ホーム旅の見聞録早春の利尻島と礼文島を巡る旅>早春の利尻島と礼文島を巡る旅で見かけた野草(T)


早春の利尻島と礼文島を巡る旅で見かけた野草(T)



早春の利尻島と礼文島を巡る旅で、下記7地域で見かけた野草です。

旭川から稚内までの路傍、サロベツ湿原、稚内、礼文島、利尻島、宗谷岬、宗谷岬から旭川までの路傍



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
アオイ目
ジンチョウゲ科(ナニワズ)
アブラナ目
アブラナ科(スカシタゴボウ、エゾイヌナズナ、ナズナ、オオユリワサビ)
イネ目
カヤツリグサ科(オクノカンスゲ、ワタスゲ)
オモダカ目
サトイモ科(ザゼンソウ、ミズバショウ)
キク目
キク科(アキタブキ、セイヨウタンポポ、コウリンタンポポ)
キジカクシ目
キジカクシ科(ヒメイズイ、マイヅルソウ、ムスカリ)
ススキノキ科(ゼンテイカ[ニッコウキスゲ、エゾカンゾウ])
ヒガンバナ科(ギョウジャニンニク、ラッパスイセン)
キントラノオ目
スミレ科(オオバタチツボスミレ)
ヤナギ科(タチヤナギ)
キンポウゲ目
キンポウゲ科(キクザキイチゲ、ヒメイチゲ、ミヤマオダマキ、カラマツソウ、
       ウマノアシガタ、エゾノリュウキンカ)
ケシ科(エゾエンゴサク)
シソ目
オオバコ科(エゾオオバコ)
ハマウツボ科(レブンシオガマ)
早春の利尻島と礼文島を巡る旅で見かけた野草(T)
和名インデックス



ナニワズ(Daphne kamtschatica Maxim. var. jezoensis)
<アオイ目・ジンチョウゲ科・ジンチョウゲ属>
 


ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の落葉小低木で、在来種。別名はエゾナニワズ、エゾナツボウズ。
日本では、北海道から本州福井県以北の日本海側に分布する。
海外では、樺太南部や千島列島南部にも分布する。
樹高は50cmほどで、全体に無毛。太い枝がまばらに分枝する。
葉は枝先に集まって互生し、長さ3〜8cmの倒披針形で、先は円頭か鈍頭。
葉の縁は全縁で、葉裏は粉白色を帯びる。葉脈は下部の物ほど長くなる。葉柄はほとんどない。
7月までに落葉して、9月には新しい葉と翌春のツボミが出てくる。
花期は3月〜5月で、枝先に束生状に黄花を多数付ける。雌性両全異株(雌性株と両性株)。
花には芳香があり、小花柄は極短い。花弁はなく、黄色い萼筒の先が4裂して花弁のように平開する。
雌花は、萼裂片の長さが6mm前後、筒部も6mm前後と小さい。
雄花(両性花)は、萼裂片の長さが8o前後、筒部は10mm前後あり、雌花より大きい。
オシベは8個で、萼筒の上部に4個、下部に4個と分かれて付き、基部に長楕円形の子房が1個ある。
果実は液果で、はじめ緑色で、8月〜9月に赤く熟す。
なお、雄花(両性花)も結実することがあるが、結実率はかなり低い。

2018/5/11
姫沼を1周する際、半分ほど進んだところで目についたのがこの黄色いナニワズです。
木道脇で1本だけ花を付けていました。小さな花ですが、この時期では目立つ色です。
礼文島にはレブンナニワズという亜種が自生し、利尻島のものは北海道や本州と同じ本種だそうです。

スカシタゴボウ(Rorippa palustris)
<アブラナ目・アブラナ科・イヌガラシ属>
 
アブラナ科イヌガラシ属の越年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布し、水田や湿地に自生する。
海外では、北半球に広く分布し、ニュージーランドにも分布している。
草丈は35〜50cmで、地下茎は無く、茎は直立し、下部でもよく分枝し、無毛。
秋に発芽して、根生葉の状態で越冬し、翌春に茎を立ち上げる。
根生葉は長さ5〜15cmで、羽状に裂け、裂片は更に粗く切れ込む。
茎葉は互生し、上部のものほど裂け方が浅く、基部は耳状に小さく張り出して茎を抱く。
花期は4月〜6月が多いが、10月頃まで開花が見られる。
枝先に総状花序を出し、直径3〜4mmの小さな黄色の4弁花を多数付ける。
萼片も4個で、長さ1mmほどの楕円形。オシベは6個、メシベは1個。
果実は長さ5〜8mmの長楕円形の短角果で、長さ5〜8mmの柄がある。

2018/5/12
下士別町辺りでも天塩川を渡ったのですが、その河岸近くで見かけたスカシタゴボウです。
たまたま、バスが減速したので、道路脇で花茎を伸ばしていた所を撮れました。

エゾイヌナズナ(Draba borealis)
<アブラナ目・アブラナ科・イヌナズナ属>
 
アブラナ科イヌナズナ属の多年草で、在来種。
日本では北海道から本州中部地方以北に、海外では樺太やロシア極東地方にも分布する。
草丈は5〜20cmで、全体に毛が多く、根出葉は倒卵形でロゼット状となる。
葉の縁には鋸歯があり(ないものもある)、両面に毛が生える。茎葉は広楕円形で2〜7個付く。
花期は5月〜7月で、茎先の総状花序に白い小花を5〜20個付け、花弁は4枚で、倒卵形で先が凹む。
果実は長さ8〜12mm、幅3o前後の短角果で、強くねじれるのが特徴。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上る階段脇で見かけたエゾイヌナズナです。
海岸の厳しい岩場に生えることが多いのですが、ここでは手の届く範囲で撮影できました。

ナズナ(Capsella bursa-pastoris)
<アブラナ目・アブラナ科・ナズナ属>
 
アブラナ科ナズナ属の越年草で、在来種。
日本も含め、北半球に広く分布している。日本では、全国に分布する。
草丈は10〜50cmで、花期は3月〜6月。ただし、最近は真冬でも開花が見られることがある。
根生葉はロゼットを作り、長さ5〜10cmの倒披針形で、羽状に裂ける。早春の裂片は細い。
茎葉は互生して、長さ1〜5cmの狭披針形。無柄で、基部は茎を抱き、葉は裂けない。
花は直径4mm前後の白い4弁花で、花弁は長さ2〜4mmの倒卵形。萼片も4個ある。
オシベは6個で、メシベは1個。下部に果実ができ、先端部では次々につぼみが出来て開花する。
果実は角果で、長さは4〜10mmの倒三角形。上部が凹んで、ハート形になる。
春の七草の1つで、若苗を食用にする。かつては、冬季の貴重な野菜であったことによる。

2018/5/10
国道40号線にある「道の駅もち米の里なよろ」に立ち寄った時、駐車場で見かけました。
花や花柄の出方などは、シロイヌナズナに良く似ています。
特に萼片に白い長毛が見られ、その点ではシロイヌナズナとそっくりです。
ただし、根生葉には深い切れ込みがあり、切れ込まないシロイヌナズナとはまったく異なります。
根生葉の特徴はナズナそのものです。果実があれば直ぐに分かる話ですが、まだ、出来ていません。
結果として、葉の特徴からナズナの花茎が伸びたばかりの姿としました。
しかし、両者の特徴を持っていることから、両者の自然交雑種の可能性もあるかもしれません。


ナズナの花

     .

