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新宿御苑 大温室



明治8年(1875年)に無加温の温室が完成しています。
その後、明治12年(1879年)には、宮内省所管の「新宿植物御苑」となり、皇室苑地として運営されました。
明治25年(1892年)に加温式の洋風温室が建築される、近代的な促成栽培が行われるようになりました。
大正から昭和の始めにかけては、特に洋ランの交配が進められ、カトレヤ・シンジュクなどの独自品種が多数作出されました。
そして、大温室は平成24年(2012年)11月にリニューアルオープンしました。
現在、環境省が所管する環境配慮型温室として、熱帯植物およそ2,700種が栽培、展示されています。
また、絶滅のおそれのある植物の保護増殖に関しても、熱心に取り組まれています。
洋ランに関しては、戦前の古い品種や御苑で作出された独自品種、原種の野生ランの保護栽培に取り組まれています。

花見ついでに何度か立ち寄ったのですが、リニューアル後に行ったことがなかったので、入ってみました。
大きな樹木もすんなりとはいってしまう高さがあり、広い内部には所狭しといろいろな植物が植えられていました。
ざっと、一回りしただけなのですが、目に止まったいくつかの植物を以下に掲載します。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
アオイ目
アオイ科(カカオ)
アブラナ目
パパイア科(パパイア)
キジカクシ目
ラン科(ラン)
キントラノオ目
オクナ科(ミッキーマウスノキ[オクナ・セルラタ])
シソ目
キツネノマゴ科(ツンベルギア・フォーゲリアナ、ツンベルギア・マイソレンシス)
スイレン目
スイレン科(オオオニバス、熱帯スイレン)
フトモモ目
フトモモ科(ジャボチカバ)
ショウガ目
バショウ科(バナナ、ヒメバショウ)
マメ目
マメ科(オオベニゴウカン、ヒスイカズラ)
ムクロジ目
ミカン科(レモン)
大温室の植物
和名インデックス


カカオ(Theobroma cacao)
<アオイ目・アオイ科・カカオ属>
 
アオイ科カカオ属の常緑樹で、原産地は中央アメリカから南アメリカの熱帯地域。
樹高は4〜10mで、生育には規則的な降雨と排水のよい土壌、湿潤な気候が必要である。
原産地では、標高が300m程度の丘陵地に自生し、花を付けるまでには4年ほどかかる。
花期は原産地では周年開花するが、日本では5月以降に開花することが多い。
花は、直径3cmほどの白花(赤〜黄色味を帯びる品種もある)で、房状に幹生花として付く。
カカオの結実率は低く、1%未満しかない。果実は6ヶ月ほどで熟す。
果実は幹に直接ぶら下がる幹生果で、長さ15〜30cm、直径8〜10cmになる。
この果実は、カカオポッドと呼ばれ、多くは卵形〜長楕円形であるが、三角形などの品種もある。
熟した果実の外皮も、赤、黄、緑など様々な色がある。
カカオポッドの中には種子が数十個入っており、これがカカオ豆である。

栽培されているカカオには、現在は3系統が知られている。
@フォラステロ種(FORASTERO):西アフリカと東南アジアで多く生産される主流品種。
成長が早く耐病性に優れるため栽培しやすく、果実は黄色で苦味が強い。
Aクリオロ種(CRIOLLO):ベネズエラ、メキシコなどで僅かに生産されるが、病虫害に弱い。
果実は赤や黄色で苦味が少なく、独特の香りがあるため、フレーバービーンズと呼ばれている。
Bトリニタリオ種(TRINITARIO):中南米のベネズエラ、トリニダード・トバゴなど栽培される。
フォラステロ種とクリオロ種を交配したハイブリッド種で、栽培が容易で品質も優れる。

2016/4/3
カカオの結実率は1%未満で、果実そのものが少ないようです。
その幹生果が2個、幹からぶら下がっていました。これをカカオポッドと呼ぶそうです。
その中に種子が数十個入っており、それがカカオ豆となります。

