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網引湿原で見かけた昆虫(T)



加西市網引町にある県内有数の滲水湿原である網引(あびき)湿原とその周辺で見かけた昆虫たちです。
ここには湿原代表昆虫であるヒメヒカゲ、ハッチョウトンボ、ヒメタイコウチが揃って生息する。

< トピック >
今回、新たに見かけた下記の昆虫を追加しました。
ナミアゲハ、ギフチョウ、キタキチョウ、キタテハ、ルリタテハ、
テングチョウ、ミヤマセセリ、ゴマフリドクガ

今回、下記の写真を追加しました。
ヤマトシジミ、ベニシジミ、モンキチョウ



チョウ目・アゲハチョウ上科
アゲハチョウ科(ナミアゲハ、ギフチョウ)
シジミチョウ科(ヤマトシジミ、ベニシジミ)
シロチョウ科(キタキチョウ、モンキチョウ)
タテハチョウ科(コミスジ、ヒメウラナミジャノメ、ヤマキマダラヒカゲ、
        キタテハ、ルリタテハ、テングチョウ、ツマグロヒョウモン)
チョウ目・セセリチョウ上科
セセリチョウ科(コチャバネセセリ、ミヤマセセリ)
チョウ目・シャクガ上科
アゲハモドキガ科(キンモンガ)
シャクガ科(ウメエダシャク)
チョウ目・ヒロズコガ上科
ミノガ科(クロツヤミノガ)
チョウ目・マダラガ上科
マダラガ科(ヤホシホソマダラ、ヒメクロバ)
チョウ目・ヤガ上科
トモエガ科(ドクガ、ゴマフリドクガ)
ヒトリガ科(カノコガ)
網引湿原で見かけた昆虫(T)
和名インデックス


ナミアゲハ(Papilio xuthus)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
アゲハチョウ科・アゲハチョウ亜科・アゲハチョウ族・アゲハチョウ属>

日本を含め、台湾、中国、朝鮮半島、沿海地方まで分布している。
日本は、北海道から南西諸島まで、全国に生息している。
幼虫はミカン科の植物が食草となっており、四齢幼虫までは黒い体色をしている。
終齢幼虫の五齢幼虫になると緑色の体色に変わる。
なお、幼虫に触ると頭部と胸部の間から強烈な悪臭を放つ黄色い臭角を出す。
成虫の前翅長は4〜6cmで、春型の個体は夏型の個体よりも小さい。
翅は黒地に黄白色の斑紋や線が多数入り、キアゲハに似るが、黒線が太めで、黄白色部が白っぽい。
後翅には水色の斑紋があり、尾状突起の内側には橙色の斑紋がある。
キアゲハとの大きな違いは前翅の基部で、キアゲハには模様はないが、ナミアゲハには線模様がある。
本種は、蛹で越冬する。

2024/4/14
第3湿原の遊歩道近くにコバノミツバツツジが群生していますが、そこに吸蜜にやってきていました。
ここにギフチョウが吸蜜にやってくるのを待っていたのですが、紛らわしいですね。
大きさや見た目が似ているので、飛び回っているのを見ただけでは、簡単には見分けられません。
止まったときに、やっとナミアゲハであったと分かりました。ギフチョウでなくて残念。

ギフチョウ(Luehdorfia japonica)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
アゲハチョウ科・ウスバアゲハ亜科・ギフチョウ族・ギフチョウ属>

アゲハチョウ科ウスバアゲハ亜科ギフチョウ属に分類されるチョウで、日本固有種。
日本では、本州の秋田県南部の鳥海山北麓から山口県中部にいたる26都府県に分布する。
ただし、東京都と和歌山県では絶滅している。
本州の里山に生息するチョウで、成虫は3月下旬〜6月上旬にのみ発生する年1化。
オスはメスよりも1週間ほど早く発生する。
早春の短い期間にのみ現れることから、「春の女神」とも呼ばれる。
カタクリ、ショウジョウバカマ、スミレ類、サクラ類などの花を訪れ吸蜜する。
活動は、午前中は日光浴や交尾、午後は高い所を飛び回る。
成虫の前翅長は30〜35mmで、開張は48〜65mmである。
翅は黄白色と黒色の縦縞模様で、後翅の縁に青や橙、赤色の斑紋が並び、尾状突起がある。
幼虫の食草は、ウマノスズクサ科カンアオイ属のミヤコアオイやヒメカンアオイなどである。
幼虫は4回脱皮して終齢幼虫となり、夏には落葉の裏でサナギ(体長20mmほど)となる。
サナギの期間は約10ヶ月と非常に長く、そのまま越冬して、翌春に羽化する。
なお、良く似たヒメギフチョウは、後翅の縁の斑紋が橙色ではなく黄色なので判別は容易。

2024/4/12
ギフチョウに会いたいと網引湿原にきたのですが、先客の方が会えなかったと帰られました。
いや、居るはずだと第2湿原に入ると、右手の斜面で大きめのチョウが見えました。
網引湿原では、この時期にはコバノミツバツツジの花しか咲いていません。
そのため、吸蜜に来たのでしょう。近くに行ってみましたが、着いた頃にはいませんでした。
しばらく待っていると、飛んできたので撮影しましたが、うまく撮れませんでした。
ブレボケのひどい写真ですが、拡大して見るとナミアゲハらしいことが分かりました。
その後、第3湿原の方のコバノミツバツツジに移動。ギフチョウらしいものを確認できました。
ここでは、第3湿原の遊歩道近くの群生地と第2湿原奥の斜面にある群生地で見られました。
どうやら2匹が、この2ヶ所を含む蝶道を巡っているようで、数十分ごとに現れます。
第3湿原の群生地に現れたギフチョウが、遊歩道から数mの所に止まってくれました。
それを撮っているときに飛び立ったので、それを追って撮ったのが右の写真です。
ちょっとピントが甘いですが、何とか飛んでいるところも撮れました。



