ホーム旅の見聞録網引湿原>網引湿原で見かけた野草(U)


網引湿原で見かけた野草(U)



加西市網引町にある県内有数の滲水湿原である網引(あびき)湿原とその周辺で見かけた野草たちです。
湿原の植物群落は、イヌノハナヒゲ群落、ヌマガヤ群落の2群落に大きく分かれていて、
トキソウやサギソウ、ムラサキミミカグサ等の希少植物が確認されています。

< トピック >
今回、新たに見かけた下記の草本を追加しました。
コスギゴケ、ハイゴケ

今回、下記の写真を追加しました。
モチツツジ、ヤマツツジ、コツクバネウツギ、ツクバネウツギ、
サルトリイバラ、ウラジロ



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
セリ目
ウコギ科(タラノキ)
セリ科(セリ、ヤブジラミ)
ツツジ目
サクラソウ科(ヌマトラノオ)
ツツジ科(モチツツジ、ヤマツツジ)
リョウブ科(リョウブ)
ナス目
ナス科(ヒロハフウリンホオズキ)
ナデシコ目
タデ科(イヌタデ、エゾノギシギシ)
モウセンゴケ科(トウカイコモウセンゴケ、モウセンゴケ)
バラ目
クロウメモドキ科(イソノキ、クマヤナギ)
バラ科(オヘビイチゴ、テリハノイバラ、ワレモコウ)
ブドウ目
ブドウ科(ノブドウ)
フトモモ目
アカバナ科(ユウゲショウ)
マツムシソウ目
スイカズラ科(スイカズラ、コツクバネウツギ、ツクバネウツギ)
レンプクソウ科(コバノガマズミ)
マメ目
マメ科(ヒメハギ、ヤブツルアズキ、ゲンゲ、コメツブツメクサ、ナヨクサフジ、
     アレチヌスビトハギ、ヤマハギ、ナツフジ、ミヤコグサ)
ムクロジ目
ウルシ科(ヤマハゼ、ヌルデ)
ミカン科(イヌザンショウ)
モチノキ目
モチノキ科(ウメモドキ)
ヤマノイモ目
キンコウカ科(ノギラン)
ヤマノイモ科(ヒメドコロ、ヤマノイモ)
ユリ目
サルトリイバラ科(サルトリイバラ)
シュロソウ科(シュロソウ、ショウジョウバカマ、シライトソウ)
ユリ科(ササユリ)
リンドウ目
アカネ科(ヘクソカズラ)
キョウチクトウ科(ヘクソカズラ)
リンドウ科(カモメヅル属の1種)
 
ウラジロ目
ウラジロ科(ウラジロ、コシダ)
ウラボシ目
シシガシラ科(シシガシラ)
 
スギゴケ目
スギゴケ科(コスギゴケ)
ハイゴケ目
ハイゴケ科(ハイゴケ)
 
イボタケ目
イボタケ科(ツブイボタケ、ボタンイボタケ)
ハラタケ目
ウラベニガサ科(ベニヒダタケ)
テングタケ科(オニテングタケ)
ハラタケ科(ノウタケ)
ヒダナシタケ目
タコウキン科(ヒイロタケ、カワラタケ、ウチワタケ)
タバコウロコタケ科(ラッコタケ)
マンネンタケ科(オオミノコフキタケ、マンネンタケ)
キノコの不明種
不明種(1)〜(5)
 
ツノホコリ目
ツノホコリ科(ツノホコリ)
網引湿原で見かけた野草(U)
和名インデックス


タラノキ(Aralia elata)
<セリ目・ウコギ科・タラノキ属>

ウコギ科タラノキ属の落葉低木、在来種。
日本では北海道から本州、四国、九州に分布し、山林やその林縁、荒れ地などで見られる。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
樹高は5m以上になり、幹は枝、葉柄や小葉の軸に鋭い棘を持つ。
葉は互生し、長さは50〜100cmに2回羽状複葉。小葉は長さ10cm前後の楕円形で、鋸歯がある。
雌雄同株で、茎頂部に大きな複散形花序をだし、淡緑色の花を多数付ける。
果実は、直径4o程の液果で、秋に黒く熟す。新芽は山菜の「タラの芽」として利用される。

2022/8/27
網引湿原の最初の獣害防止ゲートを入った右手に立派なタラノキがあります。
天然記念物として県指定文化財に指定され、保護されているからでしょうか。
そのタラノキが大きく花序を伸ばして花を付けていました。


2022/10/11
網引湿原の第1獣害防止ゲートを入った右手のタラノキですが、すっかり花は終わっていました。
花の数の割に果実になっていたものは少なく、結実率は半分くらいでしょうか。
まだ、多くの果実が未熟な緑色でしたが、所々に黒く熟した果実も見られました。

セリ(Oenanthe javanica)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・セリ属>

セリ科セリ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、東南アジア、インドなどに分布する。
草丈は20〜50cmで、地下茎を伸ばし、秋に節から新芽を出して増える。
黄緑色の葉は1〜2回3出羽状複葉でやわらかく、小葉は卵形で縁には粗い鋸歯がある。
花期は7月〜8月で、茎先から複散形花序を出し、白色の小さな花を多数付ける。
托葉や総苞片はなく、小総苞片は細い。花弁は5個で、オシベ、メシベともに長い。
花柱は2個で、萼歯は5個。長い花柱と萼歯は、果時にも残存する。
果実は2分果で、長さ3mm前後の楕円形。隆起線はコルク質で、太くて低く、不明瞭。

2022/8/27
網引湿原のバイオトイレの手前の側溝で、セリが花を付けていました。
おそらく除草された後、再度、茎を立ち上げて花を付けたものと思われます。


2023/7/18
昨年と同じ場所で、今年もセリが大きく成長して花を咲かせ始めていました。
その花にアブやハチが吸蜜に訪花していました。左の写真に写っているのはアカガネコハナバチです。

ヤブジラミ(Torilis japonica)
<セリ目・セリ科・セリ亜科・ヤブジラミ属>
 
セリ科ヤブジラミ属の越年草で、日本では全国に分布している。
世界的には、日本も含めたユーラシアに広く分布し、南アジアや北アメリカに帰化している。
草丈は30〜70cmで、茎は直立し、上部で分枝する。
葉は互生し、2〜3回羽状複葉で、長さは5〜10cmほどある。
小葉は細かく切れ込み、先端の小葉は長く尖る。葉の両面には毛が多い。
花期は5月〜7月で、枝先の複散形花序に多数の小花を付ける。
5個の花弁は大きさは不揃いで、外側の2花弁が大きくなる。オシベは5個。
花色は白で、わずかに淡紅紫色を帯びることがある。葯の色も同様である。
果実は長さ4mm前後の卵状長楕円体で、基部から湾曲した刺を密生する。熟すと淡褐色になる。
オヤブジラミは似ているが、花期が本種より早く、花色は淡紅紫色を帯びて、花数が少ない。
また、葉の裂片が細かく、果実の刺が紅紫色を帯び、熟すと黒くなる点で区別できる。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場の近くで見かけたヤブジラミです。
道路脇の草むらで、他の野草に混じって白い花を咲かせていました。


ヤブジラミとオヤブジラミの花

   .
 <ヤブジラミ>                <オヤブジラミ>
ヤブジラミと比べて、オヤブジラミは花数が少なく、花が淡紅紫色を帯びています。


ヌマトラノオ(Lysimachia fortunei)
<ツツジ目・サクラソウ科・オカトラノオ属・オカトラノオ亜属>

サクラソウ科オカトラノオ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、ベトナムに分布している。
草丈は40〜70pほどで、茎は直立し、下部は赤みを帯びる。
葉は互生し、長さ6cm前後の長楕円形で、先が尖る。
花期は7月〜8月で、茎頂に総状花序を出し、白い小花を多数付け、下から咲き上る。
花冠は白色で直径は5oほど。花冠、萼とも5裂し、萼片の縁には腺毛がある。
萼片の両面に淡褐色の斑点があり、果時にも残る。
オシベは5個あり、基部には腺毛があって、花冠裂片と対生する。
刮ハは直径2o強の球形で、種子は球形の胎座の窪みにはまり込んでいる。
よく似た同属のオカトラノオは、葉幅が広く、花序が垂れ下がる点で区別できる。
なお、両種の自然交雑種であるイヌヌマトラノオも存在し、両種の特徴を併せ持つ。

2023/7/25
網引湿原の第1獣害防止ゲートの少し手前で、ヌマトラノオが白い花を咲かせ始めていました。
よく似た花を付けるオカトラノオより花数が少なく、葉幅が細いのが特徴です。
他の雑草に紛れ、隠れるように花序を出して咲いているので、行きでは見過ごし、帰るときに気づきました。


2023/8/5
7/25の時点では咲いていなかったかなり手前でも、ヌマトラノオが咲いていました。
前回来た時より数も増え、花序も伸びてかなり咲き進んでいたので、目に付くようになっていました。


ヌマトラノオとオカトラノオ

   .
   .
<ヌマトラノオ>            <オカトラノオ>
ヌマトラノオとオカトラノオは、花そのものはよく似ていますが、下記の点が異なります。
●オカトラノオはヌマトラノオに比べて、花序に付く花数が多い
●ヌマトラノオの花序は直立するが、オカトラノオの花序は垂れ下がる
●オカトラノオはヌマトラノオに比べて、葉幅が広い
なお、両者の自然交雑種であるイヌヌマトラノオも存在し、両種の特徴を併せ持っています。


モチツツジ(Rhododendron macrosepalum)
<ツツジ目・ツツジ科・ツツジ亜科・ツツジ属・ツツジ亜属・ヤマツツジ節・モチツツジ列>

ツツジ科ツツジ属の半常緑低木で、在来種。
日本では、本州の静岡県・山梨県〜岡山県、四国に分布する。
樹高は1〜2mで樹皮は灰褐色で平滑。葉は互生して、枝先に集まって付く。
春葉は、長さ4〜8pの楕円形〜卵形で、両面に毛が生え、腺毛がある。
春葉は、秋には橙色〜赤黒紫色に紅葉し、落葉する。
夏葉は、長さ3〜5cmの狭楕円形で、開出毛が密生し、冬を越す。
葉柄は長さ3〜8mmで、長毛がある。
花期は4〜6月であるが、散発的に花期以外でも咲いているのが見られる。
花は葉の展開と同時に枝先に2〜5個付き、直径3.5〜6cmの淡紅紫色(稀に紅紫色)。
花は5中裂し、上側の裂片に赤色の斑点がある。
オシベは通常は5本であるが、稀に6〜10本のものも見られる。花糸には短毛がある。
花柄は長さ1.5〜2cmで、長い腺毛が密生して粘る。子房にも腺毛が密生する。
萼は緑色で5深裂し、萼片は長さ2〜4cmの披針形で、長い腺毛が密生する。
萼や柄、葉などに多くの腺毛があって粘着性があり、ここに多くの昆虫が捕らえられる。
これは花粉媒介者以外の昆虫を捕らえて、花が食害されるのを防ぐために発達したらしい。
この腺毛を除去する実験をすると、花は見る影もないくらいに食害されたとのこと。
なお、この捕らえられた昆虫を餌とするモチツツジカスミカメやサシガメ類がいる。

2022/10/11
網引湿原第3湿原の奥の方を周っているとき、樹の陰で咲いているモチツツジを見つけました。
本来の花期は春から初夏にかけてなのですが、花期以外でも散発的に咲くそうです。
咲いているのは、この樹もこの1枝だけでした。


2023/5/4
最初に見かけたのは、第1獣害防止ゲートの手前で、ポツリポツリと咲いていました。
奥池の畔から第2湿原、第3湿原の周囲でも、所々でモチツツジが咲いていました。
昨秋見かけた狂い咲きのモチツツジにも、春になってたくさんの花が見られました。


2023/5/4
第3湿原の中にも咲いていて、湿原の奥の方は乾燥化が進んでいるのかもしれません。
ここでも、朱赤色のヤマツツジとピンクのモチツツジが競うように咲いています。


2024/3/16
第3湿原の外れで見かけたモチツツジの花芽で、昨年の夏葉が残っています。
これから暖かくなってくると、花芽が伸び出してくるものと思います。

ヤマツツジ(Rhododendron kaempferi)
<ツツジ目・ツツジ科・ツツジ亜科・ツツジ属・ツツジ亜属・ヤマツツジ節・ヤマツツジ列>

ツツジ科ツツジ属の半落葉低木で、日本固有種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州、屋久島に分布する。
樹高は1〜4mで、幹は灰黒色〜黒褐色、樹皮に縦の割れ目が入る。
若枝は赤褐色で淡褐色の伏した剛毛が密生し、後に褐色に変わる。
葉は互生し、長さ2〜4cmの惰円形〜卵状惰円形で、葉柄は長さ1〜3mmである。
葉の両面に褐色の伏毛が生え、裏面の脈上に長毛が密生する。
春に出て秋落葉する春葉と、夏から秋に出て冬を越す夏葉がある。
春葉より夏葉の方が小さく、春葉の先は尖るが、夏葉の先は尖らない。
花期は4月〜6月で、花冠は直径3〜5cmの鮮やかな朱赤色で、枝先に2〜3個付く。
漏斗形の花冠は5中裂し、上側裂片内面に濃色の斑点があり、内面に短毛が散生する。
花柄は長さ5〜20mmで長毛があり、萼片は5裂し、長さ1.5〜3mmの三角状楕円形。
オシベは5個で、花糸の下半部に粒状の毛がある。花柱は無毛で、子房には長毛が密生する。
果実は長さ8〜13mmの卵形の刮ハで、先は狭まり、褐色の扁平な毛がある。

2023/5/4
最初に見かけたのは、第1獣害防止ゲートの手前で、ポツリポツリと咲いていました。
奥池の畔から第2湿原、第3湿原の周囲でも、所々でヤマツツジが咲いていました。
ヤマツツジもモチツツジも、固まって咲いているのではなく、散発的にパラパラと見られました。


2023/5/4
第3湿原の中にも咲いていて、湿原の奥の方は乾燥化が進んでいるのかもしれません。
ここでも、朱赤色のヤマツツジとピンクのモチツツジが競うように咲いています。


2024/3/16
第3湿原の外れで見かけたヤマツツジの花芽で、昨年の夏葉が残っています。
これから暖かくなってくると、花芽が伸び出してくるものと思います。

リョウブ(Clethra barbinervis)
<ツツジ目・リョウブ科・リョウブ属>


リョウブ科リョウブ属に属する落葉小高木で、在来種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島から中国に分布する。
樹高は3〜10mで、樹皮は表面が縦長な形に剥げ落ちて、その後茶褐色で滑らかになる。
若枝は灰褐色で細く、細かい星状毛が生え、皮目は不明瞭である。
葉は互生し、枝先に集まって付く。葉柄は長さ1〜4cmで、軟毛が密生する。
葉身は長さ5〜11cmの倒卵形で、先が尖り、鋸歯がある。
表面にはつやがなく無毛。裏面は淡緑色で、主脈には粗い毛が、側脈の基部には軟毛がある。
花期は6月〜9月で、枝先に長さが10〜20cmの総状花序を数個付け、白い小花を多数付ける。
花序の軸には白色の星状毛が密生する。花は甘い香りを放つため、多くの昆虫が集まり、蜜源ともなる。
花冠は直径6〜7mmで5深裂し、裂片は長さ3〜4mmの長楕円形で先が丸い。
オシベは10個あり、花弁より長い。メシベは1個で、柱頭は3裂する。子房には粗い毛が密生する。
この花柱は、花時には長さ2〜3mmであるが、果時には3〜5mmになる。
萼は鐘形で長さ2mm前後で、萼片は5個。萼片の外面には軟毛が密生する。
果実は刮ハで、直径は4〜5mmの扁球形。熟すと3裂して、多数の種子を出す。

