高御座山(たかみくらやま)[2022/6/7]
…… 6月初旬はササユリの開花時期 ……
実家でWebを見ていた時、高御座山で珍しい八重のササユリが見られるいう記事に目が留まりました。
読んでみると、既に花が傷みかけている状態であるが、1輪咲いているのが見られるとの事。
場所は、山頂近くの分岐から小高御座山に向かう尾根で、小高御位山の50mほど手前の道沿い。
ただ、直ぐには行けそうもないので、今年は見られなさそう。
とはいえ、以前からササユリは見てみたいと思っていたので、折を見て出かけることにしました。
高御位山は、兵庫県加古川市と高砂市の市境に位置する標高304mの山です。
別名は播磨富士。東播磨丘陵地高御位山系の連峰は播磨アルプスと呼ばれる岩稜です。
この辺りには高い山が少ないため、高御位山が加古川市・高砂市の最高峰となっています。
頂上では断崖の岩場から播磨平野や瀬戸内海を一望でき、明石海峡大橋、淡路島、小豆島などが望めます。
<分岐点からの眺望 左から六甲山、明石海峡大橋、淡路島、中央遠くに四国の山並み、右手に家島諸島、小豆島>
また、岩場を磐座とした高御位神社があり、高御位の名前も神座、磐座から転じたと考えられています。
欽明天皇10年に創立し、昭和58年4月に火災焼失後、同年12月に再建されました。
祭神は、大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)です。
天津神の命を受け、国造りのために大己貴命と少彦名命が降臨した所とされています。
高御座山 登山記
さて、天気も良く時間も取れたので、ササユリの開花が見られることを願って出かけました。
出発時間が遅くなってしまったので、車が止められるか心配しながらの出発です。
成井登山口に付いたのが9時半頃。やはり、駐車場は一杯のようで、車がウロウロしてます。
道路脇に違法駐車死している車もあり、どうしようかと駐車場の端まで行ってみました。
すると、入れにくそうなのですが、何とか止められそうなスペースがあったので、そこに駐車。
10時頃には、何とか登山が開始できました。最初は整備された参道が続きます。
途中で、笹ユリの道と呼ばれる獣道と一般参道の分岐点があり、獣道を選択。
しばらく登って行くと最初のササユリ(といっても小さくて花はなし)に出会えました。
少し先に開けた場所があったので、小休止。
振り返れば、出発した成井登山口から近隣の町々が一望できました。
しかし、高度が低いので瀬戸内海は周囲の山々の陰で見ることはできませんでした。
さらに登ると、純白のササユリが一輪咲いていました。その先にはピンクの二輪が見られました。
ピンクの二輪は、少しくたびれ気味で、そろそろ咲き終わる頃合いのようです。
もう一踏ん張りと登ると一般参道との合流点に着き、さらに登ると分岐点に着きました。
透明度が比較的良く、明石海峡大橋から淡路島、家島諸島、小豆島など瀬戸内の島々がよく見えます。
分岐点からの眺望です。左手の方に六甲山系が、中央に明石海峡大橋が見え、その右手に淡路島が見えます。
と言われても、淡路島は分かっても、明石海峡大橋は小さくて分からないですね。
ということで、明石海峡大橋の部分をアップで撮ったのが上記の写真です。
淡路島の右手の眺望です。左側に淡路島とその手前は神戸製鋼の工場群で、その隣が加古川の河口です。
中央辺りの高い塔は電源開発の火力発電所の煙突で、その右手の小さな島は上島です。
子供の頃、よく船で連れて行ってもらいました。島内に真水の出る井戸があったと思います。
その頃は、この辺りの透明度は非常に良くて、海底で揺れる藻が良く見えていました。
凪いでいるようなときは、船から見ると海面が見えなくて、空中に浮いているような感じでした。
残念ながら、今は1m下が見えるかどうかといった状況です。
話が反れましたが、その右手手前が家島諸島で、その奥には小豆島が見えています。
手前に見えているのは、姫路市にある大阪ガスの工場で、白い塔は関西電力の火力発電所の煙突です。
こちらも、小さくて良く分からないと思いますので、下記にアップで撮ったものを載せました。
<上島> <家島諸島>
上島の写真の左端に見えているのは、原電開発の火力発電所の煙突で、高さは100m以上あるようです。
家島諸島の写真で後ろに見えているのは小豆島で、山肌がむき出しなのは男鹿(たんが)島です。
男鹿島の後に家島、坊勢(ぼうぜ)島、西島と並びますが、家島が他の2島を隠してしまっています。
分岐点からは、5分ほど上ると山頂手前の階段に着きます。
この階段を上ると、十八丁の高御座神社に到着です。
その少し先に大きなササユリが見られました。まだ、1つはツボミで、他の2株は開花していました。
ここのササユリの花は、少しピンクを帯びた極淡い色調で、ササユリに多い色合いのようです。
神社の前に大きな岩稜があり、その上で多くの方が一休みしていました。
見晴らしは良くて、先ほどの分岐点とさして変わりませんが、遠くまで良く見えていました。
なお、足場の少し先は切り立った崖になってますので、高所恐怖症の方はお気を付けください。
ここから5分ほどで分岐点まで引き返し、小高御座山の方まで足を延ばすかどうか迷いました。
