ホーム旅の見聞録早春の利尻島と礼文島を巡る旅>早春の利尻島と礼文島を巡る旅で見かけた野草(U)


早春の利尻島と礼文島を巡る旅で見かけた野草(U)



早春の利尻島と礼文島を巡る旅で、下記7地域で見かけた野草です。

旭川から稚内までの路傍、サロベツ湿原、稚内、礼文島、利尻島、宗谷岬、宗谷岬から旭川までの路傍



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
セリ目
セリ科(エゾノヨロイグサ、オオハナウド、カラフトニンジン)
センリョウ目
センリョウ科(ヒトリシズカ)
ツツジ目
ツツジ科(エゾイチヤクソウ)
ナデシコ目
タデ科(オオイタドリ)
バラ目
バラ科(キジムシロ、オニシモツケ、チシマワレモコウ、ハマナス、ナナカマド、
      オオヤマザクラ[エゾヤマザクラ])
ブナ目
カバノキ科(シラカンバ[シラカバ])
マツムシソウ目
レンプクソウ科(エゾニワトコ)
ミズキ目
アジサイ科(ツルアジサイ)
ムラサキ目
ムラサキ科(ハマベンケイソウ)
ヤマモモ目
ヤマモモ科(ヤチヤナギ)
ユキノシタ目
ベンケイソウ科(イワベンケイ、オウシュウマンネングサ[ヨーロッパタイトゴメ])
ユリ目
メランチウム科(エンレイソウ、オオバナノエンレイソウ、コバイケイソウ)
ユリ科(オオウバユリ、キバナノアマナ、ツバメオモト)
 
トクサ目
トクサ科(スギナ[ツクシ])
 
コンブ目
コンブ科(リシリコンブ)
早春の利尻島と礼文島を巡る旅で見かけた野草(U)
和名インデックス



エゾノヨロイグサ(Angelica ursina)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・シシウド属>
 
セリ科シシウド属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の山陰地方から中部地方以北に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国北東部、ロシア極東地方、樺太やシベリア東部に分布する。
草丈は1〜2mになり、直立した太い茎は中空で、上部で分枝して、上部の節には間々毛状突起がある。
葉は2〜3回3出羽状複葉で、小葉はさらに2〜3裂することがある。
小葉は質がやや厚く、裏面は白色を帯び、長さ9〜20cmの長楕円形〜狭卵形。
小葉の先は鋭尖頭または鋭頭で、縁は鋭鋸歯になり、基部は切形または広いくさび形となる。
なお、頂裂片の基部は小葉柄に翼状に流れるが、その他の小葉でも間々見られる。
上部の葉は小さく退化し、葉柄の基部は鞘状になって倒卵形に膨らむ。
花期は7月〜8月で、茎頂に細かい毛状突起のある大形の複散形花序を出す。
花柄は長さが5〜8pで30〜60個あり、小花柄は長さが5〜15mmで40〜60個ある。
小花柄の先に直径3o前後の白い5花弁の小花を付ける。なお、花が淡紅色を帯びることもある。
花後にできる長さ6〜10mmの果実は分果で、背面に3脈があり、側隆条は扁平で広い翼が張り出す。

2018/5/10
稚内市郊外のホテルから散歩に出かけた際、道路脇の法面で見かけた大きな葉です。
道内には、エゾニュウ、アマニュウ、エゾノヨロイグサ、オオハナウドと4種の大型セリ科植物が自生するとか。
2種類見かけた大きな葉の1つですが、葉の形状からアマニュウとオオハナウドは除外。
エゾニュウかエゾノヨロイグサで迷ったのですが、葉が華奢で小さめなのでエゾノヨロイグサとしました。
もう少し大きくなるか、花があれば一目瞭然なのでしょうが、両者を知らない者には判断しずらいです。

オオハナウド(Heracleum lanatum)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・ハナウド属>
 
セリ科ハナウド属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州近畿地方以北に分布する。
関東以西では、亜高山や高山に、東北地方や北海道では平地でも見られる。
海外では、ラスカ、アリューシャン、カムチャッカ、サハリンに分布する。
草丈は2m近くになり、茎は太くて中空で直立し、上部で枝分かれする。
葉は互生し、基部では葉柄は長く3出葉で、小葉は3〜5裂する。
夏、上部に大きな複散形花序を付け、白色の5花弁の小花をたくさん付ける。
中央と周辺では花弁の形が異なり、周辺部の花では、外側の1花弁が大きく、2深裂する。

2018/5/10
稚内市郊外のホテルから散歩に出かけた際、道路脇の法面で見かけた大きな葉です。
道内には、エゾニュウ、アマニュウ、エゾノヨロイグサ、オオハナウドと4種の大型セリ科植物が自生するとか。
2種類見かけた大きな葉の1つですが、葉の形状からオオハナウドと判断しました。
大きく切れ込みますが、全裂はしません。それがオオハナウドの葉の特徴です。


オオハナウドの花と果実

       .
2016/4/23            2016/4/23            2016/5/15
小田急線の町田駅近くの法面に、大きな群落を作っているオオハナウドです。
4月下旬には、大きな花序を立ち上げ、独特な形の花(外周部の花の花弁が大きくなる)が目に付きます。
それから3週間ほど経った頃には、ほとんどが果実になっていました。


カラフトニンジン(Conioselinum kamtschaticum auct. non Rupr.)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・ミヤマセンキュウ属>
 