2023/7/18
奥池の第1湿原近くで、非常の多くの白い花を付けた樹を見かけました。
その花に引かれて、ハナカミキリの仲間と思しき甲虫が、何匹か飛翔しているのが見えました。
写真を撮りたかったのですが、高い所ばかりにいて下の方には降りてきませんでした。
後で調べてリョウブの花と分かりました。この樹も新潟県胎内市で見たのが初めてです。
これでキンモンガを胎内市とここで見た理由が分かりました。食草がリョウブだったのです。
つまり、幼虫がこのリョウブの葉を食べて育ち、成虫もこのリョウブに産卵するということです。

ヒロハフウリンホオズキ(Physalis angulata)
<ナス目・ナス科・ホオズキ属>




ナス科・ホオズキ属の1年草で、北アメリカ、熱帯アメリカが原産地の帰化植物。
日本ではほぼ全国に分布しており、海外でもアジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニアなどに移入。
草丈は20〜100cmで、茎は直立し、よく分枝し、枝を横に広げる。稜があって軟毛が散生する。
葉は互生し、葉身は長さ4〜10cmの卵形で、先が尖り、不規則な鋸歯がある。
花期は8月〜10月で、葉腋に直径1cm前後で、淡黄色の花を横向き〜やや上向きに単生する。
花冠は5角形で、普通、斑紋はないが、花冠の奥が褐色(濃さには個体差がある)を帯びることがある。
オシベは5個で、青色〜紫色の葯は長さが2o前後ある。
花柄は花時に5〜15mmであるが、果時には20mmほどに伸びる。
花時には萼は長さ4〜5mmであるが、花後に袋状に大きく成長し、果実を包み込む。
袋状に育った萼は、最初緑色であるが、徐々に脈が紫褐色を帯び、熟すと全体が紫褐色になる。
この宿存萼には10稜があり、長さは20〜35mm、幅は15〜25oになる。
中の液果は直径8〜14mmの球形で、未熟なものは緑色をしているが、熟すと淡褐色になる。
よく似た下記とは、花色や果時の萼の色などで識別できる。
ホソバフウリンホオズキ:花が淡黄白色で、葉が細く、粗い鋸歯がある
センナリホオズキ:花は淡黄色で、中心部に黒紫色の斑紋がある
 袋状に育った萼は熟すと薄茶色になり、果実は黄褐色になる

2022/8/27
網引湿原のバイオトイレの手前の法面で、大きく育ったヒロハフウリンホオズキを見つけました。
以前、名神高速道路から中国自動車道へ乗り換える辺り、その中央分離帯で見かけて以来です。
センナリホオズキと似ていますが、袋状の萼の脈が紫褐色を帯びているので、本種と分かりました。

イヌタデ(Persicaria longiseta)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イヌタデ属>


タデ科イヌタデ属の一年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、マレーシアに分布している。
草丈は20〜50cmで、茎は赤味を帯びることが多い。
葉は互生し、長さ3〜8cmの広披針〜披針形で、先が尖り、基部は楔形。
葉の縁は全縁で縁毛があり、主脈上には伏毛がある。
花期は6月〜10月で、長さ1〜5cmの円柱状の総状花序に紅色の小花を多数付ける。
花被は淡紅色で5裂し、花後には紅色になって痩果を包んでの残る。花弁はない。
オシベは8個、花柱は3裂する。小苞は赤色で、長い縁毛があり、花の間から突き出る。
托葉鞘は長さが5〜7mmの円柱状で、先に鞘と同じような長さの剛毛が付く。
痩果は3稜形で、長さ2mm前後。赤くなった花被に包まれたまま、黒く熟す。

2022/10/11
網引湿原の第1獣害防止ゲートに向かう道路脇で、イヌタデが群生していました。
開花している花は見られず、おそらく、多くが果実になっているものと思われます。
ただ、果実も淡紅色の花被に包まれていて、見た目はツボミとあまり変わりません。
下段はその拡大写真ですが、色が淡くてほっそりしたものがツボミと思われ、
一回り大きくて、表面がゴツゴツしたものは果実だと思われます。

エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・ギシギシ属>

タデ科ギシギシ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本を含むアジア、北アフリカ、オセアニア、南北アメリカに広く移入分布する。
草丈は40〜120cmで、下部の葉は葉幅が8〜12cm、長さ15〜30cmと大きい。
茎や葉柄、葉の中脈がしばしば赤味を帯び、花穂も赤味を帯びることがある。
下部の葉の基部は浅い心形となり、葉の縁は細かく縮れて、葉裏の脈上には毛が密生して白い。
茎葉は葉柄が短い狭長円形で、上にいくほど葉は小さくなり、無柄となる。
花期は6月〜8月で、花は長い総状花序に間隔を開けて、多段に輪生する。
花柄は細く明瞭な関節があり、関節は中間より基部側にある。
雌雄同株で、両性花と雌花がある。花は淡緑色の内花被片、外花被片各々3個からなる。
オシベ6個、メシベ1個があり、子房には3個の花柱がある。
花後、内花被片3個が大きくなって、先の尖った卵円形になり、果実を包み込む。
その内花被片の縁には長く突き出た複数の突起があり、中央に瘤状の膨らみがある。
この瘤状の膨らみは、赤色になることが多い。果実は長さ2〜3mmの3稜形で褐色〜赤褐色。

2022/6/18
バイオトイレの側で見かけたエゾノギシギシです。
花期はほぼ終わっていて、大半がギシギシ特有の形の果実になっていました。
この場所には数株が群生していて、いろいろな昆虫が見られました。

トウカイコモウセンゴケ(Drosera tokaiensis subsp. tokaiensis)
<ナデシコ目・モウセンゴケ科・モウセンゴケ属>

モウセンゴケ科モウセンゴケ属に分類される多年草で、日本固有種。
モウセンゴケとコモウセンゴケの中間的な形質をしており、交配由来の独立種。
国内では、本州の北陸、東海〜中国地方と四国が知られており、九州は未精査。
草丈は10〜20cmで、茎はごく短く、葉は根出状に出てロゼットを形成する。
葉はスプーン形〜へら形で、葉柄との境界はあまりはっきりしない。
葉の表面には全体に赤色の長い腺毛があるが、基部の葉柄状部には無い。
モウセンゴケは葉身と葉柄がはっきり区別でき、コモウセンゴケは区別がほとんどない。
本種はその中間的で、葉柄の短いものもあるが、多少なりとも区別できる。
花期は6月〜8月で、花茎を伸ばし、先にサソリ型花序を付ける。
花が咲き進むにつれて花序は真っ直ぐに伸びていく。
花は直径8〜10mmの鮮やかなピンク色で、コモウセンゴケより一回り大きい。
萼片は狭卵形〜卵形で鈍頭。
生育環境で、モウセンゴケは常に水に浸かっている場所を好み、
コモウセンゴケは比較的乾燥している場所を好む。
トウカイコモウセンゴケはその中間で、やや水分量の多い場所を好むとされている。
これら3種の染色体数が異なり、モウセンゴケは2n=20の2倍体、
コモウセンゴケは2n=40の4倍体、トウカイコモウセンゴケは2n=60の6倍体であった。

2023/5/18
第2湿原に向かう途中、奥池の畔で赤っぽい葉のモウセンゴケに気が付きました。
葉の基部近くまで赤色の長い腺毛が付き、葉身と葉柄の境界がはっきりしていません。
この点から、昨年は見ることが出来なかったトウカイコモウセンゴケだと分かりました。
見づらいのですが、花茎が立ち上がり始めていて、開花もそう遠くなさそうです。


2023/5/18
第2湿原の奥の方で、トウカイコモウセンゴケの花らしきものを教えていただきました。
手持ちのズームを300mmにして撮って拡大すると、たしかにトウカイコモウセンゴケの花と分かりました。
昨年は、この辺りで見られたのは白い花のモウセンゴケばかりだったので、初見となります。
葉が見えないかと周り込んで横から撮りましたが、草に隠れて確認はできませんでした。
ちなみに、上記写真で横や手前に見えている柄の長い葉はモウセンゴケだと思います。



2023/5/18
第2湿原を出て奥池にくると、また、トウカイコモウセンゴケの花を見つけたと教えていただきました。
後で気が付いたのですが、花の咲いたトウカイコモウセンゴケの手前に緑色の個体が見えていました。
下段左がその写真ですが、葉も緑色ですが、赤い腺毛も緑色なので、葉全体が緑色に見えます。
日影で育つとこのような緑色になるそうで、撮影のために枯葉などを除いたので、見えるようになったようです。
下段右は、直ぐ近くで群生していたものですが、花茎がかなり伸びていて、もうすぐ咲きそうです。
実は、ここから数m先に、来るときに見つけたトウカイコモウセンゴケがあります。
最初に見つけたとき、他のものも似たり寄ったりだろうと、あまり、注意して見ていませんでした。
その時に花が咲いていたかどうか分かりませんが、思い込みは良くないですね。要反省。


2023/7/18
網引湿原の奥池に差し掛かった所で、5月に見かけたトウカイコモウセンゴケが多くの花を付けていました。
5月に見かけたときには、まさに咲き始めたばかりでしたが、今は花の盛りといったところです。


2023/7/25
1週間が過ぎ、トウカイコモウセンゴケの開花も終わりが近づいているようです。
サソリ型花序がほぼ伸びきって、後、ツボミが数個残る程度になっていました。


2023/8/5
トウカイコモウセンゴケの花がほぼ終わり、数個が確認できただけです。
それと入れ替わるように、その周りではホザキノミミカキグサが淡紫色の花を咲かせていました。
右の写真で、中央下の方に1個咲いていますが、その後方は全てホザキノミミカキグサです。

モウセンゴケ(Drosera rotundifolia L.)
<ナデシコ目・モウセンゴケ科・モウセンゴケ属>


モウセンゴケ科モウセンゴケ属に分類される多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州の湿地帯に、海外では北半球の高山、寒地に広く分布する。
北方ではナガバノモウセンゴケと共生し、その雑種であるサジバモウセンゴケを作る。
東海地方に分布するトウカイコモウセンゴケは、本種とコモウセンゴケとの雑種とされる。
草丈は10〜30cmで、茎は分枝せず、短い。葉はロゼット状に付き、葉身が立ち上がる。
葉身は黄緑色〜赤色で、長さ3〜10mm、幅5〜20oの円形〜腎形で、葉柄は1〜7cm。
葉身の表面には、多数の赤い腺毛があり、その先から甘い香りのする粘液を出し、虫を捉える。
葉柄の基部には、5〜7裂する長さが7mm前後の托葉がある。
花期は6月〜8月で、茎先にサソリ型花序(ぐるっと巻いた花序)を出し、巻きの外側に花が付く。
花茎は、花が咲き進むにつれて真っ直ぐに立ち上がり、高さは6〜30cmになる。
花は白い5弁花で、花弁は長さ5o前後、花の直径は8〜10mmである。
オシベは5個、メシベは3個で、メシベは基部から2裂する。萼は5深裂し、裂片は長楕円形。
刮ハは長さ4〜5mmの長楕円形で、種子は紡錘形の種皮に包まれ、長さ1.3mmで茶褐色。

2022/6/18
第2湿原の木道脇では、所々でモウセンゴケの群生が見られ、ハッチョウトンボがそこここに居ます。
案内板などにはトウカイコモウセンゴケが紹介されていたので、てっきりそうだと思っていました。
しかし、後で調べてみると、撮った写真は全て白花のモウセンゴケでした。
どこかに花が淡紅紫色のトウカイコモウセンゴケがあったのかもしれませんが、気が付きませんでした。
よく調べて行かなかった私の大チョンボですね。要反省。


2023/5/18
昨年、たくさんのモウセンゴケを見かけた所には、今年もたくさんの葉が見られます。
花茎も伸び始めているので、咲き出すのもそう遠くはなさそうです。


2023/7/18
奥池の畔のトウカイコモウセンゴケがたくさん花を付けていたのに対して、
第2湿原のモウセンゴケは咲き終わっているようで、やっと1つだけ咲いている花を見つけました。

イソノキ(Rhamnus crenata)
<バラ目・クロウメモドキ科・クロウメモドキ連・クロウメモドキ属>

クロウメモドキ科クロウメモドキ属に属する落葉低木で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国。台湾、カンボジア、タイ、ラオス、ベトナムに分布する。
樹高は2〜4mになり、幹は灰褐色で、淡褐色の皮目があり、縦に裂け目が入る。
葉は互生し、葉身は長さ6〜12cmの長楕円形で、基部は鈍形で先は尖る。
縁には細かい鋸歯があり、葉脈は深くて、裏面に隆起する。葉柄は長さ5〜10mm。
花期は6月〜7月で、上部の葉腋に集散花序を出す。花は直径5mm前後の黄緑色で、両性花。
花弁と萼片は各々5個あり、白緑色の萼片は直立して、花弁は萼片より小さい。
そのため、花はほとんど開かず、内側の花弁はほぼ見えない。花柱は3浅裂する。
果実は直径6mm前後の球形の核果で、赤色から紫黒色に熟す。

2022/10/11
網引湿原入口の駐車場からバイオトイレまでの通路脇で、黒い果実が付いた樹を見つけました。
赤い果実も見られるので、熟すにつれて赤色から黒色に変わるようです。
調べてみると、クロウメモドキ科のイソノキがこのような熟し方をし、葉の特徴も合います。
花が咲いている頃にも近くを通っているはずなのですが、花を見た記憶がありません。
黄緑色の小さな花なので、気付かなかったのかもしれません。



2023/7/18
昨年、真っ黒に熟した果実を見つけたのは、駐車所からそう遠くない場所でした。
その花を見ようと探したところ、その場所では既に果実になってしまっていました(上段の写真)。
その後、第3湿原の遊歩道脇の何ヶ所かで、咲いている花を確認できました(下段の写真)。
といってもほとんど開かないので、ツボミが少し口を開いたようにしか見えません。
そして花弁のように見えているのは萼片で、内側の花弁は接写してみましたが分かりにくいですね。
下段左の拡大写真の右下の花で、半開きの萼片の隙間に見えているのが花弁ではないかと思います。

クマヤナギ(Berchemia racemosa)
<バラ目・クロウメモドキ科・クロウメモドキ連・クマヤナギ属>

クロウメモドキ科クマヤナギ属に属するつる性落葉低木で、日本固有種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州に分布する。
樹高は、他の物に左巻き(上から見て)に絡んで伸びると5mほどになり、樹冠は傘形に広がる。
若枝は暗黄緑色であるが、成長と共に黒っぽくなって紫褐色になり、直径は数cmほどになる。
葉は互生し、長さ4〜6cmの長楕円形で全縁。葉先は鈍頭〜丸く、基部は円形〜浅い心形。
新枝の葉は大きくて細長いが、2年枝につく葉は丸みを帯びる。
羽状の葉脈が目立ち、側脈は7〜8対が並行して縁まで伸びる。
葉表は光沢があるが、葉裏は粉を吹いたような白みを帯びる。
葉柄は1cm前後で、淡赤色を帯びる。秋には黄葉して落葉する。
花期は7月〜8月で、枝先や葉腋から総状花序を出し、黄緑色の小花を多数付ける。
枝先では大形の複総状花序になるが、横枝は再分枝しない。
花は直径3mmほどで、花弁と萼片は各々5個あり、花弁は萼片より短い。
萼片は長三角形で先が尖り、花弁のように見える。花弁は先がわずかに開く程度である。
花弁は左右から内に巻いてオシベの花糸を包み込み、花弁の上に葯が出る。
果実は核果で、長さ5〜7mmの長楕円形。翌夏に緑色から赤く熟し、その後、紺〜黒色になる。
果実が熟す頃に新しい花が開花するので、熟した果実と花を同時に見ることができる。
なお、熟した果実は生食可能で、大概は鳥類の餌となる。

