞は紫褐色が標準であるが、緑色のものなどもあり、下記のようにいろいろな名前で呼ばれる。 アオマムシグサ、ムラサキマムシグサ、オオマムシグサ、カントウマムシグサ、コウライテンナンショウ… ただ、各々の中間的な形態のものも多く、学者によって分類も異なる。
2017/5/3 薬師池公園のそばを走る道路からマムシグサが確認できました。
法面上部の水平に近い部分のため、下の方からは見えなかったようです。 小葉に白い斑が入っています。残念ながら花を咲き終え、仏炎苞は枯れかけています。 仏炎苞の基部や先端の色から、紫褐色のムラサキマムシグサと思われます。 2017/5/31 月末に様子を見ると、枯れた仏炎苞をまとった緑色の果実が姿を現していました。 小葉は枯れかけているのか黄色味が増していました。 果実が赤く熟した様子は、こちらをご覧ください。 2022/4/12 以前、マムシグサが見られた場所は、きれいに手入れされたのか何もない状態になっていました。 薬師池公園の裏門から入って直ぐの斜面にはムサシアブミがたくさんの花を付けています。 その中に一際背の高いものがあり、花の形もムサシアブミとは異なっています。 近くに行って、それらが2株だけでしたがマムシグサだと分かりました。 ムサシアブミより開花が早かったようで、片方の花は萎れ、もう1つも萎れかかっていました。 葉には白斑が入っていて、以前見かけたものと同じです。花は茶色と白のストライプ模様です。 | |||||||||||||||||||||||||||
ムサシアブミ(Arisaema ringens)
<オモダカ目・サトイモ科・サトイモ亜科・テンナンショウ属> サトイモ科テンナンショウ属の多年草で、在来種。 日本では、本州の関東以西、四国、九州、南西諸島に分布する。 海外では、朝鮮半島から中国に分布する。 地面から立ち上がる第一の葉柄の途中から二番目の葉柄が分岐し、その途中から花柄が伸びる。 葉柄上端には先が細くなった三枚の葉をつける。花柄は葉柄よりも短い。草丈は50cmになる。 花期は3月〜5月で、仏炎苞は暗紫色に白い筋があり、舷部が曲がって袋状になって、先が尖る。 筒口部の耳も大きく、鐙(あぶみ:足を乗せる馬具)を逆さまにしたような形をしている。 武蔵の国で作られた鐙が有名だったので、それが和名の由来となっている。
2016/7/12
菖蒲苑の上の方の斜面に、巨大な3枚葉を広げたムサシアブミの群落があります。 行った時期が遅くて、花は枯れて巨大な緑色の果実が姿を現していました。 この果実、テンナンショウ属の中でも特に大きな物のようです。 秋には、葉が枯れて、この果実が真っ赤に熟します。 真っ赤な果実が、ニョキニョキと立っているのを想像すると、ちょっと不気味ですね。 秋には行けず、冬になってしまったので、立っている真っ赤な果実は見られませんでした。 しかし、枯葉に隠れるように真っ赤な果実が、ゴロゴロと転がっていました。 2017/4/28 昨年は花の写真が撮れなかったので、写真を撮りに行きました。 果実も巨大でしたが、その花も他のテンナンショウ属の花よりも、一回り以上巨大です。 仏炎苞の開口部の耳が横に張り出し、仏炎苞の先が内巻きになった形は、確かに鐙に似ています。 2017/4/28 2005/4/29 2017/5/3 2017/4/27 ムサシアブミの仏炎苞の色にも変異があります。 左端の褐色味の強い仏炎苞が大半ですが、中央左のものは上部が緑色、右の2つは耳部分も緑色です。 右端はえびね苑で見かけた1株で、他の3枚の写真は薬師池公園でも見かけたものです。 緑色型でも、薬師池公園で見かけたものは幾分褐色味が残っていますが、えびね苑のものはきれいな緑色です。 2017/5/31 1ヶ月ほど経った薬師池公園で、ムサシアブミの花がどうなったか見てみました。 さすがに咲いている花はなく、ご覧のようにしぼんで枯れかかっているものが多かったです。 2022/4/12 薬師池公園の裏門から入って直ぐの斜面では、ムサシアブミがたくさん咲いていました。 上段左は、比較的小さな株がより集まって咲いていたもので、右は大きな株で、葉の大きさが異なります。 下段は、稀に見られる仏炎苞が緑色の個体で、普通は上段のように中は暗褐色をしています。 テンナンショウ属の比較
