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富士山で見かけた野草



主に富士山の御殿場口(太郎坊)の駐車場や登山口近くで見かけた山野草です。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
イネ目
イネ科(カリヤスモドキ、ススキ)
キク目
キキョウ科(ヤマホタルブクロ)
キク科・アザミ亜科(トネアザミ、フジアザミ)
キク科・キク亜科(ヨモギ、キオン、アキノキリンソウ、ノコンギク、ヤマハハコ、
         ヒヨドリバナ)
キク科・タンポポ亜科(ハナニガナ、ヤナギタンポポ)
キジカクシ目
ラン科(ネジバナ)
キンポウゲ目
キンポウゲ科(クサボタン)
シソ目
ハマウツボ科(タチコゴメグサ)
ナデシコ目
スベリヒユ科(ハナスベリヒユ)
タデ科(オノエイタドリ、メイゲツソウ、オオイヌタデ、シンミズヒキ)
ナデシコ科(エゾカワラナデシコ)
バラ目
バラ科(バライチゴ、テリハノイバラ、キンミズヒキ、シモツケ)
マツムシソウ目
スイカズラ科(オトコエシ、マツムシソウ)
マメ目
マメ科(ムラサキモメンヅル)
 
ギボウシゴケ目
ギボウシゴケ科(エゾスナゴケ)
スギゴケ目
スギゴケ科(スギゴケ)
レカノラ目
ハナゴケ科(コナアカミゴケ)
入笠山で見かけた野草(U)
和名インデックス


カリヤスモドキ(Miscanthus oligostachyus Stapf)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・ヒメアブラススキ連・ススキ属>
 
イネ科ススキ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、山地の草原広く見られる。
なお、痩せた火山灰土でも生育できるため、活発な火山活動が見られる場所でも見られる。
草丈は60〜90cmで、茎は円柱形細長く、束生して直立する。
葉は互生し、長さ20〜40cmの線形で、葉下部は長い鞘となって茎を包む。
葉先は尖り、並行脈である。葉質は、ススキより薄くて柔らかい。
花期は8月〜9月で、花茎の先に長さ7〜15cmの細長い総状の穂状花序を2〜5個の付ける。
花序には、柄の長い小穂(しょうすい)と短い小穂が対になって付き、基部には長毛が輪生する。
小穂は長さ7〜8oで黄褐色。小穂の内穎(ないえい)に約2倍の長さの芒(のぎ)がある。
よく似たカリヤスには芒がないため、小穂の芒の有無を確認できれば、区別は容易である。
また、ススキと比べて小型であり、花序の数が少なく、ほぼ直立している点で区別できる。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)より少し上った所で見かけたカリヤスモドキの小さな群落です。
この辺りでは、このような群落がたくさん見られ、秋にはススキ野原のようになります。


2009/10/18
秋に富士山御殿場口(太郎坊)より少し上った所で見られた景色です。
見渡す限り、一面をカリヤスモドキが埋め尽くし、ススキの穂のように風に揺られています。
ただ、背丈は1mに満たない高さなので、仙石原のような圧迫感はありません。

ススキ(Miscanthus sinensis Andersson)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・ヒメアブラススキ連・ススキ属>
 
イネ科ススキ属の多年草で、日本全国に広く分布している。
日本以外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
なお、北米にも帰化しており、侵略的外来種として猛威をふるっている。
草丈は2mを超え、茎は叢生する。ケイ酸が多く、硬くて耐久力があるため、冬でも茎が立って残る。
茎(稈)の断面は円形で、内部にスポンジ状の髄があり、中実になったり、中空なったりする。
葉は、長い物は80pほどになり、線形。中央に幅数mmの白い筋があり、裏面に少し毛がある。
葉の縁には堅くて鋭い刺歯があり、葉の基部、葉鞘、節には軟毛がある。
花期は8月〜10月で、穂(花序)は20pほどで、銀白色。
小穂は長さ5oほどで、基部に10o程の白毛が密集する。
小穂は2小花からなるが、第1小花は退化し、第2小花の護穎に長い芒が1本ある。
葯は黄色で、柱頭は褐色から暗紫色(稀に白色)である。
なお、良く似たオギがあるが、ススキはが株立ちするのに対し、オギは根茎で横に広がる点が異なる。

2008/11/3
御殿場市馬術・スポーツセンター奥にある丘の上に生えていたススキです。
遠くにはもっと大規模な群生地が見えていますが、この辺りには所々に群生地が見られます。

ヤマホタルブクロ(Campanula punctata Lam. var. hondoensis)
<キク目・キキョウ科・キキョウ亜科・ホタルブクロ属>
 
キキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、日本固有種。
ホタルブクロの変種で、東北地方南部から近畿地方東部にかけて分布する。
ホタルブクロは、東北部を除く北海道から、本州、四国、九州に分布し、両者の分布域は重なる。
海外では、ホタルブクロが朝鮮半島から中国にかけて分布する。
草丈は、20〜50cmと幅があり、葉は互生する。
花は、長さ5cmほどの壺型で、先が浅く5裂する。
花色は、淡紅紫色で淡いものから濃いものまで変異がある。

※ ホタルブクロとヤマホタルブクロの違いに関しては、下記を参照ください。

2007/8/11
秋に富士山御殿場口(太郎坊)より少し上った所で見られたヤマホタルブクロです。
ポツリポツリと生えていることが多いのですが、この辺りには小さな群落がいくつか見られました。
陽当たりが良いためか、背が低く、その割には花数が多いので見栄えがします。
前後に見えているのはフジアザミの若い株で、花茎を立ち上げるには小さいようです。

 
2009/8/22                2009/8/23
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇や登山道脇で見かけたヤマホタルブクロです。
駐車場脇の花は淡紫色でしたが、登山道脇の花は淡赤紫色で、赤味が強い色合いでした。


ホタルブクロとヤマホタルブクロ

   .
 2018/6/1<ホタルブクロ>        2018/6/1<ヤマホタルブクロ>
ホタルブクロとヤマホタルブクロの識別の決め手は、萼片の形です。
ホタルブクロの場合は、付属体の副萼片が反り返っています。
ヤマホタルブクロの場合は、萼片と萼片の間が盛り上がるだけです。


トネアザミ(Cirsium nipponicum var. incomptum)
<キク目・キク科・アザミ亜科・アザミ連・アザミ属・ナンブアザミ節・ナンブアザミ亜節・ナンブアザミ列>
 
キク科アザミ属の多年草で、日本固有種種。別名はタイアザミ。
日本では、東北地方南部〜中部地方の太平洋側地域に分布する。
雌性両全性で,各地で雌性株が見つかっている。
草丈は50〜100cmになり、根生葉は長さ30cm程になるが、花期には残らない。
茎葉は互生し、長さは20cmほどの披針状楕円形で羽状に深裂して、葉先は尖る。
裂片の先は太く鋭い刺となり、葉の縁に鋭い刺が多数並ぶ。葉の基部は茎を抱かない。
花期は9〜11月で、茎先に横から下向きに淡紅紫色の頭花を多数付ける。
頭花は、直径3cmほどで、多数の筒状花からなり、筒状花は他のアザミ類より長い。
総苞は直径2cmほどで、先の鋭く尖った総苞片は太くて長く、多くは開出して、やや反り返る。
本州中北部に分布するナンブアザミの変種で、総苞片が太く、長くなっている。