2024/4/14
再び、第3湿原の遊歩道近くのコバノミツバツツジ群生地で、撮影にトライしました。
先客がいて、なかなか止まってくれないと嘆いておられました。
飛んできたチョウが何かおかしいと感じ、撮影した写真でナミアゲハと確認。ちょっとがっかり。
その後、やってきたギフチョウはサービス精神旺盛で、移動しながら盛んに吸蜜していました。
そのため、シャッターチャンスが多々あり、良い写真を撮ることができました。

ヤマトシジミ(Zizeeria maha)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シジミチョウ科・ヒメシジミ亜科・ヒメシジミ族・ヤマトシジミ属>

<メス>           2022/8/27           <オス>
シジミチョウ科ヤマトシジミ属のチョウで、在来種。
日本では、本州から四国、九州、南西諸島まで広く分布している。
海外では、台湾、朝鮮半島から中国、フィリピン、インドネシア、インドなどに分布する。
多くの亜種に分かれ、日本でもトカラ列島の悪石島以南の南西諸島亜種とそれ以外の本土亜種に分かれる。
開張は20〜30mmで、翅表は、オスでは青〜青白色で、外縁部には黒色帯がある。メスでは全面黒〜暗灰色。
翅裏は、雌雄とも灰褐色の地色に、円形またはくの字型の黒色斑紋があり、斑紋は翅脈をまたがらない。
雌雄とも季節変異があり、低温期ではオスの黒色帯は細くなり、青い部分は白味を帯びた青白色になる。
メスでは、黒〜暗灰色の地色に基部側より青紫色の部分が拡大し、青味を帯びてくる。
夏の高温期には、オスでは黒色帯は太くなり、青味が強くなる。メスは、ほぼ全面黒〜暗灰色になる。
日本では、本州以南で極普通に見られ、年4〜5回発生し、4月〜11月まで見られる。
冬は幼虫で越冬するが、冬でも暖かいと摂食する。なお、南西諸島では周年発生する。

網引湿原の駐車場から第1獣害防止ゲートまでの通路脇には、多くのヤマトシジミが飛び交っていました。
飛び交っているのは多くがオスで、メスは少ないようです。そのメスには交尾しようとオスが集まっていました。


2022/8/27
上記はその極端な例で、交尾中のカップルが止まっている所に、次々とオスが飛来ていました。
見ているときには、最大で4匹のオスが次々と横恋慕していましたが、見事に跳ね除けていました。


2024/4/12
今年も網引湿原の駐車場から第1獣害防止ゲートまでの通路脇で、飛び回っていました。
この時期は春型なので、最初の写真の夏型に比べて翅の外縁の黒色帯が細いです。

ベニシジミ(Lycaena phlaeas)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シジミチョウ科・ベニシジミ亜科・ベニシジミ属>

シジミチョウ科ベニシジミ属のチョウで、在来種。
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸に広く分布し、多くの亜種に分かれている。
日本に生息する亜種は、「Lycaena phlaeas americana Harris」である。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布する。
前翅長は15mm前後で、出現時期は3月〜11月と長い。
前翅は表裏とも赤地に黒褐色の斑紋があり、後翅は表面が黒褐色で、裏面が灰色。
雌雄で翅の形が異なり、前翅が尖ったような形のものがオスで、少し丸まった感じのものがメスである。
また、春型ではオレンジ色が鮮やかで、黒斑が小さくなり、縁取りも幅が細くなる。
夏型では、黒斑が大きくなり、オレンジ色部分に縁取りの灰褐色が混ざりこんで、全体が黒っぽくなる。
秋型は、春型のようにオレンジ色が鮮やかになるが、黒斑や縁取りは夏型に近い。
幼虫の食草は、タデ科植物のスイバ、ギシギシ等。冬は幼虫で越冬する。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場近くで見かけたベニシジミです。
ギシギシの花序でちょっと一休みといったところでしょうか。


2024/4/12
今年も網引湿原の駐車場から第1獣害防止ゲートまでの通路脇で、飛び回っていました。
この時期は春型なので、オレンジ色が鮮やかで、黒斑小さめです。夏型と違いは下記を参照ください。


ベニシジミの春型と夏型

   .
  <春型のメス>                <夏型のオス>
春型ではオレンジ色が鮮やかで、黒斑が小さくなり、縁取りも幅が細くなります。
一方、夏型では黒斑が大きくなり、オレンジ色部分に灰褐色が混ざりこんで、全体が黒っぽくなります。
また、雌雄で前翅の先の形状が異なり、メスでは先に丸みあり、オスでは尖っています。


キタキチョウ(Eurema mandarina)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シロチョウ科・モンキチョウ亜科・キチョウ属>


シロチョウ科キチョウ属に分類されるチョウで、在来種。
日本では、本州の東北南部から四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、アフリカ中部以南からインド、東南アジア、オーストラリアと広く分布している。
翅は黄色で、前翅、後翅とも外縁は黒色に縁どられ、裏面に黒褐色の斑点がある。
夏型の外縁の黒帯は幅広で、秋型では黒帯は先端に少し残るか、消失する。
幼虫の食草は、ネムノキ、ハギ類のマメ科の植物で、年に数回発生し、成虫で越冬する。
以前は1種とされたが、現在では下記の2種に分類された。しかし、外見からは識別困難。
・キチョウ(ミナミキチョウ/Eurema hecabe) 南西諸島に分布する
・キタキチョウ(Eurema mandarina) 本州から南西諸島に分布する