相模原の自宅近くで見かけたナズナの花です。
上記の写真に見られるような萼片にまばらに生えている毛は見られません。


オオユリワサビ(Eutrema okinosimense)
<アブラナ目・アブラナ科・ワサビ属>
   


アブラナ科ワサビ属の多年草で、日本固有種。
国内では、北海道南西部、本州の兵庫県以東の日本海側に分布する。
また、島根県の隠岐諸島、四国の徳島県、九州の福岡県沖ノ島に隔離分布する。
草丈は30〜50cmで、花後には70cmに達する。地下の根茎は鱗茎葉になり、ワサビの様に肥大しない。
和名は、この鱗茎葉をユリの球根に見立てたユリワサビより、大型であることによる。
葉は長さ4〜8pの卵円形〜腎円形で、縁には波状の鋸歯がある。
色は鮮やかな淡緑色で、葉の表面に光沢はない。葉は秋に出て、翌晩春には枯れる。
花期は4月〜5月で、茎頂に総状花序を付け、白い小花を多数付ける。
花は4弁花で、花弁の長さは6〜9mm。萼片の長さは4o前後である。
オシベは6個で、葯は黄褐色。メシベは1個である。
長角果は円柱形で、開出するか下を向き、長さ15〜20mm。

2017/7/17
稚内市郊外にあるホテル近くの湿地に見慣れない白い花がたくさん咲いていました。
やや透明感のある白い小花が球状になって茎頂で咲いていました。
後で、調べた際、候補となったのはエゾワサビとオオユリワサビです。
よく似たアイヌワサビとワサビは葉の形、ユリワサビは大きさと分布域から候補から除外しました。
残った候補の内、エゾワサビは側小葉が小さな羽状複葉で、頂小葉に切れ込みがあるかです。
撮影した写真では、側小葉は確認できず、頂小葉(単葉の場合もある)に切れ込みも確認できませんでした。
では、オオユリワサビはどうかというと、上部の茎葉は心形ですが、下部の葉は円心形で合っています。
また、エゾワサビの葯は紅紫色なのに対して、オオユリワサビは黄褐色で、この点でも合っています。
花の特徴は合っているのですが、分布域が北海道南西部までで、稚内は入っていません。
しかし、特徴が最もあっているのはオオユリワサビのみでしたので、本種としています。
間違っている可能性はありますので、ご指摘いただければ幸いです。

オクノカンスゲ(Carex foliosissima)
<イネ目・カヤツリグサ科・スゲ属・ヌカスゲ節>
 
カヤツリグサ科スゲ属の常緑多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国の愛媛県、九州北部に、海外では樺太に分布する。
草丈は15〜40cmで、根茎を伸長してまばらに叢生し、匐枝を伸ばして栄養繁殖する。
葉は常緑で5〜10mmと幅広で、硬くてやや光沢があり、上面の2脈が強くて横断面はM字状。
新葉の鞘は長く、黒紫色を帯び、光沢がある。鞘にも葉身はあるが小さい。
花期は5月〜6月で、有花茎は高さ15〜40cmになり、苞には鞘がある。
有花茎の頂小穂は雄性で、その下部の側小穂は雌性。2〜4個が各々少し離れて付く。
雄小穂は長さは2〜4cmの根棒状で、濃褐色。開花時は黄褐色の多数の葯が覆い、花後も宿存する。
雌小穂は長さは2〜4cm細長い棒状で、基部には苞があるが、鞘の先の葉状部は針状。
雌鱗片は果胞よりも明らかに長く鋭尖頭で、上半分は濃い褐色。
果胞は長さ3o前後で淡緑色。嘴は長く、その縁は平滑。鱗片、果胞共に淡い色で、黄色っぽい。

2017/7/16
姫沼の駐車場裏で見かけたオクノカンスゲで、葉がM字状に折れ曲がっているのが特徴です。
ちょうど有花茎の先にある雄小穂が咲き、多数の黄褐色の葯が出て、筆の穂先のようです。
下部にある複数の雌小穂にも、白い糸状の花柱が覗いている。

ワタスゲ(Eriophorum vaginatum)
<イネ目・カヤツリグサ科・ワタスゲ属>
 
カヤツリグサ科ワタスゲ属の多年草で、スズメノケヤリ(雀の毛槍)という別名がある。
日本では、北海道から中部地方以北の高山帯から亜高山帯の高層湿原に分布し、大群生することが多い。
海外では、北半球の高山や寒地に広く分布する。
草丈は30〜50cmで、葉は断面は三角形の細長い線形で、多数根生して大株をつくる。
花期は5月〜6月で、長さ60cmほどの円柱形の花茎を立ち上げ、先に小穂を1個付ける。
花茎の途中に、褐色〜黒褐色の膜質の鞘が1と付き、小穂には薄膜質で灰黒色の鱗片が多数つく。
両性花には6個の刺針状の花被片があり、花後、数cmに伸びて白い綿毛となる。
この綿毛が鱗片からはみ出してくるので、小穂全体が綿毛で覆われ、たんぽ槍のようになる。
この綿毛が和名の由来であり、たんぽ槍のように見えるのがスズメノケヤリの由来でもある。

2018/5/10
サロベツ湿原で、木道から少し離れた所で、暗褐色の穂を出しているワタスゲを見かけました。
ワタスゲの場合、この花よりも花後の白い綿毛に覆われた姿の方が目立ちます。
そのため、時期的なものもありますが、写真で紹介されているのは綿毛の時期のものが多いです。
私自身も綿毛になったワタスゲしか見たことがなく、開花中の花を見るのは初めてでした。

