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入笠山で見かけた野草(U)



主に沢入駐車場から大阿原湿原への車道脇、入笠山の花畑で見かけた山野草です。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
シソ目
オオバコ科(クガイソウ、コテングクワガタ、テングクワガタ)
ゴマノハグサ科(ビロードモウズイカ)
シソ科(ウツボグサ、クルマバナ、テンニンソウ)
セリ目
ウコギ科(ウド、ハリブキ)
セリ科(エゾボウフウ、シシウド、ヤブジラミ)
センリョウ目
センリョウ科(ヒトリシズカ)
ツツジ目
ツツジ科(コバノイチヤクソウ)
ツリフネソウ科(キツリフネ、ツリフネソウ)
マタタビ科(マタタビ)
リョウブ科(リョウブ)
ナス目
ナス科(オオマルバノホロシ)
ナデシコ目
ナデシコ科(エゾカワラナデシコ、オオヤマフスマ、ミミナグサ)
モウセンゴケ科(モウセンゴケ)
ニシキギ目
ニシキギ科(マユミ)
バラ目
イラクサ科(クサコアカソ)
バラ科(エビガライチゴ、ニガイチゴ、シモツケソウ、ダイコンソウ、シモツケ)
入笠山で見かけた野草(U)
和名インデックス


クガイソウ(Veronicastrum japonicum)
<シソ目・オオバコ科・クワガタソウ連・クガイソウ属>
 

 
オオバコ科クガイソウ属の大型の多年草で、日本固有種。
日本では本州近畿地方以東に分布している。
近畿地方以西、四国、九州には、変種のナンゴククガイソウが分布する。
山地や高原の日当たりの良い草地に生育し、草丈は1m前後になる。
茎は円形で直立し、葉が輪生して何段にも付くことから「九蓋草」あるいは「九階草」の名がある。
茎の先に数十cmの細長い円錐状の花穂を付け、淡紫色の小花がたくさん付く。
花冠の先は4残裂し、裂片の先は尖る。オシベは2本で、花冠から長く飛び出る。
花と花序をつなぐ花序軸には短毛があるが、ナンゴククガイソウは無毛。

2019/8/1
上段は、大阿原湿原から入笠山花畑へ向かう途中にある八ヶ岳ビューポイントで見かけたクガイソウ。
まだ、ツボミは硬くて、咲くまでにはもう少し時間が必要なようでした。
下段は、入笠山花畑で見かけたクガイソウで、少しまとまっている所もありました。
まだ、ツボミのものもありますが、しっかりと開花しているものもありました。
開花している花には、キスジホソマダラやアブなどが訪花していました。

コテングクワガタ(Veronica serpyllifolia subsp. humifusa)
<シソ目・オオバコ科・クワガタソウ連・クワガタソウ属>
   
オオバコ科クワガタソウ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
よく似た大型のテングクワガタは、本種の亜種になる。
日本では、北海道から本州に分布し、やや湿った道ばたや芝生などで見られる。
海外では、南北アメリカ、中国、ニュージーランドなどに帰化している。
茎は細く、下部で枝分かれして、地上を長く這ってマット状に四方に広がる。
節から発根し、茎先が直立して草丈は8〜15cmになり、全体に短毛が散生する。
葉は対生し、長さ4〜15mmの楕円形で先は鈍頭。葉柄は無いか、あっても1〜3mmと短い。
花期は4月〜8月で、茎先に総状花序を出し、多くの花が下から咲き上って行く。
花の直径は3〜5mmで、花冠は白色に淡青紫色の筋がある。4深裂して、下部の裂片は小さい。
メシベ1個とオシベ2個は、花冠より長く突き出る。萼は4裂し、萼裂片は2〜3mmの長楕円形。
花柄は長さ2〜3mmで、短毛があり、花柄の下には楕円形の苞葉がある。
果実は刮ハとなり、扁平なハート形で長さ3o、幅4o前後で、少し毛がある。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、見落としそうなほど小さな花を付けていました。
よく似たテングクワガタ(下記項目)の花よりも一回り小さく、筋模様が赤紫色でした。

テングクワガタ(Veronica serpyllifolia subsp. humifusa)
<シソ目・オオバコ科・クワガタソウ連・クワガタソウ属>
   
オオバコ科クワガタソウ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
コテングクワガタを分類上の基本種とする亜種で、別名はハイクワガタ。
日本では、北海道から本州の中部地方以北に分布している。
海外では、サハリンなど北半球の亜寒帯に広く分布している
茎は細く、下部で枝分かれして、地上を長く這って四方に広がる。
節から発根し、茎先が直立して草丈は10〜30cmになり、褐色の短毛と腺毛が密生する。
葉は対生し、長さが6〜15mmの楕円形で先が丸く、3脈が目立ち、極浅い鋸歯がある。
葉柄は極短いか無柄で、上部の葉ではやや茎を抱く。
花期は6月〜8月で、茎先に総状花序を出し、10〜20個の花が下から咲き上って行く。
花の直径は5〜7mmで、花冠は白〜淡青紫色に青い筋がある。4深裂して、下部の裂片は小さい。
メシベ1個とオシベ2個は、花冠より長く突き出る。萼片は4個。
花柄は長さ2〜6mmで、腺毛と短毛があり、花柄の下には長楕円形の苞葉がある。
果実は刮ハとなり、扁平なハート形で長さ3o、幅4o前後で、先端は凹む。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、小さな花を付けていました。
よく似たコテングクワガタ(上記項目)の花よりも一回り大きいのですが、それでも小さいです。