2024/3/16
第1湿原手前の林内で、キタキチョウが数匹飛び回っていました。
その内、1匹が地面というか落葉の上に止まったので、近づいて写真を撮っていました。
このキタキチョウは、外縁の黒帯がほとんどない秋型なので、越冬個体ですね。
そこにテングチョウがやってきて、キタキチョウを追い払って、自分がその場所に止まりました。
そこに別のテングチョウがきて絡むように飛び立つと、また、キタキチョウがやってきました。
何の変哲もない場所なのですが、日が当たっているのが良いのか、同じ場所にやってきます。
その場所には、アシブトハナアブやホソヒラタアブ、ホソミオツネントンボもやってきました。
彼らにとって、この場所は特別な場所のようで、入れ代わり立ち代わり、次々とやってきます。

モンキチョウ(Colias erate)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
シロチョウ科・モンキチョウ亜科・モンキチョウ属>

シロチョウ科モンキチョウ属に属するチョウで、在来種。
ヨーロッパ南東部から、中央アジア、日本や台湾まで分布しており、日本ではほぼ全国でみられる。
日本で見られるのは、亜種(C. e. poliographus Motschulsky)である。
開張は50mm前後、前翅長は23〜26mmで、前翅外縁が黒く、翅の中央には銀色の斑紋がある。
オスの翅の地色は黄色で、メスでは黄色と白色の2種類があるが、白色が圧倒的に多い。
出現時期は3月〜11月で、年に2回発生する。冬は幼虫で越冬する。
食草は、ムラサキウマゴヤシやクローバーなどのマメ科の植物である。

2022/6/18
網引湿原の最初の獣害防止ゲートとバイオトイレの中間あたりで見かけたモンキチョウです。
通路周りをあちらこちらと飛び回っていたのですが、突然、通路脇の草に止まりました。
翅裏しか見えていませんが、この個体は白色型なのでメスですね。


2024/4/12
今年も網引湿原の駐車場から第1獣害防止ゲートまでの通路脇で、何匹か見かけました。
この個体は黄色型なので、写真からだけではオスかメスかは分かりません。

コミスジ(Neptis sappho)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・イチモンジチョウ亜科・ミスジチョウ族・ミスジチョウ属>

チョウ目タテハチョウ科に分類されるチョウの一種で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、屋久島、種子島まで分布するが、それ以南には分布しない。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、欧州南東部に分布する。
幼虫の食草は、クズ、ハギ、フジ、ニセアカシアなどのマメ科植物である。3齢幼虫で越冬する。
翅の表面は黒褐色で裏面は明るい褐色。前翅に1本、後翅に2本の白い帯模様がある。裏の模様も同じ。
なお、翅を開いて止まることが多いが、その際、3本の帯模様に見える。これが和名「ミスジ」の由来。
成虫は、4月〜11月と長期間見られ、低地や丘陵地の森林周辺に多く見らる。
飛び方に特徴があり、数回羽ばたいてはスーっと滑空するのを繰り返す。

2023/8/5
網引湿原の第1獣害防止ゲートの少し手前で、コミスジがフワフワと飛んできて、葉に止まりました。
実家近くで見かけるのはホシミスジばかりでしたので、こちらでコミスジを見たのは初めてになります。

ヒメウラナミジャノメ(Ypthima argus)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ジャノメチョウ亜科・ジャノメチョウ族・ジャノメチョウ亜族・ウラナミジャノメ属>

タテハチョウ科ウラナミジャノメ属の蝶で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布する。
出現時期は4月〜9月で、前翅長は18〜24mm、開張は33〜40mmになる。
翅に黄色で縁取られた蛇の目紋(眼状紋)が、後翅表に2個、後翅裏に5〜8個ある。
よく似たウラナミジャノメは、後翅表に1個、後翅裏に3個と少ない。
また、両種とも翅裏全体に波模様があり、これが和名の由来。
草原や林の周辺で広く見られ、人家周辺にも多い。
幼虫は、イネ科のススキ、チヂミザサなどを食草とする。幼虫で越冬する。
成虫は、いろいろな花でよく吸蜜する。

2022/8/9
奥池の近くを歩いているとき、目の前に飛んできて止まってくれたヒメウラナミジャノメです。
翅裏の波模様と蛇の目紋の数から本種と分かりました。


2022/8/16
網引湿原奥池の近くを歩いているとき、翅を広げて止まっているヒメウラナミジャノメを見つけました。
前回、翅裏しか撮れていなかったので、翅表を撮ることができてラッキーでした。
市ノ池公園で見かけたものより翅表の蛇の目紋が少なく、前翅に1個、後翅に2個です(下記参照)。
ちなみに、ウラナミジャノメの翅表の蛇の目紋は、前後の翅に1個ずつです。



2023/5/4
網引湿原への続く農道とか湿原の周辺など、多くのヒメウラナミジャノメを見かけました。
多くの場合、遊歩道脇の葉の上とか、地面に止まるのですが、今回は吸蜜中の姿を見かけました。
今まで吸蜜している所は見ていないのですが、今回は数が多いためか、ちょくちょく見かけました。