セリ科・ミヤマセンキュウ属の多年草で、在来種。別名はハマセンキュウ。
日本では、北海道から本州北部に分布しており、海岸の砂地や草地などに生育する。
海外では、樺太、カムチャッカ、アリューシャン、アラスカ、北カリフォルニアに分布する。
草丈は40〜150cmで、茎は直立して縦筋があり、上部で分枝する。
葉は2〜3回3出複葉で、厚みのある小葉や裂片は深く切れ込み、葉の先端は少し尖る。基部は鞘状。
花期は8月〜9月で、茎頂に複散形花序を出し、直径4oほどの白い小花を多数付ける。
なお、複散形花序の基部には線形の総苞片が、花柄の先には線形の小苞片が、各々複数付く。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上る階段脇で見かけたもので、何の葉なのか分からなかったものの1つです。
遠くでバスガイドさんのシャクという声が聞こえていたので、調べたのですが、どうも違いそう。
シャクの葉は、もっと薄っぺらな感じで、羽状の切れ込みがもっと細かく、葉軸がもっと明瞭です。
次に候補に挙がったのがセントウソウです。伸びきっていない若葉はよく似ています。
周りに見えるオオヨモギの葉の大きさ(15cm前後)から、葉身の長さは15〜20cm程度と思われます。
このサイズでは、セントウソウには大きすぎますので、違うみたいです。
仲間のヤブニンジンはもっと裂片の幅がありますし、ヤブジラミやオヤブジラミは細くて薄いです。
行き詰っていた時、ハマセンキュウという葉がよく似た植物が目に止まりました。
調べると、カラフトニンジンが標準和名のようで、海岸の砂地に生える点も一致します。
花の時期ではないので、断定はできませんが、いろいろな特徴が一致するので、本種としました。

ヒトリシズカ(Chloranthus japonicus )
<センリョウ目・センリョウ科・チャラン属>
 
センリョウ科チャラン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の山野の林内や草地に自生している。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
草丈は20〜30cmほどになり、茎は直立して、初めは赤紫色を帯びていることが多い。
茎の下部の節に、膜質の葉が鱗片状に付く。上部では2対の葉が対生する。
ただ、葉の間隔が極短いので、4枚の葉が輪生しているように見える。
葉は、濃緑色の楕円形で先が尖り、縁には鋭い鋸歯がある。
花期は4〜5月で、葉が伸び切る前に、葉の中心から花穂を伸ばし、多数の花を房状に付ける。
花には、花弁も萼もなく、1本メシベとその子房の横に3本オシベが付く。
中央のオシベに葯は無く、外側のオシベの基部に黄色の葯が付く。
そのオシベの花糸が白いので、花穂が白く見えている。

2018/5/11
利尻島で姫沼を一周して、駐車場に戻る途中で見かけました。
まだ、開花には早いようで、かろうじて葉の間から花序の一部が覗いている程度でした。



ヒトリシズカの花

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  2018/4/13          2010/3/22         2010/4/10
町田市の薬師池公園と相模原市の城山かたくりの里で見かけたヒトリシズカの花です。
左端の拡大写真は薬師池公園で撮ったもので、白いオシベが3本、鳥足状に出ているのが良く分かると思います。
中央の写真は、城山かたくりの里で撮ったもので、上記でちらりと見えている花は、1週間もするとこうなります。
右端の写真は、中央の20日ほど後のもので、葉が大きく展開し、花茎も伸びています。


エゾイチヤクソウ(Pyrola minor L.)
<ツツジ目・ツツジ科・イチヤクソウ亜科・イチヤクソウ属>

ツツジ科イチヤクソウ属の多年草で、在来種。絶滅危惧IB類(EN)。
日本では、利尻島、南アルプス(三伏峠)、北アルプス北部に分布する。
海外では、北半球の寒帯から亜寒帯に広く分布する。
葉は根元に付き、葉柄は1〜2cmで、葉身は長さ2〜3cmの広楕円形〜円形で浅い波状の鋸歯がある。
花期は7月〜8月で、花茎を10〜20cm伸ばして、総状花序を付ける。
花付きは良くて、カラフトイチヤクソウと同じく10〜20個の白い花を付ける。
花は直径5mm前後の5弁花で、萼片は2o小さく、5裂して基部は合着する。
花柱は真っ直ぐで1〜2mmと短く、花冠より短いので横から見ても見えない。
なお、カラフトイチヤクソウの花柱は3〜4oあり、花冠が開いていれば横から見える。

2018/5/11
利尻島の姫沼を1周した時に撮ったツバメオモトの写真で、左の方に変わった葉が写っていました。
どこかで見たような葉脈が白っぽく浮き出た葉で、葉裏も葉柄も赤褐色。新芽も同じです。
手前の葉の縁には、浅く波打つように短い鋸歯が見られます。
この葉の特徴から、イチヤクソウの仲間であろうと思われます。

日本にはイチヤクソウ属は7種あり、マルバノイチヤクソウとジンヨウイチヤクソウは葉の形が異なります。
他の5種は、大きさに違いはあっても、葉身は広楕円形〜円形で、縁には鋸歯が見られるとのこと。
鋸歯の形は、コバノイチヤクソウは円弧が連なったような鋸歯であり、形が違います。
ベニバナイチヤクソウとカラフトイチヤクソウの鋸歯は目立たないとのこと。これも違いそうです。
イチヤクソウは、細かい鋸歯があり、葉の表面の葉脈沿いに白斑が入ることがあるとのこと。特徴が合います。
エゾイチヤクソウは、浅い波状の鋸歯があるとのこと。多少波打ったような形の鋸歯で、これも合いそうです。
なお、白斑に関しては、他の物でも入ることがあり、識別点にはならないとのこと。
花が咲いていたら、もう少し分かりやすいのではと思うのですが.....
おそらく、イチヤクソウかエゾイチヤクソウだと思うのですが、撮影地から後者としました。

オオイタドリ(Reynoutria sachalinensis)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イタドリ属>
 
タデ科イタドリ属の多年草で、再来種。
日本では北海道から本州の中部地方以北に、海外ではロシア、北アメリカに分布する。
草丈は2〜3mになり、茎は中空で太く、上部でよく分枝して、全体に粉白を帯び、やや弓状に傾く。
なお、オオイタドリの茎には花外蜜腺があり、アリを誘ってアブラムシなどを排除する。
葉は互生し、葉身は長さ15〜30cm、幅10〜20cmの長卵形で、基部が心形になる。
葉の両面葉脈に沿って短毛があり、葉裏は粉白色を帯びる。
花期は7月〜9月で、雌雄異株。葉腋や枝先に円錐花序を付け、花序には密に毛がある。
雄花は上向きに穂状に立ち、雌花は下向きに穂状に垂れる。
雄花では、白色の花被が5裂し、8個のオシベがある。花弁はない。
雌花では、5裂した萼から3裂したメシベの花柱がのぞく。
花後、3個の萼片が大きくなり、長さ10mmほどの翼状になり、種子を包む。

