園内で見かけた野草
和名インデックス |
イチビ(Abutilon theophrasti)
<アオイ目・アオイ科・アオイ亜科・イチビ属> アオイ科イチビ属(アブチロン属)の1年草で、インド原産の帰化植物。 別名に、キリアサ(桐麻)、ボウマ(ぼう麻)などがある。 かつて、繊維植物などの用途で広く栽培されていたが、現在では廃れている。 日本では、平安時代から江戸時代まで栽培されて利用されていた。 その野生化したものが山村などで見られるが、刮ハは茶色くなり、分枝が少ないなど、 現在、日本各地の畑や空き地の雑草として急増してきたものとは遺伝的に遠い。 急増しているものは、刮ハが黒くなり、開花期は早くて長く、分枝が多いのが特徴。 おそらく、輸入飼料などに混じって侵入した、非意図的移入と考えられている。 イチビの種子は、発芽能力を何年も保持し、数年に分けて発芽するため、長期的な防除が必要となる。 草丈は1〜2.5mで、葉は互生し、長さ8〜10pの円心形で、先が急に小さく尖り、長柄がある。 株全体に白く短い軟毛が生えるが、特に葉の裏面に密生していてビロード状になっている。 花期は7月〜9月で、上部の葉脇に直径2cm前後のの黄色花をつける。 オシベの下部は合着して丸く袋状になり、その基部は花弁と合着している。 子房はオシベが合着した部分に包まれている。 果実は直径2cmほどの半球形で10〜15個に分果し、上面にひだのある特徴的な形をしている。 熟すと縦に裂け、各分室に3〜5個の種子が入る。毛が密生する黒色の腎臓型で、長径3.5mmほど。
2022/7/26
共生の花園で、クレオメに混じって、見たことがない変わった形の果実を付けた草本がありました。 花は黄色いアオイ科のような形で、黒く熟した果実も見られました。 後で調べると、最近、各地で分布を広げているイチビと分かりました。 江戸時代まで栽培されていたイチビとは、遺伝的には遠い品種だそうです。 種子の寿命がかなり長く、何年にも渡って発芽するため、根絶には年数を要する強雑草だそうです。 | |
ヒメクグ(Kyllinga brevifolia Rottb. var. leiolepis)
<イネ目・カヤツリグサ科・ヒメクグ属> カヤツリグサ科 ヒメクグ属の多年草で、在来種。 日本では北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。 海外では、朝鮮半島から中国、ウスリー地方に分布する。 草丈10〜25cmの小型の草本で、湿り気の多いところに生える。 赤紫色の毛がある根茎が横に長く這い、節から茎と根を出して殖える。 葉は長さ5〜8p、幅2〜4mmの扁平な線形で柔らかい。基部の鞘は褐色を帯びる。 花期は7月〜10月で、花茎の先に直径5〜12mmの球形の花序を1個、稀に数個付ける。 花茎は艶のある緑色で、断面は三角形。苞葉の葉身は3枚前後つき、葉状で長い。 花序の下部から長さの異なる苞が3枚前後付き、水平から斜め下にに長く伸びる。 花序は、多数の長さ4mm前後の長楕円形の小穂からなり、小穂は4個の鱗片からなる。 鱗片の内の大きい2個には緑色の竜骨があり、竜骨は平滑で先端は反曲しない。 下方の2個の鱗片は小さく、これらは苞葉と前葉に相当する。 基本変種はアイダクグで、ヒメクグより一回り大きく、鱗片の稜に鋸歯があることで区別できる。
2022/7/26
天空の小径の下に続く斜面で見かけたヒムクグ(たぶん)です。 よく似たアイダクグとは鱗片の稜の鋸歯の有無の確認が必要とのことですが、未確認です。 比較的華奢な感じで背が低く、花序が球形(アイダクグは楕円形が混じる)なので、本種としました。 | |
ヒナギキョウ(Wahlenbergia marginata)
<キク目・キキョウ科・キキョウ亜科・ヒナギキョウ属> キキョウ科ヒナギキョウ属の多年草で、在来種。 日本では、本州の関東地方以西から四国、九州、南西諸島に分布する。 海外では、朝鮮半島〜中国、台湾、東南アジア〜ニュージーランドに分布する。 草丈は20〜40cmで、茎は細くて稜があり、基部で分枝する。 ひ弱そうに見える上部とは異なり、根茎は太くて良く発達している。 葉は互生し、下部の葉は長さ2〜4cmの倒披針形で、波状の鋸歯があり、葉柄は短いか無い。 上部の茎葉は線状被針形で、まばらに鋸歯があるものがある。 花期は4月〜9月と長く、長さ10〜20cmの長い花茎の先に青紫色の花を1個付ける。 花冠は長さ3〜12mm、直径5〜10mmの広鐘形で、先は5裂(まれに4裂)する。 萼も5裂し、裂片は披針形。オシベは5個、メシベは1個で、柱頭は3裂する。 刮ハは直立し、長さ3〜8mm。萼裂片が残り、熟すと上部が縦に3裂する。
2022/7/26
友愛の丘近くの通路脇で見かけたヒナギキョウです。 直径が10mmほどのかわいらしい花がパラパラと咲くので、注意していないと見落とします。 花は小さく、茎も貧弱な割に、根茎は太く発達していて、根絶が難しい強雑草です。 | |