膝が万全ではないので、帰りの階段下りが心配で、今回は真っ直ぐ降りることにしました。
途中、ネジキが花を付け、その周りをいろいろなチョウやハチなどが飛び交っていました。
<ホシミスジ> <ツマグロヒョウモン>
ヒラヒラと飛んでいたのはホシミスジで、活発だったのはツマグロヒョウモンです。
岩の上に止まっていますが、オスなので縄張りを持っているのでしょう。
キアゲハやクマバチなど、近づくものには手あたり次第アタックして、また戻ってきます。
たまにモンキアゲハやキアゲハが飛んできます。おそらく、周回ルートの一部なのでしょう。
残念ながら動きが早すぎて追いきれず、写真はありません。
<クマバチ>
クマバチも、何匹かが岩場の周りをホバリングしながら飛んでいます。
時折、ツマグロヒョウモンのアタックを受けますが、また、直ぐに戻ってきます。
撮影した個体は、額に白い三角おにぎりが付いているので、オスですね。
山頂を後にして降りていくと、一般参道脇にもササユリがあちこちで咲いていました。
淡いピンクを帯びた花が多い中、一際濃いピンクの個体も見られました。
両者を比較すると、受ける印象がずいぶんと異なり、淡いものは清楚で、濃いものは艶やかです。
参道の丁石は、山頂の神社が十八丁で、十丁の丁石を見た時、半分は降りてきたと思いました。
この丁石、一丁毎に置かれていて、一丁は約109mだそうです。36丁で一里(約4km)。
ここは一八丁なので、半里、2kmほどの参道ということになりますが、正確かどうかは不明です。
ちなみに、富士山などには○合目というのがありますが、これは全工程を10等分したものだそうです。
丁石も原型を留めている物や、折れて補修されたもの、交換されたと思われるものなど様々です。
<コシダ>
<ウラジロ>
<イワヒバ>
もう少しで降りきるという所で、出会ったのが上記のシダです。
最初に出会ったのが
コシダで、この辺りの山では普通に見られる種類です。
しかし、その先にシュンシュンと伸びた枝のようなものが見えていて、初めて見るものでした。
後で調べてみると、ウラジロ科には休止芽が翌春に伸びて、何段にも伸びるものがあるそう。
本種もその1つで、昨年の葉の間から新しい葉柄が伸びて、二股に分かれたところでした。
まだ、葉柄が伸びたところで、先に丸まった葉が付いていて、展開すると右写真のような葉になります。
その少し先に、今度は
ウラジロが大きな葉を開いていました。
正月に鏡餅の下に敷く小さいものしか見たことがなかったのですが、ここのは巨大です。
コシダ同様に、葉の間から葉柄を伸ばして、その先に1対の葉が大きく展開しています。
驚いたのはその高さで、私の背丈の倍以上、おそらく3mは優に超えていると思われます。
その葉も巨大で、1つの長さは1m以上あると思われます。
最後に見かけたのが
イワヒバで、自生しているイワヒバは初めて見ました。
この一帯に大きく広がっていて、ちょっとした群落になっていました。
なんとか登り始めた参道の入口まで、お昼過ぎには戻ってこれました。
心配した膝は、多少ガクガクはしましたが、何とかもってくれました。明日が心配ではありますが。
駐車場で一休みし、元来た道を折り返して帰途につきました。
上記の写真は、後日(6/18)に撮影した参道入口の石碑と、その少し奥にあった一丁の丁石です。
高御座山で見かけた野草
ネジキ(Lyonia ovalifolia)
<ツツジ目・ツツジ科・スノキ亜科・ネジキ連・ネジキ属>
日本では、本州の岩手県以南から四国、九州の低山から山地にまで自生する。
海外では台湾に分布する。
樹高は2〜9mで、幹は灰黒色。縦に裂け目が入り、太くなると捻じれるのが和名の由来。
なお、捻じれ方には個体差があり、右回りも左回りもある。通常、根本の方がねじれは強い。
枝先が光沢のある赤褐色で、若芽が紅色を帯びる。
葉は互生し、葉身は長さ3.5〜10cmの卵状楕円形で、先が尖り、基部はやや心形。
葉は黄緑色で薄いがやや堅く、葉表は無毛で、葉裏には毛が散生して脈には毛が密生する。
有毒植物であり、特に葉の毒性(アンドロメドトキシン、リオニアトキシン)は強い。
秋に黄色〜赤色に紅葉する。
花期は5月〜6月で、前年の枝から横枝として総状花序を出し、ほぼ水平に伸びる。
壺形の白い小花が整然と並んで下向きにつく。なお、花冠の先が淡紅色を帯びることもある。
花冠は長さ8〜10mmで、先が5浅裂し、外面には細かい毛が散生する。
萼は白色で5深裂し、萼片の先は尖る。オシベは10個で、花糸が曲がりくねる。
果実は刮ハで、直径3〜4mmのやや扁平な球形。上向きに熟し、5個の筋に沿って裂ける。
2022/6/7
参道の階段を下りているとき、分岐点の少し下で見かけたネジキです。
花の形はドウダンツツジやアセビに似ていますが、花の付き方は異なります。
後で調べて、ネジキと分かりましたが、幹が太くなると捻じれるのが名前の由来とか。
残念ながら、幹の捻じれまでは確認しませんでしたで、どうなっていたかは不明です。
モチツツジ(Rhododendron macrosepalum)
<ツツジ目・ツツジ科・ツツジ亜科・ツツジ属・ツツジ亜属・ヤマツツジ節・モチツツジ列>