ビロードモウズイカ(Verbascum thapsus)
<シソ目・ゴマノハグサ科・ゴマノハグサ亜科・ゴマノハグサ連・モウズイカ属>
 

   
ゴマノハグサ科モウズイカ属の越年草で、帰化植物。日本では、ほぼ全国に分布する。
原産地は、ヨーロッパ、北アフリカ、アジアを含む広範囲で、アメリカとオーストラリアにも帰化している。
草丈は1〜2.5mに達するが、1年目は長さ50cmに達する大きな葉のロゼットを形成する。
そして、冬季に休眠することによって、翌年に花茎を延ばして花を付ける。
植物体全体に星形の毛状突起があり、特に葉では密で、葉が灰緑色に見え、これがビロードの所以。
花期は6月〜8月(暖地では〜10月)で、2年目に分枝しない茎を伸ばす。
この茎には、茎葉が螺旋状に付き、上部ほど小さくなる。葉は厚く、葉柄部は茎に沿って翼状に下に流れる。
茎の上部に長さ50cmほどの総状花序を付け、多数の花を付けるが、咲くのは不規則に数個の花だけである。
なお、花は1日花で、夜明け前に咲き、午後にはしぼむ。
花は直径15〜30oの黄色で、萼筒は5残裂し、花冠も5裂して、花弁に合着した5本のオシベがある。
このオシベには2型があり、上側の3個は短くて花糸は黄色から白色の毛が密生し、葯は小さい。
下側の2個のオシベは長めで、花糸は無毛。葯も大きめである。
花は雌性先熟であり、多くの昆虫が訪花するが、有効なポリネーターはハナバチ類だけである。
なお、日中に昆虫による受粉がなかった場合は、自花受粉する。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、所々で黄色い花を咲かせていました。
草丈は、50cmに満たない小さなものから、1mを超える大きさのものまでいろいろでした。

ウツボグサ(Prunella vulgaris subsp. asiatica)
<シソ目・シソ科・イヌハッカ亜科・ハッカ連・ウツボグサ属>
   
シソ科ウツボグサ属の多年草で、東アジア温帯域に分布する。
日本でも、北海道から本州、四国、九州と広く分布する。
名前のウツボは、魚のウツボではなく、弓矢を入れる靫(うつぼ)から来ています。
草丈は10〜30cmで、葉は対生する。葉は、長楕円状披針形で長さ2〜5cm程になる。
茎先に長さ5cm前後の花穂をつくり、紫色の唇形花を密につける。
花冠は、上唇が平らなかぶと状で、下唇は3裂し、中央裂片のふちが細かく裂けている。
萼は上下2唇に分かれ、花後に口を閉じ、そのなかで果実が成熟する。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、所々で紫色の花を咲かせていました。
背が低いので雑草の中に紛れるのですが、花が目立つので、遠くからでも目に止まります。

クルマバナ(Clinopodium chinense)
<シソ目・シソ科・イヌハッカ亜科・ハッカ連・トウバナ属>
 
シソ科トウバナ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで広く分布している。
海外では、朝鮮半島にも広く分布している。
茎は四角形で、草丈は数十cmに達し、葉は対生する。
茎の上部に数段にわたって輪状に密集して花を付けるので、これが名前の由来。
花は唇形で長さ10o程。上唇は小さくて浅い切れ込みがあり、下唇は大きく3裂する。
雄しべは4本で、下の2本は長く斜上する。萼は長さ8oほどで、紅紫色を帯びることが多い。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇、何ヶ所かで見かけました。
上記のウツボグサと比べて、花色が淡く、小さいこともあって、あまり目立ちません。

テンニンソウ(Leucosceptrum japonicum)
<シソ目・シソ科・オドリコソウ亜科・テンニンソウ属>
 
シソ科テンニンソウ属の多年草で、日本固有種。
国内の北海道から本州、四国、九州のに分布し、落葉樹林内などに大きな群落を造る。
草丈は50〜100cmで、地下に太い木化した根茎があり、四角形の茎を直立して出す。
若い茎や花穂軸には星状毛がある。ただし、星状毛がほとんどないものもある。
葉は対生し、長さ20〜25cmの長楕円形で、先は尖り、基部は楔型。縁には鋸歯がある。
花期は8月〜10月で、茎頂に長さ5〜15cmの穂状花序を出し、多数の花を付ける。
苞は広円形で先が尾状に尖り、早落性で開花時には脱落する。この苞毎に3個の花が対生して付く。
花は淡黄色の唇形花で、上唇は2裂、下唇は3裂する。萼は短い筒状で5裂する。
花冠から4個のオシベが突き出すが、下側の2個が特に長い。花糸は白色。
メシベも花冠から突き出すが、オシベよりは短く、柱頭は2裂する。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇、石垣の上に巨大な群落が出来ていました。
よく見ると、茎先に松ぼっくりを細くしたような花序を付けていますが、咲いているものはありません。
後で調べてみたのですが、花がないとなかなか同定は難しいです。
で、諦めて他の事を調べ始めたとき、フッと思い出したのが、テンニンソウです。
若い花序の形を調べるとそっくりです。葉の特徴も合うようなので、本種としました。


テンニンソウの花

     .
<テンニンソウの花> .
     .
<テンニンソウの果実> .
町田市の薬師池公園内にある萬葉百花園で見たテンニンソウの花と果実です。
若い花序では、苞がびっしりと張り付いていますが、早落性なので開花時にはありません。


ウド(Aralia cordata)
<セリ目・ウコギ科・タラノキ属>
   

 
ウコギ科タラノキ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に広く分布する。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
草丈は2m以上になり、茎は太い円柱型で、中空です。
葉は互生し、葉柄は長く2回羽状複葉で、小葉は長楕円形で先が尖り、細かい鋸歯がある。
夏、上部に大きな散形花序を付け、淡緑色の小花をたくさん付ける。
小花は、雌雄異花で両性花からなる花序と雄花序があり、上部に両性花序が付く。
花は淡緑色の5弁花で、直径は3o前後。オシベが5個と、花柱が5個ある。
両性花が受粉すると、花弁もオシベも落ちて、下位の子房が丸く大きくなる。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇の所々で、ウドを見かけました。
上段左は雄花序で、右が両性花序。中央は各々の位置関係を示したもので、両性花序が外側にある。
両性花序は受粉後で、花弁もオシベも落ちてしまい、下位の子房だけになっています。
雄花序は両性花序より開花は遅いので、まだ、ツボミの状態です。
下段左は、花序全体の様子を示したもので、右は大きな葉も含めた全体の草姿です。