2022/8/16
網引湿原入口の駐車場近くの柵から枝を伸ばして、多くの小花を咲かせていました。
花と言っても、開いているのかどうかわからなような咲き方の、直径数mmの白い花です。
葉先が丸い特徴的な葉だったので、葉の形から探してクマヤナギにたどり着きました。
花と昨年の果実が同時に見られるようなのですが、果実は見当たりませんでした。
鳥の餌になるようなので、既に食べられてしまったのかもしれません。

オヘビイチゴ(Potentilla anemonifolia)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キジムシロ連・キジムシロ属>



バラ科キジムシロ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州の田畑の畔道などでよく見られる。
海外では、朝鮮半島から中国、インド、インドネシアなどに自生する。
茎は地を這って長く伸び、先は斜上して草丈数十pになる。
花後に茎の節から発根し、増えていく。
葉は、根元近くは長い葉柄があり、5出掌状複葉で、上部では3小葉となる。
茎先に集散花序を付け、黄色い花は5花弁で、直径1cm程になる。
萼片は三角状で、内萼片と外萼片が5個ずつ重なって付く。
黄色い葯のオシベは20本、メシベは多数が集合する。
花はヘビイチゴに良く似るが、痩果は褐色で、ヘビイチゴのように大きく赤くはならない。

2023/5/4
網引湿原の第1獣害防止ゲートの手前、少し離れた所で黄色い花がびっしりと咲いていました。
何の花だろうと近づいてみると、5枚の掌状複葉が見え、オヘビイチゴと分かりました。
久しぶりに見た気がしますが、数mの範囲に広がっており、ここまでの群生を見たのは初めてです。

テリハノイバラ(Rosa luciae/Rosa wichuraiana)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>

バラ科バラ属のつる性落葉低木で、日本では本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、フィリピンに分布する。
茎には鉤形の刺があり、立ち上がらず、地を這って伸びる。
葉は互生し、長さ8p前後の奇数羽状複葉。小葉は2〜4対で、頂小葉と側小葉の差はない。
小葉は長さ2p程の楕円形で、両面とも無毛で厚みがあり、鋭い鋸歯がある。葉表に光沢がある。
花期は6月〜7月で、枝先に直径3p程の白花を数個付ける。
花弁は5個で、オシベは多数ある。花柱は合着し、毛がある。
偽果は直径8o程の卵球形で、真っ赤に熟す。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場からバイオトイレ辺りまでに、点々と咲いていたテリハノイバラです。
どこかにノイバラもあるのではと探したのですが、見当たりませんでした。


2022/8/9
網引湿原入口の駐車場から点々と咲いていたテリハノイバラが、果実を付けていました。
まだ、未熟な果実ですが、秋には熟して真っ赤に色付いてくれるでしょう。


2022/10/11
網引湿原入口の駐車場から点々と見られたテリハノイバラですが、果実が色付き始めていました。
まだ、黄色〜橙色程度の色付きですが、秋の深まりとともに熟して赤く色付くと思います。

ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・ワレモコウ連・ワレモコウ属>

バラ科ワレモコウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に広く分布する。
海外では、朝鮮半島、中国、シベリアに分布し、アラスカにも帰化している。
草丈は1m程になり、茎は上部で枝分かれして、その先端に穂状の花序を付ける。
葉は、根際か茎の下部に付き、奇数羽状複葉で、小葉は5〜13枚。
枝分かれした茎の先に赤紫色の花穂を付ける。花は、花穂の上から下に咲いていく。
花には花弁はなく、4枚の萼片がある。萼片は咲き始めは紅紫色で、咲き終わると暗紫色になる。

2022/8/16
網引湿原第3湿原を周っているとき、ワレモコウが花は咲かせ始めているのに気が付きました。
湿原の所々で茎を立ち上げて、花序の上部が紅紫色になっていました。


2022/8/27
前回訪れた際、咲き始めていたワレモコウですが、かなり咲き進んでいました。
花序の形が明らかに異なり、下部に黄色いオシベが確認されるので、8割ほどが咲き終わったようです。
咲き終わった後、暗赤紫色になった萼片が大きく開いているので、花が咲いているように見えます。


2022/10/11
すっかり花は咲き終わっていますが、暗赤紫色になった萼片が花のようです。
おそらく、この咲き終わりの姿を見る機会の方が、多いのではないでしょうか。
私も、あまりよく知らなかった頃、この姿が花が咲いているところだと思っていました。

ノブドウ(Ampelopsis glandulosa var. heterophylla)
<ブドウ目・ブドウ科・ノブドウ属>

ブドウ科ノブドウ属のつる性落葉低木で、日本全国で見られる。
日本も含め、東南アジア一帯に分布しアメリカにも帰化している。
藪に多く見られ、都市でも空地などに見られる。
太いつるは暗灰褐色で、褐色の皮目が目立つ。
葉は互生し、葉身はほぼ円形で3〜5裂する。基部は心形で、縁には鋸歯がある。
葉に対生して、巻きひげが出て、先が2又に分かれる。
花期は7月〜8月で、葉に対生して集散花序を出し、直径数oの小さな花を多数付ける。
花被片は5個あるが、開花後、早めに落ちてしまう。
オシベは5個あり、花糸は短い。メシベは細く、1個で直立する。花盤は子房を環状に巡り、全縁。
果実は液果で、直径は7mm前後の緑色の球形。熟すにつれ、淡緑色からピンク、紫色になる。
しかし、ブドウタマバエやブドウトガリバチが寄生して、虫えいを作ることが多く、紫色や碧色等になる。

2022/8/27
網引湿原入口の駐車場の近くで、ノブドウが花を付け、一部が未熟な果実になっていました。
秋には熟して紫色になるのですが、虫えいなることが多く、そうなると様々な色に発色します。


2022/10/11
網引湿原入口の駐車場の近くで見かけたノブドウですが、少し色づき始めていました。
もう少し経つと紫や青、赤紫の色がもっときれいに発色してくると思います。

ユウゲショウ(Oenothera rosea)
<フトモモ目・アカバナ科・マツヨイグサ属>

アカバナ科・マツヨイグサ属の多年草で、南米から北米南部が原産地の帰化植物。
現在は、世界中の温暖な地域に広く分布している。
草丈は20〜30cmであるが、条件によっては50cmを超えることもある。
茎には軟毛があり、葉は互生して、葉身はやや幅広の披針形である。
花期は5月〜9月で、茎の上部の葉腋に直径15mmほどの紅紫色の花を付ける。
花弁は4個で、紅色の脈があり、中心部は黄色い。なお、稀に白花も見られる。
オシベは8個あり、葯は赤味を帯びた白で、メシベの先は淡紅紫色で4裂する。
熟した果実は、雨に濡れると裂開し、種子が飛び散る。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場の近くで見かけたユウゲショウです。
ここでは、オオニワゼキショウと混生していていました。
比較的よく見かけるユウゲショウですが、ここでは少数派でした。


2023/5/4
網引湿原の第1獣害防止ゲートの手前で、ユウゲショウの白花(普通は紅紫色)を久しぶりに見ました。
この辺りでは、ユウゲショウそのものが少ないのですが、ポツリと1株だけ咲いていました。
以前見たのは、神奈川県の城山湖の近くで、普通のユウゲショウに1株だけ混ざっていました。


2023/5/8
2週間前に見かけたユウゲショウの白花ですが、今回も健在で、花を咲かせていました。
前回はなかった紅紫色の普通の花も、近くで咲き始めていました。

スイカズラ(Lonicera japonica)
<マツムシソウ目・スイカズラ科・スイカズラ属>

スイカズラ科スイカズラ属の常緑つる性常緑低木で、在来種。
別名にはニンドウ(忍冬)があり、キンギンカ(金銀花)は異名になっている。
スイカズラの名は、「吸い葛」と書き、花を口にくわえて蜜を吸うことに由来する。
英名の「honeysuckle」も同じ発想から付けられたものである。
スイカズラの蕾は「金銀花」、秋から冬にかけての茎葉は忍冬(ニンドウ)いう生薬、また、漢方薬として利用さる。
この金銀花は、白と黄色の花色から、忍冬は、常緑で冬場を耐え忍ぶ事から付けられた名前とのこと。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで全国に分布する。
日本以外では、東アジア一帯に分布し、欧米では観賞用に移入され、野生化している。
よく分枝して茂り、蔓は太くなると木質化し、主幹は灰褐色である。
枝には粗い毛が密生して、髄は早くなくなり、枝は中空となる。
葉は対生して、長さ3〜7cmの長楕円形で、縁は全縁。先はあまり尖らず、基部は広いくさび形。
葉形には変異が多く、まれに粗く切れ込んで羽裂することもある。
表面には毛が少ないが、裏面には毛が多く、冬になると内側に巻きこむ。
花期は5月〜7月で、枝先の葉腋に2個ずつ甘い芳香のある花を付ける。
ツボミの時は先の丸まった象の牙のような形で、開花すると筒状の花弁が上下の唇状に分かれる。
花冠は長さ3〜4cmで、2裂した上唇は卵形で先が4浅裂し、下唇は広線形で長く下に垂れる。
花冠の色は、開花時には白色かわずかに淡紅色を帯びるが、時間と共に黄色くなる。
オシベは5個、メシベ(柱頭は球形)は1個で、共に花冠から長く突き出る。
萼は毛が密生して先が5裂し、花柄は長さ5mm前後。苞は葉状で長さ5〜20mm。
果実は直径5〜6mmの球形で、強い光沢があり、9月〜12月に黒く熟す。

2023/5/4
駐車場近くの通路脇で、スイカズラが白色と黄色の花を付けているのに気が付きました。
この花色が、キンギンカ(金銀花)の異名の由来です。
花の基部にある蜜を吸ったのがスイカズラの由来で、甘い香りがするそうです。
今回も、久しぶり見かけたので、香りを嗅ぐのをすっかり忘れていました。

コツクバネウツギ(Abelia serrata)
<マツムシソウ目・スイカズラ科(リンネソウ科)・ツクバネウツギ属>



スイカズラ科ツクバネウツギ属の落葉低木で、日本固有種。
スイカズラ科にまとめられているが、リンネソウ科としても良い。
日本では、本州の中部地方以西、四国、九州に分布する。
樹高は1〜2mで、よく分枝する。樹皮は灰白色〜灰褐色で、不規則な裂け目がある。
若枝は赤褐色(稀に緑色)で、翌年には淡褐色になる。枝には細い髄があるが、後に中空となる。
葉は対生し、葉身は長さ2〜5cm、幅1〜2cmの狭楕円形で、先半分に鈍鋸歯があるかまたは全縁。
裏面の主脈の基部付近に、短く白い開出毛が密生するほかはほとんど無毛である。
花期は5月〜6月で、鐘状漏斗形の花を枝先に普通2個ずつ対に付ける。
花冠は黄白色〜黄色で、長さ1〜2cmの漏斗状の唇形。上唇は2裂し、下唇は3裂する。
花冠内面に長い毛が生え、下唇の内面には橙色の網目状の模様がある。
オシベ4個の内、2個が長く、花筒とほぼ同長。
メシベは1個で、花柱は細くてオシベより長く、花筒より少し突き出す。柱頭は頭状。
花冠筒部の花柱の基部には、扁平な蜜腺がある。
小花柄は長さ2〜3mmで、長さ5〜8mmの下位子房は有毛。
萼は基部まで2〜3裂し、萼片の長さは5〜9mmで、先は鈍頭となるか2〜3浅裂する。
痩果は長さ8〜10mmの細い円筒形で、9月〜11月に熟す。

2023/5/4
第3湿原の奥の遊歩道脇で、ツクバネウツギの隣にコツクバネウツギが咲いていました。
両方が並んでいるので違いが分かり易く、花の黄色味が強いのが大きな違いです。
よく見ると、萼片の色味や数にも違いが見られます。


2023/7/25
第3湿原の奥の方では、ツクバネウツギとコツクバネウツギの残った萼片が花弁のようになっていました。
コツクバネウツギの萼片には、緑色のものと赤味を帯びたものがあり、直ぐ近くに並んでいました。
なお、この萼片の後にある花柄のような細い棒状のものは痩果です。


2024/3/16
第3湿原の外れで見かけたコツクバネウツギの冬芽です。
少し開きかけていて、ツクバネウツギよりも新芽の展開は早そうです。

ツクバネウツギ(Abelia spathulata)
<マツムシソウ目・スイカズラ科(リンネソウ科)・ツクバネウツギ属>



スイカズラ科ツクバネウツギ属の落葉低木で、在来種。
スイカズラ科にまとめられているが、リンネソウ科としても良い。
日本では、本州の東北地方の太平洋側、関東・中部地方以西、四国、九州の北西部に分布する。
海外では、中国の浙江省に分布する。
樹高は1〜2mで、幹は灰褐色で薄く剥がれ、若枝にはわずかに毛があって、よく分枝する。
葉は対生し、葉身は長さ2〜6cm、幅1〜4cmの楕円状卵形で、縁に不規則な鋸歯がある。
基部は広楔形で、葉先はしだいに細くなって尖る。葉柄は1〜3mmで有毛。
花期は5月〜6月で、鐘状漏斗形の花を枝先に普通2個ずつ対に付ける。
花冠は白色〜黄白色で、長さ2〜3cmの漏斗状の唇形。上唇は2裂し、下唇は3裂する。
花冠の内側に黄色の網目状の模様があり、オシベ4個の内、2個が長く、花筒とほぼ同長。
メシベは1個で、長さ13〜20mmで花筒より少し長い。柱頭は円盤状でわずかに2裂して白い。
花冠筒部の基部には、棍棒形か先が球形の密腺がある。
萼は基部まで5深裂し、萼片の長さは5〜12mmで、赤色を帯びることが多い。
痩果は長さ8〜14mmの線形で、5個の萼片が王冠のように残る。

2023/5/4
網引湿原の第1獣害防止ゲート近くから第3湿原まで、所々の遊歩道脇で見かけました。
ウツギの仲間であることは、花の形から直ぐに分かったのですが、種名が分かりません。
第3湿原の外れで、コツクバネウツギと共に、名板が付けられていたので種名が分かりました。
林内で見かけた小ぶりな株と、湿原の遊歩道脇で見かけた大きな株では、色味など雰囲気が変わります。
また、花の色味も白っぽいものから黄色味がかったものまであり、萼片の色味も変異があります。
下段左の写真で分かると思いますが、長い方のオシベ2個とメシベが花冠から覗いています。


2023/7/25
第3湿原の奥の方では、ツクバネウツギとコツクバネウツギの残った萼片が花弁のようになっていました。
ツクバネウツギの萼片は赤褐色を帯びて5個あり、コツクバネウツギの2〜3個より多いので識別は容易です。
なお、この萼片の後にある花柄のような細い棒状のものは痩果です。