2018/5/10
稚内市郊外にあるホテル近くで、道路脇の法面で見かけたオオイタドリの新芽です。
自宅近くでよく目にするイタドリと比較すると、明らかに大柄で、力強さを感じます。
近くには、昨年除草されたものであろう枯れた茎がたくさん転がっていました。

キジムシロ(Potentilla fragarioides var. major)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キジムシロ連・キジムシロ属>
 
バラ科キジムシロ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、モンゴル、ロシアに分布する。
日当たりのよい雑木林、丘陵地、草原、海岸の岩場などに普通に見られる。
草丈は5〜30cmで、根茎は垂直に肥厚して短く、太めの根がある。
茎は赤みを帯びていることが多く、匍匐茎は出さない。
葉は長さ5〜15cmの奇数羽状複葉で、小葉は3〜9個からなり、先端の3小葉が大きい。
小葉は長さ2〜5cmの楕円形で、先が尖らず、縁には鋸歯がある。
花期は3月〜8月で、長さ5〜30cmの花茎を伸ばして散形状に多数の花を付ける。
花は直径15〜20oの黄色い5弁花で、オシベ、メシベとも多数ある。
萼片(内萼片)5個は間がさ4〜8oの卵状披針形で鋭頭。副萼片はやや小さい披針形で5個。
果実は淡褐色の痩果で、長さ1.5mm弱の卵形。
表面にしわと微細な凹凸があり、腹面に細長い付属体が付く。

※ 本種に似て匍匐茎を出すツルキジムシロは、小葉の鋸歯が粗く大きい。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上る階段脇で見かけたもので、何株かが花を付け、いくつかの花が開花していました。
まだ、開花したばかりなのか、十分に開き切っていません。
なお、葉の鋸歯が粗いと感じたので、ツルキジムシロも疑ったのですが、匍匐茎がないので本種としました。
右の写真で、四方八方に伸びているのは、匍匐茎ではなく、花茎です。

オニシモツケ(Filipendula camtschatica)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・シモツケソウ属>
   
バラ科シモツケソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の中部地方以北に分布する。
海外では、樺太、千島列島、カムチャツカ半島に分布する。
草丈は1.5〜2mになり、葉は奇数羽状複葉で互生する。
頂小葉が15〜25cmと大きくなり、掌状に5裂する。
側小葉は極小さく目立たないため、一見、単葉に見える。
葉柄の付け根にある托葉は、茎を抱き、耳状で大きく目立つ。
花期は6月〜8月で、茎の先に散房状の花序を付け、小さな花を多数付ける。
花は5弁花で、白色のものが多いが、稀に淡赤色を帯びるものもある。
萼片も5個あり、多数あるオシベは、花弁よりも長い。
花序には短毛が密生し、それがオニシモツケの特徴となっている。
なお、少ないものをウスゲ〜、無いものをケナシ〜と区別する場合がある。

2018/5/11
利尻島で姫沼を一周している途中、木道脇で見かけたこの葉も、何の葉なのか良く分かりませんでした。
最初、掌状に中裂した単葉だと思っていたのですが、よく見ると葉柄に小さな側小葉が見られます。
なんと、頂小葉が異常に大きな奇数羽状複葉でした。基部には立派な托葉が付いています。
これらの特徴から、この葉がオニシモツケの葉であることが分かりました。

チシマワレモコウ(Sanguisorba tenuifolia var. grandiflora)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・ワレモコウ属>
 
バラ科ワレモコウ属の多年草で、在来種。亜寒帯から寒帯に分布するワレモコウの仲間の1変種。
日本では、北海道の礼文島、知床山地、日高山地などで見られる。海外では樺太に分布する。
草丈は20〜50cmで、ナガボノシロワレモコウににるが、全体に小型で、花序が短くて垂れない。
葉は奇数羽状複葉で、小葉の形は楕円形で11〜15個あり、縁には鋭い鋸歯がある。
小葉と葉柄はやや硬く、小葉の、表面は濃い緑色、裏面はやや白色に見える。
花期は8月〜9月で、茎先に長さ2〜5cmの穂状花序を付け、白い小花を密に付ける。
花は先の方から咲き始め、つけ根に向かって咲き下る。花弁はなく、白く見えるのはオシベである。
萼は緑白色で毛は生えず、4裂して花弁のように見える。
オシベは萼より長く、外側に突き出る。オシベの先は黒い。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上る階段脇で見かけたもので、何の葉なのか分からなかった1つです。
ただ、どこかで見たことがあるような気がして、思い出したのがワレモコウです。
礼文島にワレモコウが自生しているかどうか調べた結果、分かったのが本種です。
道内にはナガボノシロワレモコウが自生しており、その1変種のようです。
ただ、芽生えたばかりではどちらか確かめようもないため、自生が確認されている本種としています。

ハマナス(Rosa rugosa)
<バラ目・バラ科・バラ属>
 
バラ科バラ属の落葉低木で、在来種。
日本では北海道に多く、本州では太平洋側は茨城県、日本海側は島根県までに分布する。
海外では、朝鮮半島から中国東北部、樺太、カムチャツカ半島などにも分布する。
樹高は1〜1.5mで、茎は枝分かれして立ち上がり、太い枝には針のような棘が密生する。
葉は互生し、奇数羽状複葉。小葉は5〜9個で、長楕円形で先が尖り鋸歯がある。
小葉の表面は艶があり、裏面には毛が密生する。
花期は5月〜8月で、枝先に1〜3輪の5花弁の花を付ける。花には強い香りがある。
花は直径6〜8cmあり、花色は赤が多いが、白花もある。オシベは多数。
花後にできる果実は直径2〜3cmの偽果で、弱い甘みと酸味があり、赤く熟す。