ヒメウラナミジャノメの斑紋の違い

   .
   .
<網引湿原で見かけたもの>         <市ノ池公園で見かけたもの>
ヒメウラナミジャノメの眼状紋の数には、翅表、翅裏ともに変異があります。
よく見かけるのは左側の網引湿原で見かけたパターンで、翅表の眼状紋は前1個、後2個です。
しかし、右側の市ノ池公園で見かけような、翅表の眼状紋が多い個体も見られます。


ヤマキマダラヒカゲ(Neope niphonica)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ジャノメチョウ亜科・マネシヒカゲ族・キマダラヒカゲ属>

2022/6/18                  2023/5/4
タテハチョウ科キマダラヒカゲ属に分類されるチョウの一種で、在来種。
サトキマダラヒカゲでは、黒色眼状紋が小さいため、黄環が比較的幅広なのに対して、
ヤマキマダラヒカゲでは、黒色眼状紋が大きいため、黄環の幅が狭くなっている。
また、サトキマダラヒカゲでは、後翅基部に並ぶ3個の斑紋が直線に近い並びになるのに対して、
ヤマキマダラヒカゲでは、3個の斑紋の1個が外側にずれて、「く」の字状に並ぶ。

2022/6/18
第2湿原の木道から少し離れた所で、葉裏でジッとしているヤマキマダラヒカゲです。
このときは止んでいましたが、この日は雨が降っていたので、雨を避けていたのでしょう。
翅がかなり傷んでいますが、後翅基部に並ぶ3個の斑紋からヤマキマダラヒカゲと判断しました。
2023/5/4
バイオトイレを使おうと近づいたとき、パッとチョウが飛び立ちました。
おっと思って見ていると、窓枠に止まりました。ヤマキマダラヒカゲです。
さらにアップでと思って近づくと、逃げられました。
しばらく、バイオトイレの周りを飛び回っていたのですが、どこかへ飛んで行ってしまいました。


2023/7/25
第1湿原から第2湿原にかけて、所々でヤマキマダラヒカゲを見かけました。
ヒメウラナミジャノメが多いのですが、一際大きいので飛んでいると直ぐに分かります。


ヤマキマダラヒカゲとサトキマダラヒカゲ

   .
<ヤマキマダラヒカゲ>          <サトキマダラヒカゲ>
サトキマダラヒカゲは、多摩川の河川敷で見かけたものです。
こうして並べてみると、ヤマキマダラヒカゲの翅が如何に傷んでいるかが良く分かりますね。
ヤマの方は不明瞭なのですが、後翅基部の3個の斑紋の並び方が、サトとヤマでは異なります。
ヤマでは最下端の斑紋が少し離れ、並びに角度が付くのに対して、サトは等距離で直線的に並びます。


キタテハ(Polygonia c-aureum)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・タテハチョウ亜科・タテハチョウ族・キタテハ属>


タテハチョウ科キタテハ属のチョウで、翅の表が黄色いことが和名の由来。
日本を含め、インドシナ半島から中国、台湾、朝鮮半島まで分布している。
日本でもほぼ全国で普通にみられる。
後翅の裏面に白い模様があり、これが「C」の字に似ていることが学名の「c-」の由来。
冬は成虫で越冬し、ものかげでじっとしている。
成虫の前翅長は25〜30mmで、翅の縁には大小の突起があり、先がとがっている。
翅表は、前後とも黄色の地に褐色の縁取りと黒い斑点があり、一部の黒斑の中には水色の小さな点がある。
翅裏は、前後とも赤褐色で、枯葉にまぎれる保護色となる。
夏型と秋型があり、夏型では羽表の地色がくすんだ黄色になり、縁取りが黒く、黒斑が大きい。
一方、秋型では羽表の地色は鮮やかな黄赤色になり、縁取りは褐色で薄れ、黒斑が小さい。
なお、翅裏も夏型では黒褐色になり、秋型では赤味が強くなって茶褐色になる。
また、翅の外縁の凹凸も、夏型では丸みがあるのに対して、秋型は鋭角に尖る。

2024/3/16
網引湿原の第1獣害防止ゲートとバイオトイレの中間あたりで、ペアのキタテハを見かけました。
最初、地面に止まっていたのですが、1匹が移動すると、もう1匹が追いかけて行きます。
上段左の写真で、翅を畳んでいる方を、手前の翅を開いている個体が追いかけていました。
おそらく、翅を畳んでいる方がメスで、手前の追いかけていた方がオスだと思われます。
近くで何匹かのキタテハが飛び交っていて、さかんにホトケノザなどの吸蜜をしていました。
キタテハを見かけたのはこの場所だけで、第1獣害防止ゲートの先では見かけませんでした。

ルリタテハ(Kaniska canace)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・タテハチョウ亜科・タテハチョウ族・ルリタテハ属>

タテハチョウ科ルリタテハ属に分類されるチョウで、ルリタテハ属唯一の現存種である。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州、南西諸島までに分布する。
なお、トカラ列島以南のものは南西諸島亜種(K. c. ishima)、
種子島・屋久島以北のものは本土亜種(K. c. no-japonicum)に分類されている。
海外では、東アジアから南アジアまで、広範囲に分布する。
成虫の前翅長は25〜45mmで、濃い黒褐色の翅の表面に鮮やかな瑠璃色の帯模様が入る。
この帯模様は前翅の先端部で切れ、白い斑点がつく。
裏面は灰褐色で細かい模様があり、樹皮や落ち葉に似ている。
成虫で越冬し、早春にはキタテハやアカタテハなどと共にいち早く飛び始める。