ハリブキ(Oplopanax japonicus )
<セリ目・ウコギ科・ハリブキ属>
   
ウコギ科ハリブキ属の落葉低木で、日本固有種。雌雄異株。
日本では、北海道から本州の中部地方以北、四国の石鎚山に分布する。
自生地は、山地〜亜高山帯の針葉樹林内や草原である。
樹高は30〜100cmで、幹はほとんど分枝せず、幹は褐色で針状の刺が密生する。
葉は互生し、上部に長い柄がある大きな葉を数枚付ける。
葉身は直径20〜40cmの円形〜心円形で、掌状に7〜9裂し、裂片には欠刻状の重鋸歯がある。
葉身の表面には脈上に刺があり、裏面には刺と毛がある。
葉柄は長さ7〜20cmで、葉柄にも幹同様に鋭い刺が多数ある。
花期は6月〜7月で、茎頂に円錐花序を出し、緑白色の5弁花を多数付ける。
花は直径5mm前後の5弁花で、花弁は長さ3oほどの長楕円形。
オシベは5個で花弁より長く突き出る。花柱は2個。
果実は長さ6〜7mmの広楕円形で、8月〜9月に赤く熟す。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、棘のある大きな葉を見かけました。
どこかで見たような気がするのですが、名前が思い出せません。
諦めて、後で調べると直ぐにハリブキと分かりました。草本ではなく樹木だったんですね。
もう、花は咲き終わっていたのでしょうか。花序らしきものは見当たりませんでした。

エゾボウフウ(Aegopodium alpestre )
<セリ目・セリ科・セリ亜科・エゾボウフウ属>
 
セリ科エゾボウフウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の中部地方以北に分布し、深山の木陰などに生育する。
海外では、サハリン、朝鮮半島から中国、アムール州、沿海地方、インド、ヒマラヤに分布する。
草丈は20〜70cmで、根茎を発達させて増え、茎は細くて直立し、上部で分枝する。
葉は互生し、根出葉や茎の下部の葉は、2〜3出羽状複葉で、小葉の縁には粗い鋸歯がある。
上部の茎葉は小さくなり、小葉の先が長く伸びて細長くなり、葉柄の基部は鞘状に膨らむ。
花期は6月〜8月で、茎頂や分枝した茎先に小型の複散形花序を付ける。
花は白色の5弁花で、萼は無く、複散形花序の下にある総苞片、小花序の下にある小総苞片も無い。
果実は卵形になり無毛で、油管は無い。

2019/8/1
大阿原湿原の木道脇で、スゲやシダに埋もれるように花を咲かせていました。
本種としましたが、確証に乏しく、間違っている可能性もあります。

シシウド(Angelica pubescens)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・シシウド属>


 

 
セリ科シシウド属の一稔性草本で、日本固有種。開花結実すると枯死する多年草。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
草丈は1〜2mになり、根は太い直根で、茎は有毛で太くて中空。
葉は互生し、大型の2〜3回羽状複葉。小葉は長さ5〜10cmの長楕円形で、鋸歯がある。
葉柄の基部は鞘状に膨らり、葉の両面の脈上に縮れた細毛がある。
花期は8月〜11月で、茎頂や上部の葉腋に大型の複散形花序を付け、白い小花をたくさん付ける。
花序の柄は長さが3〜18cmと不揃いで、散形花序が不規則にばらける。総苞も小総苞片もない。
花は直径3mm前後で、花弁は5個で、先が2裂して内側に曲がる。オシベは5個、メシベは1個。
果実は長さ6〜10mmで、両側は広くて薄い翼となり、2個に分果して向き合って付く。

2019/8/1
入笠山の花畑、その下の方でカラマツソウの群落を取り巻くようにシシウドが見られました。
遠目では、どちらも白い花ですが、カラマツソウは華奢な感じで、シシウドはがっしりとしています。
上段の写真で、手前で群落を作っているのがカラマツソウで、少し離れて点々と見えるのがシシウドです。
中段、下段はそのアップですが、下段右の写真のバックに薄っすらと見える白い花はカラマツソウです。
中央に見えているシシウドの茎と、その左右に見えるカラマツソウの茎の太さの違いが分かると思います。

ヤブジラミ(Torilis japonica)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・ヤブジラミ属>
 
セリ科ヤブジラミ属の越年草で、日本では全国に分布している。
世界的には、日本も含めたユーラシアに広く分布し、南アジアや北アメリカに帰化している。
草丈は30〜70cmで、茎は直立し、上部で分枝する。
葉は互生し、2〜3回羽状複葉で、長さは5〜10cmほどある。
小葉は細かく切れ込み、先端の小葉は長く尖る。葉の両面には毛が多い。
花期は5月〜7月で、枝先の複散形花序に多数の小花を付ける。
5個の花弁は大きさは不揃いで、外側の2花弁が大きくなる。オシベは5個。
花色は白で、わずかに淡紅紫色を帯びることがある。葯の色も同様である。
果実は長さ4mm前後の卵状長楕円体で、基部から湾曲した刺を密生する。熟すと淡褐色になる。
オヤブジラミは似ているが、花期が本種より早く、花色は淡紅紫色を帯びて、花数が少ない。
また、葉の裂片が細かく、果実の刺が紅紫色を帯び、熟すと黒くなる点で区別できる。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道の駐車場にほど近い所で、花を付けていました。
花が真っ白で、花数が多いため、ヤブジラミとしました。


ヤブジラミとオヤブジラミの花

     .
 <ヤブジラミ>                <オヤブジラミ>
ヤブジラミと比べて、オヤブジラミは花数が少なく、花が淡紅紫色を帯びています。


ヒトリシズカ(Chloranthus japonicus)
<センリョウ目・センリョウ科・チャラン属>
 
センリョウ科チャラン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国の山野の林内や草地に自生している。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
草丈は20〜30cmほどになり、茎は直立して、初めは赤紫色を帯びていることが多い。
茎の下部の節に、膜質の葉が鱗片状に付く。上部では2対の葉が対生する。
ただ、葉の間隔が極短いので、4枚の葉が輪生しているように見える。
葉は、濃緑色の楕円形で先が尖り、縁には鋭い鋸歯がある。
花期は4〜5月で、葉が伸び切る前に、葉の中心から花穂を伸ばし、多数の花を房状に付ける。
花には、花弁も萼もなく、1本メシベとその子房の横に3本オシベが付く。
中央のオシベに葯は無く、外側のオシベの基部に黄色の葯が付く。
そのオシベの花糸が白いので、花穂が白く見えている。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、ヒトリシズカが葉を広げていました。
既に花期は過ぎていますが、果実も付いていません。花が咲かなかったのでしょうか。