2018/5/11
礼文島の澄海岬の上に広がる草原で見かけた、芽吹いたばかりのハマナスです。
茎にもう生える所がないのでは思うくらい生えている刺が特徴です。

ナナカマド(Sorbus commixta)
<バラ目・バラ科・モモ亜科・ナシ連・ナナカマド属>

バラ科ナナカマド属の落葉高木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州の山地から亜高山帯に分布する。
海外では、朝鮮半島やサハリンに分布する。
樹高は7〜10mで、若枝は暗紫色で光沢があり、若木は淡褐色で成木になると暗灰色になる。
葉は互生し、長さ20cm前後の奇数羽状複葉で、枝先に集まって付ける。小葉は4〜7対ある。
小葉の長さは3〜9cmの長楕円形で、先が尖り、基部は左右非対称。縁には浅い単鋸歯か重鋸歯がある。
花期は5月〜7月で、枝先に複散房花序を付け、直径10o程の白花を多数付ける。
花弁は卵円形で5個あり、オシベは20個、花柱は3〜4個あり、基部に軟毛が密生する。
萼筒は杯型で、萼片は長さ1o程の三角形で小さい。
秋にはあざやかに紅葉や、赤い果実を付けるので、北海道や東北地方では街路樹によく利用される。

2018/5/10
国道40号線にある「道の駅もち米の里なよろ」で見かけたナナカマドの新芽です。
秋の紅葉も良いですが、新芽も茶褐色を帯びて、初々しさがありますね。
途中、通過してきた道路にもナナカマドが街路樹として植えられていました。
真っ赤に紅葉した時、道路の両脇にそれらが並んでいるのは見応えがありそうです。

オオヤマザクラ(Cerasus sargentii (Rehder) H.Ohba)
<バラ目・バラ科・モモ亜科・モモ連・スモモ属・サクラ亜属・サクラ節>

2018/5/10
 
     2018/5/10                 2018/5/12
 
2018/5/10
バラ科スモモ属サクラ亜属の落葉高木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国に分布する。本州中部以西では亜高山地帯に分布する。
海外では、朝鮮半島や樺太、サハリンに分布する。
ヤマザクラと比べ、花や葉が大きいことが和名の由来。
濃い花色からベニヤマザクラ、北海道に多いことからエゾヤマザクラの別名がある。
樹高は15〜20mで、幹は直径80cmに達するものもある。樹皮は紫褐色で横の皮目がある。
葉は互生して、葉身は長さ8〜15cmの長卵形で、先が尖り、縁には粗い鋸歯や重鋸歯がある。
葉が展開する頃の新葉は赤みを帯びているが、時間が経つにつれ暗緑色になる。
秋には紅葉し、黄色、橙色、赤と様々な色に変化する。
花期は4月〜5月で、葉の展開と同時に開花し、直径は30〜50mmほどと大きい。
花色は淡紅色で、ヤマザクラよりも色が濃い。一重咲きの5弁花で、散形状に数輪が付く。
果実は直径1cmほどの核果で、夏には黒紫色に熟し、野鳥にとっては良い食料となる。

2018/5/10,12
関東ではとっくに通り過ぎた桜前線ですが、今、ちょうどこの辺りを北上中とか。
道央自動車道から見えた三笠山自然公園のサクラも、ちょうど満開で、お花見には良さそう。
植栽されたものではない自生のオオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)も、途中、山の中にちらほら見られます。
途中で立ち寄った「道の駅もち米の里なよろ」でも、植栽されたものが満開になっていました。
手の届くところに咲いていたので、アップで撮影できましたが、ヤマザクラより大きくて、色が濃いです。



オオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)とヤマザクラの花

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 <オオヤマザクラ>      <ヤマザクラ[高尾山]>       <ヤマザクラ[相模原]>
オオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)とヤマザクラの花を、ほぼ同倍率で並べてみました。
オオヤマザクラの方が、大きさが一回り大きいのに加え、花色がかなり濃いことが分かります。
なお、ヤマザクラでも高尾山のものは自生と思われますが、相模原のものは園芸品種かもしれません。


シラカンバ(Betula platyphylla var. japonica)
<ブナ目・カバノキ科・カバノキ亜科・カバノキ属>

カバノキ科カバノキ属の落葉樹で、在来種。別名のシラカバの方がなじみがあるかもしれません。
樹皮が白いことが名前の由来であるが、樹皮がはげた後は黒くなる。
温帯から亜寒帯に多い樹種で、基変種はコウアンシラカンバ。日本産はその変種である。
日本産変種は、北海道から本州中部(福井県、静岡県)以北の落葉広葉樹林帯と亜高山帯下部に分布する。
基亜種やその近縁のオウシュウシラカンバは、アジア北東部、シベリア、ヨーロッパの広範囲に分布する。
5月頃に雄花の花穂が垂れ下がり、大量の花粉を飛ばすため、花粉症の要因になる。

2018/5/12
道央自動車道に入ってしばらくすると、法面に生えいるシラカンバがご覧のような状態になっていました。
行きのバスから見えていたのですが、座席の関係で撮影できなかったので、帰りに撮影したものです。
雪の重みで根元から倒れ、その後上向きに成長した結果で、雪の多い所で見られます。

エゾニワトコ(Sambucus racemosa L. subsp. kamtschatica)
<マツムシソウ目・レンプクソウ科・ニワトコ属>
   
レンプクソウ科ニワトコ属の落葉低木で、在来種。
日本では、北海道から本州の関東地方北部以北に分布し、標高の高い所に自生する。
なお、本州では標高が1,750m以上の高所になるが、北海道では200〜500mの場所に見られる。
海外では、朝鮮半島中北部、中国東北部、南千島、樺太、カムチャツカに分布する。
樹高は3〜8mで、樹皮は淡褐色。枝は分枝して良く伸び、繁茂する。
葉は対生で、奇数羽状複葉。小葉は5〜7個で、長さ5〜20cmの長楕円形で先が尖る。
小葉の縁には粗い鋸歯があり、表面には短毛がある。
花期は5月〜6月で、新枝の先に円錐花序を出し、直径5〜7mmの淡白色の小花を多数付ける。
花被は先が5つに裂けて反り返り、5本のオシベと1本のメシベが前に突き出る。
花後にできる果実は楕円形の液果で、夏から秋にかけて赤く熟する(黄色く熟すものもある)。