ツツジ科ツツジ属の半常緑低木で、在来種。
日本では、本州の静岡県・山梨県〜岡山県、四国に分布する。
樹高は1〜2mで樹皮は灰褐色で平滑。葉は互生して、枝先に集まって付く。
春葉は、長さ4〜8pの楕円形〜卵形で、両面に毛が生え、腺毛がある。
春葉は、秋には橙色〜赤黒紫色に紅葉し、落葉する。
夏葉は、長さ3〜5cmの狭楕円形で、開出毛が密生し、冬を越す。
葉柄は長さ3〜8mmで、長毛がある。
花期は4〜6月であるが、散発的に花期以外でも咲いているのが見られる。
花は葉の展開と同時に枝先に2〜5個付き、直径3.5〜6cmの淡紅紫色(稀に紅紫色)。
花は5中裂し、上側の裂片に赤色の斑点がある。
オシベは通常は5本であるが、稀に6〜10本のものも見られる。花糸には短毛がある。
花柄は長さ1.5〜2cmで、長い腺毛が密生して粘る。子房にも腺毛が密生する。
萼は緑色で5深裂し、萼片は長さ2〜4cmの披針形で、長い腺毛が密生する。
萼や柄、葉などに多くの腺毛があって粘着性があり、ここに多くの昆虫が捕らえられる。
これは花粉媒介者以外の昆虫を捕らえて、花が食害されるのを防ぐために発達したらしい。
この腺毛を除去する実験をすると、花は見る影もないくらいに食害されたとのこと。
なお、この捕らえられた昆虫を餌とするモチツツジカスミカメやサシガメ類がいる。
2022/6/7
参道の階段を下りているとき、参道脇の草むらに隠れるようにして咲いていました。
ツツジであることは分かりましたが、その場で名前までは分かりませんでした。
後で調べて、萼などにビッシリと付いている腺毛や花の特徴からモチツツジとしました。
後で気が付いたのですが、左の写真にはモチツツジカスミカメが写っていました。
モチツツジだけに付くカメムシで、モチツツジの粘毛に付かないように移動できる特技を持っています。
テリハノイバラ(Rosa luciae/Rosa wichuraiana)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>
バラ科バラ属のつる性落葉低木で、日本では本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、フィリピンに分布する。
茎には鉤形の刺があり、立ち上がらず、地を這って伸びる。
葉は互生し、長さ8p前後の奇数羽状複葉。小葉は2〜4対で、頂小葉と側小葉の差はない。
小葉は長さ2p程の楕円形で、両面とも無毛で厚みがあり、鋭い鋸歯がある。葉表に光沢がある。
花期は6月〜7月で、枝先に直径3p程の白花を数個付ける。
花弁は5個で、オシベは多数ある。花柱は合着し、毛がある。
偽果は直径8o程の卵球形で、真っ赤に熟す。
2022/6/7
高御座山への獣道を上っているときに見かけたテリハノイバラです。
最初に見た時、ノイバラかと思ったのですが、葉に光沢が見られたので本種としました。
別の場所で見たのはノイバラだったかもしれないのですが、スルーしてしまいました。
ハリエンジュ(Robinia pseudoacacia)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ハリエンジュ連・ハリエンジュ属>
マメ科ハリエンジュ属の落葉高木で、北米原産の移入種。
日本には、1873年に輸入され、街路樹、公園樹として植栽された。
標準和名は「ハリエンジュ」であるが、一般にはニセアカシアの名で呼ばれる事が多い。
輸入当初、本種をアカシアの名で呼んでいたが、本来のアカシアが輸入された際、変更された。
その名前が、「pseudoacacia」の直訳である「ニセアカシア」である。
樹高は20m以上になり、5月〜6月に大量の花を付ける。上質な蜜が取れる蜜源植物である。
葉は、奇数羽状複葉で、小葉は5〜9対付き、基部に一対の托葉由来の棘がある。
総状花序を付け、房状に強い芳香のある白色の蝶形の花を大量に咲かせる。
2022/6/18
駐車場の裏の法面からハリエンジが枝を伸ばして、たくさんの豆果を付けていました。
花の頃には来ていないので、豆果がエンジ色に色付き始めて気が付いたしだいです。
樹には棘があるので、川沿いなどで繁殖しているのは嫌われ者ですが、良質の蜜源です。
ササユリ(Lilium japonicum)
<ユリ目・ユリ科・ユリ属>
ユリ科ユリ属の球根植物で、日本固有種。日本を代表するユリの1つ。
日本では、本州の中部以西から四国、九州に分布する。
草丈は50〜100cmで、地下には直径2〜4cmの白い鱗茎がある。
葉は互生し、長さ8〜23cmの狭披針形で、やや厚みがあり、葉柄は4〜10mm。
この葉がササの葉によく似ているのが、和名の由来である。
花期は6月〜8月で、他のユリより花期が早い。
茎の上部に花被片の長さ10〜15cm、直径10〜15cmほどの漏斗状の花を1〜数個付ける。
花はやや下向きに咲き、内外花被片は淡紅色(白色〜紅色まで変異がある)で、先は反り返る。
外花被片は披針形、内花被片は長楕円形で、花被片の両端は狭くなり、内面中肋に毛がある。
オシベは6個で、葯は鮮やかな赤褐色で強い香りがある。メシベは1個。