2024/3/16
第3湿原の外れで見かけたツクバネウツギの冬芽です。
冬芽はまだ硬く、コツクバネウツギよりも新芽の展開は遅いのかもしれません。


スイカズラ科の花

     .
<コツクバネウツギ>              <ツクバネウツギ>
上記2種はスイカズラ科にまとめられていますが、ツクバネウツギ属はリンネソウ科としても良いそうです。
倍率が異なるので、コツクバネウツギの方が大きく見えていますが、実際は一回り小型の花です。

   .
<タニウツギ>
   .
<シロバナウツギ>
   .
   .
<ハコネウツギ>
上記3種はスイカズラ科にまとめられていますが、タニウツギ属はタニウツギ科としても良いそうです。
タニウツギは、竜王マウンテンパークで見かけたもので、花期は過ぎているので傷みが目立ちます。
シロバナウツギは、タニウツギの白花品種です。
入笠山で見かけたもので、花期は終わっていたのですが咲き残っていました。
ハコネウツギは、神奈川県の城山湖畔で見かけたものです。
花色が咲き始めは白色で、徐々に紅が差して、紅色に変化するのが特徴です。


コバノガマズミ(Viburnum erosum)
<マツムシソウ目・レンプクソウ科・ガマズミ属>

レンプクソウ科ガマズミ属の落葉低木で、在来種。
日本では、本州の福島県以西から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
樹高は2〜4mで、樹幹は灰褐色。枝は褐色(赤色を帯びることがある)で4稜があり、粗毛がある。
葉は対生し、長さ4〜9cmの楕円状披針形で、葉先が尖り、基部は楔型。葉柄は長さ6mm以下。
縁には鋭い鋸歯があり、両面に毛があり、葉裏の葉脈に沿って長い粗毛がある。
花期は4月〜5月で、直径3〜7cmの散房花序に白色の小花を多数つける。
花冠は直径5mm前後で、先は5裂し、平開する。オシベは5個。花序柄にも星状毛が多い。
果実は長さ5〜7mmの卵球形の核果で、赤色に熟す。

2020/11/5
網引湿原入口の駐車場からバイオトイレまでの通路脇で、赤く熟した果実を見かけました。
何の果実が後で調べたところ、果実や葉の特徴からコバノガマズミであろうと判断しました。
花が咲いている頃にも近くを通っているはずなのですが、花を見た記憶がありません。
白色の小花なのですが、気付かなかったのかもしれません。

ヒメハギ(Polygara japonica)
<マメ目・ヒメハギ科・ヒメハギ属>

ヒメハギ科ヒメハギ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、インドから東南アジア、オーストラリアなどに分布する。
草丈は10〜30cmで、茎は硬くて屈毛があり、基部で分枝して地を這い、先は斜上する。
葉は互生し、長さ1〜3cmの長楕円形で全縁。無柄に見えるが極短い柄がある。
花期は4月〜7月で、途中の葉腋から長さ1〜3cmの総状花序を出す。
萼は5個あり、側萼片2個は紫色の花弁状の卵形で、長さ5〜7mmと他の萼片の倍くらいになる。
花後、緑色に変わり、やや大きくなって果実を包み込む。
花冠は蝶形花のように見えるが、5個の花弁が融着した筒状花で、淡紅色〜淡紅紫色である。
筒の先は3裂し、上側の裂片2個は丸く、下側の裂片は先が細かく裂けて白〜淡紅色の付属体がある。
オシベは8個で、花弁が桶状になった所に付き、葯は黄色い。
果実は扁平で、翼のあるうちわ形をしており、種子が2個入っている。

2023/5/4
第3湿原の遊歩道脇で、ヒメハギが淡紅紫色の可憐な花を隠れるように咲かせていました。
花弁のように左右に開いた淡紫色の側萼片が目立ちますが、花冠はその内側にあります。
3裂した花冠の下側裂片の先は白く細裂した付属体で、2個の濃紫色の上側裂片は付属体の上です。
最初に見かけた所では、花は1つだけ咲いていたのですが、少し先ではそこそこ咲いていました。

ヤブツルアズキ(Vigna angularis var. nipponensis)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・インゲンマメ連・インゲン亜連・ササゲ属・アズキ亜属>

マメ科ササゲ属のつる性1年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島から中国などに分布している。
つるは長く、3m以上になり、周りの草などに巻き付く。
茎、葉、葉柄、果柄など全体に黄褐色の粗い毛がある。
葉は3出複葉で互生し、小葉の長さは3〜10pほどの先の尖った狭卵形で、不規則に2〜3残裂する。
花期は8月〜10月で、葉腋から短い総状花序を出し、長さ2pほどの黄色い花を固まって付ける。
旗弁は左右非相称で、竜骨弁は左に寄って捻じれる。
左翼弁は竜骨弁の上に被さり、竜骨弁の距を右翼弁が覆う。
なお、オシベ10個とメシベ1個は、竜骨弁の中にあって、竜骨弁に沿って曲がる。
萼は4裂し、萼に接して2個の小苞がある。小苞は内に巻き込んで先が尖り、萼の倍くらいの長さがある。
豆果は垂れ下り、長さ5〜10pほどの線形で無毛。種子は1列に入る。
熟すと黒くなり、2つに裂開して捻じれ、種子を飛ばす。

2022/8/27
網引湿原の駐車場近くの斜面で、数本のヤブツルアズキを見かけました。
近くのセイタカアワダチソウなどに絡みついて、ひっそりと花を付けています。
この辺りは頻繁に除草されているようなので、あまり増えることができていないようです。

ゲンゲ(Astragalus sinicus)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ゲンゲ連・ゲンゲ属>

マメ科ゲンゲ属に分類される越年草で、中国原産の帰化植物。
日本では、ほぼ全国に移入分布している。
一般にレンゲ、レンゲソウと呼ばれるが、標準和名はゲンゲである。
根に窒素を固定する根粒を形成するため、緑肥として普及したが、化学肥料の普及などで減少した。
草丈は10〜25cmで、根元で分枝し、茎は地を這い、先は斜上する。
葉は互生し、奇数羽状複葉で、小葉は3〜5対着く。
小葉は長さ10〜15mmの楕円形で、先は丸いか小さく凹む。
葉柄の基部には托葉があり、卵形の膜状で、毛が生えている。
花期は4月〜5月で、葉腋から花茎を真っすぐに立ち上げ、葉より突き出て、先に散形花序を付ける。
花序の直径は20〜30mmほどで、輪生状に紅色の花を付ける。稀に白花も見られる。
蝶形花の旗弁は直立して大きく、淡色の翼弁から先が紅色の竜骨弁が突き出す。
豆果は長さ30mmほどの三角柱状で、熟すと黒くなる。

2023/5/4
第1獣害防止ゲートを出た所で、左手にゲンゲ畑が広がっているのに気が付きました。
行くときは足元ばかり見ていたので気付かなかったのですが、畑の半分ほどにゲンゲが咲いていました。
子供の頃には、そこいらじゅうにゲンゲ畑が広がっていたのですが、今はめったに見かけません。
ちなみに、正式和名はゲンゲですが、子供の頃にはレンゲと呼んでいました。

コメツブツメクサ(Trifolium dubium)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・シャジクソウ連・シャジクソウ属・Chronosemium亜属>

マメ科・シャジクソウ属の多年草で、ヨーロッパ〜西アジア原産の帰化植物。
日本では、全国的に分布している。
コメツブウマゴヤシと間違われることがあるが、コメツブツメクサは地を這うように背が低い。
草丈は20〜40pほどで、茎は良く分枝して横に広がる。
葉は3小葉で、葉柄は数oと短い。
小葉は長さ10o弱の楕円形で、葉脈がはっきり見え、側脈は並行。
花期は5月〜7月で、葉腋から2p程の花序枝を出し、その先に直径7oほどの花序を付ける。
黄色い蝶形花は長さ3oほどで、5〜20個ほどが球状に集まって付く。
授粉後、花は垂れ下り、花冠は枯れてそのまま残り、その中で豆果は成熟する。

2023/5/4
網引湿原の駐車場の近くで、コメツブツメクサがちょっとした群落を作っていました。
最近は、少し大きめの花を付けるクスダマツメクサと共に、あちらこちらで見かけるようになりました。

ナヨクサフジ(Vicia villosa subsp. varia)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ソラマメ連・ソラマメ属>

マメ科ソラマメ属のつる性の1年草または越年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布している。
茎は良く分枝して、他の物に巻き付いて広がり、長さ2mほどになる。
葉は互生し、羽状複葉で頂片は巻ひげとなる。小葉は狭楕円形で、10対ほどある。
基部には不規則な形状の托葉がある。
花期は5月〜8月で、葉腋に花序を出し、長さ15oほどの蝶形花を1方向に穂状に付ける。
花色は、咲き始めは淡紅色であるが、徐々に淡紫色になる。
旗弁の爪部(筒状部)が長く、旗弁の舷部のほぼ倍の長さがある。
萼筒はほぼ無毛で、花柄が萼筒の下側に付くので、基部の丸く膨らんだ所が後に付きだす。
なお、和名は「弱草藤」で、ナヨナヨとしたクサフジを意味している。

2023/5/4
網引湿原のバイオトイレの近くで、ナヨクサフジが何ヶ所かで花を付けていました。
最近、分布域を広げているマメ科の帰化植物で、ときどき見かけるようになりました。
ナヨナヨとひ弱そうな名前ですが、決して侮れません。根絶が難しい雑草です。

アレチヌスビトハギ(Desmodium paniculatum)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ヌスビトハギ連・ヌスビトハギ亜連・ヌスビトハギ属>

マメ科ヌスビトハギ属の多年草で、北アメリカが原産地。
日本へは比較的近年入ってきた帰化植物で、関東以西に多いが、北海道にも侵入している。
草丈は50〜100cmになり、茎は木質化し、開出毛が多い。葉は互生し、3出複葉。
小葉は長さ5〜8cmの卵形〜狭卵形(個体による変異が大きい)で先端は尖り、両面に伏毛がある。
花期は7〜9月で、葉腋から細長い円錐花序を出し、紅紫色の蝶形花をまばらに付ける。
花冠の長さは6〜9mmで、旗弁は丸みを帯びて、黄緑色で長楕円形の斑紋が2つある。
昼間に開花した花は紅紫色だが、夕方には青く変色し、しぼみ始める。
オシベ9個とメシベ1個は、訪虫されると竜骨弁から飛出し、そのままになる。
萼は長さ3o前後で、先が不同に4裂する。下片が最も細長く、上片の先は2浅裂する。
果実は扁平な節果で、節毎にくびれ、長さ6〜7mm前後の小節果3〜6個からなる。
果実が熟すと節が茶色くなり、小節果が節からちぎれ易くなる。
小節果にはかぎ状の毛があり、人や動物が近くを通ると、節からちぎれてくっ付き、運ばれる。

2022/10/11
網引湿原の駐車場で、駐車スペースの後の方で花を付けているアレチヌスビトハギを見かけました。
まだ、花が咲いているのは数株ですが、数年も経てば一面に広がっている可能性が大です。
おそらく、車のタイヤなどに種子が付いて運ばれてきて、ここで発芽したものではないかと推測されます。

ヤマハギ(Lespedeza bicolor)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ヌスビトハギ連・ハギ亜連・ハギ属・ヤマハギ亜属>

マメ科ハギ属の落葉低木で、在来種。秋の七草の1つ。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ウスリー川辺りまで分布ている。
樹高は1〜3mで、根元から多数の細い枝を出し、先で多数に分枝する。
葉は互生し、3出羽状複葉で、小葉は長さ数cmの楕円形。
小葉の先は丸くなるが、主脈の先が髭のように尖り、飛び出るものもある。
花期は、7月〜10月で、花序は基部の葉より長い花柄を出して、多数の花を付ける。
花冠は淡紅紫色で、長さ10oほど。旗弁は翼弁や竜骨弁より長く、竜骨弁は翼弁より長い。
萼は4裂し、上側の萼歯は浅く2裂する。萼歯は萼筒よりも短い。
豆果は、長さ6o前後で、扁平で丸い。種子は1個だけ入っている。

2022/8/27
網引湿原の駐車場近くで、柵から枝を伸ばして咲いているヤマハギを見かけました。
秋の七草の1つとして知られていますが、開花するのは夏からになります。



2022/10/11
網引湿原の駐車場近くで見られたヤマハギですが、花も盛りとなっていました。
咲き終わって、未熟な豆果になっているものも多く見られました。

ナツフジ(Wisteria japonica)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・フジ連・フジ属>

マメ科フジ属のつる性落葉木本で、日本固有種。
本州関東南部以西から四国、九州に分布し、丘陵や低山地の林縁や明るい樹林内に自生する。
蔓は左巻きで、樹皮は褐色で皮目が多い。若い枝には最初は毛があるが、後に無毛となる。
葉は長さ10〜20pほどの奇数羽状複葉で、小葉は4〜8対。小葉は長さ4p前後の狭卵形。
花期は7月〜8月で、葉腋から長さ20cmほどの総状花序を出し、垂れ下った花序に多数の蝶形花を付ける。
旗弁と翼弁はともに長さ12o前後で淡黄白色。
萼も淡黄白色で、先が5残裂し、縁が赤色を帯びることが多い。
果実は、長さ5〜15pほどの豆果で、表面は無毛。果皮が分厚くて、くびれがあり、茶色に熟す。
種子は扁平な円形で、直径は8oほど。熟すと果皮が裂開して、種子が散布される。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場の近くで、柵に絡みついて花を付けていました。
まだ、花序の上部で花が咲いているだけなので、開花が始まって間もないようです。

ミヤコグサ(Lotus japonicus)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ミヤコグサ連・ミヤコグサ属>

マメ科ミヤコグサ属の多年草で、在来種。道端から海岸沿いまで、日当たりの良い背の低い草原などに多い。
日本では北海道から本州、四国、九州、南西諸島に分布する。海外ではインド以東の東アジアに広く分布する。
なお、元来は史前帰化植物で、ムギ類の栽培に付随して持ち込まれたと推測されている。
茎は根元で分枝して、地を這い、15〜35cmに伸びて、横に広がる。
葉は互生し、3出複葉で、基部にある1対の托葉は小葉と変わらないため、5小葉に見える。
花期は5月〜6月で、葉腋から花茎を立ち上げ、その先に1〜4個の蝶形花を固まって付ける。
その花の基部には3個の総苞があり、その形は普通の葉と同じ形状をしている。
萼は筒状で、先は裂ける。黄色い花は長さ10〜15mmで、2個の竜骨弁は合着して筒状。
豆果は長さ20〜35oほどの円柱形で、熟すと2裂してねじれ、黒い種子を弾き飛ばす。
和名は、京都で特によく見られたことに由来する。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場の近くにある新池、その土手の上で見かけたミヤコグサです。
その土手で、1株だけ蔓を伸ばして花を付けていました。
黄色い花なので目立つのですが、今日の散策コースでは、この場所以外では見かけませんでした。


2023/5/4
昨夏は新池の土手で見かけたのですが、今回は駐車場近くの何ヶ所かで咲いていました。
多少、勢力範囲を広げたのかもしれません。
本種も含め、コメツブツメクサやニガナ、ハナニガナ、オオジシバリなどこの辺には黄花が多いですね。