ザゼンソウ(Symplocarpus renifolius Schott ex Tzvelev)
<オモダカ目・サトイモ科・ミズバショウ亜科・ザゼンソウ属>
   

 
サトイモ科ザゼンソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の東北、北陸、北関東の寒冷地帯に分布する。
海外では、北アメリカの東海岸、朝鮮半島から中国などの北東アジアに分布する。
草丈は30〜60cmになり、花後も葉は伸び、円心形で長さ、幅とも40cmほどになる。
花期は1月下旬〜3月中旬で、葉の展開に先立って花序を出す。
仏炎苞は長さ10〜20cmで、先は尖る。色は淡褐色〜暗紫褐色、まれに緑色をしている。
ザゼンソウは雌性先熟で、雌性期と短い両性期に発熱し、雄性期には急速に発熱が低下する。
この開花する際に肉穂花序で起きる発熱は25℃ほどになり、この発熱で周囲の氷雪を溶かす。
そして、いち早く顔を出し、周囲に悪臭を放って訪花昆虫を呼び寄せると考えられている。
この肉穂花序に並んでいる6角形状のものが花で、花被片が4個ある両性小花である。
オシベは4個で花糸は扁平、葯は黄色で外を向き、柱頭よりもやや高い。メシベ1個。
果序は球形で、見た目はパイナップルのような形をしていて、多数の種子が入っている。

2018/5/11
利尻島の姫沼を1周したとき、ここではミズバショウはなく、ザゼンソウのみが見られました。
上段左は、雄性期の肉穂花序で、黄色い花粉が大量に出ています。
下段は、葉が展開し始めているザゼンソウで、右側の個体はかなり葉が成長しています。
ザゼンソウは、ミズバショウよりも乾燥に強く、ミズバショウが生育できない場所でも見られます。
つまり、この辺りは乾燥が進んで、ミズバショウが生育できないほど乾燥しているということなのでしょう。

※ ミズバショウとザゼンソウの分布、生育状況で、その場所の乾燥度合いが分かるそうです。
つまり、乾燥が少しずつ進めばミズバショウは段々少なくなり、ザゼンソウだけが残るようになる。
さらに乾燥が進めば、ザゼンソウも生育できなくなって、消えて行くということのようです。

ミズバショウ(Lysichiton camtschatcense Schott)
<オモダカ目・サトイモ科・ミズバショウ亜科・ミズバショウ属>
 
  <サロベツ湿原へ向かう道道444号沿い>          <サロベツ湿原>        .
 
   <稚内市郊外の湿地>           <音威子府付近の国道40号沿い>
   
サトイモ科ミズバショウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州中部地方以北の日本海側に分布する。南限は兵庫県養父市の加保坂峠。
海外では、シベリア東部、サハリン、千島列島、カムチャツカ半島に分布する。
草丈は60〜100cmで、葉の展開に先立って花柄を伸ばし、開花する。
花期は4月〜7月で、純白の仏炎苞が目を引く。その仏炎苞の中心に肉穂花序がある。
この花序に多数の花が密集して付き、個々の花には4個のオシベと1個のメシベがある。
ミズバショウは雌性先熟で、開花直後は雌性期で、その数日後にオシベが現れて雄性期になる。
ザゼンソウとは異なり自家不和合ではないので、自家受粉もするが、雄性期には大量の花粉を放出する。
この肉穂花序に並んでいる突起状のものが花で、花被片が4個ある両性小花である。
オシベは4個で、葯は黄色、柱頭よりもやや高い。メシベ1個で、雄性期には見えなくなる。
花後、葉は根出状に出て立ち上がり、幅30cm、長さ80cmほどの長楕円形。
この葉の形が、芭蕉布に使うイトバショウに似て、水辺に生えることが和名の由来。
各地に多くの群落があるが、特に尾瀬沼が「夏の思い出」で歌われているように有名。

北海道内では、山間部に入ると道路脇の湿地などでミズバショウをよく見かけた。
上段、中段は比較的規模の大きな自生地の写真であるが、小さな自生地は数えきれないほどある。
場所によっては、エゾノリュウキンカやコバイケイソウと混生している所もある。
利尻島では、オタトマリ沼でミズバショウを見ることができたが、姫沼では見当たらなかった。

2018/5/10
サロベツ湿原で見かけたミズバショウです。たくさん見かけても、近づける所は少なかったです。
肉穂花序をアップで撮りましたが、花粉が出ているので雄性期に入っているようです。
花被片を押し開けるようにオシベが伸び、葯が開いて、黄色い花粉が出てきています。

アキタブキ(Petasites japonicus subsp. giganteus)
<キク目・キク科・キク亜科・フキ属>
 
<旭川市郊外で見かけたアキタブキ>
   
<雄花(花後)>                               <雌花(花後)>

キク科フキ属の多年草で、フキの変種。エゾブキ、オオブキの別名がある。
日本原産で、主に本州北部、北海道、千島、樺太に分布している。
葉柄が1〜2m、葉の直径は1.5mとなり、葉柄は食用となる。
フキは葉がでる前に花茎をのばすが、アキタブキは葉と花茎が同時に出てくる。
花茎には平行脈の目立つ苞が多数付き、花茎の先に散房状に頭花を付ける。雌雄異株。
雄株は高さ10〜25cmになり、黄白色の頭花を多数つける。
頭花は黄色っぽく、すべて両性の筒状花ではあるが、結実はしない。
雌株は、はじめは雄株と大差ないが、花後、高さ40〜80cmくらいにのびる。
頭花は白っぽく、多数の雌花には細い糸状の花柱が伸びるが、雄花と同じ形の両性花が数個まじる。
北海道足寄町の螺湾川(らわんがわ)に沿って自生するアキタブキは特に大きいことが知られている。
その高さは2〜3m、茎の直径が10cmに達し、ラワンブキの名で北海道遺産に指定されている。
かつては、その高さが4mに及ぶものもあったと言われている。

2018/5/10
旭川空港を出て、旭川市街を走っているとき、田の畔にはたくさんのアキタブキが生えていました。
それ以降も、道路沿いのあちらこちらでアキタブキのフキノトウや葉を見かけました。
中段は、稚内市郊外にあるホテル近くで撮ったものですが、道路脇に群生していました。
既に花は枯れていましたが、逆に雌株のフキノトウが大きく伸び出し、雌雄の区別が容易でした。
下段は、その中で1本だけ雄株が花を咲けせていたので、アップで撮ったものです。
その右側は、アキタブキの新葉の展開の様子です。
なお、自生種であるアキタブキは、茎が赤みを帯びていて、灰汁が強いので食用にはしないそうです。
サハリンから持ち込まれたアキタブキは、茎が緑色で、灰汁が弱いので、こちらを食べるそうです。
そのため、外で見られるものは茎が赤く、家で栽培されているのは茎が緑色をしているとのこと。
そういえば、上記の写真の茎も赤味を帯びていますね。誰も取らないので、こんな状態になるのかも。

セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・タンポポ属>
 

   
キク科・タンポポ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本以外にも北アメリカ、南アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、インドに移入している。
環境省指定要注意外来生物で、侵略的外来種ワースト100に入っている要注意植物である。
日本では、北海道から九州まで、全国に広がっている。
従来、日本の在来種との区別点は、外側の総苞が反る点とされていた。
しかし、近年、在来種との雑種が確認され、在来種の特徴を持つものも報告されている。
そのため、外側の総苞が反る点だけでは区別できず、その識別は困難になっている。
日本でいうセイヨウタンポポには複数の種が含まれている可能性が高く、外来タンポポ群扱われることが多い。

2018/5/10
旭川空港を出て、旭川市街を走っているとき、田の畔にセイヨウタンポポが大きな群落を作っていました。
旭川市街では、このような大きな群落が所々にあり、畔が黄色く見える所がありました。
下段は、国道40号線にある「道の駅もち米の里なよろ」で見かけたセイヨウタンポポです。
純粋なセイヨウタンポポかどうかは分かりませんが、総苞内片に角突起がなく、総苞外片が反り返っています。
下段左の写真に写っている小さな虫ですが、おそらく、アリに擬態しているホソヘリカメムシの幼虫です。

コウリンタンポポ(Hieracium aurantiacum)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・ヤナギタンポポ属>
 
キク科ヤナギタンポポ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
明治中期に観賞用として持ち込まれ、北海道で広く野生化し、本州の中部地方以北でも見られる。
根生葉は全縁のへら型で、ロゼット状になる。葉には白い毛が密生し、白っぽく見える。
花期は6月〜8月で、花茎を叢生し、高さは20〜50cmと高く立ち上がる。
花茎には白い縮れた長毛が散生し、短い星状毛も生える。
茎先に総状花序を出し、直径20〜30mmの赤橙色の頭花を10個ほど付け、次々に咲かせる。

2018/5/10
国道40号線にある「道の駅もち米の里なよろ」で見かけたコウリンタンポポです。
最初に見たとき、てっきり、葉に生える白い毛からツボミオオバコだと思ってしまいました。
しかし、後でよく見てみると、葉脈が並行脈ではありません。
では、何者だと調べ始めたのですが、なかなかピッタリのものがありません。
悩んでいるときに思い出したのが、ヤナギタンポポ属です。調べると、北海道で野生化しています。
候補は、コウリンタンポポ、キバナコウリンタンポポ、ハイコウリンタンポポです。
葉先の尖り具合からキバナコウリンタンポポではなさそうです。
ハイコウリンタンポポの葉裏は白い綿毛が密生していますが、写真の葉にはないので、これでもなさそう。
コウリンタンポポの葉先は鈍頭であり、白い毛の生え方が似ている点も考慮し、消去法で本種としました。
花が咲く時期であれば間違えることはないと思いますが、この時期での同定は難しいです。
ですので、間違っている可能性は否定できません。
なお、右の写真に写っている黄色い花は、隣で咲いていたセイヨウタンポポです。



コウリンタンポポの花

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竜王マウンテンパークの山野草ガーデンの外れで、他の野草に紛れて咲いていました。
花茎が数十cmになるので、周りの野草より飛び出して花を付けていました。
一部に綿毛になっているものもありましたが、多くの花が見られました。


ヒメイズイ(Polygonatum humile)
<キジカクシ目・キジカクシ科・スズラン亜科・アマドコロ連・アマドコロ属>
 
キジカクシ科アマドコロ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道、本州の中部地方以北、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国東北部、サハリン、シベリアなどにも分布する。
草丈は15〜40cmで、地下に根茎が走り群生する。茎には稜があり、直立する。
葉は互生し、葉身は長さ4〜7cmの長楕円形で、葉の縁や裏面の葉脈上には乳頭状の突起がある。
花期は5月〜6月で、長さ15〜18mmの淡緑白色をした筒状の花を、葉脇に1個ずつ下向きに付ける。
花冠の先は浅く6裂して外側に反り、緑色を帯びる。雄しべは6個。
花後にできる果実は、直径9mmほどの球形の液果で、黒紫色に熟する。

2018/5/10
稚内市郊外にあるホテル近くで撮ったものですが、道路脇で何本かがまとまって伸びていました。
葉のみのため、同定に手間取りましたが、葉の形状や付き方から本種としました。
もう少し大きくなると、葉脇からツボミが顔を出してくるものと思います。

マイヅルソウ(Maianthemum dilatatum)
<キジカクシ目・キジカクシ科・スズラン亜科・アマドコロ連・マイヅルソウ属>
 
スズラン亜科マイヅルソウ属に属する多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州の山地帯上部から亜高山帯の針葉樹林に多く群生する。
海外では、ユーラシア北東部、北アメリカ北西部に分布している。
草丈は10〜20cmで、落葉層の発達した環境では、根茎を横に伸ばして群生する。
茎の途中に数枚(2枚の事が多い)の心形の葉を互生して付け、その先に総状花序を付ける。
葉身の長さは5〜10cmほどで、全縁で両面とも毛がなく、先が鋭く尖る。
花期は5月〜7月で、小さな白花を10輪程度付ける。
花被片は4個、オシベも4個で、花被片は反り返り、オシベが突き出す。
花後にできる果実は、球形の液果で、熟すと赤と白のまだら模様から真っ赤になる。
和名の由来に関しては、葉の模様が舞鶴紋に似るからとか、
2枚の葉と花序が翼を広げて舞うツルに似ているからとか、諸説あるようである。

※ よく似たヒメマイヅルソウは、葉裏や茎に毛が多く、葉の縁に微細な鋸歯がある点が異なる。

2017/7/15
利尻島で姫沼に寄った時、姫沼の管理棟脇に群生していました。
姫沼を1周している間も、木道脇などで時折見かけましたが、開花しているものはありませんでした。


マイヅルソウの花

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町田市の薬師池公園にある萬葉草花園で見かけたマイヅルソウの花です。
茎先の総状花序に10輪前後の白花を付けます。