2008/11/3
御殿場市馬術・スポーツセンター奥の丘(一木塚)に向かう途中、通路脇で見かけたアザミです。
・頭花が横向きに付き、総苞は黒褐色で筒形
・総苞片は鋭く尖り、斜めに少し開出している
・茎葉が羽状に深裂して基部が茎を抱かない
アザミは似たものが多く、同定に迷いましたが、上記の点から当初スズカアザミと判断しました。
反り返っていないのでスズカアザミとしていましたが、何となく違和感はありました。
しかし、近い場所で見かけた下記のアザミは、総苞片は長くはないですが反り返っていました。
そのため、スズカアザミからトネアザミに変更しましたが、あまり自信はありません。

 
2010/10/16
2年前に見かけた近くで、今年はアザミがたくさん花を付けていました。
2年前の花では、総苞片は開出していても反り返っていませんでしたが、今回の総苞片は反り返っています。
今回の花では、総苞片は短めですが反り返っていましたので、トネアザミと判断したしだいです。
ただ、トネアザミにしては総苞片が短めなのが気になっています。個体差でしょうか。
フジアザミ(Cirsium purpuratum)
<キク目・キク科・アザミ亜科・アザミ連・アザミ属>
 
キク科アザミ属の多年草で、日本固有種。
日本では、本州の関東地方と中部地方に分布する。富士山周辺に多いため、フジアザミと名付けられた。
草丈は20〜100cmで、根はゴボウ状で、大きな根生葉は花期にもある。茎葉は小さい。
下部の葉は、大きい物は長さ70p程になり、羽状に中裂し、葉縁には硬く鋭い刺がある。
花期は8〜10月で、茎の先端に頭花を下向きに付ける。
頭花は、大きい物では直径10p程になり、日本のアザミの中では最も大きい。
花色は紅紫色(稀に白色)で、小花は両性の筒状花のみである。
総苞は球形で、総苞片は幅広く、縁や裏が紫色を帯びて反り返り、先は鋭く尖る。

2004/8/15
左は、富士山御殿場口(太郎坊)のバス停裏で見かけたフジアザミで、マツムシソウと混生していました。
右は、登山道を少し上った所で、点々と生えていたフジアザミで、まだ、若い個体のようです。
花茎を伸ばしていないものも多い中で、この株は花茎を伸ばしてツボミを付けていました。

 
2007/8/18                 2009/10/18
夏の盛りで、全開になったフジアザミの花が左で、右は花期の終わりに近い秋のフジアザミです。
バックに見える富士山も、雪化粧が始まっていて、冬の足音が近づいています。

 
2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)の登山口付近には、多くのフジアザミが自生しています。
写真の株は、かなり大きな株で、巨大な根生葉のため、大きな花も小さく見えます。

   
2016/9/5
巨大なフジアザミが咲き進む様子を並べてみました。
ツボミがほころび始めたのが左端で、中央が満開、咲き終わった後が右端です。
開花した筒状花から刷毛のようにメシベが伸び、花後はそれが落ちてすっきりした顔になります。

ヨモギ(Artemisia indica var. maximowiczii)
<キク目・キク科・キク亜科・キク連・ヨモギ属>
 
キク科ヨモギ属の多年草で、在来種。日本では本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
草丈は50〜120pで、茎は紫色を帯びることが多く、白い綿毛が密生する。
地下茎で増え、他の植物の発芽を抑制する物質を分泌する(アレロパシー)。
根生葉や下部の葉は、花期には枯れる。上部の茎葉は披針形で、全縁か数個の切れ込みがある。
中程以下の茎葉は長さ10p前後で羽状に深裂し、裂片には不規則な鋸歯がある。
葉裏には白い綿毛が密生する。この綿毛を生成したものが「もぐさ」で、主に灸に使用される。
花期は9月〜10月で、茎の先に大きな円錐花序を出し、小さな頭花を多数、下向きに付ける。
頭花は直径1.5mm程で、長さは3mm前後の長楕円状鐘形。中心部に両性花、その周囲に雌花がある。
総苞片は4列に並び、縁は乾膜質で、外片は短い。

2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)の第2駐車場の法面で見かけたヨモギです。
元々生育していなかったヨモギですが、観光客増加に伴い、種子が運ばれてきたものと思われます。

キオン(Senecio nemorensis L.)
<キク目・キク科・キク亜科・サワギク連・キオン属>
 
キク科キオン属に分類される多年草で、在来種。別名はヒゴオミナエシ。
和名のキオン(黄苑)の由来は、別属のシオン(紫苑)に対して花が黄色い事による。
日本では、北海道から本州、四国、九州の山地〜亜高山帯の日当たりのよい草地に自生する。
海外では、ヨーロッパからシベリア、中国、朝鮮半島の温帯域に分布する。
草丈は50〜100cmで、茎は直立する。葉は互生する。
葉身は長さ5〜15cmの広披針形で、切れ込みはなく、縁には細かい鋸歯がある。
花期は8月〜9月で、茎頂に直径2cm前後の頭花を散房状に多数付ける。
総苞は長さ6〜7mmの筒状で、総苞片は12〜18個ある。
舌状花は4〜10個で5個が多く、筒状花は10〜15個ある。
舌状花の間隔はバラバラで、不規則によじれる。痩果は長さ4〜5oで、汚白色の冠毛ある。

2007/8/11
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、オノエイタドリの中から黄色い花が突き抜けて咲いていました。
この辺りではアキノキリンソウやミヤマアキノキリンソウの報告があるのですが、花の付き方が異なります。
後で調べて、キオンの花と分かりましたが、同じキク科キク亜科の花なので形はよく似ています。

 
2009/8/22                 2009/8/23
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇などで、キオンが所々で黄色い花を見せていました。
周りに目立つ色の花が少ないので、遠くからでも咲いているのが分かります。


よく似たキク科キク亜科の仲間

キオン
サワギク連・キオン属
ハンゴンソウ
サワギク連・キオン属




茎頂に頭花が散房状に多数付く。
舌状花は4〜10個で、
筒状花は10〜15個ある。
葉は切れ込まず、鋸歯がある。
茎頂に頭花が散房状に多数付く。
舌状花は5〜7個で、
筒状花は多数ある。
葉は、羽状に3〜7深裂する。
アキノキリンソウ
シオン連・アキノキリンソウ属
ミヤマアキノキリンソウ
シオン連・アキノキリンソウ属




茎頂に頭花が穂状に多数付く。
舌状花は2〜9個で、
筒状花は10個前後ある。
葉は切れ込まず、鋸歯がある。
茎頂に頭花が固まって付く。
舌状花は2〜9個で、
筒状花は多数ある。
葉は切れ込まず、鋸歯がある。

アキノキリンソウ(Solidago virgaurea var. asiatica)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・アキノキリンソウ属>
 
キク科アキノキリンソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布している。海外では朝鮮半島に分布している。
草丈は30〜80cmで、茎には上向きの曲った毛が生える。
普通、根生葉は花期にはなく、中上部の葉は互生で、長さ9cm程の披針形。
基部は細く、翼のある短い柄がある。葉の縁には毛があり、浅い鋸歯がある。
葉裏がやや白っぽく、はっきりした網目状の脈がある。下部の葉は、鋸歯が大きく、鋭くなる。
花期は8月〜11月で、茎先に穂状花序を出し、多くの黄色い頭花を付ける。
頭花は直径15o前後で、中心に両性の筒状花が10個前後あり、その周囲に舌状花が並ぶ。
1列に並ぶ舌状花は雌性で、2〜9個あり、長さは7o前後、幅の変化が大きい。
総苞は長さ6o程、幅3o程の狭筒形で、総苞片は4〜5列。外側ほど短い。
痩果は長さ3o程の淡褐色で、冠毛は褐色味を帯び、長さは3o程ある。