パパイア(Carica papaya L.)
<アブラナ目・パパイア科・パパイア属>
 
パパイア科パパイア属の常緑小高木で、その果実も「パパイア」という。
メキシコ南部から西インド諸島を原産とする(草本性)常緑小高木である。
日本では、沖縄などで人家の庭に自生していて、雑草扱いされることがある。
耐寒性に乏しく、生育最低気温は15℃で、10℃以下になると生育が止まる。
樹高は10m以上になるが、近年は栽培しやすい矮性種も開発されている。
茎は成長に伴い太くなるが、非常に柔らかく、台風などで簡単に倒れる。
葉は、まっ直ぐに立ち上がった茎の上部に、長い葉柄を持つ葉を集中して付ける。
葉は長さ50〜70cmで、掌状に深裂し、各裂片はさらに中裂する。葉質は薄くて柔らかい。
花期は6月〜7月で、黄白色の花は茎の先端近くで、葉柄の下側に付く。
花冠は筒状花で、先が5裂し、直径は5cm前後になる。
通常は雌雄異株で、雄株では葉腋から長い花序が垂れ下がり、花を多数付ける。
雌株では、短い花柄の先に雄花より大きな花を単性、あるいは数個付ける。
稀に両性花を付ける株があり、両性花では自家受粉で結実する。
果実は、倒卵形で長さ8〜20cmぐらいとなり、熟すと緑色が橙黄色になる。

2016/4/3
パパイアの木にたくさんの果実(パパイアというとこれを連想しますね)がなっていました。
多くは未熟な緑色をしていましたが、2個が黄色く熟していました。
日本でも沖縄などでは人家の軒先に自生しているそうで、うらやましく思えたりします。
しかし、沖縄の人にとっては雑草と同じく、繁殖力の強い厄介な植物のようです。
果実を売ればと思うのですが、茎に木質部がなく、風で簡単に倒れてしまうため安定供給が難しいそう。

ラン(Tricyrtis formosana Baker)
<キジカクシ目・ラン科>



単子葉植物の科のひとつで、その多くが美しく、独特の形の花を咲かせる。
被子植物の中では最も後に地球上に現れた植物で、被子植物の中では最も種数が多い科である。
世界に700属以上15,000種、日本に75属230種が分布している。
鑑賞価値の高いものが多く、栽培や品種改良が進められているが、採取により絶滅に瀕している種も多い。
ラン科は、南極を除くすべての大陸の熱帯から亜寒帯に自生している。
植物体は偽鱗茎(バルブ)を持つなど独特の部分が多く、また、特異なほど効率の良い花形を発達させている。
花弁は外花被片3個、内花被片3個で構成され、全てが同形ではないため、花は左右対称となる。
その内、内花被片の下部の1個(唇弁)は、袋状やひだがあるなど特異な形状をしており、他と異なる。
他の2個の内花被片は同形で、側花弁と呼ばれる。
外花被片は内花被片と対なしており、唇弁と対をなすものを背萼片、側花弁と対をなすものを側萼片という。
本来、花が横向きになると唇弁が上になるが、ラン科では子房が180度捻じれて、唇弁が下側になる。
そのため、唇弁がオシベやメシベを受けるような形になっている。
オシベとメシベはずい柱と呼ばれる両者が完全に一体化した構造となっている。
オシベは、1個か2個を残して、後のものは退化している。
多くのランでは、ずい柱の先に葯があり、その下面にメシベの柱頭がある構造をしている。
ランの根は太く、膨らんだような形のものが多く、菌類(担子菌類)と共生して菌根を形成している。

2018/10/4
大温室の一角にいろいろなランが置かれていて、見事な花を付けていました。
自宅にもランは何種類か置いていますが、温室ではないので、これほど見事には咲きません。
何種類かのランが置かれていましたが、種類や名前までは確認しませんでした。