ムスカリ(Muscari)
<キジカクシ目・キジカクシ科・ツルボ亜科・ヒアシンス連・ムスカリ属>
 
キジカクシ科ムスカリ属の多年草で、南アフリカ共和国ドラケンスバーグ山脈周辺の高原が原産地。
日本には、園芸品種として移入され、庭などで栽培されることが多い。
草丈は15〜20pほどで、葉は長さ10〜15p程の線形。
花期は3月〜5月で、ブドウ房のように卵状壺形の青色の花を付ける。
近年、人気品種となって、各地の公園などに植栽され、逸出して野生化したものが見かけられる。
良く見かけられる品種は、比較的大柄なアルメニアカム(Muscari armeniacum)、
小型のアウケリ(Muscari aucheri)、ネグレクタム(Muscari neglectum)などです。

2018/5/10
国道40号線の道の駅「なかがわ」、その駐車場脇で一際目を引いていたのがムスカリです。
セイヨウタンポポに混じって、一か所に群生していたのですが、黄色よりも目立っていました。

ゼンテイカ(Hemerocallis dumortieri var. esculenta)
<キジカクシ目・ススキノキ科・キスゲ亜科・ワスレグサ属>
 
ススキノキ科ワスレグサ属の多年草で、本州の中部以北に分布する。
本州では高原でよく見られるが、東北地方や北海道では海岸線など低地でも見られる。
標準和名は、「ゼンテイカ」だが、一般には「ニッコウキスゲ」の方が通りは良い。
また、北海道では、「エゾカンゾウ」の名で親しまれている。
草丈は50〜80cm程度で、花茎の先に数個の花を付け、次々と咲かせる。
花期は5月〜8月で、花色は黄橙色で、長さ10pほどの漏斗型。
花被片は6個で、オシベも6個。オシベは花被片より飛び出すことはない。
朝に開花し夕方にはしぼんでしまう一日花である。
尾瀬の大江湿原の大群落始め有名な所はあるが、全国に群落がある。

2018/5/10
北海道では、ニッコウキスゲやゼンテイカよりも、エゾカンゾウの名で親しまれています。
サロベツ湿原やオロロンライン沿いなど、一面を橙色の花を埋め尽くすところも多いようです。
残念ながら、時期が早くてサロベツ湿原センターでも木道脇などで若葉を立ち上げたばかりでした。
尾瀬の大江湿原など、有名な所がありますが、北海道は規模が桁違いに違いそうです。
この辺りが橙色に染まるのは1ヶ月以上先の6月下旬から7月上旬になるそうです。
ところで、本州の美ヶ原などでは、ニホンジカによるゼンテイカの食害が深刻になっています。
北海道でもエゾジカによる食害があるようですが、この辺りはどうなのでしょうか。


ゼンテイカ/エゾカンゾウ/ニッコウキスゲの花

     .

群馬県と長野県の県境にある渋峠。その渋峠で見かけたゼンテイカの花です。
途中の長野県側の国道292号線、そこから見える斜面にはかなりの数の花が咲いていました。
シカの食害によって、急激に数を減らしている所がありますが、この辺りはまだ大丈夫なようです。


ギョウジャニンニク(Allium victorialis subsp. platyphyllum)
<キジカクシ目・ヒガンバナ科・ネギ亜科・ネギ属・ギョウジャニンニク種>
 
ヒガンバナ科ネギ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の近畿地方(奈良県)以北に自生する。
海外では、朝鮮半島から中国、極東ロシア、樺太に自生する。
草丈は20〜30cmで、亜高山地帯の針葉樹林、混合樹林帯の水湿地に群生する。
葉は根生して扁平で、株は狭い鞘となる。葉身は長さ20〜30cm、葉幅3〜10cmのヘラ状。
葉には強いニンニク臭があり、それが和名の由来にもなっている。
地下にラッキョウに似た鱗茎を持ち、種子の他、不定芽でも増殖する。
花期は6月〜7月で、花茎を立ち上げ、茎頂に球形花序を付け、白色または淡紫色の小花を多数つける。
本種は成長が遅く、播種から収穫可能になるまでに5〜7年を要する。
そのため、希少な山菜とされ、5月上旬〜中旬にかけてが旬となる。
茎の太さが1cm程度でまだ葉の開かないものが、味、香り共に濃く珍重される。
なお、この時期はバイケイソウ類、イヌサフラン、スズランなどの毒草と酷似しており、注意が必要。

2018/5/10
サロベツ湿原で見かけたギョウジャニンニクの群落です。
最初に見たとき、スズランかと思ったのですが、葉が細長く、全体に小さく見えました。
後で、いろいろ調べて、葉の基部の方が赤みを帯びている点などから本種としました。
北海道では、ギョウジャニンニクの群落が、国立公園内などでよく見られるとのこと。
国立公園内は生育条件が良いことや、採取禁止なので残っているのでしょうか。

ラッパスイセン(Narcissus pseudonarcissus L.)
<キジカクシ目・ヒガンバナ科・ヒガンバナ亜科・スイセン連・スイセン属>
 
2018/5/11 <オタトマリ沼の畔にて>
 
2018/5/12 <国道238号線の猿払付近にて>
ヒガンバナ科スイセン属の多年草で、西ヨーロッパのスペインからイギリスにかけてが原産地。
一茎一花で、副花冠がラッパ状に前に付き出た品種で、副花冠が花被片以上に長い品種である。
球根は卵形で、長さ3〜5cmほどで、外皮は淡褐色。
葉は3〜4個出て、葉身は扁平で、長さは20〜40cm程になる。
花期は3月〜4月で、花序は長さが25〜50cmと葉より長く、苞は淡褐色。
花の直径は30〜50mmで、花被片6個(花弁3個、萼片3個からなる)は、ほぼ同形状、同色である。
花被の筒部は長さ15〜20oで基部は急に細くなり、筒部の先で裂開した花被片はほぼ平開する。
その中央から長さ30mmほどの副花冠が伸び、副花冠の先はフレア状に、しわになる。
オシベ6個は副花冠の中ほどまで突き出て、メシベの花柱は葯より数mm前に突き出る。

2018/5/11
オタトマリ沼の湖畔で撮った写真を後で見ていて、ラッパスイセンに気が付きました。
景色を撮るのに気が行っていて、足元には目が行っていなかったようです。
後で調べてみると、北海道ではラッパスイセンが逸出して野生化しているとの事。
通路の右側は湿地になっていてミズバショウが、左側は乾燥化してラッパスイセンが咲いています。
2018/5/12
旭川空港を目指してバスで移動中、道路脇の斜面に咲く黄色い花が目に付いて撮ったものです。
撮った時にはエゾノリュウキンカではないかと思っていましたが、後で見ると違っていました。
花の形から見て、黄色いラッパスイセンと思われます。
とても、人が手を入れたとは思えない場所ですが、かなりまとまって咲いています。