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ミズバショウ(Lysichiton camtschatcense Schott)
<オモダカ目・サトイモ科・ミズバショウ亜科・ミズバショウ属> サトイモ科ミズバショウ属の多年草で、在来種。 日本では、北海道から本州中部地方以北の日本海側に分布する。南限は兵庫県養父市の加保坂峠。 海外では、シベリア東部、サハリン、千島列島、カムチャツカ半島に分布する。 草丈は60〜100cmで、葉の展開に先立って花柄を伸ばし、開花する。 花期は4月〜7月で、純白の仏炎苞が目を引く。その仏炎苞の中心に肉穂花序がある。 この花序に多数の花が密集して付き、個々の花には4個のオシベと1個のメシベがある。 花後、葉は根出状に出て立ち上がり、幅30cm、長さ80cmほどの長楕円形。 この葉の形が、芭蕉布に使うイトバショウに似て、水辺に生えることが和名の由来。 各地に多くの群落があるが、特に尾瀬沼が「夏の思い出」で歌われているように有名。
2017/5/3
昨年の夏、花菖蒲田の中の小川の畔などで、巨大な葉を確認していました。 おそらくミズバショウであろうと思いましたが、花がないので判断は後回しにしていました。 今年、気になって見に行った時も、葉が大きく展開していて、花は見えませんでした。 遅すぎたかと、葉の所に行くと、葉の奥に白い仏炎苞が残っていました。 ミズバショウというと、水辺に白い仏炎苞が無数に並ぶ様を思い浮かべてしまいます。 尾瀬や箱根湿生花園で幾度となく見た風景ですが、時期が少しずれると葉が展開して景色が一変します。 2022/4/12 今年もミズバショウが花を付けていましたが、ちょっと遅かったので葉が大きくなっていました。 それでも、葉の間から白い仏炎苞が見え、黄色いオシベがびっしり付いた肉穂花序も見えます。 | |||||||||||||||||||||||||||
ハハコグサ(Pseudognaphalium affine)
<キク目・キク科・キク亜科・ハハコグサ連・ハハコグサ属> キク科ハハコグサ属の越年草で、在来種。 ハハコグサ属が「Gnaphalium」から「Pseudognaphalium」に変更され、学名も変わった。 日本では全国に広がっており、道端などでよく見かける。 海外では、中国からインドシナ、マレーシア、インドにまで分布している。 草丈は10〜30cmほどで、秋に芽生えて、ロゼットで越冬し、翌春に茎を伸ばす。 葉は互生し、細いへら型。葉と茎には白い綿毛が生える。なお、根生葉は花期には枯れる。 花期は4月〜6月で、茎先は細かく分枝し、その先に黄色い頭花を多数つける。 頭花は、両性花の周りに細い雌花があり、花柱は花冠より短い。総苞片は淡黄色。
2017/4/28
どこででも見かけることのあるハハコグサですが、通路脇で見かけました。 花としては小さいですが、黄色い花は結構目立ちます。 | |||||||||||||||||||||||||||
ヤブレガサ(Syneilesis palmata)
<キク目・キク科・キク亜科・ヤブレガサ属> キク科ヤブレガサ属の多年草で、在来種。 日本では、本州から四国、九州の山野の林下に生育する。 海外では、朝鮮半島に分布する。 草丈は、大きいものは1mを超えるが、若い個体は根出葉1枚のみで、花茎は出さない。 年を重ね、栄養が蓄積されると花茎を出す。茎は直立して分枝せず、数枚の茎葉が互生する。 葉身は円形で、直径40cm程あり、掌状に7〜9深裂する。裂片はさらに中裂し、鋸歯がある。 若葉が出た当初は、裂片が下に折れ曲がり、傘をすぼめたような形になる。 それがやぶれた傘に見えるのが、和名の由来とか。 花期は7月〜9月で、茎の先に円錐花序をなし、白色から淡紅色の頭花を付ける。 総苞は長さ10o程の筒状で、総苞片は5個、頭花は10個前後の小花からなる。 小花は両性の筒状花で、花冠は5裂し、花柱の先は2裂して反り返る。
2017/4/28