2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)の第2駐車場の法面に多く見られました。
右端のようにミヤマアキノキリンソウのように頭花が頂部に集まっているものもありました。
ただ、多くの株では花序が長く、頭花がばらけたものが多いので本種としています。
富士山では、ミヤマアキノキリンソウの報告もあるので、混在している可能性もあります。

※ ミヤマアキノキリンソウは草丈が低く、頭花が頂部に集まって付き、総苞の幅が広い特徴がある。

ノコンギク(Aster microcephalus var. ovatus)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・シオン属>
 
キク亜科シオン属の多年草で、日本固有種。本州から四国、九州の山野に分布する。
草丈は50〜100cmで、茎は良く分枝して、短毛が密生する。
地下茎を横に這わせて、あちこちから枝を出すので、まとまった群落を作りやすい。
葉は互生し、長さ10cm前後の長楕円形で、両面にも短毛があり、3本の葉脈が目立つ。
葉には大きな鋸歯があるが、葉の形も含めて変化が大きい。また、上部の葉は全縁の事も多い。
花期は8月〜11月で、枝先に散房状に多数の白から淡青色の頭花を付ける。
頭花の直径は25o程で、舌状花は淡青紫色から白色であるが、ツボミの時は淡青紫色。
花柱の先は2つに分かれ、扁平で、先が尖って内側に向かい合うように湾曲する。
5個のオシベは合着して筒状になる。冠毛は長く、開花時でも見える。
総苞は長さ5o前後で、総苞片は4列に付き、縁が紫色を帯びる。
シオン属にはよく似たものがあり、その区別点は下記の通りである。
ノコンギク
茎はよく枝分かれして短毛が密生する。
葉は互生し、長さ6〜12cmの鋸歯のある長楕円形で3脈が目立つ。
頭花は直径25mm前後で、舌状花は白色〜淡青紫色で花柄が短く、冠毛が4〜6mmと長い。
総苞は半球形。カントウヨメナより花が固まって付き、葉がざらついている。
本州から四国、九州に分布する。
カントウヨメナ
根茎を伸ばして増え、茎は細く、大きくなると倒れることが多い。茎は狭角に分枝する。
葉は互生し、長さ8〜10cmの長楕円形で先が尖り、鋸歯があるが、上部の葉にはない。
茎の上部で枝別れし、枝先に1つずつ頭花を付ける。ノコンギクより花はばらけて付く。
頭花は直径30mm前後の淡青紫色で、中央の黄色い筒状花は、比較的数が多くて大きい。
冠毛は0.25mmと極短い。総苞は半球形。本州の関東地方以北に分布する。
シロヨメナ
茎は直立して上部で枝分かれするが、細くて倒れやすい。 短毛が密生する。
葉は互生し、長さ5〜15cmの鋸歯のある長楕円状被針形で先が尖り、基部はくさび形。
葉には光沢があり、3脈が目立つ。
散房状につく頭花は直径15〜20mmで、白い舌状花は10〜20個、筒状花は黄色〜白色。
冠毛は3〜4mm。総苞は筒状。本州から四国、九州に分布する。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、オノエイタドリの中から菊が顔を出していました。
雨のせいかもしれませんが、何となくしょぼくれたような花になっています。
上部の茎葉に鋸歯がないのでカントウヨメナかと思ったのですが、花の付き方はノコンギクのようです。
断定はできませんが、カントウヨメナらしくないので、ここではノコンギクとしました。

 
2005/8/13
昨年と同じ場所に行くと、今年もたくさん花を付けていました。
昨年とは異なり、しっかりとした立派な花で、花弁の先に淡青紫色の色が残っていました。
今年も、まだ、花が咲き始めたばかりのようで、冠毛を確認できませんでした。

 
2007/08/19
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇は雲の中で、花には水滴がびっしりと付いていました。
今回見かけた花は、上部にびっしりとツボミや花が付いていて、葉の3脈が目立っていました。
これらの特徴から見て、カントウヨメナではなくノコンギクだと確信が持てました。

 
 
2010/10/16
御殿場市馬術・スポーツセンターや奥の丘(一木塚)の周辺で見かけた菊です。
カントウヨメナのようでもあるのですが、下記の点でノコンギクとしました。
上段右の写真で、花がらが取れて冠毛が確認できればよかったのですが、これでは確認できません。
・上部の茎葉が全縁で、下部の葉のような鋸歯がない…カントウヨメナか?
・下部の葉では3脈が目立っている…ノコンギクか?
・上部で細かく分枝し、頭花が集まって付いている…ノコンギクか?

 
2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)の第2駐車場の法面で、淡青紫色の菊がが多く見られました。
きれいな淡青紫色の花が上部に集まって付いており、葉に光沢が無くて、ざらついた感じです。
以上の点で、カントウヨメナではなく、ノコンギクと思われます。
開花後の花色は、白色に近い物〜淡青紫色まで変異があり、上記は良く色の残った個体のようです。

   


 
2016/9/5
御殿場口新五合目の第2駐車場の法面で多く見られたノコンギクです。
開花後の舌状花の色は、白色に近い物から淡青紫色のものまでありました。
ただ、開花後は白い物でも、ツボミの色は淡青紫色を帯びています。
中段の写真は、ちょっとした群落になっていたもので、下段はその一部を拡大したものです。
左側は、下部の葉を拡大したものですが、3脈が目立っています。
また、右側は、左の方の花後の頭花部分を拡大したもので、長い冠毛が見られます。
これらの点から、この群落はノコンギクであると判断できます。

ヤマハハコ(Anaphalis margaritacea)
<キク目・キク科・キク亜科・ハハコグサ連・ヤマハハコ属>

キク科ヤマハハコ属の多年草で、在来種。
山地帯〜高山帯の日当たりのよい草地に自生する。
日本では、北海道から本州の長野県および石川県以北に分布する。
海外では、中国、ロシア、インド、ネパール、北アメリカに広く分布する。
地下茎を延ばして増え、全体に白色の綿毛で被われる。
葉は互生し、長さ5〜10cm、葉幅は10mm前後で、標高が高いほど葉幅は広くなる。
葉の表面はつやのある緑色で、裏面は灰白色の綿毛が密生し、全縁でやや裏面に巻き込む。
雌雄異株で、頭花は茎頂に散房状に付き、白い花弁のようなものは総苞片で、黄色い部分が花。
なお、雌株の筒状花は星形の花冠は目立たずメシベの花柱が糸のように細く伸びている。
一方、雄株の筒状花は星形の花冠がはっきり見え、伸び出した葯筒が見られる。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で見かけた、ちょっとしたヤマハハコの群落です。
葉の表面が緑色で、葉裏に巻き込むようにカールしている点で本種としました。

 
2009/8/22
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇や登山道脇で、ヤマハハコが小さな花を付けていました。
登山道脇では、少し群生しているような所も見られました。