2024/3/16
第2湿原の通路を歩いているときに、目の前からルリタテハが飛び立っていきました。
どこかで止まってくれるかと後を追ったのですが、そまま林の中に消えていきました。
戻りに第1湿原の中に入ったのですが、そこでルリタテハと再会できました。
飛び立ったので気付いたのですが、少し先に止まってくれましたので、何とか撮影できました。
その後、そっと近づいて撮ったのですが、翅を畳んでしまってなかなか開いてくれません。
しばらく待っていたのですが、突然、飛び立ってしまい、撮れずじまいとなりました。


2024/4/12
網引湿原の周辺では、ルリタテハをよく見かけました。
地面などによく止まっているので、知らずに近づき、パッと飛び立って気付くことが多いです。

テングチョウ(Libythea celtis)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・テングチョウ亜科・テングチョウ属>


<テングチョウ♂>             <テングチョウ♀>
タテハチョウ科テングチョウ亜科に分類されるチョウで、日本ではこの1種類のみ生息する。
日本では、北海道から本州、四国、九州、沖縄本島まで分布している。
海外では、朝鮮半島と台湾にも分布している。
和名は、成虫の頭部が天狗の鼻のように前方に伸びることに由来する。
この突起は、パルピ(下唇髭)という器官で、テングチョウでは特に大きく、よく目立つ。
パルピは、タテハチョウ科では比較的大きく、アゲハチョウ科やシロチョウ科では小さい。
前翅長は19〜29mmで、開張は40〜50mmである。
羽ばたくスピードは速く、飛び方は極めて俊敏である。
翅は茶色で、前翅の縁に角状の突起がある。翅の表面には橙色の斑紋があり、前翅前端にある斑紋は白い。
なお、橙色の斑紋には、雌雄で違いがあり、その違いで判別可能である。
メスでは、前翅の橙色の大きな斑紋の後翅側に小さな突起状の斑紋があるが、オスではないか小さい。
また、後翅の前縁部に斑紋があるのがメスで、無いのがオスであるが、重なり部分なので見えない。
盛夏には休眠し、秋に再び活動してそのまま成虫越冬し、冬眠から覚めた春先にも再び活動する。
そのため、成虫が見られるのは3月〜6月と9月〜11月である。

2024/3/16
最初にテングチョウを見たのは、第1獣害防止ゲートとバイオトイレの中間あたりでした。
斑紋が赤く見えたのでヒメアカタテハかと思ったのですが、止まったのを見て本種と分かりました。
第2湿原でも見かけましたが、第1獣害防止ゲートを入って直ぐの林内が最も多かったです。
林内でキタキチョウを撮っていたら、テングチョウがキタキチョウを追い払って止まりました。
そこに別の1匹が飛来し、もつれ合って飛び立ったら、さらに1匹が加わって飛んで行きました。
後で写真を見て、最初に止まっていたのがメスで、そこにオスが飛んできたようです。
そこにもう1匹のオスが参戦して、3匹がもつれ合うように飛び去っていったのだと思います。

ツマグロヒョウモン(Argyreus hyperbius)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ドクチョウ亜科・ヒョウモンチョウ族・ツマグロヒョウモン属>

<オス>                   <メス>

タテハチョウ科ツマグロヒョウモン属のチョウで、在来種。
日本を含め、中国、朝鮮半島、オーストラリア、インドと熱帯・温帯に広く分布している。
日本では、本州南西部から四国、九州等に生息していたが、
近年、関東甲信越、北陸地方の平野部に進出してきている。
冬は幼虫や蛹で越冬し、年に数回発生する。
メスの前翅先端部が黒色で、その中に斜めの白帯を持つ。この特徴が名前の由来。
なお、オスには黒色部や白帯は無く、典型的なヒョウモンチョウの模様になる。
ただ、後翅の外縁部が、メスと同じように黒に白い模様が入っていることで区別可能。
ツマグロヒョウモンの終齢幼虫は、体長30mm前後で、黒色の背中に赤い筋模様が1本ある。
各節に刺状突起が各々6個あり、頭部側は真っ黒で、腹部側は基部が赤くて、先が黒い。
見るからに毒々しい警戒色をしているが、刺には毒はなく、刺すこともない。

2022/6/18
メスは、網引湿原の最初の獣害防止ゲートとバイオトイレの中間あたりで見かけたものです。
同じところをウロウロと飛び回り、時折地面に止まってくれましたので、そこを撮ったものです。
オスは、網引湿原入口の駐車場近くで、放置された田んぼの中を飛び回っていました。
こちらも時折、止まってくれるのですが、なかなか手前に来てくれません。
やっと畔近くのノアザミに止まってくれたところを撮りました。
雌雄で翅の模様や色がずいぶんと異なることが分かると思います。
下段は、翅を開いて止まってくれたもので、オスに比べると、ずいぶんとカラフルでお洒落です。

 
2022/8/9
第2湿原を出た所で見かけたツマグロヒョウモンのメスと、駐車場近くで見たオスです。
前回、6/18に来た時にも見かけましたが、この辺りではよく見かけます。
メスをこの角度で撮ると、翅のマリンブルーの鱗粉がきれいに光って見えますね。


2023/8/5
今日は、ツマグロヒョウモンのメスをよく見かけます。その1匹が目の前の地面に止まりました。
吸水している訳でもなく、何をしているのか不明です。単に休んでいるだけなのでしょうか。

コチャバネセセリ(Thoressa varia)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・セセリチョウ上科・
セセリチョウ科・セセリチョウ亜科・コチャバネセセリ属>