刮ハは10〜11月に熟し、長さ35〜45mmの倒卵形で3室ある。種子は風で運ばれて広がる。
種子が地上発芽するのは、通常、翌々年の春で、最初は1〜数個の根生葉のみで茎はない。
ササユリの成長は非常に遅く、発芽から最初の花が咲くまでには7年以上かかるとされる。
また、栽培もかなり難しく、同じ場所で栽培すると病気で枯れてしまうらしい。
種子を散布すると数年で枯れ、新しい場所で発芽して、次々と移動していくもののようである。
2022/6/7
高御座山に登った際に見かけたササユリです。
上段は山頂付近で見た大きな株で、各々3つずつ花を付け、方やツボミ、方や開花して見頃でした。
下段は、登山中に見かけたササユリの変異です。左端は白花で、登る途中で最初に見たものです。
中央は最も多かった少しピンクがかったもので、右端は降りる時に見た最もピンクの濃かった個体です。
イワヒバ(Selaginella tamariscina)
<イワヒバ目・イワヒバ科・イワヒバ属・イワヒバ亜属>
イワヒバ科イワヒバ属に属するシダ植物で、在来種。
和名は、枝葉がヒノキ(桧)に似て、岩の上に自生することに由来する。
日本では、北海道から本州、四国、九州、沖縄と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、ロシア、インド、タイ、フィリピンに分布する。
草丈は10〜20cmで、根や担根体が絡み合った仮根を直立し、仮幹から多数の枝を輪生する。
仮幹から出た葉状の枝は、羽状に数回分枝しながら広がり、基部から根のような担根体を出す。
枝には、鱗片状の葉が密生し、葉には背葉と腹葉の2形態がある。
枝は数回分枝して成長を止め、先端に四角柱状の胞子嚢穂を付ける。
胞子嚢穂の多数の胞子葉には胞子嚢が1個ず付くが、2種類あり、胞子が異なる異形胞子である。
大胞子嚢は4個の大胞子を持ち、小胞子嚢は多数の小胞子を持つ。
大胞子から雌性の前葉体、小胞子から雄性の前葉体が生じ、前葉体は内生型で胞子の中で成熟する。
なお、乾燥すると枝は内側に巻き込むように丸まり、十分に水が補給されると数時間〜数日で広がる。
2022/6/7
高御座山を降り切る少し前に見かけたイワヒバです。
イワヒバが自生しているのは初めて見ました。周辺に多くあり、ちょっとした群落になっていました。
ウラジロ(Gleichenia japonica)
<ウラジロ目・ウラジロ科・ウラジロ属>
ウラジロ科ウラジロ属のシダ植物で、在来種。
日本では、本州中部以南から四国、九州、南西諸島に広く分布する。
海外では、台湾、中国からインドなど、アジアの熱帯域にまで広く分布する。
根茎は匍匐して横に這い、直径3mm前後と太くて長く、よく這い回る。
本土では低山の林内に生え、日当たりの良い疎林では大群落を作ることがある。
よく繁茂した場所では、互いに寄りかかって絡み合い、高さ2mを越える純群落になる。
葉柄は長さ30〜100cm、緑色で平滑。葉柄の先に1対の羽片からなる葉を付ける。
羽片は長さ60〜90cm、幅18〜28cmで、二回羽状複葉に切れ込む。
小羽片は長さ11〜16cm、幅1.2〜2.4cmで、 片側に25〜35個つき、 深裂する。
裂片は長さ7〜12mm、幅2〜3mmの線形で、基部は幅広く小軸に付き、葉質は薄いが硬い。
葉表はつやがあって、裏面は粉を吹いて白っぽく、ウラジロ(裏白)の和名の由来である。
この羽片の間に休止芽があり、翌春には休止芽が伸びて、葉柄の先に新たな1対の葉が出る。
このように年々、葉の段が1つずつ積み上がっていくが、本土では多くて3段(2m)程度で終わる。
しかし、湿潤な沖縄や熱帯などでは、さらに伸びて、熱帯では10mを越すこともある。
なお、羽片の長さも、本土では長くても1mほどであるが、沖縄では1対で3mを越える。
胞子嚢群は縁と中肋の間に付き、胞子嚢は3〜4個で、包膜は無い。
2022/6/7
高御座山を降り切る少し前に見かけたウラジロです。
正月に鏡餅の下に敷く小さいものしか見たことがなかったのですが、ここのは巨大です。
コシダ同様に、葉の間から葉柄を伸ばして、その先に1対の葉が大きく展開しています。
驚いたのはその高さで、私の背丈の倍以上、おそらく3mは優に超えていると思われます。
後で調べると、本土では3段に積み上がって、せいぜい2m程度にしかならないとの事。
しかし、ここのウラジロは私の背丈の倍以上あり、とても2mではききません。
その葉も巨大で、1つの長さは1m以上あると思われます。
コシダ(Dicranopteris linearis)
<ウラジロ目・ウラジロ科・コシダ属>
ウラジロ科コシダ属のシダ植物で、在来種。アレロパシー作用を有している。
日本では、本州の福島県以南から四国、九州、南西諸島に広く分布する。
海外では、朝鮮半島から中国南部、台湾、東南アジアからインドにかけて分布する。
ウラジロにいろいろな点で似ているが、葉が繰り返して2分枝する点が異なる。
根茎は太い針金状で地下を長く横に這い、光沢のある金褐色の毛を密生する。
間隔を開けて葉を付け、葉は全体として2mを越える。