2018/5/11
利尻島で姫沼を一周している途中、木道脇で見かけたツボミも、何のツボミなのか良く分かりませんでした。
葉が奇数羽状複葉で、小葉数が5個です。ツボミの色は、暗赤紫色で、大きな花序になりそうです。
いろいろ調べていた時、以前、乗鞍高原で見かけたエゾニワトコと思い出し、調べてみました。
名前からわかる通り、北海道にも分布しており、Webで芽吹きしたところの写真も見つかりました。
葉の様子やツボミの色や形は、Webに掲載されていた写真とそっくりでしたので、本種としました。

ツルアジサイ(Hydrangea petiolaris)
<ミズキ目・アジサイ科・アジサイ属・アジサイ節・ツルアジサイ亜節>
 
アジサイ科アジサイ属の落葉つる性木本で、在来種。別名はゴトウヅル。
日本では、北海道から本州、四国、九州と広く分布している。
海外では、朝鮮半島やカラフトに分布している。
樹皮は淡褐色で、縦に薄くはがれ、枝には褐色〜帯赤褐色で縮れた毛がある。
幹や枝から気根(主に2年目以降の枝)を出して、岩や木を這い登り、高さは10〜20mになる。
葉は対生し、樹上の枝では長さ10cm前後の広卵形で、長い葉柄がある。
葉の先端は尖り、基部は円形から浅い心形で、縁には細かい鋸歯がある。
岩や地を這う枝に着く葉は、小型の円形で、長さが2cmに達しないものもある。
花期は6月〜7月で、枝先に直径10〜18cmの花序を出す。
装飾花は白色で、両性花をとり囲むように咲き、萼片は3〜5個。長さ2cm前後の広卵形。
両性花の花筒は長さ2mm前後の倒円錐形で、黄白色の花弁は開くことなく開花時に脱落する。
オシベは15〜20個あり、花柱は2個。花柱と萼片は果時にも残る。
果実は刮ハで、直径3〜4mmの球形。9月〜10月に熟し、頂部の孔が裂開する
種子は扁平な卵形で、長さは1mm前後。淡褐色〜褐色、周囲に不定の翼がある。

2018/5/11
利尻島で姫沼を一周している途中、木道脇で見かけたこの葉も、何の葉なのか良く分かりませんでした。
利尻島に生育しているつる性植物に何があるのか調べていて、たどり着いたのがミヤママタタビでした。
葉の特徴は、マタタビでは基部が円型なのに対し、ミヤママタタビは心形(ハート形に凹む)である点です。
もう1点は、鋸歯の形状で、マタタビの鋸歯はのこぎり状ですが、ミヤママタタビは、鋸歯の先が芒状です。
花期になれば葉に白い部分が現れるので、マタタビの仲間であることは明白になりますし、
その後、白い部分が淡紅色を帯びてくれば、ミヤママタタビであることも明白になります。
しかし、芽吹いたばかりの状態では、基部の形が心形になっている点だけが一致点で、鋸歯の形が合いません。
いろいろ調べていると、姫沼で撮ったというツルアジサイの写真が見つかりました。
葉の特徴を見ると、基部は円形〜浅い心形で、先が尖り、縁には細かい鋸歯があるとのこと。
枝には気根は見られませんが、気根が出るのは2年目以降のようなので、前年枝なら無くても問題なし。
樹皮は淡褐色で、縦に薄くはがれるとあり、左の写真では、褐色の樹皮がはがれかかっています。
以上の点から、この新芽が展開したばかり樹種は、ツルアジサイの可能性が極めて高いと判断しました。

ハマベンケイソウ(Mertensia maritima ssp. asiatica)
<ムラサキ目・ムラサキ科・ハマベンケイソウ属>
 


ムラサキ科ハマベンケイソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の北部に自生する。
海外では、朝鮮半島、オホーツク海沿岸、樺太、アリューシャン列島に分布する。
茎は地面を這って伸び、よく分枝して、長さが1mになるものもある。
葉は互生し、長さ3〜8cm、幅2〜5cmの広卵形で、粉白色を帯びた緑色で、質は厚い。
花期は7月〜8月で、茎頂に総状花序を出し、2〜4cmの花柄の先に花を付ける。
花冠は長さ8〜12mmの鐘形で、下向き加減に開いて、先は5裂する。
花色は、ツボミの頃は淡赤紫色で、開花後に青紫色に変わる。
萼筒は5深裂して、裂片は鋭く尖る。子房は4深裂し、花後に四つの分果となる。

2018/5/11
礼文島の澄海岬から駐車場に降りてきたとき、海岸縁のガレ場で、白っぽい葉の集団に気が付きました。
見たことがないような色合いの葉だったので、とりあえず撮って、後で調べました。
特徴的な葉だったので比較的簡単にハマベンケイソウと調べが付きました。
花期には赤紫色のツボミが、次々と咲いて青紫色の花に変わっていくようです。

※ 下段の写真で、ハマベンケイソウの後ろに見えているのは、おそらくハマエンドウと思われます。

ヤチヤナギ(Myrica gale var. tomentosa)
<ヤマモモ目・ヤマモモ科・ヤチヤナギ属>
 

   
ヤマモモ科・ヤチヤナギ属の落葉小低木で、在来種。
日本では、北海道から本州中部地方以北の泥炭地や高層湿原、湿地に生える。
海外では、シベリア東部から樺太、カムチャッカ、千島に分布する。
樹高は30〜60cmで、根はミズゴケの中を伸びて横に広がる。幹はよく分枝する。
樹皮は淡褐色で、少し艶があり、白い皮目が目立つ。
若枝には毛が多いが、2年目には脱落する。
葉は互生し、長さ2〜4cmの楕円形で、先の半分ほどに低い鋸歯がある。
花期は4月で、前年枝の葉腋から花穂を出し、葉の展開前に開花する。雌雄異株。
雄花序も雌花序も長さ2cmほどの楕円体で、花には花披がない。
雄花では苞の中にオシベが6個前後、雌花では包葉内に、2個の小包葉と1個のメシベがある。
メシベの花柱は、深みのある紅色で2裂する。
夏の終わりくらいには果実が熟すが、果実は堅く、3枚の包葉が合着して翼をつくる。