ヒヨドリバナ(Eupatorium makinoi)
<キク目・キク科・キク亜科・ヒヨドリバナ連・ヒヨドリバナ属>
 
キク科ヒヨドリバナ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国で見られる。
海外では、朝鮮半島から中国にかけて分布する。
草丈は1〜2mに達する。茎には曲った毛が密生する。草丈があるので、曲がったり、傾くものが多い。
葉は対生し、短い葉柄がある。長さは15p前後の卵状長楕円形で、先が尖る。
花期は8〜10月で、頭花は、散房状に付き、多数の筒状の頭花からなる。
頭花は、5個ほどの白色の両性の筒状花からなる。花冠の先は5残裂し、花柱の先が割れて長く伸びる。

よく似た花が幾つかあるが、葉の特徴から識別することができる。
・ヒヨドリバナ  葉は対生し、短い葉柄がある
・サワヒヨドリ  葉は対生し、葉柄がない。葉は3脈が目立つ
         ※ 3深裂〜3全裂して6個が輪生しているように見えることがある
・ヨツバヒヨドリ 葉は4個(3個〜5個)が輪生する
・フジバカマ   葉は対生して、下部では3深裂する

2005/8/13
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、ヒヨドリバナが咲き始めていました。
まだ、半分も開花していませんが、既にアブが食事に訪花していました。

 
2009/8/22
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で見かけた、ほぼ満開状態のヒヨドリバナです。
以前に見たのもこの辺りなのですが、あまり数は多くありません。

ハナニガナ(Ixeris dentata var. albiflora f. amplifolia)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・ニガナ属>
 
キク科ニガナ属の多年草で、低山から高山の草地や道端などに生える。
日本では全国に分布し、海外では朝鮮半島から中国に分布する。
草丈は40〜70cmで、根生葉には長い葉柄があり、披針形や羽状に裂けるなど変異が多く、鋸歯がある。
茎葉は互生し、長さ3〜10cmの長楕円形で鋸歯があり、葉柄はなく、基部は茎を抱く。
花期は5月〜7月で、茎の上部で分枝して多数の頭花を付ける。頭花の直径は15〜20oほど。
頭花は舌状花からのみなり、7〜11個と、ニガナの5〜7個より多い。
本種は、ニガナの変種であるシロバナニガナの1品種で、その黄花品種とされている。

2010/10/16
御殿場市馬術・スポーツセンター奥の丘(一木塚)への通路脇で見かけたハナニガナと思われる花です。
ハナニガナの花期は春から初夏にかけてなので、花期はとっくに過ぎています。
しかし、花や葉の特徴はニガナ属のものであり、花弁が多いのでハナニガナとしました。

ヤナギタンポポ(Hieracium umbellatum)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・ヤナギタンポポ属>
 
キク科タンポポ亜科ヤナギタンポポ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国に分布する。
海外では、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカと北半球に広く分布する。
草丈は30〜120cmで、茎は硬くて直立し、茶褐色を帯びる。
根生葉や下部の茎葉は花期には枯れるが、葉には多数の葉が互生して付く。
茎葉は長さ4〜12cmの長楕円状披針形で、先は尖り、基部は楔型か丸くなる。
縁には少数の鋸歯があるか全縁で、上部ほど茎葉は小さくなる。葉柄は無いか極短い。
花期は8月〜9月で、上部で分枝して3〜80個の頭花が円錐状または散房状につく。
頭花は直径25〜35mmの鮮やかな黄色で、両性の舌状花のみからなる。
総苞は長さ9〜11mmの鐘形で、ほぼ無毛である。
総苞片は披針形で先が尖り、3〜4列で外片の方が短く、開出して反曲する。
痩果は長さ2.5〜3mmの円柱形で、無毛で黒褐色。冠毛の長さは7mmほど。

2009/8/23
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で見かけた、黄色い頭花を咲かせ始めたばかりのヤナギタンポポです。
ヤナギタンポポを見たのは初めてで、最初に見たときはコウゾリナかと思いました。
ただ、総苞に剛毛がありません。後で調べて、ヤナギタンポポと分かりました。

ネジバナ(Spiranthes sinensis var. amoena)
<キジカクシ目・ラン科・ネジバナ亜科・クラニチス連・ネジバナ属>
 
ラン科ネジバナ属の多年草で、日本の全土に分布する。別名としてモジズリの名がある。
分布域はヨーロッパ東部からシベリア、温帯・熱帯のアジア全域、オセアニアと極めて広い。
ラン科の植物としては、珍しく身近に見られる。
湿っていて日当たりの良い、背の低い草地に良く生育する。
花茎は10〜40cmになり、根際に数枚の葉を付ける。
葉は柔らかくて厚みがあり、冬季は楕円形をしているが、生育期間中には細長く伸びる。
花色は通常淡紅紫色(稀に白花)で、小さな花を多数細長い花茎に密着させるように付ける。
その花が花茎の周りに螺旋状に並んで咲く「ねじれた花序」が和名の由来である。
右巻きと左巻きの両方があり、中には花序がねじれない個体や、途中でねじれ方が変わる個体もある。
なお、右巻きと左巻きの比率は、ほど同率である。

2009/8/22
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、ネジバナがポツンと1株だけ花を咲かせていました。
普段、自宅近くなどで見かける花ですが、人に付いて運ばれてきたのでしょうか。

クサボタン(Clematis stans)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・センニンソウ属>
 
キンポウゲ科センニンソウ属の半低木で、有毒植物。
茎は直立して1m程になり、冬には上部は枯れるが、木質化した基部は残る。
葉は対生し、1回3出複葉で、長い葉柄を持つ。小葉は3残裂し、不揃いな鋸歯がある。
茎の先や葉腋から集散状花序を付け、淡紫色の花を多数付ける。
淡紫色の細い鐘状のものは、花弁ではなく萼片で4枚ある。花弁はない。
萼片の基部は筒状で、先端から反り返って、巻き込むように徐々に開く。
基部まで開くと、オシベ、メシベが現れる。
ただ、両方の機能があるわけではなく、雄花と雌花に分化している。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、クサボタンが花を咲かせていました。
咲いているのは、まだ、数輪でしたが裂けた萼片が少しずつ巻き上がっていました。

 
2005/8/13
昨年と同じ場所で、クサボタンの花をアップで撮り直しました。
淡紫色の萼片が、4つに裂けて巻き上がっているのが良く分かると思います。
この後、基部まで裂けて開き、オシベやメシベが見えるようになります。

 
2009/8/22                2009/8/23
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇や登山道脇で見かけたクサボタンです。
8/22に見たものは、除草されたのか地を這うように葉が広がり、1つだけ花茎が出ていました。
その花は、これ以上はないほど大きく裂けて反り返っていました。
8/23のものにも大きく反り返ったものはありますが、それ以上に裂けて反っています。


クサボタンの花の変化

     .

