夏の三渓園で見られた野草
和名インデックス |
アカメガシワ(Mallotus japonicus)
<キントラノオ目・トウダイグサ科・エノキグサ亜科・エノキグサ連・アカメガシワ属>
トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木で、在来種。雌雄異株。 日本では、本州から四国、九州の山野に自生し、空き地などに真っ先に生えてくるパイオニア植物。 日本以外では、東南アジアの山野に分布する。 和名は、新芽が紅色を帯びること、そして、その葉が柏のように大きくなることに由来する。 葉は互生し、葉柄は紅色を帯び、長さは10〜20cm、葉身も同様、葉幅は5〜15cm程でかなり大きい。 初夏に枝先に円錐花序を出し、花弁のない小さな花を多数付ける。 雄花は、苞の脇に数個ずつ付き、多数のオシベが球状に付く。 雌花は、苞の脇に1個ずつ付き、子房には刺状の突起がある。
2016/7/23
観心橋のたもとで、アカメガシワの雌株が花を付けていました。 雄株もないかと見たのですが、近くには見当たりませんでした。 ※ アカメガシワの雄株の花や、なぜ「アカメ」と呼ばれるのかは、こちらをご覧ください。 |
ミズカンナ(Thalia dealbata))
<ショウガ目・クズウコン科・ミズカンナ属> クズウコン科ミズカンナ属の水生植物の多年草で、北アメリカ南部原産の帰化植物。 日本には、昭和初期に水質改善と観賞用に導入され、その後、一部野生化している。 和名は、葉がカンナに似ている水生植物であることに由来する英名(water canna)の和訳。 草丈は1〜3mほどになり、根際から生えいる葉は50cm以上になる。 花期は7〜9月で、茎の先に円錐花序を付け、紫色の花を付ける。 苞は長さ1cm前後で赤紫色であるが、白粉のため白っぽく見える。 萼片は2p前後で、紫色の花弁のように見えるのは仮雄しべが変形したもの。 果実は、ほぼ球形で、熟すと黒紫色になる。
2016/7/23
大池の藤棚の近くで、見かけない花を付けた水生植物に気が付きました。 長く伸びた花茎の先に、白っぽい小穂のようなものから、きれいな紫の花弁の様のものが出ています。 後で調べて、ミズカンナと分かりました。花弁に見えた紫色のものは、仮雄しべが変形したものだそう。 草丈があるのに、花が小さいので、きれいな色の割には華やかさにかけます。 |
温帯スイレン(Nymphaea spp.)
<スイレン目・スイレン科・スイレン属> スイレン科スイレン属の多年草で、浮葉植物。 日本に自生するスイレン属はヒツジグサのみで、池などで見られるのは温帯スイレンの園芸品種である。 水位があまり変動しない池などで、地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。 葉はほぼ円形で、中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る(ハスには切れ込みがない)。 葉の表面に強い撥水性はなく、ハスの葉ほどには水は弾かない。 多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、スイレンでは葉の表側に分布する。 根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5〜10cmほどの花をつける。 花の色、葉の色、模様、などについて様々な姿の園芸品種が作出されている。 スイレン属には、一定の耐寒性がある本種以外に、「熱帯スイレン」がある。 熱帯スイレンは寒さに弱く、15℃以下になると枯れ死するので、通常、温室が必要になる。 ただ、熱帯スイレンには、温帯スイレンにはない青や紫の花色の品種がある。
2016/7/23