ヒトリシズカの花と果実

       .
2010/3/22        2010/4/10            2018/4/13   .
ヒトリシズカは、4個の葉の中から花穂を出し、葉が開き切る前に開花する。
花後には、右端のように丸い果実ができ、葉の蔭に隠れるように横向きに折れ曲がります。


コバノイチヤクソウ(Pyrola alpina Andres)
<ツツジ目・ツツジ科・イチヤクソウ亜科・イチヤクソウ属>
 
ツツジ科イチヤクソウ属の常緑の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の中部以北に分布し、亜高山の針葉樹林の林床に生育する。
草丈は10〜15cmで、根茎は細長く横に這い、匐枝を出す。
葉は基部にロゼット状に4〜8個付き、葉柄は長さ1〜3cmで、葉身は新緑色で柔らかい。
葉身は長さ15〜30mmの広楕円形で、先は丸いか短く尖り、縁には短い鋸歯がある。
花期は7月〜8月で、葉の間から花茎を立ち上げ、総状花序に3〜7個の花を下向きに付ける。
花序には、長さ5o前後の線状披針形の鱗片葉が1個付くが、無いこともある。
苞は長さ5o前後の広線形で、先が鋭く尖っている。萼は三角形に5裂し、長さは1mm前後。
白い5個の花弁は卵形で離生し、下向きに開花する。オシベは10個ある。
メシベの花柱は長さが6〜8mmで、湾曲しながら長く突き出て、柱頭は5浅裂する。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、草陰にコバノイチヤクソウが咲いていました。
見かけたのは、この1株だけでした。メシベの花柱が長く突き出す特徴のある花です。

キツリフネ(Impatiens noli-tangere)
<ツツジ目・ツリフネソウ科・ツリフネソウ属>
   
ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで、海外ではユーラシア・北米大陸に広く分布する。
草丈は60cm程になり、茎は水気が多く、下部の節がこぶ状に膨れる。
葉は互生し、長さ4〜8cmの長楕円形で。長さ3cm程の葉柄があり、縁には鋸歯がある。
花期は6月〜9月で、葉の上に花序を伸ばし、ツボミの成長と共に垂れ下って、葉の下で開花する。
花弁は3個(5個の内、両側の2個ずつが合着しているため)、萼片も3個ある。
下側の萼片は大きな袋状で、その先端は細長い距となり、後に伸びて少し垂れ下る(巻かない)。
果実は緑色のうちに熟し、熟した果実にさわるとパチンとはじけて種子が飛び散る。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇にある側溝の中で、キツリフネが花を付けていました。
下側の萼片が袋状になって先が距となり、釣り針のようにクルっと曲がっています。

ツリフネソウ(Impatiens textori)
<ツツジ目・ツリフネソウ科・ツリフネソウ属>
   
ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草で、東アジア(日本、朝鮮半島、中国、ロシア東南部)に分布する。
和名は、花の形が花器の釣舟に似ていることに由来するとされ、ムラサキツリフネとも呼ばれる。
日本では、本州・四国・九州の低山から山地にかけて分布する。
キツリフネの分布域と重なるため、両種が一緒に見られることも多い。
草丈は50〜80cmで、茎はやや赤みを帯びて、節が膨らんでいる。
葉は互生し、葉身は長さ5〜13cmの楕円形で先が尖り、縁には細かい鋸歯がある。
花期は7月〜10月で、葉腋から花序を斜上して数個の花を付ける。花茎には紅紫色の突起毛がある。
花は紅紫色で、長さは4cm前後。花弁と萼片は紅紫色で、各々3個で構成されている。
下側の萼片は大きな袋状で、その先端は細長い距となり、先は下側にクルっと巻き込む。
花弁は下側の2個(4個の花弁が2個ずつ合着)が大きく前に突き出し、黄色い斑がある。
オシベは5個で、花糸は短く、葯は合着してメシベを包み込む。
なお、蜜は萼片の距の先に溜まり、マルハナバチやツリアブなどが好んで集まる。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、ツリフネソウが赤い花を付けていました。
形はキツリフネと似ていますが、距の先がクルっと丸く巻き込むところが異なります。


ツリフネソウとキツリフネ

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ツリフネソウ            キツリフネ
ツリフネソウとキツリフネの花の比較です。花の形は似ていますが、距の巻き方や花の咲き方が異なります。
ツリフネソウは、葉の上に花茎を伸ばして花を付け、キツリフネは葉の下に花茎を伸ばして花を付けます。


マタタビ(Actinidia polygama)
<ツツジ目・マタタビ科・マタタビ属>
 
マタタビ科マタタビ属の落葉蔓性木本で、在来種。雌雄異株。
東アジアに広く分布し、日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
なお、北海道では平地でも見られるが、その他の地域では山間地に自生する。
蔓は、若枝は茶褐色で成長と共に黒っぽい赤褐色になる。白い皮目が多い。
葉は蔓状の枝に互生し、2〜7cmの長い葉柄がある。葉身は長さ6〜12cmの楕円形で細かい鋸歯がある。
花期は6月〜7月で、直径20〜25o程の白い5花弁の花を咲かせる。
雄株にはオシベだけを持つ雄花を、雌株にはオシベとメシベを持った花を付ける。
この花は両性花に見えるが、オシベに含まれる花粉に発芽力はなく、開花後、間もなく花弁と共に脱落する。
そのため、雌株にはオシベのある両性花と、メシベだけの雌花の両方が混在しているように見える。
なお、花期には枝先の葉は、部分的にロウのような物質が覆い、一部が白くなる。
なお、近縁のミヤママタタビでは、白色ではなく、淡紅紫色に着色するので、色によって見分けられる。
果実は、2〜2.5cmの細長い楕円形で、晩秋に樹上での軟化してオレンジ色に熟す。
緑色の果実を収穫し、追熟処理をしてもオレンジ色に変化する。
この果実には、アクチニジン、マタタビラクトンが含まれており、これが猫を陶酔状態にさせる物質である。
なお、タンパク質分解酵素のアクチニジンは、キューイフルーツにも含まれるアレルゲンなので、要注意。
なお、開花時に果実のようなごつごつした虫こぶが見られます。木天蓼(もくてんりょう)という生薬になる。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇の石垣の上などで、白くなった葉を見かけました。
マタタビは、花期に入ると枝先の葉の一部が白くなります。
それで、花は無いかと探したのですが、見当たりませんでした。