ミッキーマウスノキ(Ochna serrulata)
<キントラノオ目・オクナ科・オクナ亜科・オクナ属>
 
オクナ科オクナ属の非耐寒性常緑低木で、原産地は南アフリカ。正式名称はオクナ・セルラタ。
樹高は1.5〜2.5mで、葉は互生し、葉身は長さ4cm前後の長楕円形で、鋸歯がある。
花期は5月〜8月で、花の直径は3cm前後の黄色い5弁花。オシベは多数あり、メシベは1個。
花後もオシベが残り、緑色だった萼片が赤く色づいてきます。
それに伴って中央が盛り上がって赤い花托となり、そこに縦長の果実(石果)が1〜5個付きます。
果実は最初は緑色ですが、花托や萼片が赤くなるのに伴い、黒く熟していく。
この黒い果実が鼻や目に、赤い花托が顔、赤い萼片が耳に、オシベが髭に見えるのが名前の由来。
同じような花や果実を付けるものに、同属のオクナ・キルキイ(Ocna kirkii)がある。
違いは、オクナ・セルラタの花や果実が下向きなのに対して、オクナ・キルキイは上向きになる点。
そして、花後、萼片が一度閉じた後、熟すにつれて再び開く点も異なります。
また、両者を比較した時、オクナ・キルキイの方が、葉も花も一回り大きい。

2016/4/3
既に花期は過ぎて、果実が熟し始めていました。
この果実の形がミッキーマウスに似ているそうですが、とてもそうは見えません。
ただ、左下の果実で、5個の内、左右に出ている2個を除去したら、そう見えるかもしれません。
既に黒くなったものが鼻、灰緑色の2個が黒くなったら眼になり、赤ら顔のミッキー?でしょうか。

ツンベルギア・フォーゲリアナ(Thunbergia vogeliana)
<シソ目・キツネノマゴ科・ヤハズカズラ属>
 
ツンベルギアは、アジアやアフリカの熱帯・亜熱帯地域に約100種が分布する。
そして、一年草から多年草、低木からつる性植物と、その形態は多岐に渡る。
ただ、いずれもが熱帯性植物で耐寒性が低いため、日本では戸外での越冬はできない。
ツンベルギア・フォーゲリアナは、中央アフリカ原産のつる性常緑低木。
樹高は2〜2.5mで、蔓の長さは5mになる。葉は対生し、長さ10〜20cmの羽状複葉。
小葉は卵形〜長楕円形であるが、3残裂することがある。葉柄は短かく、縁は全縁。
花期は5月〜10月で、葉腋から集散花序を出し、直径4〜5cmの濃青紫色の花を付ける。
花は筒状花で、先が5残裂する。中心の咽部は濃黄色で、花筒部は白色。

ツンベルギア・エレクタと酷似していて、違いは樹高と葉の縁が波打っているか否か。
ツンベルギア・フォーゲリアナの樹高は2〜5mで、葉の縁が波打っている点で異なる。
ただし、変異があるので、これらの点で識別できるのは特徴がはっきりしているもののみ。

2016/4/3
紫色の花弁と黄色い花芯の取り合わせが印象的な花です。
名板が無ければ、エレクタと区別することは難しかったと思います。
エレクタはコダチヤハズカズラの別名がありますが、つる性植物ではなく低木です。
一方、フォーゲリアナはつる性常緑低木なので、こちらの方がカズラの名前に合っている気がします。

ツンベルギア・マイソレンシス(Thunbergia mysorensis)
<シソ目・キツネノマゴ科・ヤハズカズラ属>
 
ツンベルギア・マイソレンシスは蔓性常緑多年草で、原産地はインド南部。
蔓性で長さは10mにもなり、披針形の葉が対生する。
花期は3月〜8月で、長さが1mに達する総状花序を垂れ下げ、多数の花を付ける。
花は直径4〜5cmで、花冠の内側が濃黄色で、苞が赤褐色と色の取り合わせが目を引く。
花冠は、5裂するが、下側の3裂片が反り返るので縦長に見える。

2016/4/3
ツンベルギア・エレクタの仲間ですが、花の形がまったく異なります。
3個が大きく反り返り、上の2個が重なって1個の花弁に見えているためです。
例えは悪いですが、鎌首を持ち上げ、大きく口を開いた毒蛇の頭部に見えなくもないですね。