クサボタンの花は、萼が4つに裂け、最初は外に反り返ります(左の写真)。
その後、さらに反りが強くなって、萼片はクルクルと巻き上がります(右の写真)。
最後は、基部まで裂けて少し開いて、オシベとメシベが現れます(右の写真)。


タチコゴメグサ(Euphrasia maximowiczii)
<シソ目・ハマウツボ科・コゴメグサ属>
 
ハマウツボ科コゴメグサ属の一年草で、日本固有の半寄生植物。
日本では、本州(東北地方南部から近畿地方・中国地方西部)、四国西部、九州中北部に分布する。
海外では、朝鮮半島、サハリンに分布する。
草丈は15〜30cmで、茎は直立して細く、下向きに曲がった毛が生え、上部で分枝する。
葉は長さ6〜10mm、幅4〜8mmの広卵形で、基部は切形状の円形。
縁に鋭い鋸歯が4〜7対あり、鋸歯の先が芒状に尖る。表面、裏面ともに毛は無い。
葉は対生するが上部のものは互生することもある。葉に葉柄はない。
花期は8月〜10月で、花柄のない花を上部の葉液に1個ずつ付ける。
花冠は上唇の先までの長さが6〜7mmで、下唇は上唇より長い。
上唇はかぶと形で、先は2裂して先端は反り返り、下唇は開いて3裂し、幅は3.5〜5mmある。
花色は白色であるが淡紫色を帯びることもあり、下唇には紫色の条と中央に黄色の斑紋がある。
オシベは上唇内に4個あり、下側2個がやや長い。
子房は2室あり、各室に数個の胚珠があって、細長い花柱が1個ある。
萼は筒形で長さ4〜5mmあり、上下に2中裂して、さらに左右に2浅裂する。
各裂片は披針形になり先端は鋭くとがる。刮ハは長さ4〜5mmで、10数個の種子が入る。

2009/8/22
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で見かけた、シソ科と思われる花です。
どこかで見たような気がするのですが、思い出せず、シソ科で調べてもなかなか名前が分かりませんでした。
花の形からシソ科と思ったのですが、範囲を広げて探すと同じシソ目ですが、ハマウツボ科の草本でした。
半寄生植物で、自身で光合成は行いますが、他の植物の根から養分を奪う性質も持っています。

ハナスベリヒユ(Portulaca umbraticola Kunth)
<ナデシコ目・スベリヒユ科・スベリヒユ属>


スベリヒユ科スベリヒユ属の1年草(多年草)で、南北アメリカが原産地。
別名はポーチュラカで、スベリヒユ属の学名が使用されている。
以前は、スベリヒユ(P. oleracea)やマツバボタン(P. grandiflora)の品種や交配種、
あるいはタチスベリヒユ(P. oleracea var. sativa)の変異種との交配種などとして扱われていた。
現在では、種間交雑種ではなく亜種の交配種で、Portulaca umbraticola系統の園芸種とされている。
日本には、1983年にドイツから導入され、1990年の大阪花博で一気に普及したとされている。
最近は、日本でも改良が進み、終日開花するものや大型花の品種も登場している。
草丈は5〜20cmで、茎は分枝して横に広がり、枝の長さは10〜30cmになる。
葉は、長さ10〜35mmの肉厚なへら形で、先は円形〜切形になる。
花期は6月〜9月であるが、温暖な間は常に連続的に花を付ける。
花は20〜30mmの5花弁(八重咲きもある)で、総苞状の葉が4〜5個ある。
花色は多彩で、白色、黄色、桃色、薄紅色、紫色のほか、絞り模様のものなどがある。
オシベは7〜30個、メシベの柱頭は5〜18個になる。
花が終わると、上部の萼片2個が落ち、残った萼片の上部が帯状の輪になって残る。
子房が大きくなるにつれて膜質になり、開出して目立つようになる。
最後には、痩果の縁にリング状の翼になって残る(マツバボタンには無い)。

2007/8/19
富士山御殿場口(太郎坊)からの帰り道、山北の道の駅に立ち寄ったときに見かけました。
最初に見かけたとき、マツバボタンが植えられているんだと思いました。
しかし、よく見ると葉がこん棒状ではなく、厚みのあるへら形なのに気が付きました。
後で調べて、マツバボタンの仲間ですが、別種のハナスベリヒユという園芸品種と分かりました。

※ 野草ではなく園芸品種なのですが、私にとって新しい発見でしたので掲載しています。

オノエイタドリ(Reynoutria japonica var. compacta)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イタドリ属>
 
タデ科イタドリ属の多年草で、日本固有種。イタドリの高山型変種で、雌雄異株。
北海道から本州の中部地方にかけて、亜高山や高山の砂礫地に分布する。
草丈は30〜50pで、茎は太く赤い。葉は互生し、長さ10p前後の広卵形。縁が波打つことも多い。
花期は7月〜8月で、白から淡紅紫色の小花を穂状にたくさん付ける。
花には花弁はなく、5個の萼片からなる。雄花には8個のオシベが、雌花には3本の花柱がある。
花後、雌花は3つの稜がある長いハート形の白い痩果になる。

※ オノエイタドリやメイゲツソウを、変種として分ける場合と変異の1つとして分けない場合があるようです。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)から少し上ると、養生中の斜面にたくさんのオノエイタドリが見られます。


2007/8/11
登山道脇や養生中の斜面には、オノエイタドリのおおきな群落ができ、一面を覆ている所もあります。

 
2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)から登山道を少し上って行くと、多くのイタドリが群生しています。
その内の白いものがオノエイタドリ(別名:フジイタドリ)で、この辺りでは最も多い野草です。
痩果のアップの写真がなかったので、デジ一で撮り直したものです。

メイゲツソウ(Reynoutria japonica f. colorans)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イタドリ属>
 
タデ科イタドリ属の多年草で、日本固有種。イタドリの高山型変種で、雌雄異株。別名はベニイタドリ。
北海道から本州の中部地方にかけて、亜高山や高山の砂礫地に分布する。
草丈は30〜100pで、茎は太く赤味を帯びる。葉は互生し、長さ10p前後の広卵形。縁が波打つことも多い。
花期は7月〜9月で、白から淡紅紫色の小花を穂状にたくさん付ける。
花には花弁はなく、5個の萼片からなる。雄花には8個のオシベが、雌花には3本の花柱がある。
花後、雌花は3つの稜がある長いハート形の痩果になるが、その色が緋色になる。

※ オノエイタドリやメイゲツソウを、変種として分ける場合と変異の1つとして分けない場合があるようです。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)から少し上ると、養生中の斜面にたくさんのメイゲツソウが見られます。
このメイゲツソウは、かなり赤味が強い個体なので、後ろのオノエイタドリとの対比がきれいでした。


2007/8/11
オノエイタドリの群落に混じって、メイゲツソウの群落も所々にみられます。

 
2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)から登山道を少し上って行くと、多くのイタドリが群生しています。
その内の赤いものがメイゲツソウ(別名:ベニイタドリ)で、オノエイタドリの群落に混じっています。
痩果のアップの写真がなかったので、デジ一で撮り直したものです。


メイゲツソウいろいろ

       .
2005/8/13            2007/8/11            2004/8/15
メイゲツソウは、花そのものは白〜淡紅紫色ですが、花後の痩果が赤く色付きます。
中央の写真で、上部の花は白っぽく、下の方の痩果は赤く色付いていて、変化が良く分かると思います。


オオイヌタデ(Persicaria lapathifolia)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イヌタデ属・サナエタデ節>
 
タデ科イヌタデ属の一年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、北半球の冷温帯・暖温帯に分布している。
草丈は80〜200cmで、茎の下部は節が膨らみ、よく分枝する。
葉は互生し、長さ15〜25cmの披針形で基部は楔形、縁毛があり、中央脈には伏毛がある。
花期は6月〜10月で、長さ3〜10cmの円柱状の総状花序に小花を多数付け、先が垂れる。
花被は白色〜淡紅色で4〜5裂し、花後にも痩果を包んでの残る。花弁はない。
オシベは6個、花柱は2裂する。托葉鞘は筒状膜質で、下部に太い脈が目立ち、縁毛は無い。
痩果は直径2mm前後の扁平な円形で、両面が少し窪む。果実は褐色〜黒褐色。