オオバタチツボスミレ(Viola langsdorfii Fisch. ex DC. subsp. sachalinensis W.Becker)
<キントラノオ目・スミレ科・スミレ属>
 
スミレ科スミレ属の多年草で、在来種。
日本では北海道から本州の中部地方以北の低地〜亜高山帯の湿地に生える。
草丈は20〜30cmになり、葉は大型の円心形で、縁に波状の鋸歯がある。
花期は5月〜7月で、地上茎から花柄を立ち上げ、直径2〜3cmの紅紫色の花を付ける。
各花弁には濃紅紫色の脈があり、側弁の基部には白い毛が密生する。距は短い。
托葉に浅い鋸歯がまばらにあるが、無い場合もある。

2018/5/10
サロベツ湿原で見かけた謎の葉。最初、何の葉なのかさっぱり分かりませんでした。
ふっと、スミレの葉に近いのではと思って、調べてみるといくつか候補が出てきました。
その中で、葉の形状と大きさから、本種が近いと判断しました。
しかし、新葉が出たばかりの状態なので、間違っている可能性はあります。

タチヤナギ(Salix subfragilis)
<キントラノオ目・ヤナギ科・ヤナギ亜科・ヤナギ連・ヤナギ属>
 
ヤナギ科ヤナギ属の落葉低木〜小高木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布し、湿地に生える。
株立し、樹高は3〜10m、幹は直径10〜30pになる。樹皮は灰褐色で、不規則にはがれる。
葉は互生し、長さ5〜15pの長楕円形で先は尖り、葉柄は長さ10mmほどある。
縁には先端が腺になる細かい鋸歯があり、巻かない。裏面は無毛で淡白緑色。
花期は4月で、葉の展開と同時に開花する。
花序は長さ5p前後の円錐形で、雄花序は黄色く、雌花序は黄緑色。
雄しべは3個で、花糸は分離し、基部に黄緑色の腺体が2個ある。葯は黄色い。
雌花の線体は1個で黄色い。子房には長い柄があり、緑色。
苞の外面に毛があり、雄花では黄色く、雌花では淡黄緑色。

2018/5/10
サロベツ湿原センターから湿地の方に伸びる木道。その入り口付近に生えていました。
まだ、一部しか開花していませんでしたが、黄色い雄花序が目を引きます。
近づけないので、葉の確認までできませんでしたが、枝ぶりや花序の色から本種としました。


タチヤナギの雄花序

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町田市恩田川の河川敷で見かけたタチヤナギの雄花序です。
開花間もない雄花序で、かなり黄色味は強いです。
なお、時間がたつと雄花序が間延びして、黄色味は薄れます。


キクザキイチゲ(Anemone pseudoaltaica H.Hara)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・イチリンソウ属>
 
キンポウゲ科・イチリンソウ属の多年草で、在来種。
日本では北海道から本州の近畿以北に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は10〜20cmで、茎は直立して、茎葉が3枚輪生する。
葉は、長さが3〜10cmの3出複葉で、小葉は深裂する。
花期は3月〜5月で、茎頂に直径2〜3cmの花を1個付ける。
なお、花弁に見えるのは萼片で、淡青紫色〜白色と変異があり、長楕円形で8〜13個付く。
和名は、花の形が菊に似ることに由来する。
花後、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、翌春まで休眠する。

2018/5/12
国道40号線を旭川空港に向かって進んでいるとき、車窓から時々見ることができました。
道路脇で咲いており、バスの速度も速かったので、全てが被写体ブレしていました。
その中でも、ブレが比較的少なく、何とか確認可能だったのが、上記の写真です。
萼片の形や数、葉の切れ込みの深さから本種と判断しました。


キクザキイチゲの花

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相模原市「城山カタクリの里」で見かけたキクザキイチゲです。
萼片の色に関しては、白〜淡青紫色のものまで変異があります。


ヒメイチゲ(Anemone debilis)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・イチリンソウ属>
   


キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の近畿地方以北に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国北部、東北部、シベリア東部、樺太に分布する。
草丈は5〜15cmで、根茎は横に這い、紡錘状に膨らみ、所によりくびれる。
根出葉は1回3出複葉で、小葉は倒卵形で幅が広い。短い葉柄があり、不規則な鋸歯がある。
茎葉は3全裂し、小葉は披針形で不規則な鋸歯がある。なお茎葉は3個が輪生する。
花期は5月〜6月で、花茎を立ち上げ、先に直径10mmほどの花を1個付ける。
花弁はなく、白い長楕円形の花弁状のものは萼片で、5個ある。葯も白色。
果実はコンペイトウ状の痩果で、細い毛がある。

2018/5/11
利尻島の姫沼を1周するとき、遊歩道で最初に出会ったのがヒメイチゲでした。
キクザキイチゲの数分の1しかない小さな花なので、気を付けないと見落としてしまいそう。
ただ、周りが枯草の中にポツリポツリと咲いているので、気を付けていれば見つけられます。
なお、礼文島には本種より一回り大きく、萼片数が5〜7個のエゾイチゲが自生しているとか。


ミヤマオダマキ(Aquilegia flabellata var. pumila)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・オダマキ属>
   
キンポウゲ科オダマキ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の中部地方以北に分布する。
海外では、朝鮮半島北部、樺太、千島列島南部に分布する。
草丈は10〜25cmで、根は太くてまっすぐに下に伸びる。
葉は基部から数個出て、2回3出複葉。葉表は無毛で、葉裏は無毛かわずかに有毛。
葉柄は長さ4〜20cm。小葉は扇状で、長さは10〜25o。3裂して、数個の切れ込みがある。
花期は6月〜8月で、立ち上げた茎の先に花序と出し、数個の花をやや下向きに付ける。
苞は線状披針形で、長さ4〜7mm、1〜3裂する。
花は青紫色で、直径40mmほど。5個の萼片は、全体が青紫色。広卵形で傘状に開く。
花弁も5個で、青紫色の花被片の先端は白くなり、基部からは萼の間を抜けて距が伸びる。
この花弁と萼片の形が、糸を巻く道具の「苧環」に似ていて、深山に咲くことが和名の由来。