セセリチョウ科コチャバネセセリ属に分類されるチョウの一種で、在来種。
日本では北海道から本州、四国、九州に分布するが、屋久島以南の南西諸島には見られない。
海外では、朝鮮半島に分布し、台湾には近縁種のキスジチャバネセセリが分布する。
前翅長は14〜19mmで、開張は30〜36mm。年2〜3回発生し、活動期間は5月〜9月。
体色は黒褐色。翅も黒褐色の地色で、基部に近い部分は黄褐色になるが、地域や季節で変異がある。
前翅表には小白斑が7個あり、後翅表には白紋が入らないか、または小さく不規則に入る。
翅裏面は黒褐色の地色に翅脈以外に黄褐色に鱗粉が乗り、翅脈が黒く浮かび上がる。
後翅裏には、楕円形の白紋が3個ある。地色や斑紋に雌雄差見られない。
ただし、オスは前翅表面2脈の基部から斜下方に向かって黒褐色の性票がある。
低地から高地まで広く分布し、林縁の笹薮などを敏速に飛び、いろいろな花で吸蜜する。
また、地上の湿地で吸水したり、鳥獣の糞や汚物などにも集まる。
幼虫はササやタケなどのタケ科植物の葉を食べ、葉の表面を内側にして巻き、筒状の巣をつくる。
その中で摂食するが、葉の基部から中央の主脈を残して規則正しく食べていく習性がある。
越冬期には、残した主脈を切って地上に落とし、その中で越冬し、早春に蛹化、羽化する。

2023/7/18
第3湿原の遊歩道を歩いていて、コチャバネセセリが遊歩道脇に止まっているのが見えました。
珍しいチョウではありませんが、この網引湿原で見かけたのは初めてです。

ミヤマセセリ(Erynnis montanus)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・セセリチョウ上科・
セセリチョウ科・チャマダラセセリ亜科・ミヤマセセリ族・ミヤマセセリ属>

セセリチョウ科ミヤマセセリ属の蝶で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、対馬広く分布している。
海外では、極東ロシア、朝鮮半島から中国、台湾に広く分布する。
前翅長は14〜22mmで、開張は35〜42mmである。
翅の表面は茶褐色で、前翅に紫灰色の樹皮模様、後翅の外半部に黄橙色の小斑が多数ある。
メスは前翅表の中央に幅広い白帯があり、メスは前翅表前縁に上方に反り返る淡褐色の性標がある。
前翅裏面にある翅頂部近くの黄橙部はメスよりも狭く。メスよりも不明瞭。
4月に産卵され、5月に幼虫となる。食樹の葉を折り返して巣を作り、幼虫で越冬する。
成虫は早春に発生する年1化で、暖地では3月下旬から、寒冷地では5月頃に発生する。
平地から山地にかけての落葉広葉樹林で、ブナ科コナラ属のコナラ、クヌギなどを食草とする。
日中は森林の林床を跳ねるように飛翔して訪花し、地面に翅を開いて留まって日光浴を行う。

2024/4/12
第2湿原の木道を歩いていたとき、直ぐ近くに蛾のようなものが飛んできて止まりました。
よく見ると、蛾ではなくセセリチョウの仲間のようですが、見たことがありません。
後で調べて、ミヤマセセリのオスと分かりました。春のこの時期のみに現れるようです。

キンモンガ(Psychostrophia melanargia)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・シャクガ上科・
アゲハモドキガ科・Psychostrophia属>

アゲハモドキガ科に分類される蛾の一種で、日本固有種。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
出現期は、5月〜6月と8月〜9月の年2回。
開張は35mm前後で、翅は黒地に淡黄色の大きな紋があり、後翅の中央部は広く淡黄色。
紋の色は通常は淡黄色だが、白色のものも見られ、紋の大きさにも個体差がある。
幼虫は、リョウブの葉を食べ、体は白蝋状の物質で覆われている。
蛹化時、繭にこの物質を混ぜて白い繭を作り、蛹も白粉に覆われている。蛹で越冬する。

2023/7/18
網引第1湿原から奥池に向かう途中、通路脇で見かけたキンモンガです。
黒地に黄色い斑紋なので、否が応でも目に付く配色で、薄暗い林内でも目に留まります。
キンモンガは新潟の胎内市で見て以来、2度目なのですが、その理由が分かりました。
どちらも、近場にリョウブの樹があるのです。キンモンガの食草が、このリョウブなんです。


2023/7/25
この日も奥池近くでは、数匹のキンモンガが通路脇などに止まっていました。
この近くにはリョウブの樹が、数本寄り集まって花を咲かせています。

ウメエダシャク(Cystidia couaggaria couaggaria)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・シャクガ上科・
シャクガ科・エダシャク亜科>

シャクガ科エダシャク亜科の蛾で、出現は年に1回。
日本では、北海道から四国、九州まで、ほぼ全国に分布する。
日本を含め、シベリアから朝鮮半島、中国まで広く分布している。
開張は35〜45mmで、翅は白色と黒色のまだら模様。腹部は淡黄橙色で黒色の斑紋が並ぶ。
見た目がトンボエダシャクなどと良く似ているが、翅の斑紋などで区別可能。
日中に活動し、フワフワと羽ばたきながら緩やかに飛び続ける。
幼虫は、ウメ、モモ、サクラ、エゴノキ、スイカズラなどの葉を食べる。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場近くで見かけた、ウメエダシャクです。
エダシャクにはいろいろと似たものが多く、いつも判断に迷います。
この翅の斑紋に近いものが見当たらず、近いものがウメエダシャクでした。
ウメエダシャクの斑紋は変異が大きいので、同じ形のものはまずいません。
自信はありませんが、他に候補がいなかったので、斑紋の変異と判断したものです。