リョウブ(Clethra barbinervis)
<ツツジ目・リョウブ科・リョウブ属>
 
リョウブ科リョウブ属に属する落葉小高木で、在来種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島から中国に分布する。
樹高は3〜10mで、樹皮は表面が縦長な形に剥げ落ちて、その後茶褐色で滑らかになる。
若枝は灰褐色で細く、細かい星状毛が生え、皮目は不明瞭である。
葉は互生し、枝先に集まって付く。葉柄は長さ1〜4cmで、軟毛が密生する。
葉身は長さ5〜11cmの倒卵形で、先が尖り、鋸歯がある。
表面にはつやがなく無毛。裏面は淡緑色で、主脈には粗い毛が、側脈の基部には軟毛がある。
花期は6月〜9月で、枝先に長さが10〜20cmの総状花序を数個付け、白い小花を多数付ける。
花序の軸には白色の星状毛が密生する。花は甘い香りを放つため、多くの昆虫が集まり、蜜源ともなる。
花冠は直径6〜7mmで5深裂し、裂片は長さ3〜4mmの長楕円形で先が丸い。
オシベは10個あり、花弁より長い。メシベは1個で、柱頭は3裂する。子房には粗い毛が密生する。
この花柱は、花時には長さ2〜3mmであるが、果時には3〜5mmになる。
萼は鐘形で長さ2mm前後で、萼片は5個。萼片の外面には軟毛が密生する。
果実は刮ハで、直径は4〜5mmの扁球形。熟すと3裂して、多数の種子を出す。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇の石垣の下に、花序のようなものが見えました。
まだツボミが硬く丸まって、咲くのはちょっと先になりそうです。
何の樹なのか調べようとしたのですが、この写真だけからではたどり着けませんでした。
この3週間ほど後、奥胎内ヒュッテの方に出かけたのですが、そこでリョウブを見かけました。
というか、リョウブと分かったのは、後で調べてからですが、その時にピンと来たのです。
葉の形や花序の付き方が似ていると。で、ツボミの状態を確認するとよく似ています。
ということで、この写真の正体は、開花前のリョウブの花序であろうと判断しました。


リョウブの花

       .
2019/8/22
アカショウビンに合えないかと、奥胎内ヒュッテに足を延ばしたのですが、悪天候で断念。
ヒュッテの近くをうろついているときに見かけたのが、ほぼ咲き終わっていた、この樹です。
後でいろいろと調べて、リョウブの樹と分かりました。


オオマルバノホロシ(Solanum megacarpum)
<ナス目・ナス科・ナス属>

ナス科ナス属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州の中部地方以北に分布する。
湿地や溜池畔、河川、低山の林縁の湿った場所などの原野環境に自生する。
草丈は30〜70cmで、根茎は匍匐して節から茎を伸ばす。
茎は疎らに分枝して、斜上するかややつる状に匍匐し、他の草本などにもたれかかって伸びる。
葉は互生し、葉身は長さ4〜9cmの狭卵形で先が尖り、縁は全縁である。
花期は8月〜9月で、葉と葉の茎の側面から葉より長い集散花序を出す。
花序には、青紫色の花を3〜10個付ける。花冠は直径10〜15mmで、5深裂する。
花冠裂片は細めで先が尖り、基部付近から反り返り、花喉部に緑色の斑紋がある。
1個のメシベを5個のオシベが取り囲み、黄色い葯は長さ5o前後で、柱頭が葯から飛び出す。
果実は長さ12〜15mmの楕円形の液果で、先がやや尖り、秋に赤色に熟す。有毒である。

よく似たものが多く、以下のように区別する。
・オオマルバノホロシは、花は青紫色で基部まで切れ込み幅は狭い。果実は楕円形で赤く熟す
・イヌホオズキは、花は白色〜淡紫色で基部まで切れ込まず幅広。果実に光沢がない
 小花柄が少しづつずれて総状に付き、果実は球形、やや縦長になる
・アメリカイヌホオズキは、花は淡紫色〜白色で、果実は光沢があってほぼ球形
・テリミノイヌホオズキは、花は白色〜淡紫色で、果実の光沢が強く、トマトのような扁球形
・ムラサキイヌホオズキは、花が淡紫色を帯び、茎など全体に紫色を帯びる
・オオイヌホオズキは、花は白色〜淡紫色でやや大きく、花柱や葯が多種より長い

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇にある側溝の中で、鮮やかな紫色の花を見つけました。
最初にアメリカイヌホオズキの名前が浮かんだのですが、オシベやメシベの形が違います。
花の特徴からナス科の花だと分かりますが、他に似たものが思い浮かびません。
調べると似たものがいろいろあります。花色や形状、花喉部の緑色の斑紋で、本種と分かりました。


ナス科ナス属の花

       .
  <イヌホウズキ>       <アメリカイヌホオズキ>     <ムラサキイヌホウズキ>
       .
  <タマサンゴ>          <ワルナスビ>        <ヒヨドリジョウゴ>
       .
 <ナス>            <ジャガイモ>           <トマト>
  ナス科ナス属の花は、いろいろ特徴を持ってはいますが、基本的な構造には大差ありません。
最下段はナス科ナス属の野菜の花です。普段、良く食卓に並ぶ野菜だと思います。
ジャガイモもナス属なので、花はよく似ていますが、食べるのは地下茎であって、果実(有毒)ではないですね。
なお、他のナス属には全草有毒の品種もあるので、間違っても口にはしないでください。