ヤマハゼ(Toxicodendron sylvestre)
<ムクロジ目・ウルシ科・ウルシ属>

ウルシ科ウルシ属の落葉小高木で、在来種。雌雄異株。
関東地方〜九州の暖地の山地に生え、樹高は8m程になる。
樹皮は褐色で、赤褐色の皮目が目立つ。老木では、樹皮は縦長に裂けてはがれ落ちる。
葉は長さ40cmの奇数羽状複葉で互生し、5対前後の小葉がある。
小葉は長さ4〜13cmの卵状長楕円形で先は長めに尖り、全縁である。
葉腋から長さ8〜15cmの円錐花序をだし、黄緑色の小さな花を多数付ける。
花弁は5個で、長さ2mm前後の楕円形で、雄花の花弁は反り返り、オシベは外に突き出る。
雌株には、10mm程の扁球型の果実(核果)が多数、ぶら下がるように付く。

2022/8/16
網引湿原入口の駐車場の近くで、ヤマハゼが未熟な緑色の果実をたくさん付けていました。

ヌルデ(Rhus javanica)
<ムクロジ目・ウルシ科・ヌルデ属>


ウルシ科ヌルデ属の落葉小高木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、中国、台湾、東アジアから東南アジアに分布する。
樹高は10m程になり、幹は灰白色。若い枝は紫褐色で楕円の皮目がある。
葉は、9〜13枚の小葉からなる奇数羽状複葉で、葉軸には翼がある。
小葉は、長さ10cm前後の長楕円形で、縁には鋸歯がある。裏面全体に毛が密生する。
秋には真っ赤に紅葉する。春の新芽も赤い。
花期は8月〜9月で、円錐花序を出し、多数の小花を付ける。雌雄異株。
雌花には3裂したメシベが、雄花には5本のオシベがあり、白い花弁は反り返る。
秋に直径5o程の扁平な果実を付けるが、その表面はリンゴ酸カルシウムの白い結晶で覆われる。
葉に、ヌルデシロアブラムシが寄生すると、大きな虫えい(虫こぶ)を作る。
虫えいは、五倍子と呼ばれ、タンニンを豊富に含むため、皮なめしや黒色染料の原料に使われた。

2023/8/5
網引湿原の駐車場の少し先で、ヌルデの葉に虫えいが出来ているのに気が付きました。
虫えいは奥胎内で初めて見たのですが、そこで見られなかった耳附子です。
これで、木附子、花附子、耳附子と3種類の五倍子を確認できたことになります。
これらはヌルデシロアブラムシが作る虫えいで、タンニンを豊富に含んでいます。
そのためでしょうか、下段の虫えいの一部が破れたところは真っ黒になっていました。
※ ヌルデシロアブラムシは、オオバチョウチンゴケで越冬し、翌春、ヌルデの葉軸に産卵します。
従って、近くにオオバチョウチンゴケがないと、ヌルデに虫えいはできません。


五倍子の種類と区別
耳附子
花附子
木附子
袋状になり、複葉の葉柄の翼葉につく。
数回分岐し、小葉片の中央脈につく。
(アントシアンで着色していることが多い)
数回分岐し、枝端または葉腋につき袋状部は花附子より広く壁も厚い。
(アントシアンで着色していることは少ない)

イヌザンショウ(Zanthoxylum schinifolium)
<ムクロジ目・ミカン科・ヘンルーダ亜科・サンショウ連・サンショウ属>


<雌花/雌株>                 <雄花/雄株>
ミカン科サンショウ属に属する落葉低木で、在来種。雌雄異株。
日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
樹高は2〜3mで、幹は灰緑色。若枝は緑色〜赤褐色または黒褐色である。
縦長の皮目が付き、長さ4〜15mmの刺が1個ずつ互生する。
葉は互生し、長さ7〜20cmの奇数羽状複葉で、葉軸には極狭い翼がある。
小葉は長さ2〜5cmの広披針形〜楕円形で、5〜11対ある。
縁には細かい鈍鋸歯があり、表面は濃緑色で光沢がある。
花期は7月〜8月で、枝先に長さ3〜8cmの散房花序をだし、黄緑色の小花を多数付ける。
雄花は、5個の花被片は1.5mmほどと小さく、オシベは5個で葯は黄色。メシベは退化している。
雌花は、5個の花被片は2mmほどあり、緑色の子房は3室あり、その上に黄緑色の柱頭がある。
果実は3分果に分かれ、分果は長さ4〜5mmの球形で、9月〜10月に褐色に熟す。
種子は、直径3〜4mmで黒くて光沢がある。

2022/8/16
網引湿原入口の駐車場の近くで見かけたイヌザンショウです。
撮影時には気が付かなかったのですが、同じ場所に雄株と雌株が並んでいたようです。
後で写真を確認していて、雄花序と雌花序が混ざっているのに気が付きました。


2022/8/27 <果実/雌株>

2022/8/27 <雄花/雄株>
前回見たときは、まだ、雌株は花が咲いている状態だったのですが、一部は果実になっていました。
この果実の付き方はサンショウによく似ているのですが、サンショウほど芳香がないそうです。
一方、雄株の方は、まだ、雄花が咲き続けているようです。


2022/10/11
上記の花などを撮影した雌株では、全ての果実が無くなってしまっていました。
それではと、第3湿原の奥の方にあった雌株を見に行くと、まだ、果実は残っていました。
大きくなって、色付き始めたものも見られます。

ウメモドキ(Ilex serrata)
<モチノキ目・モチノキ科・モチノキ属>

 

モチノキ科モチノキ属の落葉低木で、在来種。
日本では、本州から四国、九州の落葉広葉樹林内に自生し、海外では中国に分布する。
樹高は2〜3mで、幹は灰褐色、滑らかで皮目が多くよく目立つ。
本年枝は細く、垢状の短毛がある。側枝は短枝化しやすい。
葉は互生し、長さ3〜8cmの卵形で、葉先が尖り、基部は鋭形。縁には細かい鋸歯がある。
両面に短毛があり、裏面脈上には細かい開出毛がある。葉柄は長さ4〜9mmである。
花期は6月で、果期は9月〜10月で赤く熟す。
花は本年枝の葉腋に付くが、花序軸が極短いので、束生しているように見える。
雌雄異株で、雄花序には5〜20個、雌花序には2〜4個の花がつく。
花は直径3〜4mmの淡紫色の4〜5弁花で、花柄は2〜4mmである。
萼片は4〜5個で、雄花には4〜5個のオシベと退化したメシベがある。
雌花のオシベは白色で退化しており、子房は球形で花柱は極短い。
果実は直径5mm前後の球形の核果で、落葉後も落ちずに残り美しい。
イヌウメモドキとよく似ているが、下記の点で区別できる。
・ウメモドキは両面に毛が散生し、葉裏の葉脈上には密生する
・イヌウメモドキには毛がない

2022/10/11
網引湿原の第1獣害防止ゲートまでの通路脇や、奥池の畔などで見かけた赤い果実です。
後で調べて、果実や葉の特徴からウメモドキかイヌウメモドキのどちらかと分かりました 。
両者の違いは葉裏に毛があるか否かですが、下段の写真のように葉脈や葉裏に毛が見られます。
そのことから、ウメモドキの果実と判断しました。
花期に近くを通っているはずですが、上の方は見なかったので花には気付かなかったようです。

ノギラン(Metanarthecium luteoviride)
<ヤマノイモ目・キンコウカ科・ノギラン属>

キンコウカ科ノギラン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は15〜50cmで、地下茎は短く直立し、多くのひげ根がある。
葉は葉は根生して開出し、長さ12〜24cmの倒披針形で、全縁で両面無毛。
花期は6月〜8月で、根出葉の間から花茎を伸ばし、総状花序を付ける。
花茎には葉は付かず、花には苞があり、長さ2〜4mmの短い花柄がある。
細長い総状花序に多数の花をつけるが、黄緑色の花は上を向いて咲き、花後も落ちない。
6個の花被片は長さ6〜8mmの線状披針形で、外部中肋は緑色をして、基部は短く合生する。
オシベは6個で花被片より短く、花糸は下部が少し幅広になっていて、無毛。
子房は中位で3室あり、各室に多数の胚珠があって、柱頭は3裂する。
果実は長さ7mmほどの卵形の刮ハで、花被片より短く、花被片が包み込む。

2022/6/18
最初の獣害防止ゲートから第1湿原の獣害防止ゲートまでの林内、そこで見かけたノギランです。
まだ、開花には少々早いようで、花茎の先に未熟なツボミがたくさん付いた状態でした。


2022/8/09
林内で見かけたノギランですが、花時には来ることができなかったので、全てが咲き終わっていました。
といっても花弁が残るので、花後も見た目はあまり変わらないのですが、オシベがなくなります。
また、淡褐色を帯びていた花弁ですが、果時なると若い果実ではきれいな緑色になっていました。


2022/8/16
第2湿原の周りでも、何ヶ所かでノギランを見かけました。
林内で見かけたような緑色の花被片ではなく、熟すにつれて枯れて褐色に変わり始めていました。


2023/5/18
湿原に向かう遊歩道脇では、あちらこちらでノギランが根出葉を広げていました。
花が咲くのは1ヶ月ほど後なので、まだ、花茎も出ていない状態です。

 
2023/7/18
第1獣害防止ゲートを通った先の林中で、ノギランの花を見ることができました。
花序は延びていましたが、開花しているのは下部のみなので、咲き始めて間もないようです。


 
2023/7/18
奥池の中ほどを過ぎた辺りで、ノギランが群生している所がありました。
ここのノギランは、陽当たりが良いためか、分枝が多くてたくさんの花序が見られました。

ヒメドコロ(Dioscorea tenuipes)
<ヤマノイモ目・ヤマノイモ科・ヤマノイモ属>


ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草で、在来種。
日本では、本州の関東以西、四国、九州、沖縄に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
根茎は太さ6〜15mmで水平になり、節が明瞭で、食用となる。
茎は細く平滑で無毛であり、右巻きで他物に巻き付く。
葉は互生し、葉柄は長さ3〜5cm、基部に1対の小突起がある。
葉身は、長さ5〜13cmの細身の三角状披針形で、先が長く尾状に尖り、基部は深い心形。
花期は7月〜8月で、雌雄異株。雄花序、雌花序ともに細くて、垂れ下がる。
雄花序は単生か対に出て、長さは7〜18cmになる。
雄花は単生か対で付き、小花柄は長さ2〜8mm、淡黄色の花被は平開かわずかに反曲する。
花被片は6個で、先は鈍形〜円形。オシベは6個で、葯は外向きに付く。
雌花序は長くても8cmほどで、雌花は数個と少ない。
雌花には糸状の仮オシベが6個あり、花被片は6個で、平開かわずかに反曲する。
刮ハは淡黄褐色で光沢があり、長さ20〜25mmで3個の翼がある。

巻き方の判定方法
つるの巻き方の表現は見方によって変わるため、混乱が見られます。
そこで、日本植物学会が作成した「学術用語集植物学編」での定義が下記です。
● 支持木に巻きついている「つる」を外から見て、右方に向いていれば「右巻き」
●「つる」の伸張方向を出発点(下)から見て、時計回りならば「右巻き」


2023/7/25
第2湿原の獣害防止ゲートを入って直ぐの所でヒメドコロが咲いていました。
以前からオニドコロではないかと思っていたのですが、それにしては小さいという印象でした。
花を手掛かりに調べてみると、オニドコロを小さくしたようなヒメドコロ(雄株)と分かりました。
オニドコロの根茎は苦くて食用にはなりませんが、ヒメドコロの根茎は食べることができるようです。

ヤマノイモ(Dioscorea japonica)
<ヤマノイモ目・ヤマノイモ科・ヤマノイモ属>

ヤマノイモ科・ヤマノイモ属のつる性多年草で、日本固有種。
日本では、北海道南西部から本州、四国、九州に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
葉は対生し、長さ10p前後の三角状披針形で、基部は心形。葉柄は数pある。
花期は7月〜8月で、雌雄異株。種子のほかムカゴでも繁殖する。
雄花序は、葉腋から数本が直立し、白色の小さな花を多数つける。
雌花序は、葉腋から下垂し、白色の花がまばらにつく。
地下には1本の芋があり、地上部の成長と共に縮小し、秋には新たな芋と置き換わる。
芋は、ジネンジョとうな名前で売られているが、食べられるようになるには4〜5年を要する。

2023/8/5
駐車場近くで、柵に巻き付いているヤマノイモが、白い花をたくさん付けているのに気が付きました。
花と言っても、ツボミと大差ないほど開かないので、よく見ないと咲いているのかどうか分かりません。
雄花序は、葉腋から数個が集まって上向きに立ち上がって付きます。


ヤマノイモとナガイモ
ヤマノイモもナガイモ[ヤマイモ]も同じヤマノイモ属に属する仲間ですが、芋には各々特徴があります。

ヤマノイモ=ジネンジョ(自然薯)は、日本固有種で、山に自生しているものです。
ナガイモあるいはヤマイモと一般に言われているものには、大まかに言って以下の3種類があります。
 ナガイモ群:粘りが少なく、きめも粗い。栽培が容易なため、生産量も多い。
 イチョウイモ群:関東で言う大和芋のことで、ナガイモ群よりムチンが多く、粘りも強い。
 ツクネイモ群:粘り、きめが最も細かく、ヤマノイモと並び、美味。
       関西でヤマイモというと本種を指す。
       丹波地方の「丹波いも」、三重県、奈良県の「伊勢いも」などがあり、
       まとめてヤマトイモとも呼ばれています。
ダイジョは、あまり馴染みはないと思います。
      沖縄や九州で栽培され、「台湾山芋」、「沖縄山芋」とも呼ばれています。
      ヤムイモの一種で、熱帯から亜熱帯での栽培が多く、
      台湾→沖縄→九州と伝わったとされています。

粘り気では、「ヤマノイモ>ツクネイモ群>イチョウイモ群>ナガイモ群」の順となります。
ダイジョの粘りは、相当に強い様で、ヤマノイモ以上なのかもしれません。
ダイジョ以外は食べたことがあるのですが、ダイジョは見たことがないので上記はWebで調べた結果です。

関東地方では、上記の内、ヤマノイモとナガイモ群が、自生したり、逸出して野生化したものが見られます。
ムカゴが出来るなど、見た目は似ていますが、葉の形や付き方、花序が異なりますので、区別は容易です。

    .
<ヤマノイモの雄花序>            <ナガイモ群の雄花序>
ヤマノイモの雄花序はほぼ直立するのに対し、ナガイモ群の雄花序はバラバラです。
また、ヤマノイモの葉は対生で、基部の張り出しがないのに対し、
ナガイモ群の葉は互生(花期には対生)で、基部が大きく張り出すことでも区別できます。
上記のナガイモ群は花期なので葉は対生ですが、葉の基部が張り出しているので区別できます。

※ Webでの確認ですが、イチョウイモ群もツクネイモ群も、ヤマノイモ同様基部の張り出しはないようです。


サルトリイバラ(Smilax china)
<ユリ目・サルトリイバラ科・シオデ属>

サルトリイバラ科シオデ属のつる性落葉半低木で、在来種。
日本では北海道から沖縄まで全国に分布し、海外では朝鮮半島から中国に分布する。
山野や丘陵の林縁などで、日当たりが良く、水はけのよい所を好む。
茎は地を這うように伸び、長さは1〜3.5mほどになる。緑色で硬く、鈎状の刺が散生する。
葉は互生し、長さ3〜12cmの円形から広楕円形で、基部は円形で、先が少し尖る。
葉の縁は全縁で硬く、表面に光沢がある。3〜5本の葉脈があり、その表面は凹む。
葉柄には托葉が変化した長い巻ひげが1対あり、これを他の物に巻き付けて伸びる。
花期は4月〜5月で、葉腋から散形花序を出して、多数の淡黄緑色の花を付ける。雌雄異株。
花被片は6個で、長さ4mm前後の長楕円形で、先が反り返る。
雄花のオシベは6個、雌花には柱頭が3本あり、子房は3室ある。
なお、雄花のメシベと、雌花の仮オシベは、共に退化してほとんどない。
果実は液果で、直径7〜9mmの球形。10月〜11月に赤く熟す。