クロツヤミノガ(Bambalina sp.)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・ヒロズコガ上科・
ミノガ科・Bambalina属>

ミノガ科Bambalina属の蛾で、在来種。蓑虫としてはポピュラーである。
以前、ミノガ(Canephora asiatica)が永らく使用されていたが誤同定と判明し、
クロツヤミノガ(Bambalina sp.)が用いられるようになった。
しかし、Bambalina属そのものが十分に解明されておらず、今後も属が変更される可能性がある。
日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布する。
メスは羽がなく、成虫になってもウジムシ型で、巣の中にいる。
オスは、夕方にメスを探しに飛翔し、見つかると交尾し、メスが巣の中に産卵する。
夏に孵化した幼虫は、巣の下から出て、小さな巣を作って独立する。
終齢幼虫は体長20mm前後で、ミノは24〜35mmになり、幼虫で越冬する。
幼虫の頭部や胸部には淡黄色の地に暗褐色の班が複雑に入り、腹部は淡褐色である。
ミノは細長い円錐形で、細かくちぎった葉や茎で覆われ、表面は比較的滑らかである。
成虫の出現時期は5月〜6月で、オスの開張18〜24mm、メスは無翅で体長は17mm前後。
オスは全身黒褐色で模様はなく、触角は羽毛状でメスの出すフェロモンを感じやすくなっている。

2023/7/18
第3湿原の遊歩道を歩いていて、ロープにぶら下がっているクロツヤミノガを見つけました。
子供の頃には良く見かけたものですが、最近は見たことがなく、ずいぶん久しぶりになります。
オオミノガの蓑と比べると、細かい葉を使っているのですっきりと細身なのが特徴です。

ヤホシホソマダラ(Balataea octomaculata)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・マダラガ上科・
マダラガ科・クロマダラ亜科・Balataea属>

マダラガ科クロマダラ亜科に分類される蛾の一種で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に、海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
出現時期は6月〜7月で、開張は23mm前後である。
幼虫の食草はイネ科のササやタケ類、ヌマガヤで、成虫はヒメジョオンなどで吸蜜する。

2022/6/18
第2湿原の草むらと第1湿原のノハナショウブの花で見たヤホシホソマダラです。
最初に見た時、以前に見たことがあるキスジホソマダラだと思っていました。
後で確認すると黄色い斑紋が異なることが分かり、調べ直して本種と分かりました。
斑紋の形まで覚えていれば間違えないでしょうが、色だけだと勘違いしても不思議はないかも。


ヤホシホソマダラとキスジホソマダラ

     .
<ヤホシホソマダラ>       <キスジホソマダラ>
キスジホソマダラは、入笠山で見かけたもので、暗褐色に黄色い斑紋のイメージでした。
そのため、網引湿原でヤホシホソマダラを見たとき、そのイメージが浮かんだものです。
黄色い斑紋の形などがまったく異なるので、両者を知っていれば間違えることはないでしょう。


ヒメクロバ(Fuscartona funeralis)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・マダラガ上科・
マダラガ科・クロマダラ亜科・Fuscartona属>

マダラガ科クロマダラ亜科に属する蛾で、在来種。
日本では、国後島、北海道、本州、九州?(分布域に含まない記載あり)に分布している。
出現時期は、4月〜8月で、開張は15〜18mm、前翅長は7〜9.5mmである。
体色は茶褐色で翅脈は不明瞭(よく似たタケノホソクロバは明瞭)である。
触角は雌雄で異なり、オスでは櫛歯状で、メスではひげ状である。
幼虫は背面が乳白色〜オレンジ〜黒褐色と変異があり、全身にある白毛に触れるとかぶれる。
食草はササの葉で、直線的に食べるため、食痕が独特な幾何学的な形になる。
参考文献によれば、タケノホソクロバの学名が「Artona funeralis」とされていたが、
後にタイプ標本がヒメクロバであったことが判明し、ヒメクロバの学名となった。
その際、タケノホソクロバに新たな学名「Artona martini」が付けられようである。
更に、その後「Artona属」から「Fuscartona属」として分離独立され、現在に至っている。
現在、国内に生息するFuscartona属は、タケノホソクロバとヒメクロバの2種である。

2022/6/18
バイオトイレの側で群生していたエゾノギシギシ、そこにヒメクロバが止まっていました。
初めて見る蛾ですが、外形からマダラガ科の蛾だと見当がつきました。
調べると、ヒメクロバかタケノホソクロバのどちらかのようです。
この2種、因縁があるようでよく似ていて、違いは微妙です。
この2種をWebで調べ、写真と比較した結果、翅の色や翅脈の明瞭さから本種と判断しました。

ドクガ(Artaxa subflava)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・ヤガ上科・
トモエガ科・ドクガ亜科・Artaxa属>