オオオニバス(Victoria amazonica)
<スイレン目・スイレン科・オオオニバス属>
 
スイレン科オオオニバス属水生植物で、アマゾン川が原産地。
非常に大きな浮葉を水面に展開することで知られ、直径は3m以上になる。
縁が10〜15cmほど反り返って、盆形になっているが、切れ込みがあるため、水はたまらない。
花は夕方頃から白い花弁を展開させて芳香を発し、翌々朝にはピンク色に変化し、芳香も減る。
花の直径は20〜40cmで、送粉者となっているのは主に甲虫である。
夜のうちに送粉者が訪れ、翌朝になると一度花弁を閉じて、中に送粉者を閉じ込める。
その間にオシベが開いて、中を動きまわる送粉者に花粉を付着させる。
次の朝に再び開花し、送粉者は外に放たれる。そして、別の花に移動したときに受粉される。
果実は楕円形で、全体に刺が生えている。その中に1cm前後の黒色の種子が詰まっている。
熟した後、種子は水中に落下し、1〜3ヶ月後に発芽することもある。
しかし、条件が悪い場合は、数年間休眠することもある。

2016/4/3
オオオニバスが、つばの捲れ上がった独特の浮葉を浮かべていました。
ただ、小さい葉には捲れ上がったつばはないようで、円盤状の葉も見られました(左写真)。
右の写真ではツボミが1個、水面から顔を出していますが、夜咲くので開園時間内には見られませんね。
なお、左写真の左下に見えるのは、刺だらけの果実のようです。

熱帯スイレン(Nymphaea)
<スイレン目・スイレン科・スイレン属>
 

 

 
スイレン科スイレン属の多年草で、浮葉植物。アフリカ〜熱帯アジアが原産地。
水中の地下茎から長い茎を伸ばし水面に葉を浮かべ、葉柄部分に強い切れ込みが入る。
葉が赤みを帯びる品種が多い。なお、葉の付け根に子株ができるムカゴ種もある。
花期は7月〜10月で、温帯スイレンと異なり、花茎を水面より上に伸ばして大きな花を咲かせる。
花色も、温帯スイレンにはない青や紫色があり、白、赤、ピンク、黄、青、紫、複色と多彩である。
花は朝開いて夕方まで咲き続ける昼咲き性のほか、夜咲き性の品種もある。
耐寒性がないため、水温が15℃を下回ると生育が止まり、休眠状態となる。

2016/4/3
熱帯スイレンが、あまり目にすることのない紫や淡青色、淡黄色の花を付けていました。
耐寒性が低いので冬越しが大変なようですが、一般家庭でも楽しめる方法はあるそうです。

ジャボチカバ(Plinia cauliflora (Mart.)
<フトモモ目・フトモモ科・プリニア属>
 
フトモモ科プリニア属の常緑高木で、南米原産の果物。名前は「亀のいる地」という意味とのこと。
樹高は0.5〜3mと品種によって異なり、野生のものでは15mに達するものもある。
葉は対生し、葉身は長楕円形の全縁で、その大きさは品種により異なり、3系統に分かれる。
大葉系は7cm前後、中葉系は5.5cm前後、小葉系は4.5cm前後になる。
花期は6月〜11月で、花は白色の幹生花で多数付き、その直径は5〜10mm。
花には花弁はなく、花糸が白い多数のオシベが放射状に広がる。
果実は幹に直接ぶら下がる球形の幹生果で、1〜4個の種子がある。
熟すと濃紫色になり、果皮はやや厚めで、果肉は白かピンクである。
果実には、ポリフェノール、ビタミンC、カリウム、タンニン、シアニンなどが多く含まれる。
果実の大きさは、大葉系は20〜25o、中葉系は30o前後、小葉系は20o以下である。
生食が好まれるが、収穫後15分で味が変わってしまうため、保存性はない。
そのため、ジャムやゼリーなどの加工品にしたり、急速冷凍して保存される。

2016/4/3
ジャボチカバは直径3〜4cmの果実で、濃紫色の厚めの果皮の下に、白かピンクの果肉があるそう。
好んで生食されるそうですが、摘み取って15分で味が変わってしまうとのこと。
生食は、その場で摘み取って食べる以外に方法はなさそうですね。

