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春の三渓園で見られた野草



春の三渓園で出会った野草です。
歩きながら目にとまったものを撮影しただけなのですが、普段見かけないものもありました。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
なお、2016年にAPG IV体系が公表されました。
その中で、ムラサキ科がムラサキ目下に属する事になったため、その部分のみ変更しています。

アブラナ目
アブラナ科(オランダガラシ)
オモダカ目
サトイモ科(ウラシマソウ)
キク目
キク科・タンポポ亜科(オニタビラコ、セイヨウタンポポ)
キントラノオ目
スミレ科(タチツボスミレ)
キンポウゲ目
キンポウゲ科(エンコウソウ)
コショウ目
ドクダミ科(ドクダミ)
シソ目
シソ科(キランソウ)
ショウブ目
ショウブ科(セキショウ)
ツツジ目
ツツジ科(ミツバツツジ)
バラ目
バラ科(モミジイチゴ)
ムラサキ目
ムラサキ科(ハナイバナ)
ユキノシタ目
マンサク科(トサミズキ)
ユキノシタ科(ヤマネコノメソウ)
春の三渓園で見られた野草
和名インデックス


オランダガラシ(Nasturtium officinale)
<アブラナ目・アブラナ科・オランダガラシ属>
 
アブラナ科の多年草。ヨーロッパから中央アジアが原産地。
北アメリカ、南アメリカ、アジア、オセアニアに移入分布する。
クレソン(フランス語:Cresson)の名で呼ばれることが多い。
抽水植物もしくは沈水植物で、繁殖力はきわめて強い。
茎の切れ端を水に入れて置くだけで、容易に発根し、成長も非常に速い。
オランダガラシは、清流でのみ育つとの誤解があるが、汚水の中でも生育する。
葉は奇数羽状複葉で、5月頃、茎の先に白い小花を咲かせ、その後細いさや状の種子をつける。
日本では外来生物法によって要注意外来生物に指定されており、駆除が行われている地域もある。

2013/3/24
天授院からの戻り道の途中、通路脇で小さな株が花を咲かせていました。
水辺の植物がなぜこのような場所にと思ったのですが、雨が降ると水が流れるのかもしれません。
ただ、この状況ではあまり大きく育つことはないかもしれません。

ウラシマソウ(Arisaema urashima)
<オモダカ目・サトイモ科・サトイモ亜科・テンナンショウ属>
   
サトイモ科テンナンショウ属の宿根性の多年草、日本固有種。
日本では北海道から本州、四国、九州と全国の山地の湿地に自生する。
地下に偏球形の球茎を形成し、周囲に子球を付けることが多い。
草丈は50cmほどにまでなり、葉は、普通は1枚。
球茎から立ち上がった茎葉の先に、小葉を鳥足状に付ける。
大きな株では、小葉は10枚以上になるが、小型の下部では数枚程度と少なくなる。
肉穂花序は、大きな濃紫色の仏炎苞で包まれる。仏炎苞は緑がかったものまで変異がある。
仏炎苞に囲まれた花序からは、細長いひも状の付属体が伸びあがり、途中から垂れ下がる。
この付属体を浦島太郎の持つ釣り竿と釣り糸に見立てたものが、和名の由来。
肉穂花序を形成する多数の花には花弁は無く、雄花はオシベのみ、雌花はメシベのみである。
本種も同じであるが、テンナンショウ属は性転換する事が知られている。
比較的小型の個体では雄性となり、肉穂花序は雄花群を形成する。
大きくなると雌性に転換し、肉穂花序は雌花群をせいせいする。
つまり、成長と共に無性期、雄性期、雌性期と変化していく。

2013/3/24
南門の方から松風閣へ登る途中、坂道の斜面にウラシマソウの群落がありました。
既に開花しているものもありましたが、葉柄を伸ばしている最中のものもあります。
左端の写真右側のものは葉柄のところから仏炎苞とその先に成長中の付属体が見えています。
いろいろな段階の個体がありましたので、花の咲き方が良く分かりました。

オニタビラコ(Youngia japonica)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・オニタビラコ属>

キク科・オニタビラコ属の越年草で、道端などでよく見かける。
日本をはじめ、中国からインド、ミクロネシア、オーストラリアまで広く分布する。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
草丈は1mに達するものもあり、小さな茎葉を所々に付ける。
葉の大部分は、地面近くにロゼット状に集中して付く。長さは10〜20cmほどで、羽状複葉。
茎の上部で分枝し、複散房状に多数の黄花を付ける。花は、直径8mmほどで、数十の舌状花からなる。
花後、上を向いたまま成熟し、種子は白い冠毛を持つ。