エゾカワラナデシコ(Dianthus superbus L. var. superbus)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ナデシコ属>
 
ナデシコ科ナデシコ属の多年草。
日本では、北海道から本州の中部以北に分布する。
海外では、ユーラシア中部以北に分布する。
分類上は、カワラナデシコの基本種とされている。
草丈は30〜60cmで、茎は叢生して直立し、上部で分枝する。
茎や葉は緑色であるが、わずかに白粉を帯びる事もある。
葉は対生し、長さ3〜10cmほどの線状披針形で、先が尖る。
花期は6月〜8月で、茎頂に数個の花を付け、直径40mmほどの花を上向きに咲かせる。
淡紅色の花弁は5個で、舷部の先が深く細裂し、基部に濃紅紫色の毛がある。
萼片は長さ20〜30mmほどで、萼歯は長さ数mm。
苞は2対で十字対生し、下部の1対が大きく、先が尾状になる。
2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇の石垣の上で、エゾカワラナデシコを見かけました。
淡紅色の花が風に揺られて、なかなか優美な雰囲気を持っていますね。


カワラナデシコの仲間

カワラナデシコ
エゾカワラナデシコ
タカネナデシコ







萼片の長さは3〜4cm
苞は3〜4対

萼片の長さは2〜3cm
苞は2対










萼片の長さは2〜3cm
苞は2対

カワラナデシコは平地や山地で時々見かけますが、この写真は山形県の加茂水族館で見かけたものです。
色が最も淡くて、花被片舷部の基部にある毛は濃紅紫色です。
エゾカワラナデシコは、八島ヶ原湿原(標高約1,632m)で見かけたものです。
花被片の色が最も濃い赤紫色で、花被片舷部の基部にある毛も濃紅紫色ですので、目立ちません。
タカネナデシコは、竜王マウンテンパーク(標高1,770m)の山野草ガーデンで見かけたものです。
草丈は20cmなく、基部の毛が紫褐色で、苞の数は2対です(写真を撮り忘れました)。
上段の写真で、花の基部にピンボケですが、かろうじて写っています。


オオヤマフスマ(Moehringia lateriflora)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ノミノツヅリ属>
 

 
ナデシコ科ノミノツヅリ属の多年草で、在来種。別名は、ヒメタガソデソウ(姫誰が袖草)。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、海外では、北半球の温帯に広く分布する。
山地の夏緑樹林内やその林縁、草原などに自生する。
草丈は10〜20cmで、地下の根茎は糸状で、横走して広がる。
茎は細く、下向きの毛が生え、上部で分枝する。
葉は対生し、長さ10〜25cmの楕円形で、無柄。葉先は鈍頭で、縁は全縁。
葉身は3脈が目立ち、両面に細毛があり、葉脈と縁の毛は著しい。
花期は6月〜8月で、1〜3個の花が茎頂や葉腋に付き、雌花と両性花がある。
花は直径10mm前後の5弁花で、花弁は長卵形で萼片の倍程度の長さ。
萼片は5個で、長さ2〜3mmの卵形。主脈に毛がある。
オシベは10個で花糸の基部に毛があるが、雌花では仮オシベになっている。
メシベは1個で、子房上位で、3個の花柱がある。
果実は刮ハで、長さ3.5〜5.5mmの広卵形で、熟すと3裂する。
種子は、長さ1mm前後の黒褐色の卵形で、光沢があり、白い付属体(種枕)がある。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇で、オオヤマフスマを所々で見かけました。
上段は沢入駐車場にほど近い場所で見かけたもので、下段は大阿原湿原近くで見かけたものです。
花被片の幅に違いがあるため、見た目の印象にかなりの違いがあります。

ミミナグサ(Cerastium holosteoides var. hallaisanense)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ミミナグサ属>
 
ナデシコ科ミミナグサ属の多年草で、在来種。
分類が難しく、学名はしばしば変更されている。
草丈は15〜30cmで、茎が赤味を帯びることが多く、短毛及び腺毛がある。
葉は対生し、長さ1〜4cmの長楕円形で、鈍頭。両面に毛がある。
花期は5月〜6月で、茎先が分枝して集散花序をなし、白い5弁花をまばらに開く。
花は直径5〜6mmで、花弁は長さ4〜5mmの長楕円形で先が2浅裂し、平開はしない。
オシベは10個で花糸は無毛。メシベの花柱は5個ある。
萼片は5個で、長さ4〜5oの長楕円形。花柄は5〜14mmで、花後下に曲がる。
刮ハは長さ8〜10mmの円筒形で、熟すと先が10浅い裂し、裂片は外に少し曲がる。
種子は長さ0.6mmほどの卵形で、小突起があり、褐色。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道の大阿原湿原近くで見かけました。
見た目はオランダミミナグサに近いのですが、花数が少なく、あまり花弁が開いていません。
念のため、後で確認すると花数以外に、花柄の長さが萼片より長いことも確認でき、本種と確認しました。


ミミナグサとオランダミミナグサの花

     .
   <ミミナグサ>              <オランダミミナグサ>
ミミナグサとオランダミミナグサの花は、見た目がよく似ています。
違いの1つは花の数で、オランダミミナグサと比較して、ミミナグサの花数はかなり少ないです。
もう1つの違いが花柄の長さで、オランダミミナグサが萼片と同長かそれ以下なのに対して、
ミミナグサの花柄は、萼片の長さより明瞭に長いのが特徴です。