2022/6/18
網引湿原の入口の駐車場、その少し先で柵からサルトリイバラが蔓を伸ばしていました。
茎に逆向きの鋭い刺があり、巻ひげで絡みついて広がって行きます。
サルトリイバラがはびこった所では、サルも身動きできなくなるとの例えが和名の由来とか。
たしかに、この蔓がズボンなどに絡みつくと外すの大変だし、下手すると傷つきますね。


2023/7/18
網引湿原入口の駐車場近くで、今年もサルトリイバラがたくさん果実を付けていました。
まだ、果実は未熟なため果柄が上に反っていて、果実も小さく、色も緑色です。


2022/8/9
網引湿原入口の駐車場近くで、サルトリイバラがたくさん果実を付け、黄色くなっていました。
まだ、成熟途中ですが、秋には完熟して真っ赤に色付いてくれるでしょう。

 

2022/10/11
網引湿原入口の駐車場近くや奥池の畔で見かけたサルトリイバラです。
奥池の畔で見たものは、まだ、果実が未熟で、黄緑色でした。
一方、駐車場近くで見かけたものは、赤く色付き始めていて、黄緑色〜橙赤色のものが見られました。
熟し始めているようですが、全てが完熟するには、もう少し時間がかかるようです。



2024/3/16
上段は、第3湿原の外れで見かけたサルトリイバラの果実で、ほとんどの果実は干からびていました。
中には、果皮が破けて中の黒い種子が見えているものもありました。
下段は第2湿原の入口近くで見かけたもので、まだ、果皮が真っ赤で瑞々しさが残っているものがありました。

シュロソウ(Veratrum maackii Regel var. japonicum (Baker) T.Shimizu)
<ユリ目・シュロソウ科(メランチウム科)・シュロソウ属>


シュロソウ科(メランチウム科)シュロソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は60〜80cmで、太い根茎があり、茎は直立する。
根茎には毒性の強いアルカロイドを含むので、取り扱いには注意を要する。
葉は、茎の下部に付き、長さが6〜30cmの長楕円形で、並行脈で、縦にしわがある。
葉の基部は鞘状になり、茎を抱く。葉の幅は3cm以上で、3cm以下だとホソバシュロソウとされる。
花期は6月〜8月で、茎頂に長い円錐花序を出し、多数の花が付く。花茎や花柄には毛がある。
花は直径10mmほどで、両性花と雄花が混生し、花序の上部に両性花、下部に雄花が付く。
花柄は短く、花茎に沿って花が付き、花被片は6個で、花色は暗紫褐色。花柱は3個。
果実は刮ハで、長さは10〜15mmほど。
本種は変異が多く、葉の細いものをホソバシュロソウ、花が黄緑色のものをアオヤギソウという。
なお、シュロソウとホソバシュロソウを分けないとか、オオシュロソウをシュロソウに含める説がある。
ホソバシュロソウ(Veratrum maackii Regel var. maackioides)は葉以外に果柄が細長い特徴もある。

2022/8/16
網引湿原の奥池の通路脇で、前回訪れた時にシュロソウらしきものを確認しました。
ただ、花がまったく咲いておらず、断定できなくて保留としていました。
今回、その花を確認でき、シュロソウであることが確認できました。
下段左端の写真は全体像であり、背の高い方は1mを越える草丈がありました。
右下に写っている背の低い方を拡大したのが中央の写真で、それでも50cm前後はあったと思います。
右端は、根本から出ていた葉で、見てわかる通り、葉幅はそれほどなくて、広い所でも3cm弱です。
なお、本種は変異が多く、葉幅が狭くて花柄が細長い点から、ホソバシュロソウに該当しそうです。
ただ、いろいろな説があるようなので、ここでは単にシュロソウとしておきます。


2022/10/11
8月に咲き始めていたシュロソウですが、咲き終わりに近くなり、果実が目立ちます。
右の写真のように側枝に雄花は残っていましたが、多くの雌花は未熟な果実になっていました。
その果実の基部には、枯れた花被片が残っていて、若い果実では元の花の形を保っていました。

ショウジョウバカマ(Heloniopsis orientalis)
<ユリ目・シュロソウ科(メランチウム科)・ショウジョウバカマ属>

シュロソウ科(メランチウム科)ショウジョウバカマ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、海外では、朝鮮半島に自生する。
高度適応性が高く、低地から高山帯まで広範囲に分布する。
草丈は10〜30cmで、葉はロゼット状になり、長さ5〜20cmのへら型で全縁。
花期は3月〜4月で、花茎を立ち上げ、茎頂に総状に多数の花を付ける。
花色は、淡紅色〜紫色と変異が多く、稀に白色のものもある。
花被片は長さ15mmほどの倒披針形で6個ある。オシベも6個あり、葯は紫色。
花後も、花被片は黄緑色になって残る。
なお、葉の先端が地面につくと発根して新苗を作る不定芽でも増える。

2023/5/4
第1湿原を後にして、奥池の畔を歩いていると、花後のショウジョウバカマが見られました。
ショウジョウバカマは、花後も花被片は黄緑色になって残るので、形状的にはあまり変わりません。
※ ショウジョウバカマの花に関しては、こちらに掲載していますので参照ください。


2023/5/18
奥池の畔を歩いていると、妙な花のようなものが目に留まりました。
よく見ると、それはショウジョウバカマの果実が弾けて、種子を散布した後でした(下端)。
直ぐ近くには、果実が口を開け、中の種子が見えているものが見られました。

シライトソウ(Chionographis japonica)
<ユリ目・シュロソウ科(メランチウム科)・シライトソウ属>

シュロソウ科(メランチウム科)シライトソウ属の多年草で、在来種。
和名のシライト(白糸)は、糸屑を束ねたような花の姿に由来する。
日本では、本州の秋田県以西から四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は8〜70cmで、根茎は極短く、葉はロゼット状に混生する。
葉身は長さ3〜15cmの長楕円形〜倒卵状長円形で、先は鈍頭である。
基部は葉柄となり、長さは1〜8cm。なお、葉柄が不明瞭なこともある。
葉縁は細かく波打ち、深緑色の草質で、両面無毛。主な側脈はしばしば下面に隆起する。
花期は5月〜6月で、高さ8〜70cmの茎を立ち上げる。
茎葉は長さ0.5〜8cmの披針形で、穂状花序の下に密集して付く事もある。
穂状花序の長さは2〜22cmで、多数の花が密に付き、花茎が白っぽくなる。
花は下から順に咲き登り、両性花と雄花ある。
花被片は6個あり、長さは不同長。上側の3〜4個が白いへら状線形で長さ7〜15mm。
下側の花被片は、長さは1〜2mmと極短いか、無い場合もある。
オシベは6個で、長さ1〜3mmで花糸は平たい。葯は2室で、帯白色。
メシベは子房上位で、花柱は3個、少し反り返り、内面に柱頭がある。
花弁が花茎に対して水平に近い角度で多数付き、白い丸ブラシのように見える。

2022/6/18
最初の獣害防止ゲートから第1湿原の獣害防止ゲートまでの林内、そこで見かけたシライトソウです。
3株咲いていましたが、ちょうど全体が咲いていて、丸ブラシのような形が良く分かります。


2022/8/27
2週間ほど前、同じ場所で見かけた緑色の果実を付けたノギランを、本種の花後と誤認していました。
間違いに気づいて、改めて本種のその後を確認したのが上記の写真です。
ノギランは果実が重いのか、果茎が真横に傾いていましたが、シライトソウは真っ直ぐに立っていました。
また、ノギランは花後に花被片が残るので花の形を残していますが、シライトソウは果実のみです。


2023/5/4
昨夏、シライトソウが花を付けていた場所で、初々しい若葉から花茎が立ち上がり始めていました。
私の記憶に間違いがなければ、この場所ではシライトソウが見られたので、その若葉と思われます。


2023/5/18
2週間前は花茎を伸ばし始めたばかりだったシライトソウが、林内で咲いていました。
よく見ると林の奥の方にはかなりの数のシライトソウが白い花序を伸ばし始めていました。
昨年見たシライトソウは十分に花序が伸びた状態でしたが、今は伸び始めなのでより白く見えます。

ササユリ(Lilium japonicum)
<ユリ目・ユリ科・ユリ属>

ユリ科ユリ属の球根植物で、日本固有種。日本を代表するユリの1つ。
日本では、本州の中部以西から四国、九州に分布する。
草丈は50〜100cmで、地下には直径2〜4cmの白い鱗茎がある。
葉は互生し、長さ8〜23cmの狭披針形で、やや厚みがあり、葉柄は4〜10mm。
この葉がササの葉によく似ているのが、和名の由来である。
花期は6月〜8月で、他のユリより花期が早い。
茎の上部に花被片の長さ10〜15cm、直径10〜15cmほどの漏斗状の花を1〜数個付ける。
花はやや下向きに咲き、内外花被片は淡紅色(白色〜紅色まで変異がある)で、先は反り返る。
外花被片は披針形、内花被片は長楕円形で、花被片の両端は狭くなり、内面中肋に毛がある。
オシベは6個で、葯は鮮やかな赤褐色で強い香りがある。メシベは1個。
刮ハは10〜11月に熟し、長さ35〜45mmの倒卵形で3室ある。種子は風で運ばれて広がる。
種子が地上発芽するのは、通常、翌々年の春で、最初は1〜数個の根生葉のみで茎はない。
ササユリの成長は非常に遅く、発芽から最初の花が咲くまでには7年以上かかるとされる。
また、栽培もかなり難しく、同じ場所で栽培すると病気で枯れてしまうらしい。
種子を散布すると数年で枯れ、新しい場所で発芽して、次々と移動していくもののようである。

2022/6/18
第1湿原や第2湿原の際や通路脇などでササユリが咲いていました。
既に花のピークは過ぎていましたが、何とか持ちこたえてくれていました。

 
2022/8/16
網引湿原の奥池横の通路脇で見かけた、ササユリの刮ハです。
この刮ハが熟すのは晩秋の頃で、熟すと上部から3裂し、翼のある種子が風に乗って散布されます。

ヘクソカズラ(Paederia scandens)
<リンドウ目・アカネ科・アカネ亜科・ヘクソカズラ連・ヘクソカズラ属>

アカネ科ヘクソカズラ属のつる性多年草で、全国で見られる。
別名に、ヤイトバナ、サオトメバナ、サオトメカズラなどがある。
日本以外では、東アジア一帯に分布し、北アメリカやハワイなどに帰化している。
特有のいやな臭いがあり、これが和名の由来。
葉は対生し、楕円から狭卵形で、長さ4〜10p、幅1〜7p。
花期は7月〜9月で、葉腋から短い集散花序を出し、花をまばらにつける。
花冠は鐘状で長さは1p前後。灰白色で先は5残裂し、中央は紅紫色で毛が生える。
花糸の短い5個の雄しべは、花冠の内部に付く。花柱は2個で、基部で合着する。
果実は、直径5oほどの球形の核果で、黄褐色に熟す。

2022/10/11
網引湿原入口の駐車場近くで、通路脇で黄色く色付き始めたヘクソカズラを見かけました。
完熟するともっと黄色くなりますが、まだ、完熟しておらず緑色が残っています。
なお、左の写真で右上に見える黒い果実はアオツヅラフジです。

カモメヅル属の1種(Vincetoxicum)
<リンドウ目・キョウチクトウ科・ガガイモ亜科・Asclepiadeae連・Asclepiadinae亜連・カモメヅル属>

キョウチクトウ科ガガイモ亜科の属の1つである。
多年草で、茎は直立するか、つる性となる。葉は普通は対生する。
花冠は、紫色か白色で、車状に5深裂する。
葯には、ラン科植物と似た花粉塊を形成する。
果実は袋果で、種子には長い白毛があり、風によって運ばれる。
茎が直立するものには、スズサイコ、クサタチバナ、フナバラソウなどがあり、
つる性のものには、オオカモメヅル、コカモメヅル、コバノカモメヅル、アオカモメヅルなどがある。

2023/7/18
網引湿原入口の駐車場近くの柵に絡みついて、小さな赤紫色の花を付けていました。
見たことがなく、後で調べて葉や花の形状などからみて、カモメヅル属の植物であると判断しました。
花の見た目はオオカモメヅルに似ていますが、花被片に毛はなく、副花冠の形も異なります。
コカモメヅルのような長い花序ではなく、コバノカモメヅルのような長い花序柄もありません。
葉腋から、短い花序柄が付いた花が3〜5個出ています。
調べて範囲内では、この花に似たものは見つけられませんでした。

ホソバリンドウ(Gentiana scabra var. buergeri f. stenophylla)
<リンドウ目・リンドウ科・リンドウ属>

リンドウ科リンドウ属の多年草で、在来種。
湿地に生えるリンドウの1品種で、葉の幅がリンドウより細いのが和名の由来。
日本では、本州の関東地方以西から四国、九州に分布する。
なお、基本変種であるトウリンドウ(チョウセンリンドウ)は朝鮮半島から中国、シベリアに分布する。
草丈は20〜80cmで、茎は直立あるいは斜上し、4条線がある。
葉は対生し、長さ3〜8cmの線状披針形で、3脈が明瞭。葉表は緑色で、葉裏は淡緑色。
葉先は尖り、基部は葉柄はなくて、茎を抱く。縁には細かい突起があってざらつく。
花期は9月〜11月で、茎頂や上部の葉腋に太い筒状鐘形の花を数個、上向きに付ける。
花冠は長さ35〜50mmで、先が5裂して先が尖り、裂片の間の副片は小さい。
花冠は晴天時のみ開き、紫色で、内面には茶褐色の斑点がある。
オシベは5個で、柱頭は2裂する。子房の基部には、5個の蜜腺がある。
萼筒は長さ10〜20mmで、萼裂片は線状披針形。
萼裂片は、筒部より長いものや短いものがあり、開出していることが多い。
果実は刮ハで、枯れた花冠や萼に包まれたまま突き出し、熟すと縦に2裂する。
種子は長さ2o弱の紡錘形で、両端に短い尾があり、風に乗って飛散する。

2022/10/11
網引湿原の奥池から第2湿原、第3湿原にかけて、そこここでホソバリンドウが咲いていました。
ただ、固まって咲いているところは少なく、多くが他の草に紛れてポツリポツリと咲いていました。


リンドウとホソバリンドウ

   .
  2021/10/14 <リンドウ>        2022/10/11 <ホソバリンドウ>
砥峰高原で見かけたリンドウと網引湿原で見かけたホソバリンドウです。
花に差異は見られませんが、葉幅にはかなりの差が見られます。
リンドウは、ササリンドウとも呼ばれるようにそれなりに葉幅があります。
一方、ホソバリンドウは、その名前が示す通り葉幅がなくて、かなり細いです。