利尻島には、花弁の距がないリシリオダマキが自生しているらしいです。
どのような花なのかWebで検索しても、出てくるのは白花ミヤマオダマキばかり。
どうも白花ミヤマオダマキをリシリオダマキと勘違いされている方がいるようです。
ミヤマオダマキから距を取ると、色合いは逆ですがレンゲショウマのような花になるのでしょうか。
一度、見てみたいと思うのですが、Webに出てこないということは、希少種なのかもしれません。

2018/5/11
礼文島の香深港で、フェリー待ちをして時間つぶしをしているとき、店舗の前で見つけました。
おそらく、店の方が植栽されたものと思われますが、ツボミが2つ付いていました。


オダマキの花

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町田市にある町田ぼたん園でみかけたミヤマオダマキの園芸品種と思われる花です。
色合いや特徴は、ミヤマオダマキとほとんど変わらないので、参考までに掲載します。
いつか本物に会いたいと思っているのですが、年なので叶いますかどうか。


カラマツソウ(Thalictrum aquilegiifolium var. intermedium)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・カラマツソウ属>
   
キンポウゲ科カラマツソウ属の多年草で、日本固有種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、湿った日当たりの良い草地を好む。
草丈は1m前後になり、茎は中空で、緑色か紫色を帯び、上部でよく分枝する。
根生葉や下部の葉は、2〜4回3出複葉で、上部の葉は2回3出複葉になる。
小葉は長さ数cmの倒卵形で、3残裂する。裏面はいくぶん白くなり、葉脈が隆起する。
枝先に散房状に花序を付け、直径1cm程の花を多数付ける。
花色は白色から淡紅色で、花弁はなく、萼片も開花後、直ぐに落下してしまう。
オシベは多数あり、白い花糸は先が太いこん棒状。メシベは子房と柄が紅紫色。
痩果には広い翼があり、数mmの柄があって垂れ下る。

2018/5/10
サロベツ湿原センターから湿地の方に伸びる木道。その近くでミヤマオダマキのような歯を見つけました。
その時は、ミヤマオダマキであろうと思い、写真を撮りました。
しかし、後で写真を見ていると、ミヤマオダマキとは葉質が異なります。
改めて良く見ると、全体がばらけて隙間が多く、2回3出複葉で、葉が薄くて裏面が白味を帯びています。
それと、葉軸の分岐点に丸い小托葉が見られる点から、本種と分かりました。


カラマツソウの花

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長野県にある八島ヶ原湿原で、八島ヶ池に向かって降る木道脇で見かけたカラマツソウです。
そのオシベの付き方が、カラマツの葉の付き方に似ているのが名前の由来です。


ウマノアシガタ(Ranunculus japonicus)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・キンポウゲ属>
 

 
キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草で、在来種。日当たりの良い山野に自生する。
日本では北海道から本州、四国、九州、南西諸島全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
草丈は30〜60cmで、茎と葉裏には白い長毛があり、縦に筋が入って、上部でよく分枝する。
根出葉には長い葉柄があり、掌状の3〜5裂し、裂片はさらに数裂する。不揃いな鈍鋸歯がある。
上部の茎葉は、葉柄が短く、掌状に3深裂し、裂片は3中裂して鋸歯がある。
さらに上部の茎葉では、裂片は線形となり、縁も全縁となって鋸歯がなくなる。
花期は4月〜6月で、直径20oほどの黄色い光沢のある花を付ける。
花被片は5個で、多数のオシベがあり、花糸は長さ3mmほどで無毛。花後に、球状の集合果を付ける。
なお、花には八重咲のものがあり、これをキンポウゲと呼び分けている。

2018/5/12
国道275号線(美深国道)を音威子府に向かっているとき、道路脇の牧草地等で見かけた小さな黄花です。
最初、遠くに見えていたのでエゾノリュウキンカだろうと思っていました。
しかし、道路脇でエゾノリュウキンカと並んで咲いているのを見て、その小ささから別種と分かりました。
ただ、遠いと解像度が悪く、近いと被写体ブレを起こすため、なかなかうまく撮れません。
何とか花と葉の形が分かるものがあったので、それを手掛かりに本種としました。
花は5花弁で、エゾノリュウキンカの半分ほどなので、直径は2cm前後と分かりました。
葉は、長い葉柄のある単葉で、掌状に深裂しています。大きさは、花との比較で4cm前後ありそうです。
これらの特徴と開花時期から、前述の通り本種としていますが、解像度が悪いので断言はできません。

エゾノリュウキンカ(Caltha palustris var. barthei)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・リュウキンカ属>
 
2018/5/10
 
2018/5/12
キンポウゲ科リュウキンカ属の多年草で、リュウキンカの変種である。
日本では本州北部から北海道に、海外ではサハリン、朝鮮半島北部、ウスリーに分布する。
リュウキンかよりも大型で、草丈は50〜80cmになる。根出葉も10〜30cmと大きい。
葉身は腎形で、通夜があり、縁には粗い鋸歯がある。
なお、葉の形がフキに似るので「ヤチブキ」とも呼ばれ、山菜として利用される。
花期は、5月下旬〜8月上旬で、直径4cmほどの黄花を散形状に5個前後付ける。
花弁に見えるのは萼片で、5〜7個あり、メシベは5〜8個、オシベは多数ある。

2018/5/10 行きは国道40号線をサロベツ湿原に向かっているとき、道路脇の湿地で良く見かけました。
2018/5/12 帰りは国道275号線を音威子府に向かっているとき、道路脇の湿地で良く見かけました。
大きな葉と、鮮やかで大きな黄色い花が、車窓から否が応でも目に飛び込んできます。
行きは、ミズバショウと混生して、白い花(仏炎苞)と黄色い花(萼片)のコントラストが早春らしいです。
帰りは、そこに小さな黄花のウマノアシガタが混ざり、さらににぎやかな所もありました。
ただ、バスの車窓からはあちらこちらで目にするのですが、停車したところにはありませんでした。
やっと会えたのは、稚内のホテル内でした。そこで撮ったのが拡大写真の花です。
リュウキンカやエンコウソウよりも、花も葉も1周り以上大きく立派です。


エゾノリュウキンカとエンコウソウの花

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<エンコウソウ>
     .
<エゾノリュウキンカ>

上段は、横浜市の三溪園で見かけたリュウキンカの変種であるエンコウソウです。
花の直径は3cm弱、葉の直径は5〜10cmほどあります。リュウキンカもほぼ同じです。
左側の写真は、エンコウソウとエゾノリュウキンカをほぼ同じ縮尺にしたものです。
花の大きさに差はありますが、葉の大きさはその差が倍以上があることが分かると思います。
右の写真を見ても、エゾノリュウキンカの葉は、花の数倍の大きさがあり、エンコウソウとは趣が異なります。


