ホーム旅の見聞録網引湿原>ヌルデの耳附子を見つけました


網引(あびき)湿原
…… ヌルデの耳附子を見つけました ……
[2023/8/5]




実家でWebを見ていた時、比較的近くに県内有数の湿原があることに気が付きました。
加西市網引町にある滲水湿原で、奥池を挟んで2700uの広さがある網引湿原です。
貴重なサギソウやムラサキミミカグサ等の植物やヒメヒカゲやヒメタイコウチが生息しています。
そのため、2020年(令和2年)3月13日に天然記念物として県指定文化財に指定されています。
奥池などの周辺環境も含めた361,828uが指定範囲となっています。


<網引湿原への入口にある看板群で、この右手が駐車スペース>

前回見かけたヌマエビが気になって再訪したかったのですが、いろいろあって延びてしまいました。
時間が取れたので再訪したのですが、今回も時期外れということもあり、駐車場は空いていました。
ただ、田んぼに水を引き入れている影響でしょうか、ため池の水位が下がっているのが気になりました。
駐車場近くの通路沿いで、ヌルデに虫えいが出来ているのに気が付きました。
奥胎内では見られなかった、複葉の葉柄の翼葉につく耳附子です。
バイオトイレで用を済ませて、先に進むと目の前をコミスジがヒラヒラと飛び、葉に止まりました。
なかなか近づけさせてくれないのですが、この個体は近づいても逃げませんでした。
そこにスズメバチ(たぶんオオスズメバチ)がやって来たのですが、動きが早くて撮れません。
と、今度はキイロスズメバチらしいのが現れ、これも追いきれず、撮れませんでした。
なんだかんだで遅くなってしまいましたが、前回ヌマエビを見かけた場所に行ってみました。
やはり、小川(?)の水がほとんどなくなっていて、所々に水たまりがあるような状態です。
ということで、エビらしきものは見当たらず、確認するには来年まで待つ必要がありそうです。
第1獣害防止ゲートを入り、その先の林内に入った所でウチワタケが光を浴びて輝いていました。
第1湿原はパスして、その脇の遊歩道を奥池に急ぎます。
奥池の畔で、腹部第8節の張り出しがない、未成熟なオオシオカラトンボのメスに遭遇。
第2湿原に入って直ぐの所で、鮮やかな黄色い傘のキノコが出迎えてくれました。
湿原の水面では、アメンボの幼虫があちらこちらで動き回っていました。
奥池に戻り、その先に進んでいるとき、足元に転がるノコギリカミキリを見つけました。
既に体はアリの餌になって空っぽで、硬い上翅の一部もかじられて穴が空いています。
※ 後で調べていて、ニセノコギリカミキリと分かりました。
バイオトイレ近くまで戻ったとき、足元をウロウロと飛び回るムモントックリバチが居ました。
今回は、目的のヌマエビには会えませんでしたが、耳附子が見られたので良しとします。



駐車場に到着したのは10:20頃で、さっそく長靴に履き替えて出発。
駐車場横のため池ですが、前見たときより少し水位が下がっているようです。
田植え後、田んぼへ水を引き入れている影響でしょうか、ちょっと気になりました。


<ワキグロサツマノミダマシ♂>
歩き始めて直ぐに、通路横のテリハノイバラの葉にいるワキグロサツマノミダマシのオスが目に留まりました。
今まで見たのはメスばかりで、オスを見るのは初めてだと思い、いろいろな角度から撮りました。
と言うのも、このときは前回撮った写真の中にオスが混ざっていた事に気づいていなかったためです。
オスは、頭胸部に比べて腹部が小さく、白い縁取りに沿って白い長毛が目立ちます。



<ヌルデ 耳附子>
その少し先で、ヌルデの葉に虫えいが出来ているのに気が付きました。
虫えいは奥胎内で初めて見たのですが、そこで見られなかった耳附子です。
これで、木附子、花附子、耳附子と3種類の五倍子を確認できたことになります。
これらはヌルデシロアブラムシが作る虫えいで、タンニンを豊富に含んでいます。
そのためでしょうか、下段の虫えいの一部が破れたところは真っ黒になっていました。


<ハラビロカマキリの幼虫>
ヌルデの近くで花をたくさん付けていたイヌザンショウ、その上にハラビロカマキリの幼虫がいました。
腹部を大きく反り返らせた独特のポーズをとるので、一目瞭然ですね。