2018/5/10
サロベツ湿原は雪解け間もないため、融水で遊歩道が水没して一部が通行止めとなっていました。
展望台からの眺めも、枯葉色一色に所々にミズバショウの白い苞と芽吹いたばかりの若葉が見える。
この若葉の主なものは、コバイケイソウとエゾカンゾウ(ニッコウキスゲ/ゼンテイカ)です。
しかし、この枯葉色の中に見える濃褐色の低木。これにも花が咲いています。それがヤチヤナギです。
下段は、それを拡大したものですが、開いた松ぼっくりのようなものが雄花序です。
雌花序はないかと探したのですが、手近な所には見当たりませんでした。

イワベンケイ(Rhodiola rosea)
<ユキノシタ目・ベンケイソウ科・センペルビヴム亜科・ウムビリクス連・イワベンケイ属>
 
礼文島 澄海岬<雌花/雌株>
 
礼文島 須古頓岬<雄花/雄株>

利尻島 仙法志御崎公園<雄株の群生>

ベンケイソウ科イワベンケイ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の中部地方以北に分布し、高山の岩礫地に点在する。
なお、北海道では海岸近くの岩場でも見ることができる。
海外では、北半球の温帯から亜寒帯および高山帯に散らばって分布する。
根茎は太くて長く、鱗片葉に覆われた先端だけが地表に現れ、草丈は30cmほどになる。
地上部は全体に粉白を帯び、全草肉厚で無毛。雌雄異株。
葉は互生し、多肉質で長さ1〜4cmの倒卵形。縁には不規則で低い鋸歯が数個ある。
花期は6月〜8月で、茎頂に集散花序を出し、黄緑色の花を密生させる。
雄花は、長さ3oほどで黄緑色の線形の花弁と、8個のオシベと退化した子房がある。
雌花は、やや赤みを帯び、花弁は萼片よりも短くて、子房は下半分が萼筒と合着する。
秋に果実は、鮮やかな紅色になるので、よく目立つ。
種子は長さ1.3oで、6〜9mmになる心皮中に多数できる。
本種は、CAM型光合成(水分ストレスの大きな砂漠などの多肉植物に見られる)を行う植物。
そのため、乾燥して栄養に乏しい岩礫・砂礫地にも生育することができる。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上った際、階段脇で見かけたイワベンケイです。ツボミが赤く、雌花と思われます。
礼文島の須古頓岬で見かけたイワベンケイは、ツボミが黄色っぽく、雄花と思われます。
雄花と雌花では、花序に付くツボミの数に大きな差があり、ツボミの形にも違いが見られます。
利尻島でも仙法志御崎公園では、イワベンケイの大きな株を見かけました。
数株が固まっていましたが、全て黄色いツボミなので雄株のようです。

オウシュウマンネングサ(Sedum acre L.)
<ユキノシタ目・ベンケイソウ科・センペルビヴム亜科・セダム連・マンネングサ亜連・マンネングサ属>
 
ベンケイソウ科マンネングサ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。別名はヨーロッパタイトゴメ。
日本では、植栽されていたものが逸出して野生化し、北海道から本州、九州に分布している。
草丈は5〜8cmで、茎が地表を這いながら多数の枝を出し、茎は赤みを帯びている。
葉は互生し、肥厚した三角状卵形で、長さは5〜10mm。時に裏面が赤みを帯びる。
花期は5月〜7月で、花が咲く枝は立ち上がって、枝先の集散花序に数個の花を付ける。
花の直径は12mm前後で、5花弁の黄花。花弁は水平に開き、基部は合着している。
萼片は長楕円形で長さ3mmほどで、1mmほどの明瞭な距がある。

2018/5/10
稚内市郊外にあるホテル近くで撮ったものですが、道路脇に1ヶ所だけ群生していました。
最初見たとき、オカタイトゴメだろうと思いましたが、色が赤っぽいので調べてみました。
北海道見られるものは意外と少なく、オカタイトゴメ、オウシュウマンネングサ、ウスユキマンネングサ程度。
一方、オウシュウマンネングサに関しては、北海道外来種DBで、稚内での自生が確認されています。
なお、オカタイトゴメに関しては、分布域は不明瞭としている記事が多く、北海道を明記した記事はごく少数です。
ウスユキマンネングサは葉の形状がまったく異なるので、可能性があるのは残りの2種です。
茎を立ち上げる前の葉の形状は、どちらも撮影したものに似ています。
花があれば、オカタイトゴメの方が直径8o前後と小さいので判断可能なのですが、花は咲いていません。
オウシュウマンネングサは、葉の裏面が赤みを帯びることがあるらしいので、ここでは本種とします。

エンレイソウ(Trillium smallii)
<ユリ目・メランチウム科・エンレイソウ属>
   
メランチウム科エンレイソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に、海外では、サハリン、樺太、南千島に分布する。
草丈は20〜40cmで、太く短い根茎から茎を一本立ち上げ、その先に3枚の葉を輪生する。
葉に葉柄はなく、長さ10〜20cmの丸みのあるひし形。
花期は4月〜7月で、葉の中心から短い花柄をだし、小さい花を1個付ける。
花は直径5cm強で、3個の緑色〜濃紫色の萼片を持ち、花弁はなく、横向きに咲く。
オシベは6個あり、葯は花糸よりも若干短い。メシベは1個で、子房上位。柱頭は3裂する。

2018/5/11
利尻島で姫沼を一周している途中、木道脇で、ちょうど開花したばかりのエンレイソウを見かけました。
萼片も葯も子房や柱頭も濃い目の臙脂色で、葯からあふれた花粉のみが淡黄色です。
それが緑色の3枚の葉の中央で、横向きに、こちらの方を見ているみたいに咲いていました。