昨年の秋に確認した場所では、除草されたのか確認できませんでした。 しかし、薬師池公園の側を通る道路との法面に、ヤブレガサが小さな群落を作っているのを見つけました。 まだ、若い個体ばかりのようで、根出葉のみが見られました。 2017/5/30 萬葉草花苑で撮影対象を探している際、奥まった所にヤブレガサが群生しているのに気が付きました。 しっかりと花茎を立てて、円錐花序にツボミがたくさんついていました。 まだ、ツボミは固く、開花までには多少時間を要しそうです。 2017/6/9 萬葉草花苑に、ヤブレガサの花はどうなったかと見に行きました。 ツボミはほころんではいるものの、開花まではあと一歩というところでした。 ちなみに、開花すると下記のような花が咲きます。筒状花のみなのでシンプルです。
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オニタビラコ(Youngia japonica)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・オニタビラコ属> <アカオニタビラコ> <アオオニタビラコ> キク科・オニタビラコ属の越年草で、日本では全国に広がっており、道端などでよく見かける。 日本をはじめ、中国からインド、ミクロネシア、オーストラリアまで広く分布する。 草丈は10〜100cmで、花茎は太く、直立して暗紫色を帯びる。 根生葉は長さ10〜20cmの倒披針形で、羽状に裂け、ロゼット状に広がる。 根生葉の葉先は尖るが、茎葉の葉先はより鋭く尖る。 花期は4月〜10月で、茎頂に複散房花序を付け、黄色い頭花を多数付ける。 花の直径は7〜8oで、20個前後の舌状花からなる。舌状花の先は5残裂する。 総苞は長さ5oほどの円筒形で、内片は1列に並び、外片は1mm以下で短い。 痩果は長さ2mmほどで、長さ3mm前後の白色の冠毛がある。 最近、オニタビラコは、アカオニタビラコとアオオニタビラコの2種があるとの説がある。 アカオニタビラコは、太い花茎が1本のみで、暗紫色を帯びるとされる。 アオオニタビラコは、花茎が多数立ち上がり、緑色で紫色を帯びることは少ないとされる。
2018/4/13
薬師池公園の通路脇で見かけた2種類のオニタビラコです。 上段左の様に1本の太い茎を立ち上げているタイプと、右の様に数本の茎を立ち上げているタイプです。 左のタイプが、「アカオニタビラコ」と呼ばれているものだと思います。 右のタイプは、おそらく「アオオニタビラコ」だと思われますが、茎に赤みがあります。 下段はその花と下部の根生葉を拡大したもので、4本の花茎が確認でき、5本目の花茎が伸び始めています。 | |||||||||||||||||||||||||||
ヤブタビラコ(Lapsanastrum humile)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・ヤブタビラコ属> キク科ヤブタビラコ属の越年草で、在来種。 日本では、北海道から本州、四国、九州と広範囲に、海外では朝鮮半島から中国に分布する。 草丈は10〜50cmで、全体に柔らかく、茎や葉に軟毛が生え、切ると白い乳液が出る。 根生葉は長さ5〜20cmで羽状に深裂し、頭小葉が大きい。小葉の先はやや尖る。茎葉は小さい。 花期は4月〜6月で、根生葉から複数の花茎を出すが、斜上するか、倒れることが多い。 頭花の直径は8o前後で、黄色い舌状花の数は15〜20個ある。 総苞は円筒形で、内片は8個前後あり、外片は鱗片状。 花が終わると総苞の基部が膨らんで、下向きになる。 痩果は長さ2〜3mmで、先端に突起や冠毛はない。 同属のコオニタビラコとよく似ているが、以下の点で区別できる。 ・根生葉の小葉の先が丸いのがコオニタビラコで、尖っているのがヤブタビラコ ・頭花の舌状花の数がコオニタビラコは6〜12個、ヤブタビラコは15〜20個 ・花後、総苞が円筒形なのがコオニタビラコで、基部が膨らむのがヤブタビラコ
2018/4/19
