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網引(あびき)湿原
…… 4月並みの陽気に誘われて ……
[2024/3/16]




実家でWebを見ていた時、比較的近くに県内有数の湿原があることに気が付きました。
加西市網引町にある滲水湿原で、奥池を挟んで2700uの広さがある網引湿原です。
貴重なサギソウやムラサキミミカグサ等の植物やヒメヒカゲやヒメタイコウチが生息しています。
そのため、2020年(令和2年)3月13日に天然記念物として県指定文化財に指定されています。
奥池などの周辺環境も含めた361,828uが指定範囲となっています。


<網引湿原への入口にある看板群で、この右手が駐車スペース>

今回、4月並みの陽気に誘われ、ちょっと早いですが網引湿原に行ってきました。
陽気に誘われたのは私だけではなかったようで、加西ナチュラリストクラブの方とお会いしました。
予想通りというか、まだ、湿原は枯野原状態でしたが、湿原の手入れや木道の補修が行われていました。
湿原内で緑色だったのは、キセルアザミのロゼット状の根生葉のみだった気がします。
しかし、4月並みの陽気に誘われたのか、越冬組のチョウやトンボに会うことができました。
また、通路脇の側溝や湿原で流れのある所に、大きなカエルの卵塊がいくつもありました。
側溝の桝の中には、大小さまざまなオタマジャクシが集まっていました。
この時期に見られる塊状の卵塊は、アカガエルの卵塊と思われます。



駐車場に到着したのは11:15頃で、さっそく長靴に履き替えて出発。


<キタテハ>
歩きはじめて直ぐの通路に、キタテハのペアが止まっていました。
土くれの陰に入っていて良く見えませんので、アングルを変えようとした途端に飛び立ちました。
飛んだキタテハを追って、もう1匹も後に続き、近くに止まってくれたのが、左の写真です。
おそらく、先に飛び立ったのがメスで、オスが後を追ったのでしょう。翅を閉じているのがメスと思われます。
右の写真のキタテハは上記とは別の個体で、何匹かのキタテハが飛び交っていました。


 <ナズナ>                 <ホトケノザ>
バイオトイレ手前の畑の脇には、ナズナやホトケノザが除草されずに残っていて、たくさん咲いていました。
ナズナの花は白いのであまりまで知ませんが、ホトケノザは赤紫色の花なので、集まると目立ちます。



<アカガエルの卵塊とオタマジャクシ>
駐車場からバイオトイレに向かう途中、側溝内にボヨボヨしたカエルの卵塊が見えました。
下りて行って、確認すると卵塊の上や中に小さなオタマジャクシ(下段)が見えていました。
側溝の先にあった桝を覗くと、少し大きくなったオタマジャクシがウヨウヨ(上段右)。
なお、確認できた卵塊にチューブ状のものはなかったので、ニホンヒキガエルではないと思います。
可能性があるのは、ニホンアカガエルとヤマアカガエルで、その両者かどちらかでしょう。


<桝の中のオタマジャクシ>
黒っぽいものと茶色っぽいものが多い中、一回り大きく白いゴマ振り模様の個体が見えます。
これはアカガエルのオタマジャクシの特徴ですが、背中にある一対の黒斑は見られません。
ヤマアカガエルの背中には1対の黒斑がないのですが、ニホンアカガエルでも不明瞭なことがあるそう。
しかし、昨年、ここで確認できたのはニホンアカガエルでしたので、その可能性が高いと思います。


<キタキチョウ>              <テングチョウ>
バイオトイレの近くでは、キタキチョウが何匹か飛び回っていました。
さらに第1獣害防止ゲートの方へ進んでいくと、赤っぽいタテハチョウが目の前を飛んでいきました。
斑紋が赤く見えたのでヒメアカタテハと思えたのですが、止まったのを見てテングチョウと分かりました。
第1獣害防止ゲートから中に入った林内でも、キタキチョウやテングチョウが見られました。


<第1湿原>
第1湿原に入りましたが、一面が枯野原でした。
湿原植物はきれいに刈り取られ、木道も補修されて、春が来るのを待っているといったところです。
左は靴底洗い場近くのゲートから入って直ぐの所から撮ったもので、補修された木道が真新しいです。
右は反対のゲート近くから撮ったもので、手入れされた湿原が広がっています。


<奥池>
この時期の奥池は、比較的透明度が良くて、岸辺近くでは池の底まで良く見えていました。
まだ、春の芽吹きが始まっていないので、冬の寒々とした景色となっています。


<第2湿原>
第2湿原に入りましたが、こちらも一面の枯野原状態でした。
左の写真は、木道から右手の方を撮ったもので、湿原の先の斜面もきれいに手入れされていました。
右の写真は、木道から入口方向を撮ったもので、奥池のさらに奥の方にある小さな池が写っています。