2010/10/16
御殿場市馬術・スポーツセンター奥の丘(一木塚)への通路脇で見かけたオオイヌタデです。
まだ、咲いている花は少なく、ほとんどがツボミでした。

シンミズヒキ(Persicaria neofiliformis)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イヌタデ属>
 
タデ科イヌタデ属の多年草で、在来種。 日本では、本州から四国、九州の山地の林縁や林下に分布する。
海外では、朝鮮半島南部、中国、ヒマラヤに分布する。
草丈は50〜80cmで、茎は直立して最上部のみで枝分かれし、中空である。
葉は密に互生し、茎の上部に集まる。長さ10〜18cmの長楕円形でやや厚い。
葉は濃緑色で、葉先が尾状に鋭く尖り、全縁で両面ともほぼ無毛。表面にやや光沢がある。
葉裏は、脈が明瞭で、ややざらつく。なお、葉に「八」の字の黒班が出ることはない。
花期は8月〜10月で、茎先や葉腋から長い総状花序(ミズヒキより長い)を出し、節間が狭い。
そのため、托葉鞘と托葉鞘の間隔が狭く、ミズヒキに比べて花が密集して付く。
花はミズヒキによく似て、上半分は赤色、下半分は白色であるが、これは萼で花冠はない。
オシベは5個、メシベは1個で花柱2個は長く、果時まで残る。
花後、萼は閉じて果実を包み込み、萼の先から2個の花柱が鉤状に飛び出している。
果実は痩果で、熟すと痩果の柄の関節が外れ、鉤状の花柱で動物や服にくっ付く。
ミズヒキとよく似ているが、花序に密に花が付く事、茎が中空である点が異なる。
また、葉は長めで、先が尾状に長く尖り、表面に毛がなくて光沢がある点も異なる。
なお、シンミズヒキの痩果は3〜3.5mmなのに対して、ミズヒキは2.5mm前後と小さい。

2010/10/16
御殿場市馬術・スポーツセンター奥の丘(一木塚)への通路脇で見かけたシンミズヒキです。
長い花序を横に伸ばしてたくさん果実を付けており、最初、単なるミズヒキだと思っていました。
ただ、ミズヒキにしては果実がびっしりと付いていて、こんなのもあるんだと思いました。
何んとなしにミズヒキを調べていて、花が密に付くシンミズヒキという種類があると知りました。
葉にも特徴があるようなのですが、埋もれていて、撮った写真には写っていませんでした。
ただ、ミズヒキではこれほど密に花は付かないそうなので、シンミズヒキと判断しました。
なお、既に花は終わっていて、閉じた真っ赤な萼片から鉤状の花柱が突き出しています。


ミズヒキとシンミズヒキ

     .
     .
  2018/8/25<ミズヒキ>           2010/10/16 <シンミズヒキ>
ミズヒキとシンミズヒキでは、花序の節と節の間隔が異なり、シンミズヒキの間隔が狭い。
そのため、花序に付く花(あるいは果実)の数に相当な差があり、シンミズヒキではびっしりと並ぶ。
花序の長さはシンミズヒキの方が長いとのことですが、個体差もあり、見た目では分かりません。
また、花(あるいは果実)の大きさに差があり、シンミズヒキの方が一回り大きいです。


エゾカワラナデシコ(Dianthus superbus L. var. superbus)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ナデシコ属>
 
ナデシコ科ナデシコ属の多年草。
日本では、北海道から本州の中部以北に分布する。
海外では、ユーラシア中部以北に分布する。
分類上は、カワラナデシコの基本種とされている。
草丈は30〜60cmで、茎は叢生して直立し、上部で分枝する。
茎や葉は緑色であるが、わずかに白粉を帯びる事もある。
葉は対生し、長さ3〜10cmほどの線状披針形で、先が尖る。
花期は6月〜8月で、茎頂に数個の花を付け、直径40mmほどの花を上向きに咲かせる。
淡紅色の花弁は5個で、舷部の先が深く細裂し、基部に濃紅紫色の毛がある。
萼片は長さ20〜30mmほどで、萼歯は長さ数mm。
苞は2対で十字対生し、下部の1対が大きく、先が尾状になる。
カワラナデシコやタカネナデシコと似ているが、苞の数や長さでで区別できる(詳細は下記)。
2008/11/3
御殿場市馬術・スポーツセンター奥の丘に向かう途中、通路脇で見かけたエゾカワラナデシコです。
淡紅色の花が風に揺られて、なかなか優美な雰囲気を持っています。


カワラナデシコの仲間

カワラナデシコ
エゾカワラナデシコ
タカネナデシコ







萼片の長さは3〜4cm
苞は3〜4対

萼片の長さは2〜3cm
苞は2対











萼片の長さは2〜3cm
苞は2対

カワラナデシコは平地や山地で時々見かけますが、この写真は山形県の加茂水族館で見かけたものです。
色が最も淡くて、花被片舷部の基部にある毛は濃紅紫色です。
エゾカワラナデシコは、八島ヶ原湿原(標高約1,632m)で見かけたものです。
花被片の色が最も濃い赤紫色で、花被片舷部の基部にある毛も濃紅紫色ですので、目立ちません。
タカネナデシコは、竜王マウンテンパーク(標高1,770m)の山野草ガーデンで見かけたものです。
草丈は20cmなく、基部の毛が紫褐色で、苞の数は2対です(写真を撮り忘れました)。
上段の写真で、花の基部にピンボケですが、かろうじて写っています。


バライチゴ(Rubus illecebrosus Focke)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キイチゴ属>

バラ科キイチゴ属に分類される落葉低木で、日本固有種。別名は、ミヤマイチゴ。
日本では、本州の関東南部以西から四国、九州の冷温帯に分布している。
和名は、茎葉に鋭い棘が多く、花がバラの花に似ていることに由来する。
樹高は20〜50cmで、地下茎は長く伸び、新苗を出して繁茂する。
茎は直立して無毛。分枝して低く広がり、下向きの鉤状の棘がまばらにある。
葉は互生し、長さ15〜25cmの奇数羽状複葉で、小葉は2〜3対付く。
小葉範長さ3〜8cmの披針形で、幅は狭く、縁には鋭い重鋸歯がある。
花期は6月〜7月で、長い花柄の先に直径4cm前後の白い5花弁の花を散房状に付ける。
萼片も5個で、先が尾状に伸び、縁と内側に短く白い毛が密生する。
果期は8月〜10月で、長さ15mm前後の集合果の核果で広楕円形。
赤く熟し、酸味があるが、十分に熟すと酸味が無くなる。

2005/8/13
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、真っ赤に熟したバライチゴの果実を見つけました。
既に花期が過ぎているのか、花を探したのですが見つかりませんでした。
ただ、葉が奇数羽状複葉で、小葉が5〜7個ありましたので、その点で本種と分かりました。

 
2007/8/18
富士山御殿場口(太郎坊)から少し上った登山道脇で、バライチゴの花を見つけました。
既に花期は過ぎていますので、かなり晩生の花のようです。
ただ、雨が降っていて陽が射していませんので、花は開き切ってはいませんでした。
近くには、真っ赤に熟した果実も見られましたが、花が終わった直後のものも見られました。

