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金時山で見かけた野草



金時山に登った際、矢倉沢峠から金時山までの登山道脇で見かけた野草です。
といっても、登山道の両脇にはハコネダケが生い茂っていて、それ以外の植物は少なかったです。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
イネ目
イネ科(ハコネダケ)
キンポウゲ目
キンポウゲ科(サラシナショウマ)
ユリ目
ユリ科(ホトトギス)
リンドウ目
リンドウ科(リンドウ)
金時山で見かけた野草
和名インデックス

ハコネダケ(Pleioblastus chino f. vaginatus)
<イネ目・イネ科・タケ亜科・タケ連・メダケ属・メダケ節>
 
イネ科タケ亜科メダケ属に属するササの1種で、在来種。
日本では本州に分布し、特に箱根山周辺に多いので、この名がある。
草丈は2〜4mで、根茎は長く匍匐し、稈を密生する。
稈は直径1cmで節間が長く、節毎に枝を2〜7本密生する。葉は長さ5〜20cmの狭披針形。
春に長さ4〜7cmの淡緑色の花穂を出し、紫色を帯びた小穂を多数付ける。

名前にササと付く竹や、タケと付く笹があり、名前だけでは判断できないものがある。
タケとササの違いは、下記の点で区別される。
●タケは稈の成長と共に葉鞘は早く脱落するが、ササは枯れるまで稈に葉鞘が残る。
●タケの葉には格子目が見られるが、ササの葉は縦に伸びる並行脈のみが見られる。
●タケの開花は約120年周期で、ササは40〜60年周期とされる。
 なお、開花後は、タケもササも枯死してしまう。

日本地理学会で発表された「箱根山周辺のササ原の成立要因」には下記の記述がある。
箱根山周辺における主なササ原は大部分がハコネダケである。
しかし、標高1,000mを超えるとハコネメダケに変わる。
また、外輪山南向き斜面では、イブキザサやミヤマクマザサに変わる。
森林内においては、ハコネダケに変わってスズタケが多く見られるようになる。

2002/10/13
矢倉沢峠から金時山方向を見ると、草原のようにハコネダケが覆い尽くしていました。
このときは風景として撮ったので、ハコネダケを意識していませんでした。
そのため、ハコネダケのアップの写真はありません。目一杯拡大したのが左側です。
草丈は、人の背の倍くらいあり、稈に葉鞘が残っているのが分かります。
この辺りのササ原は、大部分がハコネダケとの事なので、ハコネダケで間違いはないと思います。

サラシナショウマ(Cimicifuga simplex (DC.) Wormsk. ex Turcz.)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・キンポウゲ亜科・サラシナショウマ連・サラシナショウマ属>
 
キンポウゲ科サラシナショウマ属 の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、台湾、モンゴルに分布する。
草丈は40〜150cmで、黒味のある根茎はがっしりとし、茎は単一で直立する。
葉は互生し、下部の茎葉は2〜3出複葉で、長さ35〜55cmで、長い葉柄がある。
上部の茎葉は1〜2出複葉で、小さくなる。葉柄基部は、膜質となって広がり、茎を抱く。
側小葉は卵形、頂小葉は披針形から菱形で、側小葉より大きい。
小葉は3残裂しているものが多く、縁には不揃いな鋸歯がある。
花期は8月〜11月で、長い総状花序を出し、白い小花を多数付け、雄花と両性花が混生する。
花序軸や小花柄には灰白色の短毛が密生し、小花柄は長さ5〜10mmほど。
萼片は長さ4mm前後の広惰円形、花弁は惰円形で浅く2裂する。どちらも早落性である。
雄花はオシベのみで、花糸は長さ7mm前後で白く、葯は楕円形で長さ1mmほど。
両性花のメシベは、長さ2mmほどで2個のものが多く、花柱の先は曲がる。
袋果は長さ8mm前後の楕円形で、短毛があるか無毛。種子は4〜8個入っている。