エゾエンゴサク(Corydalis ambigua)
<キンポウゲ目・ケシ科・キケマン属>
 

   
ケシ科キケマン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から東北地方の日本海側に分布し、山地の湿った森林内、林縁部に生える。
海外では、樺太からオホーツク沿岸に分布している。
草丈は10〜20cmで、地下に直径1〜2cmの球形の塊茎がある。
葉は1〜3回3出複葉。小葉は楕円形で、葉先は丸いものが多いが、変異がある。
花期は4〜5月で、茎の上部に総状花序を付け、濃い青紫色の花を咲かせる。
なお、花色には水色、薄紫、白色といった変異があり、花弁の先だけ淡赤紫色のものもある。
花後、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、翌春まで休眠する。
エゾエンゴサクは、同属のキケマンやムラサキケマンなどと違って毒性が無い。
そのため、花を含む地上部は山菜として利用される。
また、塊根はアイヌ語で「トマ」と呼ばれ、保存食として利用されてきた。
なお、和名のエンゴサクは、中国の漢方薬(延胡索)に塊茎が似ていることに由来している。

2018/5/10
道央自動車道を降りて一般道に出ると、道路脇などでエゾエンゴサクの青紫色の花が目につき始めました。
場所によっては、エゾエンゴサクが群生していて、青紫色の絨毯を敷いたようでした。
上段右の写真は、バスの車窓から撮ったものですが、手前側が被写体ブレで横に流れています。
下段は、国道40号線「道の駅もち米の里なよろ」で撮ったものですが、キケマン属らしい花の姿をしています。

 
<礼文島 澄海岬にて>                    <利尻島 姫沼にて>
   
2018/5/11
礼文島の澄海岬でもエゾエンゴサクが咲いていましたが、それほど多くはありませんでした。
利尻島の姫沼を1周した際にも、エゾエンゴサクが咲いていました。
こちらはザゼンソウ(左側)、オニシモツケ(中央)、オクノカンスゲ(寝ているイネ科の葉)と周りはにぎやかです。
そのような中で、木道近くにあったエゾエンゴサクをアップで撮ったのが下段です。
後で気が付いたのですが、手前の花の距の部分には穴が開いており、盗蜜にあったようです。
多くの場合、盗蜜は移入種のセイヨウオオマルハナバチによって行われるようです。
セイヨウオオマルハナバチは、農作物の花粉媒介昆虫として移入され、それが逃げ出して定着したものです。

エゾオオバコ(Plantago camtschatica)
<シソ目・オオバコ科・オオバコ連・オオバコ属>
 
オオバコ科オオバコ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、九州の日本海側に分布する。
海外では、朝鮮半島、オホーツク海沿岸、樺太、千島列島に分布する。
草丈は15〜30cmで、太い根茎から10個前後の葉を束生し、地面に広がる。
葉は長さ5〜20cmの倒長卵形で、先は少し尖り、基部は徐々に細くなって短い葉柄となる。
葉には数本の平行脈が走り、白くやわらかい毛が密生して、白っぽく見える。
花期は5月〜8月で、長さ15〜30cmの花茎を立ち上げて、3〜10cmの穂状花序を付ける。
花冠は長さ3o前後で4裂して半透明で膜質。最初、4個のオシベとメシベを包み込んでいる。
雌性期には、その花冠の先からメシベの柱頭が伸び出してくる。
メシベが枯れると、先が赤紫色の葯が伸び出してきて、大きく飛出し、雄性期に入る。
苞は萼より短く、卵形で無毛。萼は長さ2mm前後の卵状長楕円形で、先は円く無毛、中肋は緑色。
果実は狭卵形の刮ハで、長さは萼片の2倍弱。中に4個の種子が入っている。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上る階段脇で見かけたもので、花茎を伸ばし始めたばかりでした。
そのため、花穂の小花も雌性期で、メシベの柱頭も伸び始めたばかりのようで、淡赤紫色です。

レブンシオガマ(Pediculasis chamissonis var. rebunensis)
<シソ目・ハマウツボ科・シオガマギク属>
   
ヨツバシオガマはハマウツボ科シオガマギク属の多年草で、高山植物。日本固有種。
日本では、北海道から本州中部地方以北の高山帯に分布する。
シオガマギク属の仲間では、もっともポピュラーな種である。
ヨツバシオガマは湿地帯に生え、草丈は数十cmになる。
葉は羽状に分裂し、4枚が輪生するのが、名前の由来。
淡紅紫色の独特な形の花が数段輪生する。上唇は鳥のくちばし状になり、下唇は3裂する。花序は無毛。
なお、北海道や東北地方では、ヨツバシオガマより花序が長く、細毛が密生し、花が7〜12段付くものがある。
近年の遺伝子調査によって、これらは別種と判明したそうで、キタヨツバシオガマとされる。
そのキタヨツバシオガマより全体に大型で、葉が5〜6枚輪生し、花も10段以上付くものがレブンシオガマ。
花期は6〜7月で、薄紫色の花が数段から時には十数段に重なり輪生する。

2018/5/11
礼文島の澄海岬に上る階段脇で見かけたもので、何の葉なのか分からなかったものの1つです。
写真からわかる葉の特徴は以下の通りです。

・葉が羽状に全裂し、さらに裂片も羽状に切れ込み、裂片の先は尖る。
・葉はやや厚みがあり、ぼてっとしていて、中央の葉軸が白く明瞭。
・その葉軸の縁に、白くて長めの毛がまばらに生えている。

後でいろいろ調べて、似たような葉はいくつかあったのですが、ヨツバシオガマの葉に似ています。
ただ、Webには、花の写真は非常に多く見られるのですが、葉に関する記述はあまりありませんでした。
そのため、確認できたのは、最初の1行目の特徴だけです。
右奥の方で、茎が少し立ち上がりかけており、その周りに若い葉が多数付いています。
ただ、茎が伸びていないので、輪生かどうかまではわかりません。
他に似たものが見当たらないのと、葉の密度がかなり濃い点、礼文島である点から本種としています。
当然、これだけの根拠では、間違っている可能性はかなり高いのではと思っています。


ヨツバシオガマの花

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千畳敷カールの遊歩道脇で、ときどき見かけたヨツバシオガマの花です。
かなり特徴的な花なので、花が咲いていれば間違えることはないと思います。
また、茎が伸びていれば、輪生して付く茎葉の特徴からでも分かると思います。











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