ウラジロ(Gleichenia japonica)
<ウラジロ目・ウラジロ科・ウラジロ属>

ウラジロ科ウラジロ属のシダ植物で、在来種。
日本では、本州中部以南から四国、九州、南西諸島に広く分布する。
海外では、台湾、中国からインドなど、アジアの熱帯域にまで広く分布する。
根茎は匍匐して横に這い、直径3mm前後と太くて長く、よく這い回る。
本土では低山の林内に生え、日当たりの良い疎林では大群落を作ることがある。
よく繁茂した場所では、互いに寄りかかって絡み合い、高さ2mを越える純群落になる。
葉柄は長さ30〜100cm、緑色で平滑。葉柄の先に1対の羽片からなる葉を付ける。
羽片は長さ60〜90cm、幅18〜28cmで、二回羽状複葉に切れ込む。
小羽片は長さ11〜16cm、幅1.2〜2.4cmで、 片側に25〜35個つき、 深裂する。
裂片は長さ7〜12mm、幅2〜3mmの線形で、基部は幅広く小軸に付き、葉質は薄いが硬い。
葉表はつやがあって、裏面は粉を吹いて白っぽく、ウラジロ(裏白)の和名の由来である。
この羽片の間に休止芽があり、翌春には休止芽が伸びて、葉柄の先に新たな1対の葉が出る。
このように年々、葉の段が1つずつ積み上がっていくが、本土では多くて3段(2m)程度で終わる。
しかし、湿潤な沖縄や熱帯などでは、さらに伸びて、熱帯では10mを越すこともある。
なお、羽片の長さも、本土では長くても1mほどであるが、沖縄では1対で3mを越える。
胞子嚢群は縁と中肋の間に付き、胞子嚢は3〜4個で、包膜は無い。

2022/6/18
最初の獣害防止ゲートを入った直ぐ横とか、第2湿原に向かう途中などでウラジロを見かけました。
コシダ以上に新葉の展開が進み、今年の新葉が鳥が翼を開いたような感じで並んでいました。
古い昨年以前の葉は濃い緑色ですが、新葉は瑞々しい黄緑色をしています。


2023/5/4
今年もウラジロが休止芽を伸ばし始めていました。
右は第3湿原の遊歩道脇にあったウラジロの大きな群落で、新葉はかなり伸びていました。


2024/3/16
第3湿原の近くで見かけたウラジロの休止芽で、ゼンマイのように丸く巻いていました。
なお、右の写真のように、休止芽が少し伸び出しているものも見られました。

コシダ(Dicranopteris linearis)
<ウラジロ目・ウラジロ科・コシダ属>

ウラジロ科コシダ属のシダ植物で、在来種。アレロパシー作用を有している。
日本では、本州の福島県以南から四国、九州、南西諸島に広く分布する。
海外では、朝鮮半島から中国南部、台湾、東南アジアからインドにかけて分布する。
ウラジロにいろいろな点で似ているが、葉が繰り返して2分枝する点が異なる。
根茎は太い針金状で地下を長く横に這い、光沢のある金褐色の毛を密生する。
間隔を開けて葉を付け、葉は全体として2mを越える。
葉柄は0.2〜1mで、そこに対生する羽片を伸ばして、その間から次の葉柄が伸びる。
これを繰り返すので、全体としては羽状複葉となるが、その羽片が2分枝する。
葉柄は褐色で光沢があって硬く、角軸や成長の止まった先端に赤褐色の毛がある。
側羽片はほぼ等分に数回の二分枝を繰り返し、先端と分岐部分には一対の小羽片がつく。
小羽片は15〜40cm、幅3〜8cmの長楕円状披針形で羽状に深裂する。
裂片は15〜50対付き、長さ10〜50mm、幅2〜4mmで、先は凹頭になることが多い。
表面は艶のある黄緑で、裏面は粉を吹いたように白く、まばらに赤褐色の毛がある。
葉質は薄くて硬く、裂片は線形で縁は滑らかである。胞子嚢群は中肋と葉縁の間に一列付く。

2022/6/18
網引湿原の湿原をつなぐ散策路などの脇でコシダの群落を見かけました。
今年の新葉が伸び出して2段になっています。高御座山とは異なり、かなり葉が展開しています。
新しい葉柄の長さは数十cm程度で、高御座山で見たものの半分程度の長さでした。

シシガシラ(Blechnum niponicum)
<ウラボシ目・シシガシラ科・ヒリュウシダ属>


シシガシラ科ヒリュウシダ属の常緑シダ植物で、日本固有種。木陰のやや湿った斜面に生える。
日本では、北海道から本州、四国、九州、屋久島と広範囲に分布するが、琉球列島には分布しない。
太い根茎があり、多くの葉を密集して付ける。茎は極短く立ち上がり、茎には多数の葉を密生する。
葉の大部分は栄養葉で、ロゼット状に広がる。少数の胞子葉は斜上するか立ち上がる。
茎には鱗片を密生し、葉の基部にも少し鱗片が付く。葉軸の上面に溝がある。
栄養葉は、1回羽状複葉で40cm程の長楕円形で、羽片は濃緑色で艶はなく、少し厚みがある。
個々の羽片は線形で先は丸みを帯び、軸から直角に出て葉先の方に少し曲がる。
胞子葉は斜上するか立ち上がり、全体の形状は羽片がまばらな点を除き、栄養葉と同じである。
なお、羽片の表は褐色で、緑色にはならない。 胞子葉の羽片は両縁が裏側に巻き、胞子嚢群を包み込む。

2022/6/18
最初の獣害防止ゲートから第1湿原の獣害防止ゲートまでの林内、そこで見かけたシシガシラです。
ちょうど、胞子葉を伸ばして、展開させているところでした。
上段左は、胞子葉の展開はほぼ終わっており、右は3本の胞子葉が展開途中でした。
なお、その左右にある褐色のものは昨年の胞子葉で、枯れ残っているようです。
下段は、上段左の胞子葉を拡大したもので、左が葉表、右が葉裏になります。


2023/5/4
網引湿原の第1獣害防止ゲートの先にある林の中で、シシガシラが新葉を展開していました。
若草色の初々しい新葉が展開する中央から、胞子葉も伸び出しています。
栄養葉とは異なり、胞子葉は下部には羽片がないので、ゼンマイのような見た目です。


2023/5/4
2週間前には、くるくる巻いてゼンマイのような形でしたが、すっかり展開していました。
ただ、胞子葉としては未熟で、初々しさが残っています。
栄養葉もすっかり展開が終わり、葉の色も若干色が濃くなっているようです。

コスギゴケ(Pogonatum inflexum)
<スギゴケ目・スギゴケ科・ニワスギゴケ属>


スギゴケ科ニワスギゴケ属のコケで、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
やや乾燥してそこそこの日当たりがある場所を好み、森林の中には少ない。
茎は長さ2〜3cmで分枝せず、下の方に仮根を多数付ける。
葉は長さ4〜6mmの線状披針形で、やや青白色を帯びている。
基部の鞘部は卵形で、先は鋭頭、葉の縁に小歯がある。
なお、乾燥すると葉は強く巻縮する。
秋から冬にかけ、雌株からは長さ1〜3cmの柄を持った胞子体が形成される。

2024/3/16
上段は、第2湿原の入口近くで見かけもので、下段は第1湿原の外の通路脇で見かけたものです。
どちらもコスギゴケとしましたが、色味がかなり異なりますので、別種かもしれません。
正確な同定には、もっと専門的な確認が必要だと思いますが、手を出せていません。

ハイゴケ(Hypnum plumaeforme Wilson)
<ハイゴケ目・ハイゴケ科・ハイゴケ属>

ハイゴケ科ハイゴケ属のコケで、茎は地面を這うように横に生育しする。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、ネパール、ベトナム、フィリピンに分布する。
茎は長さ10cm程に伸び、ほぼ扁平に、規則的に羽状に枝を伸ばす。
枝は長さ15o程で、水平からやや斜上する。乾燥すると枝が少し反り返り、葉は丸く縮む。
茎葉は長さ2〜3oの広卵形で、葉先は細く尖り、基部はやや心形で翼状になる。
葉の背側は丸くまるまり、上部は鎌形に曲がる。乾燥すると強く曲がる。
色は黄緑色で、乾燥すると褐色に近くなる。しかし、季節や生育環境によっても変化する。
長い年月育ったハイゴケは、裏が褐色化して、表土や岩から簡単にはがれ、厚みが10cmになることもある。

2024/3/16
第1湿原手前の林内で見かけたハイゴケです。
少し乾燥気味のようで、葉が丸まって縮んでいます。

ツブイボタケ(Thelephora vialis)
<イボタケ目・イボタケ科・イボタケ属>



イボタケ科イボタケ属のキノコで、日本や中国、南北アメリカに分布する。
秋に広葉樹林下の地上に発生する。
子実体は高さ10〜15cm、直径6〜8cmになる中型のキノコである。
八重咲きの花弁のように多数の傘が付き、傘は長さ4〜8cm、厚さ1〜4mmの扇形。
傘の背面は乾燥して淡黄色〜淡褐色〜青灰色で、放射状に小しわの条線があり、環紋がある。
傘の腹面は帯紫褐色で、子実層托は放射状の低いしわが畝状につき、ほぼ平滑である。
よく似たイボタケは、傘の腹面に淡褐色で先の丸い細かな突起が多数ある。

2022/8/16
網引湿原第1湿原の出口の手前で、通路脇にマイタケのような形のキノコが生えていました。
周りがきれいに整理されているので、清掃作業時に見つけられた方が手入れされたようです。
傘はマイタケのような柔らかさはないように見え、タコウキン科のように固そうです。
調べてみるとイボタケ属のようで、似たものにイボタケ、ボタンイボタケ、ツブイボタケがあります。
ボタンイボタケの傘の色は、若いときは橙黄色で、老菌だとくすんだ色になり、腹面にはイボがびっしり。
イボタケの傘の色は青黒い色で、腹面には名前の通り乳頭状のイボがびっしりと並んでいる。
ツブイボタケは背面は淡褐色〜青灰色で、腹面は帯紫褐色で皺はあるが平滑で、イボはない。
ということで、色と腹面にイボがない点で、ツブイボタケとしました。
ただ、発生時期が秋という点が引っ掛かります。



2022/8/27
時間が経ってしまったので、まだ、残っているか心配だったのですが、一部は健在でした。
前回撮った傘の背面と腹面が不鮮明だったので、撮り直したのが上記の写真です。
腹面は、低い皴のある灰紫褐色の地にポツポツと不規則な突起が見られます。
背面は、淡黄褐色の地に灰褐色の不規則な環紋が見られ、細かな皺が見られます。

ボタンイボタケ(Thelephora aurantiotincta)
<イボタケ目・イボタケ科・イボタケ属>


イボタケ科イボタケ属のキノコで、在来種。
日本では全国に、海外では朝鮮半島から中国、インドネシア〜ニューギニアに分布する。
夏から秋にかけて、コナラやアカマツの混生林の地上に発生する。
子実体は高さ5〜8cm、直径5〜15cmで、傘が八重咲きの花弁のように重なって付く。
個々の子実体は、幅広い扇形〜へら形で、表面は橙黄色〜橙褐色で縁は灰白色である。
表面には放射状の小じわが密にあり、裏面は橙黄色で、細かい乳頭状のイボに覆われる。
肉質は柔らかい革質で無味、乾くと漢方薬のような臭がある。

2022/8/27
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇に生えるボタンイボタケを見つけました。
1つは倒木の脇から生えた若い個体(左側)で、背面は白っぽくて、わずかに橙黄色が見られる程度でした。
ただ、倒木を持ち上げて腹面を見ると、橙褐色〜橙黄色、淡黄色と見事なグラデーションを見せていました。
もう1つは、地面に生えて大きく育ち、名前のようにボタンの花のような形になっていました。
背面は淡い橙黄色で、白っぽい縁取りとその内側の橙黄色の環紋が目立つ、きれいな色合いでした。



2022/8/27
前述のボタンイボタケの背面と腹面を拡大したものです。
若いボタンイボタケ(左側)では、背面全体が白っぽくて、環紋の橙黄色も淡いことが分かります。
成長の進んだもの(右側)では、白っぽい成長点の内側の橙黄色の環紋は、濃色になって目立ちます。
腹面は両者にあまり差はなくて、若い個体の成長点近くの色合いが、より白に近いくらいです。
その内側は、橙黄色〜橙褐色へと変わり、名前のとおり多くの細かい乳頭状のイボに覆われています。
その乳頭状のイボですが、若い個体ではいく分不明瞭な気がします。

ベニヒダタケ(Pluteus leoninus)
<ハラタケ目・ウラベニガサ科・ウラベニガサ属>

ウラベニガサ科ウラベニガサ属のキノコで、在来種。
日本を始め、北半球に広く分布する。
腐生菌で広葉樹の腐朽材などに群生したり、束生する。
傘は直径2〜7cmで、幼菌時は饅頭型で、徐々に傘が開いて中央が盛り上がった扁平な形になる。
傘の表面は、湿った所では黄色く、乾燥気味の所では黄色味を帯びた灰色になる。
湿っている所では、傘の周辺部分には条線が見られる。
ヒダは密に付き、最初は白いが、徐々に紅褐色を帯びて肉色に変わる。これが和名の由来。
柄は長さ3〜8cmの中空で、根本側がやや太くなり、表面は黄白色で繊維状。
肉は脆く、表面と同じような色味で、匂いや味は特にない。食用になる。

2023/8/5
第2湿原に入って直ぐの広場近くで、切り株から黄色いキノコが出ているのが目に留まりました。
少し離れて2個出ていたのですが、どちらも傘が開いていない幼菌で、裏面の確認ができません。
傘が黄色いキノコを調べてみると、キヌメリガサやタモギタケが見つかりました。
しかし、キヌメリガサはカラマツ林に生えるキノコだし、タモギタケの幼菌は形が異なります。
さらに調べているとベニヒダタケが見つかりました。幼菌の色や形はよく似ています。
傘裏のヒダが、時間と共に白色から紅褐色を帯びて色が変わるそうですが、確認できません。
そのため、断定はできませんが、その他の特徴から本種としています。キノコの同定は難しいですね。

オニテングタケ(Amanita perpasta)
<ハラタケ目・テングタケ科・テングタケ属・マツカサモドキ亜属・マツカサモドキ節>
 

テングタケ科テングタケ属のキノコで、在来種。分布の詳細は不明。
夏〜秋に、シイ・カシ・コナラなどの広葉樹林などに単生する。
傘は淡黄褐色〜淡褐色の地に、高さ2〜5mmの褐色の円錐形〜角錐形のいぼが散布する。
成菌の傘は、直径10〜17cmになる。ヒダは白色に近く、離生して密に付く。
柄は傘と同色で、下部は棍棒状に膨らみ、しばしば縦に深い割れ目が生じる。

2022/8/16
網引湿原第2湿原の手前の通路脇で、巨大なキノコが3個並んで生えていました。
こちらも周りが整理されているので、清掃作業時に見つけられた方が手入れされたようです。
まだ傘が開き切っていない幼菌で、最も奥のものが小さく、直径5cm前後でした。
中央のものが最も開いていて、直径で10cm強、手前のものは10cm弱といった所です。
調べてみると、オニテングタケかオオオニテングタケと思われます。
傘が開き切っていないので、どこまで大きくなるのか不明ですが、倍にはならない判断します。
オオオニテングタケは、傘の直径が30cmに達する巨大キノコなので、オニテングタケとしました。