<湿原で見られたアカガエルの卵塊>
木道の脇で、水の流れのある所には、ここでも多くの卵塊が見られました。
側溝で見かけたものと同じだと思いますが、比較的新しい卵塊もあるようでした。
下段左がそれで、汚れが付いておらず、黒い卵がきれいに見えています。
右は時間が経過した卵塊で、汚れが付いているのに加え、卵から孵った幼生が見えています。


<モチツツジ>

<ヤマツツジ>
第3湿原の外れで見かけたモチツツジとヤマツツジの花芽で、昨年の夏葉が残っています。
これから暖かくなってくると、花芽が伸び出してくるものと思います。


<ツクバネウツギ>

<コツクバネウツギ>
第3湿原の外れで見かけたツクバネウツギとコツクバネウツギの冬芽です。
コツクバネウツギの冬芽は少し開きかけていて、ツクバネウツギよりも新芽の展開は早そうです。



<サルトリイバラの果実>
上段は第3湿原の外れで見かけたサルトリイバラの果実で、ほとんどの果実が干からびていました。
中には、果皮が破けて中の黒い種子が見えているものもありました。
下段は第2湿原の入口近くで見かけたもので、まだ、果皮が真っ赤で瑞々しさが残っているものがありました。


<ウラジロの休止芽>
第3湿原の近くで見かけたウラジロの休止芽で、ゼンマイのように丸く巻いていました。
なお、右の写真のように、休止芽が少し伸び出しているものも見られました。


<第2湿原から第3湿原を望む>        <第3湿原から第2湿原を望む>
第2湿原から第3湿原方向を撮ったのが左の写真で、その逆が右の写真です。
一面の枯野原ですが、きれいに手入れされていて、春の訪れが待ち遠しいですね。


<キセルアザミのロゼット>
そのような枯野原の湿原ですが、唯一、目を引いたのがキセルアザミのロゼットでした。
第2湿原の入口に近い木道脇などで、緑色の葉をロゼット状に展開していました。


<ビロウドツリアブ>
第2湿原の入口近くで、ツリアブが飛び回っているのを見かけました。
様子を見ていると止まってくれたので、何とか撮影できました。翅の斑紋に特徴があります。


<ルリタテハ>
第2湿原で見かけたルリタテハですが、第1湿原で再会できました。
そっと近づいて撮ったのですが、翅を畳んでしまってなかなか開いてくれません。
しばらく待っていたのですが、突然、飛び立ってしまい、開いたところは撮れずじまいです。


<キタキチョウ>

<テングチョウ♂>             <テングチョウ♀>

<アシブトハナアブ>

<ホソヒラタアブ>

<ホソミオツネントンボ>
湿原を後にして、第1獣害防止ゲート近くの林まで戻ったとき、キタキチョウが飛び交っていました。
少し奥の日が当たる所に止まったので、写真を撮りに行きました。
その写真を撮っているとき、テングチョウが飛んできてキタキチョウを追い出し、そこに止まりました。
そこにもう1匹のテングチョウが来て、2匹が絡み合うように飛び立ちました。
そこにもう1匹が飛び込んできて、3匹がもつれ合うように飛び去っていきました。
後で、写真を見て気付いたのですが、最初に居たのがメスで、そこにオスが飛来したようです。
おそらく、さらにもう1匹のオスが参戦して、オスがメスを奪い合っていたものと思われます。
この場所は、成虫越冬したものにとっては、居心地のいい場所のようです。
キタキチョウやテングチョウに加え、アシブトハナアブやホソヒラタアブもやってきました。
そこにイトトンボもやってきたのですが、この時期にいるとは思っていませんでしたので、驚きました。
調べると、日本には成虫越冬するイトトンボは3種おり、その1つであるホソミオツネントンボでした。
なお、上記の昆虫たちは成虫で越冬します。春の日差しに誘われて日光浴をしているのかも。


<ゴマフリドクガの終齢幼虫>
林内で写真を撮って、通路に下りているとき、葉の上にいる毛虫に気が付きました。
以前見かけたドクガの幼虫と同じ色合いで、少し小さめです。
調べてみると、やはりドクガの1種であるゴマフリドクガの終齢幼虫と分かりました。


<タネツケバナ>

<ナズナ>

<カンサイタンポポ>

<オオイヌノフグリ>

<ホトケノザ>
第1獣害防止ゲートを出て駐車場に戻る際、通路脇で春を告げている花々を撮りました。
いずれも雑草扱いされる草花ですが、春のこの時期になると、やっと春が来たと感じる花々です。


<ハネナガヒシバッタ>
通路脇の側溝で、カエルの卵塊を見ていたとき、水面でモゾモゾと動くものに気が付きました。
翅が長く伸びたハネナガヒシバッタで、水面に落ちてもがいていたようです。
助けようかと思いましたが、直ぐ近くにつかまる場所があったので、そのままとしました。
ちなみに、このハネナガヒシバッタも成虫越冬組です。

駐車場に着いたのは13:45で、お腹が空いたので急いで帰路につきました。

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