 
 
2009/8/22
富士山御殿場口(太郎坊)から少し上った登山道脇で、いくつかのバライチゴを見かけました。
花が咲いていたのは1輪だけで、後は若い果実と熟した果実でした。

テリハノイバラ(Rosa luciae/Rosa wichuraiana)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>
 
バラ科バラ属のつる性落葉低木で、日本では本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、フィリピンに分布する。
茎には鉤形の刺があり、立ち上がらず、地を這って伸びる。
葉は互生し、長さ8p前後の奇数羽状複葉。小葉は2〜4対で、頂小葉と側小葉の差はない。
小葉は長さ2p程の楕円形で、両面とも無毛で厚みがあり、鋭い鋸歯がある。葉表に光沢がある。
花期は6月〜7月で、枝先に直径3p程の白花を数個付ける。
花弁は5個で、オシベは多数ある。花柱は合着し、毛がある。
偽果は直径8o程の卵球形で、真っ赤に熟す。

2016/9/5
御殿場口新五合目の登山口から登って行くと、赤い果実を付けたテリハノイバラを見かけました。
既に花期は過ぎているので、花はなく、果実が点々と付いて、赤く色付いたものも見られます。
ノイバラと比較して、葉の表面に強い光沢があるので、本種としました。
1株なのか、複数の株なのか分かりませんが、地を這って大きく広がっています。


ノイバラとテリハノイバラ

ノイバラ
テリハノイバラ

花の直径は20mm前後

花の直径は30〜35mm

しわがあり、光沢がない

厚みがあり、光沢がある

花の見かけはよく似ていますが、テリハノイバラは大きい分、オシベが小さく見えます。
ただ、花の大きさやオシベの長さなどには変異があるので、花だけでは決めきれません。
両者の判別には、その葉を見るのが確実です。
名前の通りテリハノイバラの葉は、革質で厚みがあり、表面に強い光沢があるのが特徴です。
ノイバラの葉は、表面にしわがあり、光沢がないので葉で両者を見分けることができます。


キンミズヒキ(Agrimonia pilosa var. japonica)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・ワレモコウ連・キンミズヒキ属>
 
バラ科キンミズヒキ属の多年草で、在来種。
日本では北海道から本州、四国、九州に分布し、山野に自生する。
草丈は50cm以上で、1mを超える場合もある。葉は互生し、奇数羽状複葉。
茎の上部は枝分かれし、花柄の短い総状花序を付ける。
花は直径10mmほどで、黄色の5花弁。オシベは10本前後あり、メシベは2個ある。
痩果は萼筒と萼片に包まれて熟し、刺で動物にくっ付く。

2010/10/16
御殿場市馬術・スポーツセンター奥の丘(一木塚)への通路脇で見かけたキンミズヒキです。
といっても、既に花は終わって、引っ付き虫の果実が熟して黄色っぽくなっていました。
果実の周りを取り囲んでいる刺で、動物や人の衣服にくっ付いてきます。


キンミズヒキの花

     .
2013/8/6                     2016/9/5    .
キンミズヒキの花と未熟な果実の写真です。
タデ科のミズヒキとは関係なく、黄色い花が花序に並んで付く様を金色の水引に例えたものだそうです。


シモツケ(Spiraea japonica)
<バラ目・バラ科・モモ亜科・シモツケ連・シモツケ属>
 
バラ科シモツケ属の落葉低木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と各地に分布する。
海外では、朝鮮半島、中国に自生する。
樹高は1mほどにしかならず、幹は暗褐色、樹皮は縦に裂ける。
葉は互生し、長さ6cm前後の狭卵形で、先は尖り、基部を覗いて重鋸歯がある。葉柄は短い。
花期は5月〜9月で、枝先に複散房状の花序を出し、淡紅紫色の小花を多数密に付ける。
花は直径5o前後で、花弁は5個、メシベは5個で、オシベは25〜35個。
萼片も5個で、長さ2o程の三角形で、内側に短毛がある。

2007/8/18
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、シモツケが花を付けていました。
雨に濡れてしっとりとしたピンクの花は、なかなか艶やかです。

 
2009/8/22                2009/8/23
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、シモツケが花を咲かせていました。
8/22は夕方の日影で撮ったもので、8/23は朝日を受けているときに撮ったものです。
日影で撮ったものは若干青味が強く、朝日を受けたものは赤みが強く出ています。
光線条件によって、花の色が異なってくるのが良く分かりますね。

   
2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、シモツケを見つけましたが、ほぼ咲き終わっていました。
少し花が残っていたのが左端の写真。大半は中央のような感じで、子房が大きくなり始めていました。
中には、右端のようにかなり子房が大きくなっているものもありました。


シモツケとアカバナシモツケソウ

     .
<シモツケ>
     .
<アカバナシモツケソウ>
シモツケとアカバナシモツケソウの花と葉の比較です。
オシベの付き方や花弁の開き方など花にも細かい所に違いはありますが、葉の形がまったく異なります。
シモツケソウとアカバナシモツケソウの見かけは非常に似ていますので、
シモツケとの差異という観点では、その違いは同じとみて問題はありません。

シモツケは、町田市の薬師池公園で見かけたもので、自生種ではありません。
アカバナシモツケソウは八島ヶ原湿原や八ヶ岳自然文化園で見かけた自生種です。


オトコエシ(Patrinia villosa)
<マツムシソウ目・スイカズラ科・オミナエシ属>
 
スイカズラ科オミナエシ属の多年草で、在来種。漢字で書くと男郎花となる。
和名は、オミナエシ(女郎花)との対比で、茎葉が大きく、男性的ということに由来する。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布する。
草丈は1m程までになる。根元から匍匐茎を出し、その先端で根を下ろして増える。
葉は対生し、多くは羽状に分裂する。裂片は卵状長楕円形で、頂裂片が最も大きい。
花期は、8月〜10月で、茎の頂部に散房花序を付け、白い小花をたくさん付ける。
1つの花は合弁花で、先が5裂し、オシベは4本、メシベは1本ある。
果実には翼状に変化した直径5o前後のほぼ円形の小苞があり、醤油の腐ったような臭いがする。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇で、オトコエシが大きく花序を開いて花を付けていました。

 
2007/8/18
小さなオトコエシが、雨に震えるように小さな花を咲かせていました。

 
2016/9/5
富士山御殿場口(太郎坊)の第2駐車場の法面には、多くのオトコエシが見られました。
今が盛りのものと、花のピークが過ぎて果実が見られるものが混在しています。
果実には、円形の小苞が付いていて円盤型UFOのような形をしていて、赤味を帯びていました。

マツムシソウ(Scabiosa japonica)
<マツムシソウ目・スイカズラ科・マツムシソウ属>
 
スイカズラ科マツムシソウ属の越年草・多年草で、日本固有種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、山地や高地の草原に生育する。
山地では、葉を出して冬を越す越年草であるが、高地では2年目の葉を出す多年草である。
草丈は60〜90cmで、葉は対生し、羽状に深裂する。
葉の裂片の幅は、上部の葉は狭く、下部の葉は広い。
花期は8月〜10月で、株元から複数の長い花茎を立ち上げ、その先に大型の頭花を付ける。
淡青紫色の頭花の直径は4cm前後で上向きに咲き、基部の総苞片は葉状で線形。
周辺の小花は大型で5裂し、外側の3裂片が大きく伸び出す。内側の小花は小型の筒状で5裂する。
全て両性の雄性先熟で、どちらも花筒の中ほどにオシベが4個、メシベが1個ある。
オシベの葯は紫色で、花冠から突き出る。メシベの柱頭は頭状である。
痩果は被萼に包まれて大きくなり、長さ4mm前後の筒形で、上部の刺により動物の体にくっつく。