ソバ(Fagopyrum esculentum)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・ソバ属> タデ科ソバ属の一年草で、中国原産の帰化植物。 日本では、主に穀類として栽培されるが、イネ科ではないため、擬穀類とよばれる。 草丈は50〜100cm程になり、茎の先端に総状花序を付け、多数の花を付ける。 花色は、白、淡紅色、赤色、茎の色は緑、淡紅色、濃紅色がある。 栽培種のソバは、自分自身の花粉では結実できない異型花型の自家不和合成を持つ。 そのため、長花柱花と短花柱花を混在して栽培し、相互受粉させる必要がある。
2021/10/11
癒しの花園を覆ていたのはアカバナソバでした。一面を優しいピンク色に染めています。 アカバナソバは、信州大学農学部の氏原暉雄教授が品種改良して作出した「高嶺ルビー」という品種です。 白い花も混じってはいましたが、アカバナソバは気温が下がると濃色になるそうです。 2022/7/26 ふれあいの花園へ降りていくとき、右手に白い花のソバが植えられていました。 白い花なのと、花のピークを過ぎて一部が茶色くなっていることもあって、インパクトに欠けます。 遠くから見た時、雑草の生い茂った草原のように見えてしまいました。 | |
コハコベ(Stellaria media)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ハコベ属> ナデシコ科ハコベ属の越年草で、日本では全国的にみられる。 全世界に帰化植物として定着しており、北米やヨーロッパでは極普通の庭草である。 ミドリハコベに似ているが、いくぶん小型で、茎が暗紫色を帯びる所が異なる。 草丈は10〜20cmで、茎は下部から多数分枝して、下部は地を這い、上部は斜上する。 葉は長さ1〜2cmの卵形で対生し、縁は全縁。下部の葉には長い葉柄があるが、上部では無柄になる。 花期は3月〜10月と長く、花は集散花序に付き、花柄がある。 萼片は5個で、鈍頭で楕円形。長さは3〜4oあり、縁は薄膜質。 花弁は萼片より若干短めの白色で、5個あり、2深裂する。そのため、花弁が10枚に見える。 メシベの花柱の数は3個で、オシベの数は3〜7個ある。
2022/3/15
菜の花を訪花していたニホンミツバチを撮っていて、足元に咲くコハコベに気が付きました。 良く手入れされている花畑ですが、こっそりと生き延びていたようです。 メシベの花柱が3裂していて、茎が褐色味を帯びていたのでコハコベと判断しました。
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モモイロシロツメクサ(Trifolium repens L. form. roseum Peterm)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・シャジクソウ連・シャジクソウ属・Trifolium亜属・Trifoliastrum節>
シロツメクサの花が淡紅色の品種で、シロツメクサに混じって稀に見られる。 別名は、モモイロツメクサで、ほぼ半々くらいで使用されている。 正式には、シロツメクサの桃色品種ならば、原則、シロツメクサを名前に入れるものだそう。 シロツメクサはマメ科・シャジクソウ属の多年草で、花色以外に両者に違いはない。 ヨーロッパ・北アフリカ原産の帰化植物で、明治時代に家畜用の牧草として導入された。 日本では、北海道から本州、四国、九州と全国的に分布している。 名前のツメクサ(詰め草)は、乾燥させたものをガラス器の緩衝材に使用したことに由来する。 草丈は15〜30cmで、茎は地を這い、節から根を出して広がる。 葉は長さ6〜20cmの葉柄の先に、直径2〜5cmの3出複葉を付ける。 托葉は葉に合着し、小葉には白い班紋があることが多く、鋸歯がある。 稀に2つ葉や4つ葉、5つ葉などが見られ、幸運を呼ぶなどとされている。 花期は5月〜8月で、球形の総状花序が頂生し、花柄は葉柄より長い。 筒状の蝶形花は長さ1cm前後で短い柄があり、20〜50個付く。 萼筒の先は5裂し、裂片は先が鋭く尖り、裂片より萼筒の方が長い。 ※ 私が見つけた2つ葉〜7つ葉のクローバーについては、こちらにまとめてあります。
2022/7/26
天空の小径の下に続く斜面など、あちらこちらでモモイロシロツメクサを見かけました。 ほとんどの場合、シロツメクサと混生していて、花色が淡紅紫色で白に近いものが多かったです。 2022/7/26 多くが両者が混じる小さな株なのですが、天空の小径の下で大きな株を見つけました。 左上がシロツメクサ、右下がモモイロツメクサの群落で、どちらも直径2m弱ありました。 このモモイロツメクサですが、写真でもわかるように花色以外に葉も若干赤味を帯びていました。
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