2022/8/27
残っているかどうか気になっていたオニテングタケですが、傘は腐ってありませんでした。
太かった柄だけが、何とか残っているような状態でした。

ノウタケ(Calvatia craniiformis)
<ハラタケ目・ハラタケ科・ノウタケ属>


ハラタケ科ノウタケ属の1年生のキノコで、日本も含め、世界に広く分布する。
発生時期は夏〜秋で、林下の地上に発生する。
幼菌は白色〜黄褐色の半球形で、成菌は高さ5〜15cm、直径8〜15cmの倒卵形。
成菌の頭部は茶褐色の半球形で平滑であるが、成熟すると不規則な皺ができ、脳状になる。
表皮は外皮と内皮の2層構造で、内皮は褐色で、薄くてもろい。
内皮に包まれた基本体は、幼時には白いが、成熟すると黄褐色の胞子塊となり、悪臭がある。
基本体の下部は、長さ1〜3cmの逆円錐形の無性基部となる。色は頭部より淡色である。
幼菌は可食で、非常にいい出汁が出るとされるが、外観から採取の対象となることは稀。
なお、皺のない状態ではイロガワリホコリタケとよく似ているが、下記の点で識別可能。
・子実体表面は黄褐色で細かなひび割れに覆われるが、
 ノウタケよりイロガワリホコリタケの方が黄色味が強く、ひび割れが大きい
・2つに割ったとき、最初白かった肉が黄変するのがイロガワリホコリタケで、
 ノウタケは真っ白なままで、変色することはない

2022/8/27
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇に生える奇妙な幼菌を見つけました。
のっぺりとした形状で、傘と柄の区別が明確でない、見慣れない形状のキノコでした。
上段は通路側とその裏側から撮った写真で、傘らしき部分より柄らしき部分が淡色だと分かります。
下段は、その拡大写真で、左の写真は傘らしき部分と柄らしき部分の境目辺りになります。
右は、傘らしき部分の拡大ですが、どちらも表面は比較的平滑で、凹凸はあまり見られません。
いろいろ調べたのですが、なかなか似たものを見つけられませんでした。
あるとき、ノウタケの幼菌の写真を見て、これだと気が付きました。
多くがノウタケの成熟したシワシワの写真を載せていたので、気が付かなかったものです。
ただ、よく似たイロガワリホコリタケがあり、表面の色やひび割れの大きさが異なるとのこと。
そこで、両者の幼菌の写真と見比べた結果、色味やひび割れの状態から本種と判断しました。

ヒイロタケ(Pycnoporus coccineus (Fr.) Bondartsev & Singer)
<ヒダナシタケ目・タコウキン科・シュタケ属>

タコウキン科シュタケ属のキノコで、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、海外では中国、東南アジア、オーストラリアに分布する。
傘は4〜8pで、厚さは3〜7oと扁平で、半円形〜円形。
春から秋にかけて、広葉樹の枯れ木などに発生する。
傘表面や管孔の色は朱紅色で目立つが、古くなると退色し、灰色になる。
腹面は濃紅色で、古くなっても退色せず、菅孔状で、孔口は微細。

2022/6/18
第2湿原の外れ、奥池の畔の樹に生えていたヒイロタケです。
湿原の中では見かけない朱紅色は、いやが上にも目を引きます。
この樹は枯れてはいませんが、弱っているのか、木肌の裂け目に広がっているようです。

カワラタケ(Trametes versicolor)
<ヒダナシタケ目・タコウキン科・シロアミタケ属>


タコウキン科シロアミタケ属のキノコで、木材を分解する白色腐朽菌で、世界で最も普通に見られる。
科名に関しては未確定で、タコウキン科、タマチョレイタケ科、サルノコシカケ科(暫定)などが使われている。
子実体は側着生で無柄であり、群生する。広葉樹または針葉樹の枯木、切株などに重なり合って群生する。
傘は幅1〜5cm、厚さ1〜2mmの半円形〜扇形で、貝殻状に湾曲する。
上面は同心円状の環紋を持ち、色の変異は多くて灰色、黄褐色、藍色、黒色などが見られ、微毛がある。
肉は薄く皮質で弾力性があり、強靭である。腹面は管孔が白色〜灰褐色で孔長は1mm前後。

2022/10/11
網引湿原第2湿原の入口近くの切り株で、大きく広がったカワラタケが見られました。
成長点近くは白色に近いのですが、そこから内側は黒褐色で、きれいな環紋が見られます。
腹面はきれいな白色で、丸い管孔がびっしりと並んでいます。

ウチワタケ(Microporus affinis)
<ヒダナシタケ目・タコウキン科・ツヤウチワタケ属>


タコウキン科ツヤウチワタケ属のキノコで、在来種。
日本、朝鮮半島から中国、台湾、タイ、ベトナムに分布する。
発生時期は初夏〜秋で、広葉樹の落枝や倒木から重なり合うようにして生える。
子実体は側着生で、柄は短いか無柄で、傘とほぼ同色である。
傘は幅2〜10cm、厚さ1〜3mmで、扇形〜半円形、ときに円形で、縁は薄い。
表面には黄褐色〜茶褐色の環紋があり、若い内は短毛が密生するが、後に無毛になる。
腹面は類白色で、孔口は微細(6〜8個/mm)。肉は白色で、薄くて硬い革質。
近縁種に傘の表面が無毛で光沢があるツヤウチワタケ(Microporus vernicipes)や
傘が厚く無毛で、光沢が鈍く環紋は不明瞭なツヤウチワタケモドキ(Microporus longisporus)がある。

2023/8/5
網引湿原第1獣害防止ゲートを入って直ぐの林内で、枯木にウチワタケが数十程度ですが、付いていました。
傘の裏も撮ったのですが、菅孔が細かいようで撮った写真では識別できませんでした。

ラッコタケ(Inonotus flavidus)
<ヒダナシタケ目・タバコウロコタケ科・カワウソタケ属>


タバコウロコタケ科カワウソタケ属の木材腐朽菌で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
海外では、インド、ヒマラヤ地方に分布する。
発生時期は晩秋から初冬で、ブナやミズナラなどの広葉樹の立ち枯れや倒木に着生する。
子実体の傘は半円形で、棚状となり癒着していることがある。
傘の直径は2〜6cmで、表面は褐色。環紋と密毛で覆われ、長さ3mmほどの毛の層がある。
この毛は、やがて脱落して、地色の黒褐色となる。なお、柄はない。
傘の裏側の子実層托は管孔状である。

2022/10/11
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇の木に付いているキノコを見かけました。
傘の上面に不明瞭な環紋のようなものが見られますが、もさっとした印象を受けます。
また、上面に毛のようなものが見られ、腹面には丸い管孔がびっしりと並んでいます。
調べてみると、見た目や上面に毛があり腹面は菅孔である点から、ラッコタケではないかと判断しました。
ただ、似たものも多いので、写真だけからの判断では、間違っているかもしれません。

オオミノコフキタケ(Ganoderma austoria)
<ヒダナシタケ目・マンネンタケ科・マンネンタケ属>


マンネンタケ科マンネンタケ属の多年生のキノコ。
キノコ自体は灰褐色や茶褐色だが、ココアの粉状の胞子を撒き散らし、自身も覆われている事が多い。
しかし、不思議なことに胞子を吹き出す管孔面には全く付着せず、白いままである。
傘の形は半円形〜腎臓形で、傘の色は淡灰色〜灰褐色〜暗褐色と個体差があり、同心円状の環溝がある。
子実層托は管孔状で、白色〜淡黄白色。孔口は円形で4〜5個/mm。管孔は擦ると茶褐色に変色する。
近年、コフキサルノコシカケと思われていたものが、実は、本種であった事が分かっている。
特に、低地で見られるものは、ほとんど本種で、コフキサルノコシカケは深山で見られるとのこと。
ただ、見かけはコフキサルノコシカケと酷似しており、外見での判別は困難で、下記の点が異なるとされる。
・断面を見ると管孔と肉質部分の境界に黒い線が入るのがオオミノコフキタケ(コフキサルノコシカケにはない)
・殻皮の厚さが3o以上あるのがオオミノコフキタケ(コフキサルノコシカケは3o以下)
・胞子の大きさの違いがあり、オオミノコフキタケは8.5μm以上ある(コフキサルノコシカケはこの半分程度)
ただし、両者の特徴を併せ持つ中間型も見つかり、上記の判別法も決め手にならないとのこと。

2022/10/11
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇の木に付いているオオミノコフキタケを見かけました。
近づいて良く見ると、上の方にも1個付いていて、2個確認することができます。
まだ、胞子を放出していないので、傘の上面の環溝がきれいに見えています。
腹面はきれいな白色で、全面が丸い管孔で覆われています。

マンネンタケ(Ganoderma lucidum (Leyss. ex. Fr.) Karst)
<ヒダナシタケ目・マンネンタケ科・マンネンタケ属 >



マンネンタケ科マンネンタケ属の1年生のキノコ。
レイシの別名で呼ばれることも多いキノコで、表面に光沢がある事が特徴。
子実体は1年生、初期にはこぶ状、成長すると偏心生の扇状になり、ときに中心生になり、直立する。
傘は5〜20cmと幅があり、扁平か多少中央が盛り上がる。
傘の表面は、最初は黄色であるが、茶褐色、褐色と変わっていく。
傘の背面は環溝と放射状のしわがあり、黄褐色、赤褐色、紫褐色と変異がある。
成長すると表層は硬い殻皮となり、表面に光沢がでてくる。
柄は硬く、中実で長さは5〜15cm、不規則に曲がり、凹凸がある。

2022/8/16
網引湿原第1湿原を出て、駐車場に戻る途中、小川の畔の樹の根元でマンネンタケを見つけました。
近づいて良く見ると、昨年の古い子実体と、初期のこぶ状で傘の部分がない幼菌が直ぐ側にありました(上段)。
上段の写真で、中央左寄りに暗褐色の昨年の子実体、左下に今年の子実体、右下に棒状の幼菌が見えます。
下段は各々を拡大したもので、今年の子実体は既に成長が止まっているように見えます。



2022/8/27
左側は、前回、成長が止まっているように見えた今年の子実体です。
今回は、裏側から撮ってみました。艶のある褐色の背面と淡黄色の腹面がくっきりと分かれています。
右側は、前回、棒状だった幼菌で、ずいぶんと傘が大きく育っていました。
成長点近くの淡黄色から基部の褐色の部分まで、きれいなグラデーションになっています。


2022/8/27
前回、写真を撮っていなかった昨年の古い子実体です。
傘の背面が艶のない暗褐色になって、虫に食われたのか穴が空いています。
今回、気が付いたのですが、手前に棒状の古い子実体があり、こちらも穴が空いています。
傘がないので、幼菌が十分に成長する前に気温が低下して、成長が止まってしまったようです。


2022/8/16
上記の横にある樹の幹にも2個付いていて、こちらは柄の部分がほとんどないように見えます。
こちらは、どちらも成長中のようで、傘の周辺部の成長点の近くは淡黄色で若々しく見えます。
地面に生えている物とは異なり、柄の部分は短くて、大きな方では柄がないように見えます。


2022/8/27
前回、旺盛な成長を見せていた個体ですが、ほぼ、成長は止まったようです。
外周の部分が3段腹のようになって、下の部分が淡黄白色なので、成長は続いているのでしょうか。
右側の小さかった個体もずいぶん大きくなり、その右側に小さな幼菌も顔を出していました。


2022/10/11
マンネンタケもすっかり成長が止まって、傘の色もエンジ色に変わっていました。
左の写真は、上記の右側の写真の左側の個体です。
右の写真は、上記の右側の写真の奥に写っている若い個体です。

キノコの不明種

キノコの不明種(1)


<ハラタケ目・テングタケ科・テングタケ属?>
2022/8/27
傘は開き切って皿状になり、放射状に裂け目が出来ています。
背面は淡褐色で、少し濃色の長毛で覆われ、毛の多少が模様となり、中央部は毛が多くて褐色です。
ひだは淡暗褐色で密に付き、暗褐色で、肉は白色です。
柄は白色で中央より上側にツバがあり、その下部にはささくれ状の鱗片が付いています。
コテングタケモドキではないかと思っていますが、確証はありません。

キノコの不明種(2)


2022/8/27
まだ、傘が開いていない状態で、背面に丸くて先の尖ったイボが密生しています。
傘の末端側では、イボがきれいに列をなしており、放射状の筋模様になっています。
いろいろ調べてはみましたが、このような形状のイボがきれいに並んでいるものは見つけられませんでした。

キノコの不明種(3)

2022/8/27
切り株の近くで3つ並んでいた内の左端のキノコで、傘の背面は黄褐色でした。
右端のキノコも、半分ほどの大きさですが同じような色合いで、同一種と思われます。
比較的平滑で、ランダムにポツポツと凹みや穴が見られます。
腹面は白っぽい菅孔で、柄は背面と同じような色合いで、淡い縦筋が見られます。
背面の色などからヤマイグチの可能性があると思っていますが、確証はありません。

キノコの不明種(4)

2022/8/27
切り株の近くで3つ並んでいた内の中央のキノコで、傘の背面は灰褐色でした。
傘の背面や柄は、白い粉を吹いたようになっていて、そのために全体に白っぽく見えます。
いろいろ調べてはみましたが、このような特徴を持つキノコは見つけられませんでした。

キノコの不明種(5)

2022/10/11
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇の倒木に点々と付いているキノコと見かけました。
傘の上面が茶褐色で、柄も少し濃色の茶褐色と、模様などのこれといった特徴はありません。
そのため、似たようなキノコが多くて、この写真から同定することはできませんでした。

ツノホコリ(Ceratiomyxa fruticulosa)
<ツノホコリ目・ツノホコリ科・ツノホコリ属>

 
ツノホコリ属は原生粘菌の一部に近縁であり、まとめてツノホコリ綱とすることが提唱されている。
ツノホコリ属は腐朽木上などに眼で見えるサイズのゼラチン質の子実体(担子体)を形成する。
その表面には、1個ずつ胞子をつけた柄が多数生じる。
個々の子実体の大きさは数mm程度であるが、群生するために目立つ。
色は白色のものが多いが、黄色のものや桃色、青色のものもいる。

ツノホコリは、世界に広く分布し、日本でも北海道から南西諸島まで、全国に分布する。
発生は春から秋であるが、特に梅雨明け頃に腐った木の上、稀に生木の樹皮の上に発生する。
ツノホコリの子実体は、普通、高さ1〜2mmほどであるが、10mmに達することもある。
まばらに分枝するものが最も普通であるが、下記のような変種もある。
・エダナシツノホコリ(var. descendens Emoto):坦子体は円柱状で分枝しない
・カンボクツノホコリ(var. arbuscula):坦子体は円柱の先端から放射状に枝が出る
・ナミウチツノホコリ(var. flexuosa):坦子体の分枝が少なく、枝が長く、曲がる
・タマツノホコリ(var. porioides):坦子体がハチの巣状の球形

2022/8/27
網引湿原第1湿原の外を周る通路脇で見かけたガンクビソウ、その通路の反対側で見かけました。
苔生した倒木の側面に沿って、小さな白いものが点々と並んでいて、けっこう目立っていました。
近づいて良く見ると、白くて細いひも状のものが多数集まった球状のものが、寄り集まっていました。
調べてみると、ツノホコリ属の1種であるツノホコリと分かりました。
上記のようにいくつかの変種もあるようですが、最も普通のツノホコリのようです。









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