<スジボソコシブトハナバチ>
その横では、前回ツボミだったクサギが花を咲かせていて、ハナバチが盛んに訪花していました。
写真を撮ろうとしたのですが、動きが早すぎて追いきれず、なかなか良い写真は撮れませんでした。
なんとか見えるものを手掛かりに調べた結果、スジボソコシブトハナバチと分かりました。
変わった習性を持っていて、上顎で葉や茎を噛み、ぶら下がるようにして休むそうです。


<ツマグロヒョウモン♀>               <コミスジ>        .
今日は、ツマグロヒョウモンのメスをよく見かけます。その1匹が目の前の地面に止まりました。
吸水している訳でもなく、何をしているのか不明です。単に休んでいるだけなのでしょうか。
さらに進んだ第1獣害防止ゲートの手前で、コミスジがフワフワと飛んできて、葉に止まりました。
実家近くで見かけるのはホシミスジばかりでしたので、こちらでコミスジを見たのは初めてになります。


<オオシオカラトンボ 成熟したメス>
ゲートの方に歩き始めたとき、ガサガサと音を立てながらトンボが飛んできて止まりました。
全体がかなり傷んだ感じのオオシオカラトンボのメスで、かなり接近しても逃げません。
ちょうど良い高さだったので、いろいろな方向から撮ることができました。
成熟したメスに見られる腹部第8節の横への張り出しが、良く分かると思います。
この左右への張り出しは、打水産卵時に卵とともに水をはね上げるのに使用されるそうです。

 
<ヌマトラノオ>
第1獣害防止ゲートに近い所で、ヌマトラノオがかなり咲き進んでいました。
前回来た時より数も増えて、あちらこちらで白い花を見せてくれています。

なんだかんだで、第1獣害防止ゲートに着いたのは、10:45頃でした。
さて、今日の目的のヌマエビらしきエビの確認ですが、横を流れていた小川(?)は渇水状態。
所々に水たまりのようになっているだけで、水は流れておらず、エビらしきものも見当たりません。
気になった事が当ってしまいました。確認するには来年まで待たなければならないようです。


<ウチワタケ>
ゲートを入って直ぐの林内で、枯木にウチワタケが数十程度ですが、付いていました。
傘の裏も撮ったのですが、菅孔が細かいようで撮った写真では識別できませんでした。


<オオシオカラトンボ 未成熟なメス>
靴底の洗い場に着いたのは10:50頃で、第1湿原には入らず、脇の遊歩道を進みました。
奥池に着いたのは10:55頃で、ニワハンミョウがピョンピョンと道案内をしてくれます。
ふと前を見たとき、張られているロープに初々しい色のオオシオカラトンボが止まっていました。
羽化間もない雌雄は同色で、拡大した時、腹部第8節の左右への張り出しがありません。
そのため、オスなのかと思ったのですが、尾端がオスの上付属器ではなく、尾毛なのでメスと判明。
成熟したメスと比較すると、未成熟なメスでは腹部第8節の横への張り出しが見られないとの事。


<アブラゼミ>
第2湿原に着いたのは10:58。獣害防止ゲートを入った所で、アブラゼミが飛び立ちました。
飛び立つときに鳴かなかったので、おそらくメスと思われます。左の前翅を損傷しているようです。
この網引湿原で、抜け殻は3種類確認していましたが、羽化したセミでは、本種が初めてになります。


<ベニヒダタケ>
第2湿原に入って直ぐの広場近くで、切り株から黄色いキノコが出ているのが目に留まりました。
少し離れて2個出ていたのですが、どちらも傘が開いていない幼菌で、裏面の確認ができません。
傘が黄色いキノコを調べてみると、キヌメリガサやタモギタケが見つかりました。
しかし、キヌメリガサはカラマツ林に生えるので異なります。タモギタケの幼菌は形が異なります。
さらに調べているとベニヒダタケが見つかりました。幼菌の色や形はよく似ています。
傘が開いていないので断定はできませんが、キノコの同定は難しいですね。



<アメンボの幼虫>

<ハッチョウトンボ>
第1獣害防止ゲートの手前の小川でも見ましたが、第2湿原でもアメンボが動き回っていました。
ここは近距離で撮影できるのですが、よく見ると翅がない幼虫でした。見たのは初めてかもしれません。
後で写真を見ると水面に落ちてもがく毛虫に反応し、向かっているところだったみたいです。
下段がその写真で、赤矢印の先が水面に落ちてもがいている毛虫です。
その直ぐ近くにハッチョウトンボが止まっていて、水面の反射をバックに芸術的?な写真になりました。