葉柄は0.2〜1mで、そこに対生する羽片を伸ばして、その間から次の葉柄が伸びる。
これを繰り返すので、全体としては羽状複葉となるが、その羽片が2分枝する。
葉柄は褐色で光沢があって硬く、角軸や成長の止まった先端に赤褐色の毛がある。
側羽片はほぼ等分に数回の二分枝を繰り返し、先端と分岐部分には一対の小羽片がつく。
小羽片は15〜40cm、幅3〜8cmの長楕円状披針形で羽状に深裂する。
裂片は15〜50対付き、長さ10〜50mm、幅2〜4mmで、先は凹頭になることが多い。
表面は艶のある黄緑で、裏面は粉を吹いたように白く、まばらに赤褐色の毛がある。
葉質は薄くて硬く、裂片は線形で縁は滑らかである。胞子嚢群は中肋と葉縁の間に一列付く。
2022/6/7
高御座山を降り切る少し前に見かけたコシダで、この辺りの山では普通に見られる種類です。
しかし、その先にシュンシュンと伸びた枝のようなものが見えていて、初めて見るものでした。
後で調べてみると、ウラジロ科には休止芽が翌春に伸びて、何段にも伸びるものがあるそう。
本種もその1つで、昨年の葉の間から新しい葉柄が伸びて、二股に分かれたところでした。
まだ、葉柄が伸びたところで、先に付いた2股に分かれた葉は丸まった状態です。
そのため上記のような、見慣れない変わった形になっていたものです。
展開すると、右写真の下の方に写っているような葉になります。
2022/6/18
この日、近くを通ったので、立ち寄って様子を見てきました。
まだ、十分に葉は展開していませんでしたが、それらしい姿になっていました。
今のところ、葉が展開したからと言って倒れるようなことはないようです。
高御座山で見かけた昆虫
ホシミスジ(Neptis pryeri)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・イチモンジチョウ亜科・ミスジチョウ族・ミスジチョウ属>
タテハチョウ科ミスジチョウ属の1種で、在来種。
日本では本州から四国、九州に、海外では朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
前翅長は23〜34mm、開張はオス56〜59mm、メス60mmである。
翅は横長で黒褐色の地に白帯が前翅に1本、後翅に2本あり、翅を開くとこれが「三」字に見える。
これがミスジチョウ属の名前の由来で、ミスジチョウ、コミスジ、オオミスジなど、模様は似ている。
この帯模様以外に、前翅外縁の先端付近に横長の白斑が並ぶ。
翅裏の模様も翅表とほぼ同様であるが、地色は明るい茶色になる。
なお、ホシミスジは、ミスジチョウ属で後翅の付け根付近に黒斑(ホシ)が複数現れることに由来する。
イチモンジチョウ亜科のチョウは、翅を開いて止まることが多いのが特徴である。
また、飛ぶときは数回羽ばたいた後、翅を水平に開いて滑空するように飛ぶのも特徴。
成虫は初夏〜秋かけて複数回発生する。この初夏に発生した個体が産卵する。
孵化した幼虫が越冬し、翌春に活動開始して蛹になり、初夏に羽化した成虫が出現する。
なお、関東では山地で局所的に見られる程度だが、西日本では平地の住宅地でも普通に見られる。
発生も関東、中部地方では年1回の発生であるが、西日本では数回の発生が見られる。
幼虫の食草は、コデマリ、ユキヤナギ、カエデ、シモツケなどである。
成虫は、水辺や花には集まるが、その他には来ない。
ミスジチョウ属は似ているが、前翅に見られる白い帯模様から、下記のように識別できる。
・ホシミスジは、白い帯模様が5個に分かれている |
・コミスジは、白い帯模様が明瞭に2個に分かれ、先が三角形になる |
・ミスジチョウは、白い帯模様に切れ目はない |
・オオミスジは、白い帯模様に切れ目はないが、3ヶ所の切れ込みがある |
・リュウキュウミスジは、白い帯模様が明瞭に2個に分かれ、先が三角形になる |
ただし、分布域が奄美大島以南に限られ、コミスジとは混生しない |
2022/6/7
実家近くで見かけるのもホシミスジばかりでしたが、ここで見かけたのも同様でした。
ヒラヒラ、フワフワと飛翔するのですが、方向転換するので飛翔姿を捉えるのは難しいです。
ヒカゲチョウ(Lethe sicelis)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ジャノメチョウ亜科・ジャノメチョウ族・ヒカゲチョウ亜族・ヒカゲチョウ属>
タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科に分類されるチョウの一種で、日本固有種。
以前はマネシヒカゲ族に含まれていたが、分子系統学的知見に基づき本族に移されている。
日本では、本州から四国の全域と九州の一部に分布する。
クロヒカゲの分布域と多くが重なるが、クロヒカゲは山地が中心で、低地ではあまり見られない。
それに対して、本種は低地から山地にかけて分布し、ジャノメチョウ亜科ではよく見られる。
出現時期は5月〜9月で、第1化は5月〜6月、第2化は8月からと、年2回発生する。
開張は50〜60mm、前翅長は25〜34mmである。