モウセンゴケ(Drosera rotundifolia L.)
<ナデシコ目・モウセンゴケ科・モウセンゴケ属>
 
モウセンゴケ科モウセンゴケ属に分類される多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州の湿地帯に、海外では北半球の高山、寒地に広く分布する。
北方ではナガバノモウセンゴケと共生し、その雑種であるサジバモウセンゴケを作る。
東海地方に分布するトウカイコモウセンゴケは、本種とコモウセンゴケとの雑種とされる。
草丈は10〜30cmで、茎は分枝せず、短い。葉はロゼット状に付き、葉身が立ち上がる。
葉身は黄緑色〜赤色で、長さ3〜10mm、幅5〜20oの円形〜腎形で、葉柄は1〜7cm。
葉身の表面には、多数の赤い腺毛があり、その先から甘い香りのする粘液を出し、虫を捉える。
葉柄の基部には、5〜7裂する長さが7mm前後の托葉がある。
花期は6月〜8月で、茎先にサソリ型花序(ぐるっと巻いた花序)を出し、巻きの外側に花が付く。
花茎は、花が咲き進むにつれて真っ直ぐに立ち上がり、高さは6〜30cmになる。
花は白い5弁花で、花弁は長さ5o前後、花の直径は10mm前後になる。
オシベは5個、メシベは3個で、メシベは基部から2裂する。萼は5深裂し、裂片は長楕円形。
刮ハは長さ4〜5mmの長楕円形で、種子は紡錘形の種皮に包まれ、長さ1.3mmで茶褐色。

2019/8/1
大阿原湿原の木道脇、苔の間からモウセンゴケの独特な形状の葉が顔を出していました。
泥炭が堆積して地下水面より高くなった貧栄養・強酸性の土壌では、普通の植物は育ちません。
このような土壌に適応できる、ミズゴケやモウセンゴケなどしか育たないのです。

マユミ(Euonymus sieboldianus)
<ニシキギ目・ニシキギ科・ニシキギ属>
 
ニシキギ科ニシキギ属の落葉小高木で、在来種。
材質が強い上によくしなるため、古来より弓の材料として知られ、それが和名の由来になっている。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、インド、ネパール、アフガニスタン、タイなどに広く分布する。
樹高は3〜5mで、幹は灰褐色。古くなると縦に筋が入り裂ける。枝には鈍い4稜がある。
葉は対生して無毛。葉柄は長さ10o程で、葉身は長さ10p前後の長楕円形。縁に細かい鋸歯がある。
花期は5月〜6月。本年枝の葉より下の芽鱗痕の脇から集散花序が出る。
花序には、まばらに1〜7個、直径10o程の緑白色の小花を付ける。
花弁は4個、オシベは緑色の四角形の花盤の上に4個付く。
花柱には長短の2型あり、花柱の長いものは雄しべが短い。
果実(刮ハ)は、長さ1p程の倒三角形、4個の稜があり、10〜11月に淡紅色に熟す。
熟すと4裂し、橙赤色の仮種皮に包まれた種子が顔をだす。

2019/8/1
大阿原湿原の駐車場から湿原に降りる階段脇で、マユミが若い果実を付けていました。
まだ、果実は若くて緑色をしていますが、秋にはピンクに熟し、裂開して橙赤色の種子が顔を出します。


マユミの花と果実

     .

マユミの花は相模原市にある城山湖畔で、果実は富士山駅の駐車場で見かけたものです。
残念ながら、完熟して裂開した果実は見たことがありません。


クサコアカソ(Boehmeria tricuspis var. unicuspis)
<バラ目・イラクサ科・カラムシ連・カラムシ属>
 

 
イラクサ科カラムシ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布する。海外では、中国に自生する。
草丈は1mほどになり、茎や葉柄は赤みを帯びる。葉は、楕円形で鋸歯があり、葉先が3裂しない。
雌雄同株で、雄花序は茎の下方に付き、雌花序は茎の上方に付く。
雌花序では雌花が集まって赤みを帯びた球形になり、花軸に並んで付く。
雄花序は、黄白色の雄花を花軸に不揃いに多数付く。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇の所々で、クサコアカソを見かけました。
葉先が3裂して中央の裂片が尾状に伸びるアカソと異なり、3裂しません。

エビガライチゴ(Rubus phoenicolasius)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キイチゴ属>
 

 

   
バラ科キイチゴ属に属する落葉低木で、つる状に成長する。
在来種で、葉裏が粉白色であることから、別名をウラジロイチゴという。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布し、海外では朝鮮半島から中国北部に分布している。
樹高は1〜2mで、全体が毛に覆われていて、茎には赤紫色の長毛が一面に生え、その間に棘がある。
葉は互生し、三出複葉で頂小葉が特に大きく、そしてその柄が長いため、アンバランスな形状をしている。
葉表は黄緑色でつやがなく、裏面は粉白色で、葉脈沿いに棘が生え、縁には重鋸歯がある。
花期は6月〜7月で、枝先に円錐花序を出し、直径12mm前後の淡紅紫色の花を付ける。
5個の花弁は5oほどと短く、平開しない。萼は萼片の先が鋭く尖り、全体に赤くて長い腺毛が密生する。
果実は長径15mmほどの集合果で、8月頃に赤く熟し食用となるが酸味が強い。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道脇の所々で、ツボミや果実をたくさん付けていました。
沢入駐車場を出て直ぐの所で、赤っぽいツボミか果実のようなものに気が付きました。
近づいてよく見ると、数個ですが花が咲いていましたので、ツボミであることが分かりました。
その花は、花色以外はナワシロイチゴとよく似ていましたので、キイチゴの仲間と判断しました。
ツボミを覆っている赤い物は棘かと思ったのですが、よく見ると腺毛でした。
しかし、安心するのは早かったようで、茎には腺毛に混じって鋭い棘がたくさん付いていました。
初めて見た種類でしたが、後で調べると直ぐにエビガライチゴと分かりました。

下段は、エビガライチゴの果実です。熟すと暗赤紫色になるようで、たくさん付いていました。
ただ、最初、これがエビガライチゴの果実だとは思っていませんでした。
最初に見たエビガライチゴは、そのほとんどがツボミで、数個花が咲いていたでけだったためです。
それほど離れていないのに、方やツボミ、方や完熟し始めた果実と、その差が大き過ぎます。
時期的には1ヶ月以上の差になると思いますが、なぜ、これほどの違いが見られるのでしょう。

ニガイチゴ(Rubus microphyllus L.f.)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キイチゴ属>
 