ドクガ亜科Artaxa属に属する蛾で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、シベリア南東部に分布する。
成虫出現は6月〜8月で、開張はオスで25〜33mm、メスで37〜42mmである。
前翅は黄褐色に褐色の帯状斑があり、先端部に黒斑が2対ある。
幼虫の体色は黒色で、背面にオレンジ色の筋模様が入る。
幼虫は夏に孵化して集団で摂食し、10齢前後で落ち葉の下などで越冬する。
翌春、4月頃から摂食を始め、13〜17齢で老熟して単独生活に移行する。
終齢幼虫は、体長が40mm前後にまでなる。
2齢以降の幼虫は強力な毒針毛を持ち、それが繭や成虫、卵塊に付着している。
繭を作る時、毒針毛を繭の周りに付けまくり、羽化時にその毒針毛を尾毛で擦り取る。
そして卵塊にその毒針毛を擦り付け、孵化した1齢幼虫にその毒針毛が付着する。
つまり、生涯の全ての段階で、幼虫時の毒針毛を活用して身を守っている。
この毒針毛の毒性分はタンパク質で、皮膚に触れると赤く腫れてかぶれ、数週間痒みが続く。
幼虫の食草は、バラ科、ブナ科、カキノキ科、タデ科、イラクサ科など多種に及ぶ。
なお、成虫は摂食することはない。

2022/6/18
第3湿原の通路脇で、テリハノイバラに付いたイヤーな感じの毛虫を見つけました。
カメラ屋の性でしょうか、こういうのを見ると写真を撮りたくなってしまいます。
ただ、虫屋でもあるので、こういうのには近づかない方が良いことは直感的に分かります。
最初、逆光気味になるのでフラッシュを使ったのですが、反射で身体が白く飛んでしまいました。
雨で体が濡れているようで、水の膜が出来て、それが光を乱反射させているようです。
調整して反射を抑えて撮ったのが左の写真で、右はフラッシュを使わずに撮ったものです。
下段の拡大写真を見れば、黒い部分に白っぽい膜のようなものが見えていると思います。
右の写真は逆光気味なので、黒い部分が黒つぶれして、毛の部分が白く飛んでしまっています。
話が脱線してしまいましたが、後で調べてドクガの幼虫と判明しました。
下段の写真では多くの毒針毛が見えていますが、この毛が風に乗って飛んでくるそうです。
この毒針毛の毒は強烈で、触れただけで赤くかぶれて痒みが続く言われています。
以前、実家の庭で発生して、駆除に往生したと聞きました。
君子危うきに近寄らずですね。虫屋の感は正しかったようです。

ゴマフリドクガ(Somena pulverea pulverea)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・ヤガ上科・
トモエガ科・ドクガ亜科・Somena属>

ドクガ亜科Somena属に属する蛾で、在来種。
日本では、本州から四国、九州、南西諸島などに分布する。
成虫出現は5月、7月〜8月で、開張はオスで20〜29mm、メスで24〜33mmである。
前翅は黄色く、褐色〜黒褐色の点が不規則に散在するのが和名の由来である。
なお、広い範囲が黒褐色となる変異があり、稀にゴマ振り模様が無い個体もいる。
成虫がエサを摂取することはなく、幼虫は広食性でサカキ科、バラ科、マメ科など多岐にわたる。
終齢幼虫の体長は23mm前後で、黒い体色に腹部背面に黄色の縦帯、側面には白と赤の紋が連なる。
幼虫は毒針毛を持ち、刺さると痛みと痒みがあり、皮膚炎を起こすこともある。
羽化時に幼虫時の毒針毛を腹に付けるため、成虫にも毒針毛がある。繭や卵塊も毒針毛が付着している。
かけばかくほど毒針毛が食い込むため、流水で流すとか、粘着テープで引き剥がすのが良いらしい。
本種の幼虫は、キドクガやモンシロドクガの幼虫とよく似ていて、下記の点で区別できる。
ゴマフリドクガ:胸部背面の黄色斑は短く、腹部背面の黄色の縦帯の中央にある暗色部は不明瞭
        頭部の赤色斑の毛は、長毛にはならない
キドクガ   :胸部背面の黄色斑は短く、腹部背面の黄色の縦帯の中央にある暗色部は濃くて明瞭
        頭部の赤色斑から黒い長毛が束になって伸びる
モンシロドクガ:胸部背面の黄色斑は長くてY字に見え、腹部背面の黄色の縦帯の暗色部は不明瞭
        頭部の赤色斑の毛は、長毛にはならない
        なお、本種には黒色型(バラ科食)と黄色型(クワ類食)の2型が見られる

2024/3/16
第1獣害防止ゲート近くの林内で、以前見かけたドクガと同じ色合いの毛虫を見かけました。
気になって、何となく撮ってしまったのですが、手は出しませんでした。
後で調べてみると、やはりドクガの1種と分かりましたが、他にも似たものがいます。
胸部背面の黄色斑が短く、頭部の赤色斑に黒くて長い毛束が見られないので、本種と判断しました。
やはり、この色合いの毛虫には要注意ですね。桑原桑原。

カノコガ(Amata fortunei)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・ヤガ上科・
ヒトリガ科・カノコガ亜科・カノコガ属>

ヒトリガ科カノコガ属のガで、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで、ほぼ全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国に分布している。
出現時期は6月〜8月で、年2回発生する。昼行性で、給蜜のために花を訪れる。
開張は30〜38mmで、翅は黒色の地に半透明な白斑がある。この鹿の子模様が和名の由来。
なお、この翅の黒い部分は、光の加減で青い金属光沢が見られる。
頭部は光沢のある黒色で糸状の触覚があり、胸部は黒色。腹部は黒に黄色の帯模様がある。
なお、黄色い帯模様は背面まであるものが2個、背面に達しないものが4個ある。

2022/6/18
第3湿原の通路脇で、葉に止まっているカノコガを見かけました。
湿原の周囲は広葉樹林なので、いろいろな昆虫が生息しているようです。









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