コオニタビラコ(タビラコ)やヤブタビラコは、オニタビラコ同様、細い茎を立てて黄色い花を付ける。
ただ、オニタビラコは花茎を真っ直ぐに立て、多数の花を付けるのに対して、
他2種は、花茎を斜めにあげて、付ける花数も少ない。また、花後、総苞は下を向く。
最も大きな違いは、前述の通り、オニタビラコの種子が冠毛を持つのに対し、他2種には冠毛がない。

※ タビラコは、コオニタビラコのことで、春の七草の1つ、ホトケノザのことです。
タビラコより大きいことからオニタビラコの標準和名が付いていますが、
タビラコの標準和名がコオニタビラコというのは、どうなんでしょうか。混乱しますね。

2013/3/24
松風閣から三重塔を周り、林洞庵へ降る途中、坂道の斜面にオニタビラコが咲いていました。
根生葉の中から花茎を真っ直ぐに伸ばし、その先に花を付けています。
花茎の長さが、根生葉の大きさと不釣り合いなほど高く伸びていて、すごく華奢に見えます。

セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・タンポポ属>

キク科・タンポポ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本以外にも南北アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、インドに移入している。
環境省指定要注意外来生物で、侵略的外来種ワースト100に入っている要注意植物である。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に広がっている。
日本の在来種とは外側の総苞の反る点が異なること、季節を問わず長期間花を付ける点が異なる。
ただ、在来種も花が盛りを過ぎると総苞が反り返ってくるので、単純に判断できない。
もう1点、セイヨウタンポポは、単為生殖で種子を作れるので、授粉しなくても種子が出来るということ。
それも長期間にわたって種子が作れるので、受粉が必要な在来種より繁殖力が強い。

2013/3/24
南門の方から松風閣へ登る途中、通路脇にセイヨウタンポポが1輪、花を咲かせていました。
この辺りで見かけたタンポポは、セイヨウタンポポのみでした。

タチツボスミレ(Viola grypoceras)
<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>
   
スミレ科スミレ属の多年草で、道端などでよく見かける有茎種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の野原から低山地、亜高山帯まで分布する。
海外では、朝鮮半島から中国南部まで広く分布する。
花色は淡紫色が多いが、変異は多い。側弁は無毛。
スミレやヒメスミレと異なり、成長すると茎が伸び、茎の途中にも葉が付く。
葉は心形で、托葉は櫛の歯状に深裂する。

2013/3/24
内苑を天授院の方に登って行く際、途中の斜面にタチツボスミレが花を付けていました。
右端の写真は、外苑を南門の方に向かっているとき、斜面に群生していたタチツボスミレです。

 
2013/3/24
睡蓮池と道路を挟んで大池側に藤棚があるのですが、その藤の洞にタチツボスミレが咲いていました。
タチツボスミレの花は淡紫色で可憐な花ですが、雑草の力強さを感じますね。

エンコウソウ(Caltha palustris L. var. enkoso H.Hara)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・リュウキンカ属>
 
キンポウゲ科リュウキンカ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道と本州に分布する。海外では、樺太と千島列島に分布する。
リュウキンカの変種で、リュウキンカの花茎が直立するのに対し、本種は斜上する。
茎が横に長く這って広がり、その様を手長猿に見立てたのが和名の由来。
草丈は数十pになり、花後、花茎の節から発根し増える。
葉には長い葉柄があり、直径5〜10cmの腎円形の葉身で、低い鋸歯がある。
花は、直径3cm弱で、黄色い花弁に見得るのは萼片。多くは5枚だが6枚とか7枚もある。
メシベは10本前後で、それを多数のオシベが取り囲む。

2013/3/24
内苑の小川で、所々に黄色い花がたくさん咲いていました。
見た感じはリュウキンカのようでしたが、後で調べてリュウキンカの変種である本種としました。
周囲の花茎が斜上して花を付けているように見えるためです。

ドクダミ(Houttuynia cordata)
<コショウ目・ドクダミ科・ドクダミ属>

ドクダミ科ドクダミ属の多年草で、在来種。
日本では本州、四国、九州に分布する。
海外では、日本も含め東アジアから東南アジアに分布する。
草丈は30cm前後になり、葉は互生する。全草に強い臭気がある。
開花期は5〜7月頃。白い花弁のようなものは総苞で、中央の穂のようなものが花序。
この棒状の花序に淡黄色の小花が密生しているが、花には花弁も萼もない。
非常に繁殖力が高く、ちぎれた地下茎からでも繁殖する。