薬師池公園の裏門近くで、タンポポ亜科と思われる小さな黄い花を見つけました。 長い花茎が横に倒れ気味に伸び、先に直径1cmに満たない花を数個付けています。 オニタビラコかと思ったのですが、かなり弱弱しい草姿で、雰囲気が異なります。 後で調べて、ヤブタビラコと分かりました。 | |||||||||||||||||||||||||||
シロバナタンポポ(Taraxacum albidum)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・タンポポ属> キク科・タンポポ属の多年草で、在来種。 日本では、本州の関東以西、四国、九州に分布し、西に行くほど多い。 葉は、地面から立ち上がる傾向があり、花茎は30cm以上になる。 白花のタンポポには、他にキビシロタンポポやケイリンシロタンポポなどが知られる。 前者は、岡山県、広島県等で、後者は朝鮮半島から中国東北部に多く、国内では九州北部や岡山県に分布する。 いずれにしても、関東で見られるのは本種のみのようである。 なお、本種は、カンサイタンポポとケイリンシロタンポポの交雑種とされている。 頭花を構成する舌状花は、他種よりも比較的少ないが、単為生殖可能なため繁殖力は強い。
2018/4/19
萬葉草花園で、シロバナタンポポが咲いていました。 関西では普通に見られるシロバナタンポポですが、この辺りではめったに合えません。 多摩川の近くで自生しているのを見ましたが、ここでは植栽されているようです。 2022/4/12 以前、萬葉草花園で見かけたところから少し離れた通路脇でシロバナタンポポが咲いていました。 以前に見かけた場所でも咲いていましたので、種が飛んで周囲に広がったようです。 なお、下段は開きかけ(中央が未開花)の花と、開ききった花になります。 2裂した柱頭も、開きかけのものは真っ直ぐですが、開き切った頃には丸く丸まっています。 | |||||||||||||||||||||||||||
ヒエラキウム・アルピヌム(Hieracium alpinum)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・ヤナギタンポポ属> キク科ヤナギタンポポ属の多年草で、ヨーロッパアルプスが原産地。 チシマタンポポの名で流通しているが、業者が適当に付けたようで、千島とは無関係。 特徴のよく似たハイコウリンタンポポ(標準和名ではないらしい)同様、標準和名はない模様。 草丈は10〜20cmと低く、茎や葉には白い毛が生える。 根生葉は長さ5cmほどの長楕円形で、ロゼット状に広がり、花期にも残る。 葉表には白い長毛が散生し、葉裏には白い軟毛が密生している。鋸歯のあるものとないものがある。 花期は6月〜8月で、花茎を伸ばしてその先に鮮やかなレモンイエローの頭花を1つ付ける。 頭花は直径25o前後で、舌状花のみからなり、総苞片には基部が黒い小突起がある。 なお、ハイコウリンタンポポ(ハイは這いの意)は、名前の通り匍匐茎で増え、花茎に茎葉は付かない。 それに対して、本種は匍匐茎で増えることはなく、花茎に茎葉が付く。
2017/4/28
薬師池公園の萬葉草花苑で、「キバナタンポポ」と書かれたタンポポのような花を見かけました。 気になったので、調べてみたのですが、「キバナコウリンタンポポ」の書き間違いかと思われました。 しかし、花茎が50cmにもなる大きさで、花茎の先が分枝して複数の頭花が付くなど、特徴が一致しません。 さらに調べていると、ハイコウリンタンポポに行き当たりました。その特徴などはかなり一致しています。 ただ、匍匐茎が確認できず(似たような脇芽は見られます)、北海道でのみの確認となっています。 それとは別に、園芸品種のヒエラキウム・アルピヌム(流通名はチシマタンポポ)が、見つかりました。 撮影場所の町田市の位置からすると、こちらであろうと判断しましたが、確信が持てません。 というのも、海外サイトの写真では、茎葉が確認できるのですが、それが見当たらないのです。 2017/5/31 最初に撮った写真では、花がきれいに開いていない状態でしたので、撮り直してきました。 頭花が舌状花のみからなり、花被片の先が5残裂しているのが良く分かります。 2017/6/9 横からの写真も必要と思い、追加で撮影してきました。 総苞片に黒い斑点が見えていますが、基部が黒い小突起が多数生えています。 また、立ち上がっている花茎には、茎葉は見当たりません。 ヒエラキウム・アルピヌムとしましたが、この点はハイコウリンタンポポの方が近いと思われます。 | |||||||||||||||||||||||||||