2004/8/15
富士山御殿場口(太郎坊)のバス停裏で、フジアザミの横からマツムシソウが花茎を伸ばしていました。
山歩きでは、草原などでよく見かける花ですが、パステル調の大きな花なので、好きな花の1つです。

 
2009/8/22
富士山御殿場口(太郎坊)のバス停裏で見かけた、初々しい感じのマツムシソウです。
前回の写真では、中心の小花は全て開花していますが、今回は外周の小花のみが開花しています。
そのため、初々しく感じたのかもしれません。私は、これくらいの開花状態が好きです。

ムラサキモメンヅル(Astragalus adsurgens)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ゲンゲ属>
 
マメ科ゲンゲ属の多年草で、在来種。マンシュウモメンヅルの別名を持つ。
和名は、ムラサキの花を付け、根が繊維状に裂けて木綿に似ていることに由来する。
日本では、北海道から本州の中部地方にかけて分布し、山地帯から亜高山帯の砂礫地や石灰岩地に生える。
海外では、朝鮮半島から中国東北部、モンゴル、アリューシャン列島、北アメリカなどに分布する。
草丈は10〜60cmで、太い木質のねじれた直根を地中深くまで伸ばす。根には根粒菌を持つ。
葉は互生し、奇数羽状複葉で、小葉は5〜10対。小葉は長楕円形で、裏面に白い丁字毛がある。
花期は、7月〜8月で、葉腋からながさ5pほどの総状花序を出し、紫色の蝶形花を数個〜20個ほど付ける。
花後には、豆果ができ、その莢は上向きに付く。

2007/8/18
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇の斜面で、ムラサキモメンヅルが花を付けていました。
大きな株ではなかったので花数は少なめでしたが、花序に淡紫色の花が10個前後付いていました。

 
2009/8/23
富士山御殿場口(太郎坊)の駐車場脇の斜面で、ムラサキモメンヅルが花を付けていました。
おそらく、2007年に撮影した株と同じものだと思います。
火山礫が堆積しているような場所なので、栄養が乏しく、成長はゆっくりしているようです。

エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)
<ギボウシゴケ目・ギボウシゴケ科・シモフリゴケ属>
 
ギボウシゴケ科シモフリゴケ属のコケで、在来種。低地から亜高山の日当たりの良い場所に生育する。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では朝鮮半島から中国、ロシア、ベトナム、オーストラリアに分布する。
名の通り砂地などの乾燥する場所に良く生育し、平地や斜面に広がって群落を形成する。
草丈は1〜4cmで、茎は分枝せず、直立して葉を密に付ける。
葉は長さ2mm強の卵状披針形で、葉先は短い透明尖になる。葉縁は折れて、2重になる。
なお、葉は水分を含むと広がって緑となり、乾燥すると上方に巻き込んで、色は白くなる。
雌雄異株で、凾ヘ長楕円状で平滑。剳ソは長さ15mmで赤褐色、平滑。剋浮ヘ2裂して糸状。

2007/8/18
富士山御殿場口(太郎坊)の登山道を少し上った所で、岩に生えている苔を見つけました。
白っぽいのは地衣類で、右手と左手に生えているコケは種類が異なるようです。
左手のこんもりとしたコケは、スギゴケに似ていますが、淡い色合いで、葉にも刺々しさがありません。
このコケは、乾燥する場所でも良く生育する、エゾスナゴケと思われます。
なお、右手のコケは、スギゴケではないかと思われ、一部に茶色く枯れたものも見られます。

 
2009/8/23
富士山御殿場口(太郎坊)の登山道脇で、火山弾を覆うようにして生えていたエゾスナゴケです。
上の写真は雨が降っていた時のものですが、今回は少し乾燥した状態のものです。
そのため、水気の少ない場所のエゾスナゴケは、上方に巻き込んで白くなっています。

スギゴケ(Polytrichum juniperinum)
<スギゴケ目・スギゴケ科・スギゴケ属>


 
スギゴケ科スギゴケ属のコケで、厳密にはスギゴケ属の1種を指す標準和名である。
しかし、一般にはスギゴケ属とその近縁のニワスギゴケ属の総称としても用いられる。
あるいは、さらに広範囲のスギゴケ科に属する種、全体を指す総称として用いられることもある。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布し、世界各地に分布域を持つ。
スギゴケやその近縁種は、日本では比較的海抜の高い場所に見られる。
草丈は高さ3〜10cmで、茎は直立して、葉は長さ4〜9mmの披針形。
乾くと葉は茎に沿うようにたたまれ、巻縮することはない。
葉の縁は、内側に折りたたんだようになり、葉表を覆うようになる。
中肋(ちゅうろく)は、葉の先端から少し突出して芒(のぎ)のようになる。
雌雄異株で、雌株からは長さ2〜8cmの剳ソが立ち上がり、四角柱状の(さく)が付く。
凾ェ若いときには毛の多い帽(ぼう)で包まれており、帽のの先は細く尖っている。

2007/8/18
富士山御殿場口(太郎坊)の登山道を少し上った所で、岩に生えている苔を見つけました。
白っぽいのは地衣類で、右手と左手に生えているコケは種類が異なるようです。
右手の疎らなコケは、スギゴケではないかと思われ、一部に茶色く枯れたものも見られます(下段右)。
左手下のコナアカミゴケの周囲にも濃緑色のコケが見えますが、これもスギゴケと思われます(下段左)。
なお、盛り上がった黄緑色のコケは、乾燥する場所でも良く生育する、エゾスナゴケと思われます。

コナアカミゴケ(Cladonia macilenta)
<レカノラ目・ハナゴケ科・ハナゴケ属>


 
ハナゴケ科ハナゴケ属の子嚢地衣類で、在来種。
日本では、本州から四国、九州、沖縄に分布し、世界にも広く分布している。
平地から低山地の腐植土上や朽木、樹幹の基部などに自生している。
子柄は淡緑色で中空、直立し、稀に先で分枝する。高さは1〜3cm、直径は1mm前後になる。
子器は柄の先に付き、直径は2o程になる。盤は鮮やかな赤色。
この子器の赤い色は、多くが集まると小さい割には、非常に目立つ。

※ 今までコアカミゴケとしていたが、コアカミゴケは日本には生育していないことが判明した。
今までコアカミゴケとしていたものは、コナアカミゴケに変更された。

2007/8/18
富士山御殿場口(太郎坊)の登山道を少し上った所で、岩に生えている苔を見つけました。
右手と左手に生えているコケの上部に見える白っぽいのは、地衣類です。
上部に子柄の先に赤茶色の子器を1つずつ付けているものがあり、コナアカミゴケと思われます(下段左)。
左手下のものも同様と思われますが、子柄は立ち上がっていても子器は付いていません(下段右)。
なお、盛り上がった黄緑色のコケはエゾスナゴケと思われ、右手のばらけたコケはスギゴケと思われます。









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