蓮池の隣にあるのが睡蓮池です。池の表面はスイレンの葉で覆い尽くされています。 右の写真には、手前の方に2つ花が咲いていますが、探すのに苦労するほど、花が少ないです。 きっと花の盛りになると、たくさんの花が見られると思いますが、白花なので華やかさはないかも。 2016/7/23 6:57 2016/7/23 7:56 2016/7/23 7:57 左の2つは同じ花の写真です。1時間ほどで開花しました。 右端の花は、なぜか横向きに咲いていました。そのため、花芯を見ることができました。 黄色いオシベが、白い花をすごく華やかにしています。 |
カワラナデシコ(Dianthus superbus L. var. longicalycinus)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ナデシコ属> ナデシコ科ナデシコ属の多年草で、在来種。日当たりの良い草地や河原などに自生する。 日本では本州から四国、九州に分布している。海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。 草丈は30〜50cm程度で、茎は根際から叢生し、各節は膨らむ。 葉は対生し、線形で長さ5p前後。先は鋭く尖り、基部は茎を抱く。葉柄はなく、全縁。 花期は7〜10月で、茎頂に直径5p弱の花を付ける。 淡紅色の花弁は5枚で、先が細かく裂ける。花弁の基部にはひげ状の毛がある。 萼筒は長さ4cm弱あり、苞は3対か4対ある。オシベは10本、メシベの花柱は2本ある。 なお、花色は淡紅色が多いが、白色のものも見られる。 本種の基変種は、エゾカワラナデシコで、本州の中部以北に分布しており、非常に良く似ている。 見分け方は、草丈が低く、苞が2対しかない点である。
2016/7/23
睡蓮池のほとりにピンクの花が見えたので、行ってみるとカワラナデシコでした。 苞が3対確認でき、花弁の基部にひげ状の毛も確認できます。 |
ハス(Nelumbo nucifera)
<ヤマモガシ目・ハス科・ハス属> ハス科ハス属の抽水性の多年草で、在来種。原産地に関しては諸説があるが未決着。 ハスには観賞蓮と食用蓮があり、前者の地下茎(レンコン)は細く、食用には向かない。 大賀ハスなどの古代ハスは、2000年以上前から日本に存在している。 ハスは、地中の地下茎から葉柄を伸ばし水面に草丈1m以上になる葉を出す。 地下茎には通気用の穴があり、葉柄にも同じように穴がある。 葉は円形で、中央に葉柄が付き、強い発生性があり、水をはじいて水玉が出来る。 葉柄の付け根から葉脈が放射状に出ているが、この葉脈にも2本通気口がある。 花期は7〜8月で、地下茎から伸びた花柄の先に直径20p前後の花を咲かせる。 花色には淡紅色と白色のものがあり、開花直後の花托は黄色い。 授粉が進むと花托の色は緑色に変化して、花後、花托の中の果実が花托と共に成長する。 ※ 大賀ハスは、昭和26(1951)年、千葉県千葉市検見川(現・千葉市花見川区朝日ケ丘町)にある 東京大学検見川厚生農場(現・東京大学検見川総合運動場)の落合遺跡で3粒発掘された。 その3粒の内の1粒が発芽し、開花に至ったのが大賀ハスである。 同時に発掘された船の年代測定から、今から2000年以上前の古代のハスであることが判明している。 なお、古代ハスには、大賀ハス以外にも行田ハス、大阪府の原始ハスなどが知られています。
2016/7/23 三溪園の蓮池には、昭和51年に大阪府の天然記念物に指定されている原始ハスとともに、 舞妃蓮や太白蓮などが植えられたそうですが、最も強健な原始ハスのみが残ったそうです。 現在は、原始的な古いハスの大賀ハスも植えられているそうですが、見た目の違いはないそうです。 花托(授粉済み) 花托(未授粉) ハスの葉のシャワー ハスの花の花托は、1日目、2日目の頃まではきれいな黄色です(中央の写真)。 2日目くらいから訪虫による授粉が見られ、受粉すると柱頭が黒く変化する(左端の写真)。 そして、黄色かった花托も緑色を帯び始め、4日目くらいには黄緑色になります。 左端は、観蓮会の体験コーナーで行われていたハスの葉のシャワーです。 ホースからの水をハスの葉柄の通気口、葉脈の通気口を通して、シャワーにしています。 |