ミゾカクシ(Lobelia chinensis)
<キク目・キキョウ科・ミゾカクシ亜科・ミゾカクシ属> キキョウ科ミゾカクシ属の多年草で、在来種。水田の畔など、湿り気のある所に生える。 日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島と全国の広く分布する。 海外では、中国、インド、マレーシアに分布する。 草丈は15cmほどしかないが、茎を分枝し、地面を張って広がる。 和名は、溝を覆い隠すほどに広がって繁殖する事に由来する。 葉は、長さ2cm、幅5mmほどの披針形で、互生する。 葉腋から長い花柄を伸ばし、淡紅紫色の花を1つ付ける。花後、花柄は下を向く。 花冠は5深裂し、中央の3枚は下向きに、その両端の2枚は横向きになる。 ヘビが鎌首をもたげたように突き出しているのは、オシベは合着して筒状となったものである。 キキョウ同様、雄性先熟で、雄花期とその後の雌花期がある。 オシベは、合着して筒状になり、その中にメシベが入っている。 その後、オシベが枯れて、中ならメシベが現れる雌花期になる。
2017/5/30
ハス田の方にサギゴケの様子を見に行ったのですが、すっかり除草されてしまっていました。 その戻り際、ハス田のほとりでミゾカクシが花を付けているのに出会いました。 以前は田んぼに行けば、良く見られたものですが、最近では新潟の田んぼで見て以来です。 | |||||||||||||||||||||||||||
タイリンキンシバイ(Hypericum patulum cv. Hidcote)
<キントラノオ目・オトギリソウ科・オトギリソウ属> オトギリソウ科オトギリソウ属の半落葉低木で、キンシバイの園芸品種。 キンシバイに良く似ているが、葉も、花も大きく、花弁の黄色みが強い。 また、葉の付き方もキンシバイが2列対生なのに対し、本種は十字対生になる。 花も、本種は平開するが、キンシバイはそこまで大きく開かない。 花期は5月〜7月で、花の直径は8cmほどになる。
2017/5/30
萬葉草花苑の中で、黄色い大きな花を一際目立たせていました。 オトギリソウ属の花は、似たものが多いですが、下記に一覧を掲載します。 なお、薬師池公園では、コケオトギリを花菖蒲田で見かけました。雑草扱いでしたが。
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アメリカスミレサイシン(Viola sororia)
<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属> スミレ科スミレ属の多年草で、アメリカ原産の帰化植物。無茎種。 園芸品種が雑草化した非常に強健なスミレで、湿り気のある林内や草地、道ばたなどで見かける。 国内の分布域は明確ではないが、かなり広範囲に逸脱している。 花は、直径3cmほどになり大きめ。側弁には毛が密集している。 葉は、心形でいくぶん厚みがあり、若い葉の基部は巻き込む。 花色により数種類あり、青紫色の「パピリオナケア」、白地に紫の筋が入る「プリケアナ」、 純白の「スノープリンセス」、白地に紫の斑点が入る「フレックス」などが見られる。
2018/4/13
萬葉草花園の裸地に、鮮やかな紫色で大ぶりのスミレが咲いていました。 あまり見かけないスミレでしたので、撮影して後で調べ、本種と分かりました。 側弁にみられる密生した白い毛が特徴で、紫の単色なので「パピリオナケア」です。 以前、多摩川近くの神社の境内で、他のスミレに混じって咲いていたのを思い出しました。 2022/4/12 上記と同じ場所でアメリカスミレサイシンが花を付けていました。 花数は似たようなものですが、株は上記の数倍の大きさになっていました。 萬葉草花園には、アメリカスミレサイシンよりスミレなどの方が合うような気がします。 | |||||||||||||||||||||||||||