バナナ(Musa spp.)
<ショウガ目・バショウ科・バショウ属>
 

 
バショウ科バショウ属の常緑多年草で、熱帯アジア、マレーシアが原産地。
なお、バナナは、バショウ属の内で、果実を食用とする品種群の総称である。
バナナの種によっては、熟すまでは毒を持つものもある。
草丈は2〜10mで、葉鞘が幾重にも重なりあった偽茎は直径10〜20cmほどになる。
茎は地下にあって短く横に這い、その先から偽茎が立ち上がり、その先に長楕円形の葉身が伸びる。
葉身は長さ1〜2m、幅40〜60cmで、縦に簡単に割けるようにできている。
そのため、風雨にさらされるような所では、葉が細かく裂けていることが多い。
これは、大きな葉では強い風で倒れる危険性があるが、細かく裂けることで風を受け流せるため。
幼苗期から数えて35〜45個の葉が出ると、花序が偽茎の先に現れ、大きくなると下垂する。
花序は、赤紫色の苞が重なり合って、長さ30〜60cmの楕円状円錐形になる。
花序は1本の果軸に複数の果房が付き、各果房には10〜20個程度の果指が付く。
赤紫色の大きな花弁に見えるは苞葉で、1個ずつめくれて、2列に重なった果指(雌花)群が現れる。
果指一つ一つが一本のバナナに成長し、果房がバナナの房となる。
開花は一本の偽茎につき一回のみで、開花後は株元から吸芽を出して枯れてしまう。
最初、果指は下に向けて成長するが、後に上へ向けて成長するため湾曲した形となる。
果皮の色は品種によって異なり、緑色から黄色になるものが知られているが、赤紫色〜紫色と多様である。
成熟したバナナの皮にはクロロフィルの分解物が含まれ、紫外線を照射すると青色の蛍光を発する。
現在、主な栽培種としては、キャベンディッシュ、ラカタン、レディ・フィンガー、シマバナナなどがある。
キャベンディッシュは世界で生産されるバナナのほぼ半数を占め、日本での流通量が多い品種で、黄色になる。
ラカタンは色と形はキャベンディッシュとほぼ同じで、大きさは少し小さい。クエン酸が多く含まれ、味が濃い。
レディ・フィンガーは、モンキーバナナとも呼ばれる小型種で、皮は薄く、果肉は柔らかくて濃厚な甘みがある。
シマバナナは、南九州や沖縄で栽培され、酸味がやや強くて、皮が薄く傷みやすい。
これ以外に、日本ではあまりなじみはないが、ツンドクやカルダバといった料理用のバナナもある。

2016/4/3
温室内で見かけたバナナです。木のように大きくなりますが、立派な草本。つまり、草です。
2種類のバナナが栽培されていたようで、その内の1つが花を付けていました。
花の実物を見たのは初めてで、この一塊の花が、バナナの1つの房になるそうです。

なお、暗赤紫色の方は、生食用のアカバナナという品種で、中は普通のバナナと同じだそうです。
緑色の方は、生食用のサンジャクバナナで、数mの高さにしかならない矮性の品種です。

ヒメバショウ(Musa coccinea)
<ショウガ目・バショウ科・バショウ属>
 
バショウ科バショウ属の常緑多年草で、中国南部からインドシナ半島が原産地。
草丈は1〜2mで、偽茎は直径5cmほどになる。
葉は長さ1m前後の長楕円形で、バナナの葉に似ている。
花期は5月〜10月(原産地や温室では周年)で、茎頂に緋色の苞に包まれた花序を付ける。
花序は下垂するバナナとは異なり、上を向いて付き、苞の間に黄色い花を付ける。
英名の「Scarlet banana」が示すように、赤いバナナの実を付ける。

2016/4/3
温室内で見かけたヒメバショウで、真っ赤な苞が否応なしに目に飛び込んできます。
実際の花は、苞の間に見えている小さな黄色い部分で、バナナと同じ構造です。