翅表は暗褐色の地色に小さな蛇の目模様が、翅裏は暗褐色の地色に白線と大小の蛇の目模様がある。
なお、後翅中央に毛が生えているものはオスである。
幼虫の食草はササ類各種(チシマザサ、ネザサ、クマザサなど)で、幼虫で越冬する。
本種には、よく似たクロヒカゲとクロヒカゲモドキがおり、その識別点は下記の通り。
・前翅裏の中室内にある暗色の短条が、クロヒカゲは2本で、他2種は1本 |
・後翅裏の中央部外側にある暗色条が、ヒカゲチョウの曲がりは小さいが、他2種は強く曲がる |
・前翅裏の眼状紋はクロヒカゲモドキが3個で、ヒカゲチョウやクロヒカゲは3個目は小さいか無い |
2022/6/7
階段を下りているとき、いきなり目の前に飛来して、階段に止まりました。
最初見たとき、以前見かけたクロヒカゲではないかと思ったのですが、後で調べると違いました。
前翅の眼状紋は2個で、後翅裏の中央部外側にある暗色条の曲がりは小さいため、本種と分かりました。
ツマグロヒョウモン(Argyreus hyperbius)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・アゲハチョウ上科・
タテハチョウ科・ドクチョウ亜科・ヒョウモンチョウ族・ツマグロヒョウモン属>
タテハチョウ科ツマグロヒョウモン属のチョウで、在来種。
日本を含め、中国、朝鮮半島、オーストラリア、インドと熱帯・温帯に広く分布している。
日本では、本州南西部から四国、九州等に生息していたが、
近年では、関東甲信越から北陸地方の平野部にも進出してきている。
冬は幼虫や蛹で越冬し、年に数回発生する。
メスの前翅先端部が黒色で、その中に斜めの白帯を持つ。この特徴が名前の由来。
なお、オスには黒色部や白帯は無く、典型的なヒョウモンチョウの模様になる。
ただ、後翅の外縁部が、メスと同じように黒に白い模様が入っていることで区別可能。
ツマグロヒョウモンの終齢幼虫は、体長30mm前後で、黒色の背中に赤い筋模様が1本ある。
各節に刺状突起が各々6個あり、頭部側は真っ黒で、腹部側は基部が赤くて、先が黒い。
見るからに毒々しい警戒色をしているが、刺には毒はなく、刺すこともない。
2022/6/7
岩の斜面にツマグロヒョウモンのオスが止まっていました。
と、そこにキアゲハが飛来したのですが、ツマグロヒョウモンがいきなりアタックしました。
キアゲハが離れていくと、元の場所に戻ってきて、そこに止まります。
これが、他のツマグロヒョウモンはもちろん、クマバチに対しても行われます。
おそらく、このエリアがこのオスのツマグロヒョウモンの縄張りなのでしょう。
メス以外がこのエリア内に侵入すると、追い出すためにアタックしているようです。
そのためでしょうか、この個体の翅はかなり端の方が傷んでいました。
ツマグロヒョウモンの性差
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<オス> <メス>
ツマグロヒョウモンの雌雄は、翅の模様が異なるので識別は容易です。
和名の「ツマグロ」は、このメスの前翅の先が黒いことに由来します。
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モモスズメ(Marumba gaschkewitschii echephron)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・カイコガ上科・
スズメガ科・ウチスズメ亜科・Marumba属>
スズメガ科ウチスズメ亜科に分類される蛾で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、対馬、屋久島に分布する。
海外では、朝鮮半島の分布が知られている。
発生は5月〜6月と7月〜8月の年2化で、開張は70〜90mmである。
体色は褐色〜暗褐色で、前翅に波状模様と黒斑が1対あり、外縁が波状に切れ込む。
また、内縁に沿って暗色の帯状の紋があり、胸部背面に黒い縦筋がある。
後翅は淡赤紫色を帯び、黒い斑紋が2対ある。口吻は退化し、成虫は摂食しない。
幼虫は、頭部が三角状で、体色には緑型・緑色有斑型・黄色有斑の3タイプがある。
全身に白い顆粒状の突起があり、ざらつく。尾端には尾角と呼ばれる長い刺状の突起がある。
体側に黄色〜黄白色の7本の斜条があり、終齢幼虫は70〜80mmになる。
幼虫の食草は、バラ科のモモ、ウメ、スモモ、リンゴ、ビワなどが主である。
2022/6/18
駐車場の端にあるトイレの壁に止まっていた、ちょっと大きめのスズメガです。
見た目は地味な色合いですが、後翅は淡赤紫色を帯びていて、隠れお洒落です。
この体制では見えないのが残念ですが、少しだけ見えている後翅に赤味が見えています。
オオバナミガタエダシャク(Hypomecis lunifera)
<チョウ目・Glossata亜目・Heteroneura下目・二門類・シャクガ上科・
シャクガ科・エダシャク亜科>
シャクガ科エダシャク亜科の大型のエダシャクで、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、対馬、屋久島に、海外では朝鮮半島に分布する。