タチツボスミレ(Viola grypoceras)
<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属> スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける有茎種。 日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の野原から低山地、亜高山帯まで分布する。 海外では、朝鮮半島から中国南部まで広く分布する。 草丈は10〜30cmで、花期では6〜10cmであるが、花後に高く伸びる。 葉は長さ、幅とも15〜25mmの心形で、両面ともほぼ無毛で、葉縁近くにまばらに毛がある。 托葉は鱗片状で、櫛の歯状に深裂する。 花色は淡紫色が多いが、変異は多い。側弁は無毛。距は細く、長さ6〜8mmである。 スミレやヒメスミレと異なり、成長すると茎が伸び、茎の途中にも葉が付く。
2022/4/12
薬師池公園のそこここで見られるスミレは、タチツボスミレです。 タチツボスミレ以外のスミレ属は、限られた場所でポツリポツリと見られる程度です。 タチツボスミレですが、花色が淡赤紫色のものと淡青紫色のものが見られました。 | |||||||||||||||||||||||||||
ツボスミレ(Viola verecunda)
<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属> スミレ科スミレ属の多年草で、在来種。別名はニョイスミレ。 日本では、北海道から本州、四国、九州、屋久島と広く分布する。 平地や丘陵、山地のやや湿った場所に普通に見られる。 海外では、東アジアに広く分布している。 草丈は5〜25pほどで、地下茎は極短く、地上に根出葉と茎を複数出す。匍匐枝で広がる。 葉は丸みのある扁心形で、裏面は紫色を帯びる。葉柄は根出葉では長く、茎葉では短い。 葉身は柔らかくて、艶のない緑色。縁には粗くて背の低い鋸歯がある。 花期は4月〜5月で、茎葉の葉腋から花茎を立ち上げ、葉の上部で花を付ける。 花弁は1cm程と小さく、花色は白で、下弁には紫色の筋が入る。 上弁は反り返り、上弁と側弁には突起毛がある。距は数oと短くて丸い。
2017/4/28
花菖蒲田近くの通路脇で、小さなスミレを見かけました。 名前がわからなかったので、後で調べて本種と分かりました。 ただ、タチツボスミレと変わらないぐらいの普通種とのことでしたが、私が目にしたのは初めて。 おそらく、背が低くて小さく、花も白いので、気づかずに見落としていたのでしょう。 2022/4/12 ハス田近くの小さな池の畔で、ツボスミレが小さな花を付けていました。 この薬師池公園内で見かけるスミレの大半はタチツボスミレで、ツボスミレは少数派です。 前回見かけた花菖蒲田やこの池の畔など、湿り気の多い所を好むので、場所が限られるようです。 | |||||||||||||||||||||||||||
ノジスミレ(Viola yedoensis)
<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属> スミレ科スミレ属の多年草。人里周辺でよく見かける無茎種。 日本では、本州の秋田県以南から四国、九州の低地に分布する。 海外では朝鮮半島から中国、台湾、モンゴル、インドからフィリピンにかけて分布する。 草丈は5〜10cmで、葉は長さ3〜6cmの長三角形からへら形で、葉柄には翼がない。 花後に葉幅が広がり、三角形〜卵形になる。葉や茎には白い短毛が生え、白っぽく見える。 花期は3月〜4月で、花色は青味の強い濃紫色。側弁は無毛で、距は濃紫色で細長い。
2022/4/12
萬葉草花園の外れで見かけたノジスミレです。 よく見かけるスミレですが、薬師池公園で確認したのは初めてです。 なお、右の写真に写っている小さな青い花は、キュウリグサです。 |