2013/3/24
南門の方から松風閣へ登る途中、坂道の斜面にドクダミの若葉が顔を出していました。
後、数週間もすれば、この辺り一面にドクダミが生い茂っていることでしょう。

キランソウ(Ajuga decumbens)
<シソ目・シソ科・キランソウ亜科・キランソウ属>
 
シソ科キランソウ属の多年草で、本州、四国、九州に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国に分布している。
根生葉が地面に張り付くように広がり、茎も高く伸びず、全体がロゼット状に地表に張り付く。
葉は、基部が狭く、先端側が幅広になる広倒披針形で、長さは5p程。葉の縁には波状の鋸歯がある。
花期は3月〜5月で、茎の先端近くの葉の基部に、濃紫色の花を付ける。
唇型の花の上唇は小さく、下唇は大きくて3裂する。
特に中央の裂片は長く突き出し、その先は浅く2裂する。

2013/3/24
内苑を天授院の方に登って行く際、途中の斜面にキランソウがへばり付いていました。
ジゴクノカマノフタの別名が示すように、地面に張り付くように広がり、花を付けていました。

セキショウ(Acorus gramineus)
<ショウブ目・ショウブ科・ショウブ属>
 
日本では、本州から四国、九州に分布している。
海外では、中国やベトナムにも分布している。
3月〜5月に10cm前後の肉穂花序を出すが、ショウブと形態は似ている。
根茎は芳香があり、細く、長さ5〜10pで横に這い、分岐して広がる。
葉は長さ数十pで、幅が5〜10oの扁平な剣状葉。基部は2つ折りになっていて内葉を挟む。
花茎は扁平な山稜型で、長さ20cmほど。苞は葉状で、花序の基部から10〜20cm伸びる。
肉穂花序は淡黄色で、長さ10cm前後。多数の菱形の両性花がびっしりと付く。
花は淡黄色〜黄緑色で、花被片は2mmほど。外花被片、内花被片とも3個ある。
オシベは6個あり、内3個は早く花粉を出す。花粉が出始めると花被片の隙間から花糸を伸ばす。
扁平な花糸は長さ1.5mmほどで、葯は黄色。中央の子房は3室に分かれている。

2013/3/24
旧東慶寺仏殿から旧矢箆原家住宅へ向かう途中で、セキショウの花に気が付きました。
ショウブの仲間なので、花といっても、黄色みを帯びた棒状の肉茎花序です。
それが葉の間から顔を出しているだけなので、右の写真のように目立ちません。

ミツバツツジ(Rhododendron dilatatum)
<ツツジ目・ツツジ科・ツツジ亜科・ツツジ属・ツツジ亜属・ミツバツツジ節・ミツバツツジ列>
   
ツツジ科ツツジ属の落葉低木で、在来種。
日本では、関東地方から近畿地方東部の太平洋側に分布する。
樹高は1〜3mで幹は灰褐色。葉は長さ5p前後の菱状広卵形で、枝先に3枚輪生する。
花期は4〜5月で、他のツツジより花期は速く、花後に葉が展開する。
紅紫色の花は、直径4cmほどあり、オシベは5本と、他のミツバツツジ類の10本より少ない。
自然分布では、主にやせた尾根や岩場、里山の雑木林などに自生するが、その数は少ない。
ただ、古くから庭木として植栽され、身近で見られものの多くは植栽されたもの。

2013/3/24
横笛庵の近くでは、ミツバツツジがところどころで紅紫色の花を咲かせていました。
大半の株では、花のみが咲いていて、若葉はまだ展開していませんでした。
1株だけ、花の少ない下の枝で、若葉が展開していて、3枚の葉が輪生しているのが確認できました。

モミジイチゴ(Rubus palmatus var. coptophyllus)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キイチゴ属>
   
バラ科キイチゴ属の落葉低木で、在来種。ナガバノモミジイチの変種とされる。
日本では、北海道から本州中部以北に分布する。
本州中部地方以西、朝鮮半島から中国には、ナガバノモミジイチゴが分布する。
ナガバノモミジイチゴより葉の幅が広く、モミジに似ているのが和名の由来。
樹高は2m程になり、茎は斜上して、細長く、先が鋭い棘が多数ある。
葉は互生し、葉身は卵形で3〜5裂する。この葉柄や葉脈にも棘がある。
4月頃、冬芽からのびた短い枝に、白い花を1個、下向きに付ける。
果実は熟すと黄色くなり、食用になる。キイチゴの仲間では最も美味とされる。