出現時期は、6月〜7月と9月の年2化である。
開張はオスで42〜54mm、メスで44〜66mmで、メスの方が一回り大きい。
雌雄で触角の形状が異なり、オスの触角は櫛歯状なのに対し、メスは糸状である。
前翅長は時期によって異なり、春型で30〜34mm、夏型は21〜27mmと小さくなる。
全体に淡灰褐色で、3本の暗褐色の波模様があり、特に外横線の波模様が明瞭。
また、後翅の二重の亜外縁線の間は、灰白色になる。
昼間は木の幹に密着していて動かず、翅の模様が保護色となっている。
幼虫は広食性で、ブナ科、ニレ科、カバノキ科、マメ科などの広葉樹の葉を食べる。
成虫は、花の蜜を吸汁する。
2022/6/7
駐車場の端にあるトイレの壁に止まっていた、ちょっと大型の蛾です。
調べるのに苦労するだろうと思いましたが、取りあえず写真を撮って、調べてみました。
予想通り、エダシャクの仲間には似たものが非常に多く、片っ端から調べる羽目になりました。
そして、たどり着いたのがオオバナミガタエダシャクでした。割とポピュラーな種類です。
決め手は、外横線の波模様の形状を含めた3本の波模様です。
それと、後翅にある2本の暗褐色の亜外横線の間が灰白色になっている点です。
なお、この個体の触角は、櫛歯状をしているのでオスですね。
オオシオカラトンボ(Orthetrum triangulare melania)
<トンボ目・トンボ亜目・トンボ上科・トンボ科・ヨツボシトンボ亜科・シオカラトンボ属>
トンボ科シオカラトンボ属のトンボで、在来種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州、南西諸島と広範囲に分布する。
海外では、中国中南部に分布する。東南アジアには、別亜種が広く分布する。
体長は、50〜60mm程とやや大型で、オスは濃い水色でメスは黄褐色の体色をしている。
オスは、地域によって特徴があり、本土型、琉球列島型、八重山形の3つに分類される。
なお、本種は複眼も含めて顔面が真っ黒なこと、林縁や林の中など薄暗い場所を好むことで区別できる。
2022/6/7
階段を下まで降りてきたとき、階段脇の木の枝に止まっているオオシオカラトンボのメスに気が付きました。
シオカラトンボのメス(ムギワラトンボ)より、腹部の黄色みが強いので識別は容易です。
駐車場まで降りてきたとき、車の周りを飛び回るオオシオカラトンボのオスが居ました。
車の屋根に止まってくれたので、そっと近づいて撮影しました。複眼が黒いのが特徴です。
クマバチ(Xylocopa appendiculata circumvolans)
<ハチ目・ハチ亜目・ミツバチ上科・ミツバチ科・クマバチ亜科・クマバチ族・クマバチ属>
日本を含め、インドシナ半島から中国、台湾、朝鮮半島まで分布している。
日本は、北海道南部から屋久島にかけて生息している。
体長は2cmで、ずんぐりとした体形で、全身が黒色。胸部に黄色い細毛が多数生える。
胸部以外の毛は黒色で、体長の割に小さめの翅を持ち、翅の色も黒い。
成虫の寿命は、数年といわれ、同じ巣穴を何年も使い続ける。
オスは、縄張りを持ち、春先に近づく物に接近する習性がある。
縄張りに入った他のオスを追い払ったり、交尾のためメスか確認するためである。
人にも近寄って来ることがあるが、オスは毒針を持たないので、慌てずに無視すれば良い。
なお、オスは、頭部中央に白っぽいおむすび状のものがあるので判断できる。
メスは、オスより目が小さく離れていて、全面真っ黒である。
毒針を持つが、手を出さなければ刺されることはないので、慌てて手で払ったりしないことが重要。
口永良部島から南では、アマミクマバチ、オキナワクマバチ、アカアシセジロクマバチが生息している。
小笠原諸島には、オガサワラクマバチが生息している。
2022/6/7
ツマグロヒョウモンが止まっていた岩場近くの上空で、クマバチがホバリングしていました。
この近くにネジキがたくさん花を付けていたので、その蜜でも狙っているのでしょうか。
ホバリングしては、ヒョイと移動するのを繰り返していました。
花の方に近づくと、ツマグロヒョウモンのオスが猛然と追い出しにかかります。
数匹が、花から離れては近づき、近づいては離れるというのを繰り返していました。
写真の個体は、額に白い三角状のものが見えていますので、オスと分かります。
オオイシアブ(Laphria mitsukurii)
<ハエ目・ハエ亜目・ムシヒキアブ下目・ムシヒキアブ上科・ムシヒキアブ科・イシアブ亜科>
ムシヒキアブ科イシアブ亜科の肉食性のアブで、在来種。
日本では本州から四国、九州に分布し、出現時期は5月〜9月である。
体長15〜26oの黒いアブで、脚が太く、全身に長毛が生える。
腹部の第4節以降と脚の一部にオレンジ色の毛が、頭部には淡黄色の毛が生える。
なお、オスでは胸部にもオレンジ色の毛が生えているが、メスでは黒い。
林縁の日当たりの良い地面や植物などの上に止まっていることが多く、甲虫などを捕食する。
2022/6/7
階段を下りているとき、何かが目の前を横切り、階段の手すりに止まりました。