オオベニゴウカン(Calliandra haematocephala)
<マメ目・マメ科・ネムノキ亜科・ネムノキ連・ベニゴウカン属>
 
マメ科ネムノキ亜科ベニゴウカン属の熱帯性常緑低木で、原産地はボリビア、ペルー、ブラジル。
樹高は2〜5mで、よく分枝する。葉は対生し、偶数羽状複葉で、小葉は3〜7対。
小葉は、長楕円形で先が尖り、縁は全縁で、葉質は革質、裏面には軟毛がある。
花期は、日本では12月〜5月で、直径7〜10cmの化粧パフのような花を咲かせる。
糸状に飛び出しているのはオシベで、長さは30〜35mmある。
長さ8〜10mmの白い花弁は基部にあるが、オシベに隠れて見えない。
花糸は赤いものが多いが、園芸品種には白や紫、青のものがある。
果実は長さが4〜6cmの豆果で、革質、扁平。灰褐色に熱すると2つに裂開する。

2002/3/24
温室内で見かけたオオベニゴウカンで、真っ赤なオシベが否応なしに目に飛び込んできます。
ネムノキの仲間なので、下記のように花の構造は似ていますが、見た目はかなり異なり、目立ちます。


ネムノキの花

     .

ネムノキも小枝の先端に淡紅色の花を数十個からなる花序を付けます。
しかし、花の数はオオベニゴウカンより少なく、花序が球状になることはありません。
ただ、個々の花の構造は似ていて、花糸の長い多数のオシベが花冠より飛び出しています。


ヒスイカズラ(Strongylodon macrobotrys)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・インゲン連・ヒスイカズラ属>
 
マメ科ヒスイカズラ属に属する常緑つる性木本で、原産地はフィリピン諸島。
樹高は5〜20mで、茎は丈夫で捻じれ、直径は25o程になる。
葉は互生し、長さ15〜25cmの3出複葉で、始め赤みを帯び、その後淡緑色、濃緑色と変わる。
頂小葉は長さ12〜16cm、側小葉は長さ9〜15cmの楕円形で先が尖り、縁は全縁。
花期は3月〜5月で、茎頂や葉腋から長さが40〜150cmの総状花序が出す。
花序には5〜8個の花が束生しながら多段に付き、多くの花を付ける。
花茎や花柄、萼は紫色を帯び、花色は翡翠色をしていて、美しい。
花柄は長さ数cmで、萼は釣鐘形。花は爪型の蝶形花で、長さは6〜8p。
旗弁は卵形で大きく反り返り、翼弁は楕円形で旗弁の半分以下の大きさしかない。
竜骨弁は長さが5cm弱で旗弁とほぼ同長。先が細く尖り、上に反り返る。
花は数日で咲き終わり、萼からポトリと落下する。
なお、花粉の媒介者はオオコウモリのため、国内で結実することはほとんどない。
花色の翡翠色は、コピグメント効果(アントシアニン類がフラボン類などと組み合わされ、
青色味を増す効果)によるもので、色素のマルビン・サポナリンが含まれていること、
表皮細胞がアルカリ性になっていることで、発色している。

2002/3/24
温室内で見かけたヒスイカズラが、翡翠色の花を多数付けた花序を垂れ下げていました。
花の色が、今まで見たことのないきれいな翡翠色だったので、思わず見とれてしまいました。
また、花粉の媒介をオオコウモリが行うというのも意外でした。
翼開長が2mになるものもいるオオコウモリが、どのようにして花粉を媒介するのか想像がつきません。

レモン(Citrus limon)
<ムクロジ目・ミカン科・ミカン属>
 
ミカン科ミカン属の常緑低木で、ヒマラヤ東部が原産地。
樹高は2〜4mで、若枝が緑色であるが、2年以上経つと暗灰色になる。
葉は互生し、葉の付け根には3cmほどの棘がある。
葉は長さ11cm前後の長楕円形で、先が尖り、縁には鋸歯がある。
花期は5月〜6月で、葉腋に総状花序を付け、直径4cmほどの花を数個付ける。
ツボミは淡紫色を帯びるが、開花すると白〜淡紅紫色の強い香りのする5弁花である。
果実は直径4〜7cmの紡錘形で、先に乳頭という突起があり、熟すにつれ緑から黄色へと変わる。
果実は酸味と香りが強く、果汁も果皮も古くから飲料や香料として使われた。

2016/4/3
レモンがヒマラヤ東部を原産とする常緑低木と、初めて知りました。
果実が紡錘状の形になる点を除き、花も果実も柑橘類のそれとよく似ています。









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