2002/10/13
矢倉沢峠からの登山道脇で見かけたサラシナショウマです。
バックにハコネダケが写っていますが、登山道脇のわずかな隙間に生えていました。

ホトトギス(Tricyrtis hirta)
<ユリ目・ユリ科・ホトトギス属>
 
ユリ科・ホトトギス属の多年草で、日本固有種。
日本では、北海道南西部、本州の関東地方以西で福井県以南、四国、九州に分布している。
草丈は40〜80cmで、茎は直立するか垂れ下がり、上向きの褐色の毛が密生する。
葉は互生し、葉身は長さ8〜18cmの長楕円形で、先は尖り基部は茎を抱く。両面に軟毛がある。
花期は8月〜10月で、葉腋に上向きの花を数個付ける。
花は直径25o程で、6個の花被片は平開せず、斜め上向きに開き、外面に毛がある。
外花被片3個は内花被片3個より幅が狭く、外花被片の基部に袋状のふくらみがある。
花被片の内側には白地に紫色の斑紋があり、基部には黄色の斑紋がある。
なお、花被片の紫色の斑紋の大小や、数の多少には個体差がある。
花の中心から太い花柱が立ち上がって3深裂して横に広がり、先はさらに2裂する。
花柱や柱頭にも紫色の斑紋があり、横に広がった柱頭には球状の突起がある。
オシベは6個で、花柱を取り囲むように6個のオシベが立ち上がり、メシベの下で湾曲する。
反り返った花糸の先端に、葯は外向きに付き、花糸や葯の上側にも紫色の斑紋がある。
果実は長さ4〜5cmで、3稜があるが尖った三角柱状の刮ハ。熟すと先端が小さく3裂する。
種子は長さ2.5mmほどの扁平な卵形で、淡褐色。表面には細かな網目がある。

2002/10/13
矢倉沢峠からの登山道脇で見かけたホトトギスです。
何株か見かけましたが、右側の花は開花して日が経つのか、少し色褪せているようです。


ホトトギスの仲間

ホトトギス
ヤマホトトギス
タイワンホトトギス






葉腋に上向きの花を数個付ける。
花被片は斜め上向きに開き、
内側基部に黄斑紋あり。
花柱、柱頭、花糸、葯にも、
紫斑紋あり。
茎頂や上部葉腋の散房花序に、
上向きの花を数個付ける。
花被片は大きく反り返り、
内側基部に黄斑紋なし。
花糸の下部に紫斑紋あり。
ただし、無いものもある。
茎頂や葉腋の集散花序に、
まばらに花を付ける。
花被片は斜め上向きに開き、
内側基部の黄斑紋は不鮮明。
花柱、柱頭、花糸に紫斑紋あり。

白地に赤紫色の斑紋が入るホトトギスの仲間です。
なお、タイワンホトトギスは、園芸用に販売されているホトトギスとの交雑種と思われます。
ヤマホトトギスの紫斑紋の変異に関しては、下記に掲載した2枚を参照ください。

タマガワホトトギス
ヤマホトトギス




茎頂や上部葉腋の散房花序に、
上向きの花を数個付ける。
花被片は斜め上向きに開き、
平開しない。
2裂した柱頭にも紫斑紋あり。
花被片の紫斑紋の大きさや数には、
かなりの差異が見られます。
花糸に紫斑紋がないタイプです。

黄色地に紫褐色の斑紋が入るホトトギスの仲間です。
和名のタマガワは、ヤマブキの名所である京都木津川の支流である玉川に因んだものです。
右側はヤマホトトギスの紫斑紋の変異を示したもので、かなり趣が異なります。

リンドウ(Gentiana scabra var. buergeri)
<リンドウ目・リンドウ科・リンドウ属>
 
リンドウ科リンドウ属の多年草で、在来種。
日本では、本州の関東地方以西から四国、九州に分布する。
なお、基本変種であるトウリンドウ(チョウセンリンドウ)は朝鮮半島から中国、シベリアに分布する。
草丈は20〜80cmで、茎は直立あるいは斜上し、4条線がある。
葉は対生し、長さ3〜8cmの卵状披針形で、3脈が明瞭。葉表は緑色で、葉裏は淡緑色。
葉先は尖り、基部は葉柄はなくて、茎を抱く。縁には細かい突起があってざらつく。
花期は9月〜11月で、茎頂や上部の葉腋に太い筒状鐘形の花を数個、上向きに付ける。
花冠は長さ35〜50mmで、先が5裂して先が尖り、裂片の間の副片は小さい。
花冠は晴天時のみ開き、紫色で、内面には茶褐色の斑点がある。
オシベは5個で、柱頭は2裂する。子房の基部には、5個の蜜腺がある。
萼筒は長さ10〜20mmで、萼裂片は線状披針形。
萼裂片は、筒部より長いものや短いものがあり、開出していることが多い。
果実は刮ハで、枯れた花冠や萼に包まれたまま突き出し、熟すと縦に2裂する。
種子は長さ2o弱の紡錘形で、両端に短い尾があり、風に乗って飛散する。

2002/10/13
矢倉沢峠からの登山道脇で、他の草に隠れるようにひっそりと花を付けていたリンドウです。
秋を代表する花の1つですが、除草されたためか背が低く、あまり目立ちません。









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