近づいて良く見ると、何度か見たことがある毛むくじゃらのアブでした。
このひげ面の顔を見ると、なぜか、漫画のひげおやじを思い出してしまいます。
腹部の第4節以降のみオレンジ色の毛が見られるので、オオイシアブとしました。
ニワハンミョウ(Cicindela japana japana)
<コウチュウ目・オサムシ亜目・オサムシ上科・オサムシ科・
ハンミョウ亜科・ハンミョウ族・Cicindelina亜族・ハンミョウ属>
オサムシ科ハンミョウ属に属する甲虫で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に基亜種(C. japana japana)が分布する。
四国には、四国亜種(C. japana tosana)が分布する。
北海道のものも以前は北海道亜種(C. japana yezoana)とされたが、現在は区別されなくなった。
海外では、済州島、朝鮮半島から極東ロシアに分布する。
出現時期は4月〜10月であるが、晩夏から秋に屋外で見られることは少ない。
体長は15〜19mmで、体色は光沢のない暗銅色〜暗緑色で、上翅に3対の淡黄色斑がある。
ただし、体色や斑紋の形や数にも変異があり、黒化型や斑紋のないものもいる。
幼虫は、地面に縦穴を掘って住み、通りかかった他の昆虫を食べる。
成虫は、地面を徘徊し、他の昆虫やミミズなどを捕らえて食べる。
本種は6月頃に産卵し、孵化した幼虫は地中で長く生活して、翌年夏に蛹化する。
秋口には羽化してそのまま穴の中で越冬し、翌3年目の春に地表に出てくる。
2022/6/7
高御座山の階段を下りているとき、足元に何かがトコトコと出てきて止まりました。
なんだと思って見ると、外形からハンミョウの仲間と分かりましたが、名前は分かりませんでした。
後で調べてみると、暗銅色のニワハンミョウと分かりました。前足が片方欠損しています。
アズキヘリカメムシ(Homoeocerus marginiventris)
<カメムシ目・カメムシ亜目・カメムシ下目・ヘリカメムシ上科・ヘリカメムシ科・
ヘリカメムシ亜科・ハラビロヘリカメムシ族・ハラビロヘリカメムシ属・ハラビロヘリカメムシ亜属>
ヘリカメムシ科ハラビロヘリカメムシ亜属に属するカメムシで、在来種。
日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布するが、南西諸島以外では近年減少傾向にある。
海外では、台湾、朝鮮半島から中国に分布する。
体長は13〜16mmで、出現時期は4月〜10月である。
細長い体型で、体の両側縁がほぼ平行となる点が、同亜属3種と異なる。
胸部から小楯板にかけて白い縦筋があり、腹部周囲の結合板各節に黒紋がある。
アズキの原種とされるヤブツルアズキに寄生するが、ダイズやアズキを食害することもある。
2022/6/7
階段を下りているとき、何かがブーンと音を立てて飛んできて、近くの枝に止まりました。
見ると、少し大きめの褐色のカメムシで、めだった模様はありません。
体形からヘリカメムシ科の仲間ではと調べ始めたのですが、なかなか一致するものが見つかりません。
諦めかけた時、ハラビロヘリカメムシ亜属の1つであるアズキヘリカメムシが見つかりました。
他の同属と異なり腹部は広がらず、平行に近いスリムな体形なのが特徴です。
その腹部ですが、結合板各節に黒紋があり、これが決め手となりました。
モチツツジカスミカメ(Orthotylus (Kiiortotylus) gotohi)
<カメムシ目・カメムシ亜目・トコジラミ下目・トコジラミ上科・カスミカメムシ科・アオナガカスミカメ亜科>
カスミカメムシ科アオナガカスミカメ亜科の1種で、日本固有種。
日本では、モチツツジの分布域である本州の静岡県・山梨県〜岡山県、四国に分布する。
体長は4.5mm前後で、5月〜9月にモチツツジのみでよく見られる。
膜翅部が褐色である点を除いて、全体的に薄緑色で、斑紋などはない。
体はやや細長い楕円形であるが、両側面はほぼ並行している。
背面は前翅で覆われ、褐色の毛がまばらに生える。触角は薄い褐色。
触角も脚も細長く、特に触角と後肢は体長と同長かやや長い。口吻は長くて腹部に達する。
食性は雑食性で、モチツツジの汁やモチツツジの粘毛で死んだ虫などを食べる。
2022/6/7
ちょっと時期外れですが、モチツツジが咲いていたので撮影しました。
後で調べていて、ピンボケになっていますが、緑色の昆虫が写っているのに気が付きました。
撮っているときには気が付かなかったので、花にピントが合っていて、昆虫は後ピンです。
ただ、幸いなことに花がモチツツジでしたので、直ぐにモチツツジカスミカメと分かりました。
普通の昆虫では、モチツツジの粘毛にくっ付いて、動けなくなってしまいます。
しかし、モチツツジカスミカメは粘毛の上を移動できる特技を持っていて、くっ付かないのです。
正しくは、くっ付かないのではなく、くっ付かないように移動できるですね。
モチツツジカスミカメも誤ってくっ付くことはあるようです。でも時間をかけると外せるそうです。
雑食性で、モチツツジを吸汁し、粘毛に捕まった他の昆虫からも吸汁するチャッカリ者です。