オオバナノエンレイソウ(rillium camschatcense)
<ユリ目・メランチウム科・エンレイソウ属>
   
2018/5/10        2018/5/10          2018/5/11 .
メランチウム科エンレイソウ属の多年草。
日本では、北海道、本州北部に分布し、低地から亜高山帯の湿地、草原、明るい森林内などに群生する。
海外では、朝鮮半島から中国東北部、サハリン、カムチャツカ、シベリア東部に分布する。
草丈は20〜50cmになり、葉は菱形状広卵形で茎頂に3個が輪生する。
花期は5月〜6月で、直立する1本の花柄の先に直径5〜7cmくらいの白い花を上向きに付ける。
緑色の萼(外花被片)と白い花弁(内花被片)は、共に3個あり、花弁の方が萼よりも大きく長い。
花の中心に子房があり、6個のオシベが取り囲むように付く。
花後にできる実は6稜形の液果で、黒紫色に熟する。
エンレイソウの仲間は、播種から開花までには10年以上かかると言われている。
その後、最低でも10年(28年間の記録もある)は毎年開花させる、寿命の長い草本である。

2018/5/10 サロベツ湿原の木道脇で、オオバナノエンレイソウが大きなツボミを付けていました。
後、1週間もすれば咲くのではないかと思われるほど、ツボミは膨らんでいました。
2018/5/11 利尻島で、姫沼やオタトマリ沼に行く途中の道路脇には、白い花をたくさん咲かせていました。
しかし、姫沼ではオオバナノエンレイソウには会えず、代わりにエンレイソウに会えました。
オタトマリ沼では、駐車場から少し歩いた所で、ツボミを付けたオオバナノエンレイソウに会えました。
しかし、咲いているものは見当たりません。高度が多少高い分、温度差で咲く時期が少し遅いのでしょう。

コバイケイソウ(Veratrum stamineum)
<ユリ目・メランチウム科・シュロソウ属>
 
メランチウム科シュロソウ属の多年草で、日本固有種。
日本では北海道から本州中部地方以北に分布し、山地から亜高山の湿った草地に自生する。
草丈は1m以上になり、太い茎を真っ直ぐに立ち上げる。
花期は6月〜8月で、茎の先に太い円錐花序を付ける。
花茎の先端に付くのは両性花で、脇の枝分かれした先に付くのは雄花。
花は直径15mm前後で、花被片は6個、オシベは6個で花被片より長い。葯は黒紫色。
なお、毎年、一斉に咲くわけではなく、大群落が見られるのは数年に1度である。
全草、有毒であり、春先の若芽の頃にノカンゾウと間違える誤食事故が毎年発生する。
最悪死に至る猛毒であり、コバイケイソウの生えているところでは要注意。

2018/5/10
サロベツ湿原と稚内のホテル近くの湿原で見かけたコバイケイソウの新芽です。
これからどんどん伸びて、開花時には1m以上になるのでしょう。
なお、左のサロベツ湿原の写真で、後ろに写っている群落は、エゾカンゾウの新芽です。


コバイケイソウの花
       .
2013/8/7
駒ヶ岳 千畳敷カールで見ることができたコバイケイソウです。
この年は当たり年で、千畳敷カールのそこここにコバイケイソウが咲き、お花畑になっていました。


<駒ヶ岳 千畳敷カールを埋め尽くすコバイケイソウのお花畑>


オオウバユリ(Cardiocrinum cordatum var. glehnii)
<ユリ目・ユリ科・ウバユリ属>
   

   
ユリ科ウバユリ属の多年草で、在来種。
オオウバユリは、ウバユリの変種とされているが、ウバユリより大型で、花の数も多い。
日本では、北海道から本州の中部地方以北に分布する。海外では樺太に分布する。
草丈は1.5〜2mで、鱗茎があり、茎は直立しする。鱗茎はデンプンを含み、食用にできる。
なお、鱗茎は白く大きいが、2〜3個の根出葉の基部がふくれて重なったものである。
茎は緑色で太く、滑らかで中空。その茎の下方に葉は平らに開くように付く。
葉身は長さ10〜15cmの卵状楕円形で、長い葉柄があり、基部は心形。
花期は7月〜8月で、茎を高く伸ばし、その頂部にラッパ状の花を10〜20個付ける。
その高く伸ばした茎の中ほどに、小さな茎葉が数個付く。
花色は緑白色で、長さは10cm前後。花被片は6個で、内面に褐色の斑点があり、花被片には隙間がある。
花の先はあまり開かず、横向きに咲く。オシベは6個あり、花糸の長さは不同で、葯は淡褐色。
果実は刮ハで、種子は長さが10mm前後。その周囲を取り囲むように翼が付く。
果実は秋には熟して、上部から裂開して、中の薄い種子は風に乗って少しずつ飛微散る。
その立ち枯れした茎は、翌春まで残っていることがある。
花を付けた株は、開花によって一生を終えるが、元株の脇には子株が育っている。
実生の場合、播種から開花までには7年前後必要とするが、子株は3年ほどで開花する。
なお、オオウバユリの若芽には、葉脈が赤いものと緑色のものが見られる。

2018/5/11
上段左端は利尻島の姫沼で見かけたオオウバユリで、葉脈は緑色をしています。
中央と右は、利尻島のオタトマリ沼で見かけたオオウバユリで、葉脈は赤色です。特に右端は鮮やかです。
オオウバユリの若葉には、このように葉脈が緑色のタイプと赤色のタイプがあるようです。
なお、姫沼にも赤い葉脈タイプのオオウバユリは見られましたので、地域的なものではないようです。
下段は、オタトマリ沼で見かけた昨年の枯れ枝で、裂開した果実も付いていました。