2013/3/24
内苑の通路脇で、大きく枝を張り出したモミジイチゴが花をたくさん付けていました。
かなり大きな株でしたので、幹といわず、葉柄といわず、棘だらけです。
細長い花弁の白花が、下向きにたくさん付いていました。

ハナイバナ(Bothriospermum zeylanicum/Bothriospermum tenellum)
<ムラサキ目・ムラサキ科・ハナイバナ属>
 
ムラサキ科ハナイバナ属の1年草、越年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に広く分布している。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、東南アジアなどに広範囲に分布する。
草丈は15cmほどで、茎は細く、基部は地を這う。茎には、上向きの毛が密生する。
葉は互生し、長楕円形で長さは3cmほど。葉の縁には長毛が生える。
苞葉は葉と同じ形で、茎の上部の苞葉の葉腋に花を1つ付ける。
花は直径数oの5花弁で、白色〜淡青色の花冠は5裂する。
花の大きさ、形、色は、キュウリグサに良く似ているが、中心の付属体が本種は白い。
また、「葉内花」の名が示す通り、本種は葉と葉の間に花が付く。
一方キュウリグサは、巻いた花序を伸ばしながら咲き上るが、花序には葉や苞葉は無い。

2013/3/24
内苑を天授院の方に登って行く際、途中の斜面にハナイバナが花を付けていました。
子供の頃には、よく見かけたように思うのですが、ずいぶん久しぶりに見た気がします。
眼を凝らしていないと見落としてしまいそうな、小さな花です。


ムラサキ科の似た者同士

   
 ハナイバナ        キュウリグサ         ヤマルリソウ
ハナイバナ属、キュウリグサ属、ルリソウ属に属するムラサキ科の花です。
ハナイバナとキュウリグサの花は、ほぼ同じ数oほどの大きさで、中心の付属体の色を除けば良く似ています。
ハナイバナが白っぽいのに対して、キュウリグサは黄色です。花の付き方や葉や苞葉の有無でも区別できます。
ヤマルリソウは、直径15oほどありますので、前二者の3倍強と明らかに花が大きいです。
ただ、花弁の形や付属体の付き方、色などは良く似ています。

トサミズキ(Corylopsis spicata Siebold et Zucc.)
<ユキノシタ目・マンサク科・トサミズキ属>
   
マンサク科トサミズキ属の落葉低木で、日本固有種。
日本では、高知県の蛇紋岩地帯や石灰岩地などのやせ山に自生している。
庭木として良く使用されるので、上記以外の場所にあるものは植栽されたものである。
樹高は数mになり、幹は灰褐色で、皮目がある。
葉は互生し、葉身は左右不同の倒卵円形。葉の縁には波状の鋸歯がある。
花期は3〜4月で、葉の展開前に咲き、花序は長さ数cm、10個ほどの花が垂れ下がって付く。
花冠は黄色で、長さは1cm程になる。オシベは5個で、花弁より長く、葯は暗赤色。

2013/3/24
内苑に向かう際、三溪記念館の所でトサミズキが花を付けていました。
新芽も花の色も似ているので、最初は花が咲いているのが分かりませんでした。
花弁が淡黄色なので、花弁よりも外に伸び出している暗赤色の葯の方が目立ちます。

ヤマネコノメソウ(Chrysosplenium japonicum)
<ユキノシタ目・ユキノシタ科・ネコノメソウ属>
 
ユキノシタ科ネコノメソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に広く分布し、湿った林内に自生する。
海外では、朝鮮半島から中国東北部に分布する。
草丈は15cm程になり、茎葉は互生する。葉身は腎円形で長さ数cm。鋸歯がある。
根出葉は、葉柄があり、葉身も含めて長さ5p前後ある。
花は淡緑色で花弁はなく、萼片は扁円形で開出する。オシベは4個か8個で、極短い。
花後、開出していた萼片は立ち上がり、萼片に包まれた果実を付ける。
果実は熟すると洋杯状に裂開し、下部に多数の種子を付ける。
また、花後に花茎の基部に紫褐色のムカゴを作り、栄養繁殖も行う。

2013/3/24
旧矢箆原家住宅の近くで、ネコノメソウの様な野草を見つけました。
しかし、萼の部分が黄色くありません。花も咲き終わっているように見えます。
後で、ネコノメソウ属の確認をしたのですが、花後の写真がなかなか見つかりません。
似たものをピックアップして、さらに調べた所、葉が互生であること、葉の形などから本種としました。









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