<アオツヅラフジ>
第3湿原の外れで以前見かけたアオツヅラフジの雌株を探し、雌花を確認できました。
イソノキに絡みついていたので、イソノキの果実との2ショットも撮ることができました。
どちらも黒く熟しますが、アオツヅラフジは表面に白い粉を吹くので見た目はかなり異なります。


<ナガコガネグモ♂>

<アシナガグモ♂>

<ジョロウグモ♀亜成体>

<コシロカネグモ>
今回も遊歩道の中や脇には、多くのクモが巣を張っていて、いろいろなクモに出会いました。
ナガコガネグのオス、アシナガグモのオス、ジョロウグモの亜成体などに会えました。
コシロカネグモもあちらこちらにいて、左の写真では何かを食べているところでした。
後で写真を拡大した時、獲物はおそらくコシロカネグモのオスと思われることが分かりました。
だとすると、オスが交尾のためメスに近づいたとき、失敗して餌になってしまったものと思われます。

 
<チョウセンカマキリ 終齢幼虫>
第2湿原の入口に戻っているとき、ウラジロの葉の上にいるカマキリを見かけました。
終齢幼虫と思われたので、捕獲して前脚基節基部の色を確認してみました。
引っ掻かれていたい思いはしましたが、淡い黄色一色だと分かりました。
上縁にエンジ色の縁取りがなく、一様に淡い黄色なのでチョウセンカマキリとしました。

 
<ニワハンミョウ>           <カナブン>  .
11:20に第2湿原を後にしました。奥池へ向かう途中でも、ニワハンミョウが道案内(^^)
シラカシか何かの木の根元で、カナブンが頭を突っ込んでいるのを見つけました。
カナブンは珍しくはないのですが、ここしばらくは見たことがないので、久しぶりの再会です。


<トウカイコモウセンゴケ>

<ホザキノミミカキグサ>
11:25に奥池に到着。トウカイコモウセンゴケが最後の花を付けていました。
その直ぐ近くでは、ホザキノミミカキグサが多くの花を付け、ピンクと淡紫色のかわいい花の競演です。


<ニセノコギリカミキリ♂>
11:27に第1湿原に到着。入らずに脇の遊歩道を歩いていると、ニセノコギリカミキリが死んでいました。
アリにほとんどを持ち去られて、硬い部分だけが残っているのですが、上翅は一部かじられていました。
この個体は、触角の長さや太さ、触角各節端の左右への張り出しからみてオスと思われます。
最初、ノコギリカミキリだと思っていたのですが、後で調べていてニセノコギリカミキリと分かりました。
このとき、初めてニセノコギリカミキリの存在を知って、数十年前に採取したノコギリカミキリを再確認。
こちらはノコギリカミキリで間違いないことを確認でき、間違ってなかったと妙に安心しました。


<ムモントックリバチ>
11:45に第1獣害防止ゲートに到着。網引湿原を後にしました。
駐車場に向かう途中、通路上を飛び回るハチを見つけ、撮影しようとしたのですが止まってくれません。
仕方ないので、飛翔中の所を追いかけながら撮影しましたが、何カットか見られる写真が撮れました。
外形からトックリバチの仲間と思われ、後で調べるとムモントックリバチと分かりました。

クサギの所で、行きに見かけたスジボソコシブトハナバチを撮ろうとしたのですが、音はすれども姿は見えず。
どうやら上の方で咲いているクサギの花の所を飛び回っているようです。
しばらく様子を見ていたのですが、下の方の花には来なかったので、撮るのは諦めました。


<ヤマノイモ雄株>
駐車場近くで、柵に巻き付いているヤマノイモが、白い花をたくさん付けているのに気が付きました。
花と言っても、ツボミと大差ないほど開かないので、よく見ないと咲いているのかどうか分かりません。
雄花序は、葉腋から数個が集まって上向きに立ち上がって付きます。

駐車場に着いたのは11:55で、しばしクールダウンしてから帰路につきました。


ページトップへ戻る
網引湿原へ戻る
旅の見聞録へ戻る
ホームへ戻る








inserted by FC2 system