キバナノアマナ(Gagea lutea)
<ユリ目・ユリ科・キバナノアマナ属>
   
<礼文島 澄海岬の草原にて>
 
<利尻島 オタトマリ沼にて>
ユリ科キバナノアマナ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州中部地方以北に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、シベリア東部、ヨーロッパに広く分布する。
草丈は15〜25cmになり、地下にある鱗茎は卵形で長さ10〜15mmで、帯黄色の薄皮に包まれる。
根出葉は1個で、長さ15〜30cmの線形で、やや厚みがある。
花期は4月〜5月で、花茎を立ち上げて、散形状に4〜10個の黄花を付け、苞葉は2個付く。
細い花柄の長さは1〜5cmと不規則で、線状長楕円形の6個の花被片は長さ12〜15mm。
オシベは6個あり、花被片より短い。果実は球形状の刮ハで、3稜があり、長さは7mm前後ある。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上った後、戻りかけたときに草原の中にエゾエンゴサクに混じって黄色い花を見つけました。
ひ弱な感じに見えたのでエゾヒメアマナかと思ったのですが、後でよく見るとキバナノアマナでした。
利尻島のオタトマリ沼に行ったとき、沼の遊歩道を少し進んで戻ってきたとき、群生しているのに気が付きました。
礼文島では、草陰に隠れるように咲いていましたが、ここでは主役を担って黄色い花を咲かせていました。

ツバメオモト(Clintonia udensis Trautv. et Mey.)
<ユリ目・ユリ科・ツバメオモト属>
 
ユリ科ツバメオモト属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の奈良県以北の山地帯上部から亜高山帯の林内に分布する。
海外では、千島列島、樺太、中国、ヒマラヤと東北アジアに広く分布する。
葉は倒卵状長楕円形で、長さ15〜30cm、幅3〜9cmで、数枚が根生する。
葉質は柔らかくてやや厚めで、始めは縁に軟毛がある。
花期は5月〜6月で、20〜30cmの花茎を立ち上げ、先に散房状総状花序を付け、基部に苞がある。
苞は花時には脱落する。花は白くて、やや下向きに4〜10個が開花する。
花被片は6個で、長さ10〜15mm、ほぼ平開する。
花後、果茎は40〜70cmまで伸長し、直径10mmほどの球形の液果は、瑠璃色から藍黒色に熟す。

2018/5/11
利尻島で姫沼を1周したとき、木道脇でツバメオモトがツボミを膨らませていましたた。
後、1週間もすれば開花するのではないかと思われます。
ツバメオモトの周りにある小さな葉は、マイヅルソウです。
そのマイヅルソウに混じって、右下の方にエゾイチヤクソウと思われる葉が見えています。

スギナ(ツクシ)(Equisetum arvense)
<トクサ目・トクサ科・トクサ属>
 
トクサ科トクサ属の多年草で、北半球に広く分布しており、日本でも全国に分布している。
浅い地下に地下茎を伸ばしてよく繁茂するため、取り除くのが非常に困難な雑草である。
春に、ツクシ(胞子茎)をだし、胞子を放出する。
ツクシは、草丈10〜15cmで、淡褐色の中空の茎に「袴」と呼ばれる褐色の輪状の葉が数段着く。
ツクシが出た後、栄養茎であるスギナが出てくる。
ツクシとは全く外観が異なり、草丈は10〜40cm程度で、鮮やかな緑色で光合成を行う。
主軸の節毎に関節のある緑色の棒状の葉を輪生させる。
上の節ほどその葉が短いのが、全体を見るとスギの樹形に似て見えるのが、和名の由来。
ツクシの穂を放置すると、緑色を帯びた粉がたくさん出て来るが、これが胞子である。

2018/5/10
国道40号線にある「道の駅もち米の里なよろ」で見かけたツクシです。
子供の頃には、あちらこちらでよく見かけた風景ですが、最近はとんと見かけません。
それにしても、この一角にはすさまじい数のツクシが林立していました。

リシリコンブ(Saccharina japonica var. ochotensis)
<コンブ目・コンブ科・カラフトコンブ属>
 
<礼文島の海岸にて>                    <利尻島の海岸にて>
コンブ科カラフトコンブ属の海藻で、道南のマコンブ、羅臼のオニコンブととも有名である。
味は薄めであるが、澄んでおり、一般家庭よりも料理店などで利用される。
分布域は、北海道松前半島から日本海、宗谷海峡をへて知床岬。
主な分布域は羽幌町から網走で、利尻島、礼文島及び稚内沿岸が主産地。
海外では、朝鮮半島国後島、樺太、沿海州、国後島に分布する。
根状部は繊維状で、5〜7層が縦列して出ていて、数回分岐して互いに絡み合い、円錐状の付着器を作る。
茎状部は長さ5〜9cmで、太さ5〜10mm。上部で幅広く扁平になり、葉状部の基部に連なる。
葉状部は細長い笹の葉状で、長さは1.5〜2.5m、ときに3mを超える。
幅は13〜20cmで、縁辺部はわずかに波打つ。葉の中央にある中帯部は、葉幅の1/3〜1/2ある。
葉の基部は広いくさび状であるが、よく成長すると円形となる。
中帯部のくぼんでいる方を表面、膨らんでいる方を裏面と呼び、通常は裏面を海底に向けている。

リシリコンブの寿命は2年で、1月〜3月頃に目に見えるようになり、4月〜8月に急成長する。
9月には成長が減少して、末枯れで短くなり、この時期に肥大度が大きくなる。
10月には葉長が最小となり、10月〜11月には、藻体から新たな根と葉が出る「再生期」となる。
11月以降は、再び急速に葉長が増大し、4月〜5月にかけて急速に成長し、葉長は最大となる。
この時期には、葉幅も急速に増大し、幅が広い立派なコンブとなっていく。
7月〜8月にかけて葉体は末枯れにより徐々に短くなり、肥大して採取期となる。

2018/5/11
左は、礼文島で須古頓岬から香深港に戻るとき、港近くの海岸で見かけたリシリコンブです。
右は、利尻島で鴛泊港近くのホテルに入った後、港を散歩しているときに見かけたリシリコンブです。
どちらも岸近くの岩場で、波の穏やかな所でしたが、おそらく引き潮の時ではないかと思います。
岸近くの手の届きそうな所に、プカプカと波に揺られて浮いていました。
ただ、手を出したら手が後ろに回ります。
取ることが許されているのは許可証を持つ漁業関係者のみです。









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