バラ科キイチゴ属に分類される落葉低木で、日本固有種。別名は、ゴガツイチゴ。
日本では、本州から四国、九州に分布している。
樹高は50〜100cmで、地下の根は横に這い、あちこちから茎を立ち上げ、群生する。
茎はよく分枝して枝先はしだれ、茎や枝は粉白色になり、細い刺がある。
葉は互生し、長さ6〜10cmの広卵形で、3裂するが、切れ込みは変異がある。
開花期の花枝では、葉の長さは2〜5cmで、切れ込みが浅いか、ほとんどないこともある。
葉裏は粉白色で、縁には細かい鋸歯があり、葉脈はくぼんで、表面には少し光沢がある。
葉柄は赤色を帯び、刺がある。托葉は長さ5mm前後の線形である。
花期は4月〜5月で、葉腋からでる短枝に、白色の5弁花が数個、上向きに付く。
花は直径20〜25oで、花弁の幅が細い狭楕円形で、花弁の間に隙間が目立つ。
萼片は5個で、先が鋭く尖り、綿毛がある。
果実は集合果で、直径1cm前後の球形で、6月〜7月に赤く熟す。
果実は、食べることはできるが、小核に苦味があり、それが和名の由来。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道の沢入駐車場近くで、真っ赤に熟したキイチゴを見かけました。
上記のエビガライチゴを見かけた所から少し登った所です。葉の形や果実の付き方から別種のようです。
種類までは分からなかったので後で調べ、葉の形などからニガイチゴと分かりました。
正体不明のため口にはしなかったのですが、食べることはできても、噛み潰すと苦みがあるようです。

シモツケソウ(Filipendula multijuga Maxim.)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・シモツケソウ属>


   
バラ科シモツケソウ属に属する多年草で、日本固有種。
日本では、本州の関東地方以西から四国、九州に分布する。
草丈は30〜100cmで、根茎は節が数珠状に連なって横に這う。
根生葉は奇数羽状複葉で、頂小葉が幅5〜10cmと大きく、5〜7深裂する。
裂片の先は鋭く尖り、縁には不揃いな鋸歯がある。
側小葉は長い葉軸に多数付き、長さは基部ほど小さくなり、3mm〜3cm。
茎葉は、下部の葉は根生葉と同じで、上部の葉は側小葉が小さく、ほとんどないこともある。
托葉は膜質で茎を耳状に抱き、乾燥すると褐色味を帯びて、茎に沿って直立する。
花期は6月〜8月で、茎頂や上部の葉腋から総状花序を散房状に出し、小花を多数付ける。
花は直径4〜5oの淡紅紫色〜紅紫色(稀に白色もある)で、花弁は3〜5個あり、倒卵状円形。
オシベは淡紅紫色で、花糸は花弁より長く、多数ある。メシベの花柱は4〜5個ある。
萼片は4〜5個あり、卵形で反り返り、毛はない。
痩果は扁平な長楕円形で、短い柄があり、無毛。赤色に熟す。
なお、よく似た高山型の変種であるアカバナシモツケソウは、痩果の稜に立ち毛がある。

2019/8/1
入笠山の花畑で、ちょうど開花が始まったシモツケソウがちょっとした群落になっていました。
まだツボミの方が多いようなので、4分咲きといったところでしょうか。
アカバナシモツケソウの可能性もあると思いますが、痩果がないので未確認です。
そのため、ここではシモツケソウとしておきます。


アカバナシモツケソウ


     .

八ヶ岳自然文化園で見かけたアカバナシモツケソウの花と果実(痩果)です。
花などの見かけからは、シモツケソウかアカバナシモツケソウかを判断することは困難です。
右端の拡大写真のように痩果の稜に立ち毛があるか否か違いで、あればアカバナシモツケソウです。


ダイコンソウ(Geum japonicum Thunb.)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・ダイコンソウ属>
 
バラ科ダイコンソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に広く分布している。
海外では朝鮮半島から中国に分布している。
根生葉は羽状複葉で、頂小葉が特に大きく、側小葉は大きさが不揃い。
茎葉は3裂して、縁には鋸歯があるが、上部の茎葉は単葉になる。
花は黄色で、直径は20mm程。オシベとメシベは多数付く。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道の所々で、ダイコンソウを見かけました。
そう多くはなく、群生していることもなかったのですが、黄色い花は遠目でも目立ちます。

シモツケ(Spiraea japonica)
<バラ目・バラ科・モモ亜科・シモツケ連・シモツケ属>
 
バラ科シモツケ属の落葉低木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と各地に分布する。
海外では、朝鮮半島、中国に自生する。
樹高は1mほどにしかならず、幹は暗褐色、樹皮は縦に裂ける。
葉は互生し、長さ6cm前後の狭卵形で、先は尖り、基部を覗いて重鋸歯がある。葉柄は短い。
花期は5月〜9月で、枝先に複散房状の花序を出し、淡紅紫色の小花を多数密に付ける。
花は直径5o前後で、花弁は5個、メシベは5個で、オシベは25〜35個。
萼片も5個で、長さ2o程の三角形で、内側に短毛がある。

2019/8/1
沢入駐車場から大阿原湿原へ向かう車道で、シモツケの花を2ヶ所で確認しました。
1ヶ所は、花は咲き終わりに近くて、大半の花は茶色く枯れてしまっていました。
上記はもう1ヶ所のもので、まだツボミも残っていて、九分咲きといったところでした。
花の形や色などはシモツケソウとよく似ていますが、葉の形がまったく異なります(下記参照)。


シモツケとアカバナシモツケソウ

     .
<シモツケ>
     .
<アカバナシモツケソウ>
シモツケとアカバナシモツケソウの花と葉の比較です。
オシベの付き方や花弁の開き方など花にも細かい所に違いはありますが、葉の形がまったく異なります。
シモツケソウとアカバナシモツケソウの見かけは非常に似ていますので、
シモツケとの差異という観点では、その違いは同じとみて問題はありません。

シモツケは、町田市の薬師池公園で見かけたもので、自生種ではありません。
アカバナシモツケソウは八島ヶ原湿原や八ヶ岳自然文化園で見かけた自生種です。









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